ひきこもりとニートの違いをあいまいに感じる方も多いでしょう。どちらも自宅から外へ出ない人と考えている人もいるのではないでしょうか。しかし、実際にはそれぞれの言葉には定義があり、意味も異なります。
そのため、現在自宅にひきこもりがちな人は、自身がどちらに該当するのかを確認してみてください。
本記事では自宅にひきこもりがちな人に向けて、「ひきこもり」と「ニート」の違いや、これらから脱出する方法について解説します。社会復帰に向けて一歩ずつ進むためにも、本記事をきっかけに一歩を踏み出してみてください。
この記事の目次
それぞれの定義は?ひきこもりとニートの違い
前述したとおり、ひきこもりとニートは同じ言葉のようで定義は異なります。そのため、自宅にひきこもりがちな人は、まず自分がどちらに該当するのかを考えることが大切ですよ。
そうすることで、周りから自分はどのように見られているのかを客観的な視点で理解でき、現実と向き合うことができます。
ひきこもりの定義
厚生労働省によると、ひきこもりの定義は次のように記されています。
「様々な要因の結果として社会的参加(義務教育を含む就学、非常勤職を含む就労、家庭外での交遊など)を回避し、原則的に6カ月以上にわたって概ね家庭にとどまり続けている状態(他者と交わらない形での外出をしていてもよい)を指す」
引用:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」
このことから学生や社会人に関係なく、他者との関わりを避けて6カ月以上自宅にとどまり続けている方は「ひきこもり」であるといえます。
また、「他者と交わらない形での外出をしていてもよい」とあるように、食料品の買い出しなどの目的で外出していたとしても、他者との関わりがなければ「ひきこもり」の扱いとなるため覚えておきましょう。
ニートの定義
一方でニートは英国での造語であり、「Not in Education, Employment, or Training」の頭文字を取った言葉です。日本語にすると「就学せず、就業せず、職業訓練も受けていない」となります。
このことから自宅にひきこもっていなかったとしても、学校や仕事、職業訓練をしていない場合は、「ニート」ということになるでしょう。また、厚生労働省によると、日本におけるニートの定義は、次のように捉えられると記されています。
高校や大学に通学しておらず、独身であり、ふだん収入になる仕事をしていない15歳以上35歳未満の個人(予備校や専門学校などに通学しているものは除く)
引用:厚生労働省「ひきこもりの評価・支援に関するガイドライン」
ただし就職を希望していて求職活動をしている人は「失業者」と定義され、ニートからは除かれるとのことです。
ひきこもりとニートの違い
ひきこもりは6カ月以上他者との関わりを持たず、概ね自宅にとどまり続けている一方、ニートは就学や就業、職業訓練を受けていない人を指します。
このことから、ひきこもりとニートには、6カ月以上他者との関わりを持っていないか、という点に大きな違いがあることがわかりますね。
また日本でのニートの定義として、15歳以上35歳未満の個人と年齢の幅が設けられている一方、ひきこもりの定義には年齢に制限はないため、15歳未満や35歳以上の人も対象となるという点に違いがあります。
ほかにも社会的支援の観点においては、ニートは就業意欲があっても家族の介護などで就職活動ができていない「家事手伝い」なども含まれていることから、「ひきこもり」よりも社会的支援の必要性は少ないと考えられています。
ニートとフリーターの違い
厚生労働省「未就職卒業者の推移」によると、フリーターの定義は次のように設けられています。
- 15~34歳の者
- 男性は卒業者、女性は卒業者で未婚の者
- 勤め先の呼称が「パート」または「アルバイト」である者
- 完全失業者のうち探している仕事の形態が「パート・アルバイト」の者
これらのことから15~34歳の人で仕事をせずに就業意欲がない人は「ニート」、パートやアルバイトをしているか、仕事をしていなくてもパートやアルバイトの仕事を探している人は「フリーター」と定義がわかれるといえます。
ニート・ひきこもりの人口・割合
ニートやひきこもりの定義を理解したところで、実際に日本にはどのくらいのニートやひきこもりがいるのかも見ていきましょう。
どのくらいの人があなたと同じように悩んでいるかを知ることで、同じ悩みを抱えている人は自分だけではないことを理解できますよ。
ニートの人口・割合
総務省によると、2020〜2023年における仕事をしていない15〜24歳、25〜34歳の若年無業者の人口と割合は、以下のとおりです。
