フリーターが損しない年収はいくらなのか、気になっている人も多いのではないでしょうか。
フリーターはシフト次第で稼げるお金が大きく変わってくるような働き方ですが、一定の年収を基準として考えると、場合によっては損をすることがあります。
この記事では、フリーターが損しない年収について、いわゆる年収の壁を判断基準としながら、それぞれメリットとデメリットについて詳しく解説していきます。
また、フリーターがこれから年収を増やしていくために意識しておきたいコツについても解説しますので、お金を稼ぐ上で損をしたくないと考えているフリーターの人は、記事の内容を参考にしてみてください。
この記事の目次
フリーターが損しないために知っておくべき年収の壁
フリーターがお金を稼ぐ上で損しないためには、年収の壁という概念を知っておく必要があります。年収の壁とは、一定額以上の年収を稼ぐことによって、今まで支払いが免除されていたような税金や保険料がかかってくる基準のことを言います。
特にフリーターが損しない年収を考える上で意識しておきたい壁が、103万円と130万円の壁です。
ここではそれぞれの壁を超えるとどういった影響があるのか解説するとともに、年収を103万円、130万円に収めるメリットやデメリットについて解説していきます。
年収103万円の壁
年収103万円の壁は所得税が発生するかどうかが決まってくる基準となってきます。フリーターでも年間103万円以上の収入を稼ぐと所得税の支払い義務が発生します。
所得税とは、1月から12月までで得られた収入から経費を差し引き、それに対して所定の条件と金額に応じて控除を差し引いた金額に対して、所得税率をかけて求められる税金のことを言います。
所得税の計算をする上では控除を差し引くことになりますが、フリーターに限らずどんな人でも受けられる控除枠として「基礎控除」と「給与所得控除」の2つがあります。
基礎控除は年間48万円、給与所得控除は年間55万円差し引けることが決まっていますので、これらを立ち合わせると103万円となります。
控除を差し引いた結果、税率の計算基準となる金額が0円を下回ると所得がないとみなされ、所得税の支払い義務が発生しなくなるのです。
年収にして103万円を超えると計算上所得があると見なされ所得税が発生することから、年収103万円の壁と言われています。
フリーターが年収103万円以内に収めるメリット
フリーターが年収を103万円以内に収めるメリットは、所得税の支払いをしなくて良くなるというものが挙げられます。
所得税は年収に応じて税率が引き上がる累進課税制度を採用しているため、103万円であれば所得税率はそこまで高くありません。
所得税の支払いは、年収が103万円のフリーターであれば年間で約1万円も支払うシミュレーションになり、このお金を支払わなくて良くなるといったメリットがあります。
金銭的負担で考えると1ヵ月にして1000円も満たない水準ですので、年収103万円以内に収めるメリットとしてはそこまで大きくないと考えられます。
しかし、年収103万円以内に抑えておくと、親の扶養に入ることができます。年収103万円を超えると親の税金負担が約5万円〜17万円増えることになるため、親の扶養に入る場合は年収103万円以内に抑える方が親の負担を減らすことができます。
フリーターが年収103万円以内に収めるデメリット
フリーターが年収を103万円以内に収めるデメリットとしては、毎月稼げるお金に制限がかかってしまうことが挙げられます。
103万円を1ヵ月あたりに平均すると約85,300円となります。つまり所得税を支払わないようにするためには、1ヵ月85,300円で生活をしなければならないということです。
一人暮らしをしている場合は、地域にもよりますが収入の大半を家賃に回すことになりますので、生活をするだけでも経済的に精一杯になってしまうことが考えられます。
また、働きたくても働けない状態が続きますので、精神的衛生に対しても良い状況とは言えないでしょう。もし生活水準を上げていきたいのであれば、所得税の支払いを受け入れ、103万円の壁を越えて働くことを意識すると良いでしょう。
年収130万円の壁
