会社を退職したいと考えているものの、いきなり辞めるのはリスクが高く、とりあえず休職を考えているのではないでしょうか。
結論、退職するつもりで休職するのは悪いことではありません。
むしろ、退職前に休職した方が冷静に今後を考えられるでしょう。
本記事では休職したまま退職した方がいい理由や、転職活動を行う際にやるべきことを解説しています。
退職時の伝え方も例文付きで紹介しているので、できるだけ慎重に行動したい方はぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
退職するつもりで休職するのは問題ない
退職するつもりで休職するのは、法律上問題ありません。
正社員のように雇用期間が定められていない場合は、休職しているかどうかにかかわらず、いつでも退職を申し入れられるからです。
第627条 当事者が雇用の期間を定めなかったときは、各当事者は、いつでも解約の申し入れをすることができる。
また、契約社員や派遣社員のように雇用期間が定められている場合は、以下のような決まりがあります。
第628条 当事者が雇用の期間を定めた場合であっても、やむを得ない事由があるときは、各当事者は、直ちに契約の解除をすることができる。
雇用期間が定められている場合は、基本的に契約期間中の退職はできません。
しかし「やむを得ない事由」があれば満了前に退職できます。
「やむを得ない事由」とは、労働条件が異なっていた時や自身のケガ・病気、家族の看病などを指すので、退職するつもりの休職は該当しないでしょう。
また、休職中の転職活動も禁止されていません。
会社に対して悪いことをしているような気持ちになるかもしれませんが、特に気にする必要はないようです。
休職したまま退職した方がいい理由3選
会社が嫌になっていきなり退職すると、あとで困る場合があります。
退職する前に休職した方がいい理由は、以下の3つです。
休職中も給料が支払われる場合があるため
いきなり退職すると無収入になるリスクがあるため、できるだけ貯金を切り崩したくない方は、まず休職するのをおすすめします。
休職中も給料が出る場合があるからです。
しかし、休職制度は企業ごとに内容が異なるため、必ず給料が支払われるとは限りません。
休職中は3か月間だけ給料を支給するといった会社もあれば、一切支給されない会社もあります。
まずは現職の就業規則を見て、休職中の給料がどうなっているかチェックしましょう。
社会保険料を負担してもらえるため
休職中でも、社会保険料はあなたと会社が支払います。
退職すると保険自体を国民健康保険と国民年金に切り替えたうえで、全額自己負担で料金を支払わなければならないので、会社が保険料を半分負担してくれる環境はありがたいはずです。
ただし、休職中に給料が発生しない会社でも、今までと同じ額の社会保険料を払い続けなければなりません。
就業規則を確認しないまま休職すると、思っていたよりも早く貯金が尽きてしまう可能性があるので、あらかじめ内容をチェックしておきましょう。
また、休職理由が病気やけがであれば、休職中に傷病手当金を受け取れる可能性があります。
4日以上仕事に就けなかった場合は、傷病手当金の申請書を作成して協会けんぽへ提出しましょう。
退職したい気持ちが本当か確かめられるため
休職すると、退職したい気持ちが本当か確かめられます。
とくに、メンタルが落ち込んでいる時こそ休養が必要です。
冷静になって考えを整理すれば、復職したいと思えるかもしれません。
もう一度会社に戻りたいと思った場合、休職していればスムーズに復職できるはずです。
反対に、いくら休んでも退職への思いが変わらなければ、上司に「会社を辞めたい」とはっきり伝えられるでしょう。
復職せずに退職する時の注意点3選
休職してから退職しようと決断した時こそ、知っておきたい注意点があります。
「こんなはずではなかった」と後悔しないよう、以下3つを頭に入れておきましょう。
休職期間中は有給休暇を消化できない
復職せず退職する時は、休職期間中の有給消化ができないと理解しておきましょう。
有給休暇は労働義務がある日を対象としているので、休職中は適用できないからです。
休職発令により労働義務が免除されている場合は、年次有給休暇を請求する余地はなく、請求権は行使できない。
引用:大阪府「34 休職と休業《休職期間中の年次有給休暇の取得》」
有給休暇を使い切ってから退職したい場合は、休職する前に消化するのをおすすめします。
休職期間は勤続年数に含まれないケースがある
復職しないまま退職する際、休職期間は勤続年数に含まれないものだと認識するのをおすすめします。