年 | 総数(若年無業者の人口に占める割合) | 15~24歳(同年代の人口に占める割合) | 25~34歳(同年代の人口に占める割合) |
2020年 | 69万人(2.7%) | 37万人(3.1%) | 32万人(2.4%) |
2021年 | 58万人(2.3%) | 27万人(2.3%) | 31万人(2.4%) |
2022年 | 57万人(2.3%) | 26万人(2.2%) | 31万人(2.4%) |
2023年 | 59万人(2.4%) | 26万人(2.2%) | 33万人(2.6%) |
ひきこもりの人口・割合
内閣府が調査した2018年のひきこもり者の推計数は、以下のとおりです。
準ひきこもり群 | 24.8万人 |
狭義のひきこもり群 | 36.5万人 |
合計(広義のひきこもり群) | 61.3万人 |
※準ひきこもり群:ふだんは家にいるが自分の趣味に関する用事だけ外出する
※狭義のひきこもり群:ふだんは家にいるが近所のコンビニなどには出かける、または自室からは出るが家からは出ない(自室からほとんどでない場合も含む)
また、有効回答数に対するそれぞれの割合は、以下のとおりです。
準ひきこもり群 | 0.58% |
狭義のひきこもり群 | 0.87% |
合計(広義のひきこもり群) | 1.45% |
ニート・ひきこもりの年齢ごとの割合
総務省によると、2022年10月1日時点での仕事をしていない「無業者」のなかで家事をしていない人や通学をしていない人の人口数は以下のとおりです。
年齢 | 人口 |
15~19歳 | 111,000人 |
20~24歳 | 310,000人 |
25~29歳 | 311,900人 |
30~34歳 | 296,000人 |
このことから10代後半はひきこもりやニートの数は少ないものの、20代以降にかけて増加する傾向にあり、10代と比べると3倍ほどの人が家事や就学、就業をしていない状態であることがわかりました。
ひきこもり・ニートが今すぐ受け取れる支援
ひきこもり・ニートから抜け出すのであれば、受け取れる支援を活用することが大切ですよ。ひきこもり・ニートが受け取れる支援は、以下のとおりです。
たとえば、「ハローワーク」での年齢問わず専門的な資格を取得するための職業訓練コースや、「サポステ・ジョブカフェ」での15~49歳までの方を対象とした自立支援を受けられますよ。
国や自治体が支援している場合は基本的に費用は無料となるため、社会復帰をサポートしてもらいたい人は、相談してみると良いでしょう。
ひきこもり・ニートになる主な理由
ひきこもり・ニートになる理由は、人それぞれ異なります。そのため、あなた自身がひきこもり・ニートになった理由を把握しましょう。
ひきこもり・ニートになったきっかけを理解することで、社会復帰をする際に意識すべきことを見つけられますよ。
病気やケガをしたから
仕事をこなしていたとしても、病気やケガになってしまい長期の休養が必要になってしまうこともありますよね。この場合、不本意ながらも仕事を休止せざるを得なくなり、治療に専念することになります。
そしてこのようなきっかけで長い間仕事から離れてしまうと、精神的なストレスや不安を抱えてしまうケースもあり、病気やケガが回復しても社会復帰できずに、そのままひきこもり・ニートになってしまう可能性があります。
また慢性的な病気である場合は、これまでどおりの就労ができず、社会復帰に抵抗を感じてしまう可能性もあるでしょう。
仕事の自信をなくしたから
職場でのミスや上司や同僚とのトラブルが続くと、仕事に対して自信がなくなり、社会に出ることに恐怖心を抱いてしまう場合もあるでしょう。この場合、社会に対する恐怖心から仕事を辞めてしまい、そのままひきこもり・ニートになってしまうのです。
仕事に自信をなくしてひきこもり・ニートになったのであれば、小さな成功体験を一つずつ積み上げて自己肯定感を高めることが大切ですよ。そうすることで少しずつ自信を取り戻せ、社会に対する恐怖心も薄れていく可能性があります。
親族の介護・看護をしたから
ひきこもり・ニートになった原因として、親族の介護や看護に疲れてしまったことから、仕事を辞めてしまった人もいますよね。また、仕事を辞めざるを得ない状況になってしまった人もいるでしょう。
介護や看護は、精神的・肉体的にも大きな負担がかかります。そのため、仕事と並行しておこなうことは難しく、親族の面倒を見ているうちに仕事を辞めてひきこもり・ニートになってしまうケースもあるのです。