年収が130万円を超えてくると社会保険上の扶養からも外れることになり、社会保険に加入する義務が発生してきます。
これは年収130万円を超えたフリーター全てが対象となり、年収130万円を超えているにもかかわらず社会保険料を支払わないということがあれば、大きなペナルティを課されることになりますので注意してください。
社会保険料として支払いが必要になってくるのは、健康保険と年金が主となってきます。
フリーターは国民健康保険に加入することになりますが、国民健康保険は住んでいる都道府県によって支払い額の計算が異なります。目安として東京に住んでいる場合は月収12万円の人で毎月およそ6,000円の支払い負担となります。
年金については、フリーターの場合国民年金に加入するのが一般的です。令和6年度の国民年金保険料の金額は1ヵ月あたり16,980円と日本年金機構で定められています。
つまり、年収130万円を超えると、毎月健康保険料と年金支払い額で約23,000円の負担となってきます。金額としても大きいので、人によっては働いているのに損をしてしまうといったこともあるでしょう。
※勤め先の従業員数や労働時間などの条件を満たすと、130万円以下でも社会保険に加入する義務は発生します。参考:厚生労働省「社会保険適用拡大対象となる事業所・従業員について」
フリーターが年収130万円以内に収めるメリット
やはり年収130万円を超えてくると、毎月20,000円弱の社会保険料の支払いが必要になって来るというのは大きなデメリットです。
フリーターがシフトを調整して年収を130万円に収めることができれば、毎月の社会保険料支払いをする必要がなくなるという点はメリットと言えます。
フリーターが年収130万円以内に収めるデメリット
フリーターが年収130万円以内に収めることで、親の扶養に入り続けなければならないといったデメリットがあります。
基本的に扶養に入り続けることは、扶養に入っている自分にとっては金銭的負担を大きく減らすことができるため、メリットしかないと言えます。
一方、扶養に入ることで親の負担が増えるというデメリットがあります。
扶養控除という一種の節税のようなものを親は受けることができますが、扶養に入れている子供の分の健康保険料等の支払い義務が発生するということは避けられません。
フリーターが損しない年収をケース別に解説
フリーターが損をしない年収を、以下のケース別に解説していきます。
- 親の扶養に入り続けたい場合
- 既に親の扶養から外れて自立している場合
- 扶養を抜けるか迷っている場合
- 扶養を抜ける場合は最低でも年収150万円以上を狙うべき
ここでいう「損」とは、税金や社会保険料を支払わなければならないことを指します。
トータルで見たときには、税金や社会保険料を支払ってでも稼ぎを増やしたほうが良い場合もありますので、あらかじめ認識した上で解説を読むようにしてください。
親の扶養に入り続けたい場合
親の扶養に入っているフリーターで、これからも親の扶養に入り続けて社会保険料の支払いを避けたいと考えている場合は、社会保険の加入条件を満たさない範囲で収入や働き方を調整する必要があります。
社会保険の加入条件①
- 従業員数51名以上
- 週の勤務時間が20時間以内
- 給与が月給88,000円以上
- 2ヶ月を超えて働く予定がある
- 学生ではない
社会保険の加入条件②
加入条件①を満たさない場合かつ年収130万円を超えて社会保険上の親の扶養を外れる場合
先ほど解説した通り、月収にして12万円以上を目安に働いていると、毎月20,000円弱の社会保険料支払い義務が発生します。言い換えれば、働いて稼いだ分のうち20,000円が丸々自分のお金ではなくなってしまいますので、人によっては損をしていると感じてしまうことがあるでしょう。
既に親の扶養から外れて自立している場合
既に親の扶養から外れて経済的に自立していて、かつ年収が130万円を超えているのであれば、できるだけ稼いだ方が良いと言えます。
確かに年収が増えると、所得税の税率が上がったり支払う社会保険料が増える可能性があるものの、支払い額より収入の方が増えることがほとんどのため、稼いだら稼いだ分得できると言えます。