勤続年数のルールは法律で定められていないからこそ、就業規則に従わなければいけません。
しかし、就業規則に何も書いていなくても、勤続年数は実際に働いていた期間だと考える企業が多いようです。
休職期間を勤続年数としてカウントしない方が、無難と言えます。
履歴書や職務経歴書には「休職している」と記載したうえで、勤続年数を調整するようにしましょう。
メンタルの不調で辞めると転職で不利になる場合がある
休職理由がメンタルの不調であれば、転職で不利になる場合があります。
「新しい会社でも気分が落ち込んでしまうのではないか」と、不安に思われるからです。
しかし、転職のために嘘をつく必要はありません。
「メンタルの不調で休職していたが、今は仕事をしても問題ない」と正直に伝えた方が、誠実な印象を与えられます。
もし「今は仕事をしても問題ない」と言い切るのが怖い場合は、業務に支障をきたさないと伝えたうえで、月に何回通院する必要があるか話しましょう。
嘘をつくとバレた時に印象が悪くなる可能性が高いので、状況をありのまま伝えるのをおすすめします。
休職中の転職活動でやるべきこと4選
休職中は転職活動を行えますが、今の職場や応募先への配慮が欠けていると、トラブルにつながる場合があります。
休職中の転職活動でやるべきことは、以下の4つです。
就業規則で転職活動が禁止されていないか確認する
休職中に求人へ応募しようと考えているのであれば、まず就業規則で転職活動が禁止されていないか、あらかじめチェックしておきましょう。
休職中の転職活動が禁じられている場合、他社への応募がバレると就業規則違反とみなされ、上司から呼び出しがかかる可能性があります。
また、就業規則で転職活動が禁止されていなくても、あなたが休職中に他社の選考を進めていると会社の人が知ったら、怒る場合もあるでしょう。
噂は広まりやすいので、社内外の人に転職していると話したり、SNSで転職にまつわる内容を投稿したりするのは控えるようにしてください。
応募先に休職中だと伝える
転職活動をする際は、応募先に休職中と伝えましょう。
休職していると伝えないまま選考を進めると、いざバレた時に「都合の悪いことを隠そうとしているのではないか」と疑われる場合があります。
最悪、内定取り消しや解雇の可能性があるので、転職活動の労力と時間を無駄にしないためにも、正直であることが重要です。
また、応募先によってはリファレンスチェックを採用前に行っている場合があります。
リファレンスチェックとは、前職での働きぶりや人となりなどを、前職の関係者に確認する調査のことです。
休職中だと言わずに転職活動を進めた場合、リファレンスチェックによって現職に他社選考を進めているとバレてしまう恐れがあります。
休職中だと事前に言わないと大問題になる可能性があるので、応募先には正直に現状を伝えましょう。
転職サービスに経歴を掲載する時は現職の情報を伏せる
転職サイトなどに経歴を登録する際は、現職の情報を伏せましょう。
登録情報を見た企業が、良いと思った候補者に対してスカウトメールを送信する場合があります。
今の職場の方が登録情報をチェックしてしまったら、あなたが転職サイトに登録しているとバレてしまうはずです。
転職活動をしているとバレたくない時は、以下のルールに従って経歴を記入しましょう。
- 企業名を「株式会社○○」と伏字にする
- 現職でしか使わないような専門用語は書かない
また、転職サイトによって現在の勤め先をブロックできる機能があります。
安全に転職活動を進めたい方は、登録したらすぐに現在の勤め先をブロックするようにしてください。
応募先に不安を与えないようアピールする
休職中の転職活動では、応募先に不安を与えないようアピールするのが重要です。
一緒に働きたいと思ってもらうためには、以下2つを意識しましょう。
- 休職理由をネガティブのまま終わらせない
- 意味のある休職だったとアピールする
ただし、嘘をついてまで休職理由をポジティブにする必要はありません。
深堀りされると回答がしどろもどろになり、印象が悪くなる場合があるからです。
「休職して改善策が分かったので、次また同じような状況になっても対応できる」と企業へ伝えると、休職が意味のあるものだと認識できます。
休職から退職を進める時の流れ4ステップ
休職は、就業規則に書いてある流れに従って申請する必要があります。
具体的な流れは、以下の4ステップで解説します。
①退職の意思表明を会社に伝える
退職の意思表明をする前に、まず就業規則をチェックしましょう。
就業規則の内容にもよりますが、退職はだいたい1ヶ月前に申告するのが一般的です。