親族の介護や看病が原因でひきこもり・ニートになったのであれば、親族を福祉施設に預ける選択肢を考えたり、ほかの親族に相談したりしてみましょう。そうすることで、あなた自身の時間を今よりも確保できるようになり、社会復帰に一歩近付けるかもしれませんよ。
人間関係に疲れたから
社会に出て仕事をしていると、さまざまな性格を持った人達と関わることになります。そのため、人間関係に疲れてしまい、ひきこもり・ニートになってしまった人もいるでしょう。
人間関係に疲れてしまうと、新しい人と関わることを自然と避けてしまうようになるため、自宅にとどまりやすくなってしまいます。
もしも人間関係に疲れたと感じているなら、本音で話せる仲の良い友人などと話す機会を自分から積極的に設け、人と関わることから始めてみてください。人と関わることに慣れることで、人に対する苦手意識を少しずつでも減らせていけますよ。
人と話すのが苦手だから
ひきこもり・ニートの人のなかには、コミュニケーションに自信がないなど、人と話すのが苦手な人もいますよね。
この場合、社会に出れば上司や先輩、同僚といったさまざまな人と話しながら仕事を進めていく必要があるため、仕事自体に疲れを感じてしまいひきこもり・ニートになってしまうのです。
人と話すのが苦手でひきこもり・ニートになったのであれば、パソコンでできる仕事など、人と話す機会の少ない仕事に挑戦してみるといいですよ。
在宅でできるパソコン作業であれば、人とコミュニケーションを取る際もメールなどのやり取りで完結することが多いため、人と話さずに仕事を進められます。
ひきこもり・ニートから脱出するためのポイント3選
ひきこもり・ニートの人のなかには、1年以上社会から離れている人もいるでしょう。
この場合、就職活動で採用担当者にひきこもり・ニート期間について説明を求められるほか、すぐに退職しない決意をしっかりとアピールすることが求められます。また、いきなりフルタイム勤務をするのではなく、アルバイトや派遣社員として週3日勤務から徐々に体を慣らすことも大切です。
そこでここでは、ひきこもり・ニートから脱出するためのポイントを3つ紹介します。ひきこもり・ニートからの脱出を考えている人は参考にしてください。
正社員ではなくアルバイトや派遣から始める
前述したとおり、ひきこもり・ニートから社会復帰するのであれば、正社員からではなくアルバイトや派遣から、徐々に仕事に慣れていきましょう。
なぜなら、最初から正社員としてフルタイム勤務をしてしまうと、仕事に疲れてしまいすぐに仕事を辞めたくなってしまう可能性があるからです。社会復帰後にすぐに仕事を辞めてしまうと、「やっぱり自分には社会復帰はできない」と自己肯定感を下げる原因につながるため注意が必要です。
そのため、最初はアルバイトなどで週2~3日勤務を目標とし、日々のリズムを取り戻すことを優先して自分に合ったペースで社会復帰を目指すことが大切ですよ。
すぐに退職しないことをアピールする
職歴が数カ月以上空白の場合、採用担当者からするとその期間に何をしていたのかが気になるところです。
さらにその期間がひきこもり・ニート期間である場合、応募者が仕事に対するネガティブなイメージを持っていると考えられ、「すぐに仕事を辞めてしまうのではないか」と不安を感じるでしょう。
そのため、ひきこもり・ニート期間を採用担当者に伝えるのであれば、気持ちを切り替えてすぐに退職しない熱意をアピールすることが大切なのです。
たとえば、仕事で苦しいと感じたときの対処法や、これまでの反省点を踏まえたうえでの対策などを採用担当者に伝えてみてください。そうすることで、「ひきこもり・ニート期間をしっかりと反省したうえで、前向きに仕事に取り組んでくれる」と感じてもらえますよ。
ただし、ひきこもり・ニート期間については、正直に話す必要はありません。
職歴が空白の期間に資格を取得していたり、何かに打ち込んでいたりした場合は、それらのことについて伝えると良いですよ。
他人と比較しないようにする
人それぞれ自分のペースがあります。そのため、社会復帰をスムーズにできる人もいれば、1年以上の時間がかかる人もいるでしょう。また仕事においても、仕事が早い人もいれば遅い人もいます。
このことから社会復帰する際は、他人と比較せず自分のことに集中して仕事に取り組みましょう。
自分の人生は自分で決めるものですので、他人の人生や仕事は気にせず、一歩ずつ自分のペースで進む前向きな姿勢が大切なのです。
ひきこもり・ニートから脱出する3つの流れ
ひきこもり・ニートから脱出を考える場合、何から始めたらいいのか疑問を感じる人もいますよね。この場合、ひきこもり・ニートから脱出する流れを掴むと良いですよ。
そこでここでは、ひきこもり・ニートから脱出する流れを3ステップで解説するので、現状を変えるためにも、きちんと確認しておきましょう。