ただし、配偶者がいる場合は他の壁に注意する必要があります。
例えば年収150万円を超えてくると、配偶者特別控除が満額で適用されなくなることがあります。例えば夫の年収が400万円、妻の年収が140万円の場合、夫は配偶者特別控除の38万円を満額適用されるため、支払う税金の額が安くなります。
もしこのケースで妻が150万円以上の年収になった場合、夫が受けられる配偶者特別控除の金額が減ってしまうため、実質的に家計の支払う税金額が増えかねません。
扶養を抜けるか迷っている場合
扶養を抜けるか迷っている場合、年収は103万円から130万円までの間で止められるようシフトを組んでおくことをおすすめします。
年収の壁は1円でも超えてしまえばそれぞれ各種税金や社会保険料の支払い義務が発生してきます。うまくシフトコントロールできないと思わぬ支出につながることがありますので、余裕を持って年収の調整をしておくと良いでしょう。
扶養を抜ける場合は最低でも年収150万円以上を狙うべき
もし扶養を抜けて稼いでいく場合は、最低でも年収150万円以上は稼げるように働くことをおすすめします。
年収130万円付近の場合における税金や社会保険料の支払い額をシミュレーションしてみると、以下の通りとなります。
年収 | 支払う税金(年間) | 支払う社会保険料(年間) | 実質的な手取り(年間) |
---|---|---|---|
120万円 | 32,000円 | 0円 | 1,160,000円 |
129万円 | 46,000円 | 0円 | 1,237,000円 |
130万円 | 19,000円 | 190,000円 | 1,090,000円 |
140万円 | 32,000円 | 200,000円 | 1,160,000円 |
150万円 | 45,000円 | 210,000円 | 1,232,000円 |
このように、年収129万円の方が年収140万円よりも実質的な手取りは高いといった結果になります。
働いて稼いでる金額が多いのにもかかわらず、社会保険料の支払い負担が出てきてしまうことから損をしてしまうと言えます。
したがって親の扶養から抜けて稼ぐ場合は、最低でも年収で150万円、月収で12.5万円以上は稼ぐように意識してみてください。
損を気にせず年収を増やしたいフリーターが取るべき行動
税金や社会保険料等で損をすることを気にせず年収を増やしていきたいと考えるフリーターは、以下のような行動を取ることをおすすめします。
- バイトを掛け持ちして働く時間を増やす
- スキルや資格を身につける
- 正社員就職する
それぞれ詳しく解説します。
バイトを掛け持ちして働く時間を増やす
支払うお金を気にせず稼いでいきたいフリーターが真っ先にできることとしては、バイトを掛け持ちして働く時間を増やすことです。
働くバイトにもよりますが、シフトに入れる人数や時間にはあらかじめ上限が定められていると考えると、1つのバイト先で稼げる収入には限界があると考えられます。
その状況でシフトに入る時間を増やしてほしいことを伝えても、物理的にシフトに入ることができず、年収を増やすことが難しくなります。
働く時間を増やすためには、バイトを掛け持ちすることが選択肢として考えられます。
自分自身でうまくスケジュールをコントロールしないと体力的にも厳しくなりますので、自己管理能力が求められますが、金銭的に余裕を持った生活を実現できるでしょう。
スキルや資格を身につける
フリーターが年収を増やそうとする場合、働く時間を増やす以外にも、そもそも時給が高いバイト先に採用してもらうことが選択肢として考えられます。
ただし、時給が高いバイト先はある程度高いスキルや能力が求められることに加え、採用倍率が高まる傾向にありますので、アピールできるポイントを増やす必要があると言えるでしょう。
そのためにも、スキルや資格を身に付けてバイト先の面接でアピールできるポイントを増やすことが重要になってきます。
どのようなスキルや資格が評価されるかは応募するバイト先によって異なりますが、共通してコミュニケーション能力が求められることが多いため、コミニケーション能力に関するアピールを面接で行うことがおすすめです。