ステップ①:ひきこもり・ニートになった原因を追究する
ひきこもり・ニートから脱出するためには、まずはひきこもり・ニートになった根本的な原因を追究し、その原因にアプローチする必要があります。
というのも、原因をあやふやにしたまま社会復帰したとしても、同じような原因でひきこもり・ニートに戻ってしまう可能性が高いからです。
そのため、社会復帰を考えるのであれば、ひきこもり・ニートになった原因を明らかにしておき、同じような原因でひきこもり・ニートに戻らないような対策を練っておきましょう。
ステップ②:自分に合った仕事は何かを考える
ひきこもり・ニートになった原因を探していると、自分の特徴や弱みもわかってきますよね。
たとえば、人と話すことに疲れてしまいひきこもり・ニートになったのであれば、コミュニケーションを取ることが苦手だと考えられます。また、体力に限界を感じて体調を崩してしまったのであれば、体力に注意して仕事に取り組む必要があるといえます。
このように自身の特徴や弱点が見えてきたら、それらの特徴や弱点が致命的にならない仕事を探してみてください。
具体的には、コミュニケーションを取ることが苦手なのであれば「製造」や「警備」といった仕事が挙げられます。一方で体力に自信がないのであれば「事務」などのデスクワークが向いているでしょう。
このようにひきこもり・ニートから社会復帰する際は、自身の弱点や特徴を見つけてから、自分に向いている仕事を考えてみてください。
ステップ③:就業支援を活用しながら就職先を探す
自分に向いている仕事が見つけられたら、一人で就職活動をするのではなく、就業支援などを活用して就職活動を進めましょう。
たとえば、ハローワークで就職前に自分に合った仕事に活かせるスキルや資格を学んだり、NPO法人社会復帰支援アウトリーチで在宅ワークや簡単な仕事を紹介してもらったりなどです。
ひきこもり・ニートの人が社会復帰できるように、さまざまな団体が就業支援を実施しているので、自分に合った就業支援を活用しながら社会復帰に向けて就職活動を進めてみてください。
仕事をしないとどうなる?ひきこもり・ニートを続けた末路
ひきこもり・ニートを続けて長い間仕事をしないと、今よりも就職難易度が高くなってしまったり、自身で稼ぐ力が身に付かなかったりと将来的には暗い状況を迎えてしまいます。
ここではひきこもり・ニートを続けた末路を3つ紹介するので、今の生活を続けるとどのような状態になるのかを把握しておきましょう。
就職難易度が高くなる
ひきこもり・ニートを続けていると、その分職歴の空白期間も延びていきます。
そのため、採用担当者からは社会に馴染むのに時間がかかると思われてしまい、「扱いにくい人材」として採用を見送られやすくなります。
また、職歴が空白の期間が長いうえに、その期間に何をしていたのか不鮮明である場合、厳しいことから逃げる応募者だと思われてしまうかもしれません。
このようにひきこもり・ニートを続ければ続けるほど空白期間の長い職歴になってしまうため、採用担当者がマイナスな印象を感じてしまい、就職難易度が高くなってしまうのです。
精神的に病んでしまう
ひきこもり・ニートを続けるということは、社会との関わりを遮断し続けるということです。そのため、他人と話す機会が少なくなり、精神的に病んでしまうきっかけにつながります。
一度精神的に病んでしまうと、社会復帰する際にも支障をきたしてしまう可能性があるため、社会復帰しにくい状況に陥ってしまいますよ。
親の年金に頼るしかなくなる
ひきこもり・ニートを続けると、経済的な自立ができないため、親が定年退職した後は親の年金に頼らざるを得なくなります。
そうなると、親の年金で家族全員を養うことになるため、十分な生活水準を維持することは難しくなるでしょう。また親が亡くなった後は年金も受け取れなくなるため、さらに困難な生活を強いられることが予想されます。
まとめ
自宅にひきこもりがちな場合、自分自身がひきこもりなのか、ニートなのか疑問を感じますよね。たしかに、ひきこもりやニートは同じような意味で捉えられるケースもあるため、混同しがちです。
しかし、それぞれには明確な定義があるため、まずは自分がどちらに分類されるのかを理解しておくといいですよ。
また、ひきこもり・ニートを続けてしまうと自身で稼ぐ力が身に付かず、将来的に親の年金に頼るしかなくなります。そのため、一歩ずつでも今の生活から抜け出す努力をしていきましょう。
ひきこもり・ニートから脱出する際は、ポイントやステップを理解しながら進めることで、スムーズに脱出できる可能性もあるので、この記事を参考に社会復帰に向けて歩みを進めていきましょう。