正社員就職する
一般的に、フリーターよりも正社員として働いた方が収入が高くなるだけでなく、今後の人生において昇給や昇格、賞与がもらえるといった観点で稼ぎを増やすことが期待できます。
したがって、損を気にせず年収を増やしていきたいフリーターの人は、正社員として就職することを検討してみてください。
フリーターを続けていて正社員経験がなかったとしても、現在は多くの企業で人手不足に困っていますので、きちんと面接準備ができれば正社員デビューすることは不可能ではありません。
また、正社員就職することで厚生年金に加入できるため、将来もらえる年金額を増やせるといったメリットもあります。
将来を見て損をしない働き方を実現したいのであれば、正社員を目指して就職活動を進めましょう。
フリーターが年収を増やすために就職するコツ
フリーターが年収を増やすためには、正社員として就職することがおすすめです。
ただ、闇雲に就職活動していても正社員になることが難しいことが考えられますので、以下のようなコツを意識しましょう。
- 自己分析をする
- 業界研究や企業研究に取り組む
- 面接対策をする
- 就職エージェントを活用する
それぞれ詳しく解説します。
自己分析をする
就職活動を進めようとする際は、まず自己分析をするようにしましょう。
自己分析とは今までの経験を棚卸しし、強みと弱みを言語化することで、自分に向いてる求人の特徴を理解することを言います。
正社員を目指す上では、自分の強みを活かせるかどうかが非常に大切になってきます。
面接におけるアピールポイントだけでなく、就職後に短期離職を防ぐためにも自己分析に取り組むようにしてください。
業界研究や企業研究に取り組む
自己分析ができた後は、自分が興味を持てる業界や企業の特徴を知るためにも、業界研究と企業研究に取り組むようにしましょう。
正社員として働く場合、同じ仕事であっても勤める会社が属する業界によって、働き方や待遇が変わってくることがあります。まずはどういった業界が存在し、それぞれの業界にはどういった特徴があるのかについて、ネットや書籍を読んで知識をインプットしておきましょう。
また、気になる企業を見つけられたら、その企業が掲載している求人票や企業ホームページ、就職口コミサイトを確認して、企業研究に取り組むことも意識してみてください。
企業研究ができていれば就職後にミスマッチを感じるリスクを減らせますので、正社員として長く働いていくことも期待できます。
面接対策をする
フリーターが正社員を目指す際は、面接対策を入念に行うようにしてください。
特に空白期間が長いフリーターだと、正社員になりづらくなるといった傾向も見られますので、自分のアピールポイントを言語化するだけでなく、なぜその企業を選んだのかといった志望動機を作り込んでおきましょう。
また、面接対策として面接の雰囲気を知って、焦らずに受け答えできるようにするためにも模擬面接などに取り組んでおくことがおすすめです。
模擬面接はハローワークや就職エージェントなどで受けることができます。
就職エージェントを活用する
正社員になれる可能性を高めたいのであれば、就職エージェントを活用することがおすすめです。
就職エージェントに登録することにより、自分専任のアドバイザーが担当につき、就職活動に関する幅広いサポートを受けられるようになります。
特に自分に向いてる求人を紹介してくれますので、求人を比較検討する手間を省けるというのは嬉しいポイントです。
就職エージェントを利用する際は、フリーターの就職支援実績が多いサービスを選ぶようにしましょう。
フリーターから正社員になる方法、コツについて知りたい方は、以下の記事を読んでみてください。
まとめ
フリーターが損をしない年収としては、自分が置かれている環境や、自分がどうしていきたいのかという意思によって変わってきます。
もし親の扶養を抜けて稼いでいきたいと考えるのであれば、最低でも年収は150万円以上稼ぐようにしましょう。
また、年収を増やしていきたい場合は正社員として就職することがおすすめです。
就職活動を自分1人で進めていく自信がないようなフリーターは、就職エージェントのサポートを受けることを検討してみてください。