企業はあなたの代わりになる方を採用する必要があるので、退職の意思が固まったらすぐ上司に伝えるのをおすすめします。
また、会社へ退職の意思を伝える際は、休職に応じてくれた上司に感謝と謝罪の気持ちを述べましょう。
どうやって伝えたらいいか分からない場合は「休職のまま退職する際の伝え方2パターン」を参考にしてみてください。
②退職の手続きを行う
退職手続きは、会社から依頼された内容に従いましょう。
主に、以下のような手続きを進めます。
- 退職届・秘密保持契約書の提出
- 社員証やパソコンなど貸与品の返却
- 健康保険証の返却
健康保険証は退職日を過ぎたら使えません。
退職後は勤めていた会社へ、健康保険証をすみやかに返却しましょう。
③退職後に必要な書類を受け取る
退職後は、今後の手続きに必要な書類を手渡しまたは郵送で受け取ります。
受け取る書類の種類は、以下のとおりです。
- 離職票
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳(会社が元々預かっている場合)
- 源泉徴収票
次の職場へ転職する際に退職証明書が必要であれば、勤めていた会社に連絡して発行してもらわなければいけません。
④保険と年金の手続きを行う
退職翌日には、元々適用されていた社会保険の資格が喪失します。
つまり、退職後はあなた自身で保険や年金の手続きを行わなければいけません。
保険と年金の手続きは、以下を参考にしてみてください。
退職後の区分 | 手続き窓口 | |
---|---|---|
保険 | 以下を選択・任意継続健康保険・国民健康保険・ご家族の健康保険 | ・任意継続健康保険:加入していた健康保険の保険者・国民健康保険:住んでいる場所の国民健康保険担当窓口・ご家族の健康保険:ご家族が加入する健康保険組合 |
年金 | 国民年金第1号被保険者※配偶者の被扶養者になる場合は国民年金第3号被保険者 | ・第1号被保険者:住んでいる場所の市区役所もしくは町役場・第3号被保険者:配偶者の事業所 |
また、すぐ転職する予定がなければ、失業保険を受給できる場合があります。
申請には、書類の提出と求職活動の実績証明が必要です。
退職後の金銭面に不安がある方は、ハローワークで失業保険について相談してみましょう。
【例文あり】休職のまま退職する際の伝え方2パターン
休職のまま退職する時は、感謝とお詫びの気持ちを伝えるのがコツです。
「辞めます」とだけ伝えると、冷たい印象を与えてしまいかねません。
休職を快諾してくれた感謝と復職できないことへの謝罪を、退職の意思を伝える際に述べるようにしましょう。
メールや電話での伝え方に迷った場合は、以下の例文を参考にしてみてください。
メールでの伝え方
休職のままメールで退職を伝える際は、以下の例文をもとに文章を作成しましょう。
宛先 | 〇〇 |
件名 | 今後の進退について |
ご無沙汰しております。△△部の□□です。 長期にわたる休職で、ご迷惑をおかけしており申し訳ございません。いつもご配慮いただきありがとうございます。 突然の申し出で大変恐縮ですが、2020年10月末での退職を希望いたします。思った以上に体調が回復せず、復帰が困難であると判断いたしました。何卒ご理解いただけますと幸いです。 本来であれば直接お伺いしてご挨拶すべきではありますが、メールでのご連絡となりましたことを深くお詫び申し上げます。また、お世話になった皆様には感謝の気持ちでいっぱいでございます。誠に勝手ではございますが、何卒宜しくお願いいたします。 |
メールで退職を伝える際は、丁寧な文章作りを心がけるようにしましょう。
くだけた文面のまま送信すると、本気で退職したい意思が伝わりづらくなります。
また、送信前は送り先や文章に誤りがないか、確認してから送るようにしてください。
誤字脱字が多ければ、適当な印象を与えかねません。
一文字ずつ読み直したり、音読したりして最終チェックを怠らないようにしましょう。
電話での伝え方
休職中に電話で退職を伝える際は、以下の例文を参考にしてみてください。
電話で退職を伝える際は、忙しい時間の連絡を避けるようにしましょう。
とくに、出社してからの1時間や、お昼休憩後の1時間は忙しい傾向にあります。
業務時間の中でも、慌ただしくないタイミングを狙って連絡するのがおすすめです。
また、退職を申し出る前に、休職で職場に負担をかけていることへのお詫びを伝えるようにしましょう。
いきなり「退職したい」とお願いすると、配慮が足りていないと思われる可能性があります。
円満に退職したい方こそ、相手への思いやりを持ったうえで、意思をはっきり伝えることが重要です。
退職するつもりで休職する際によくある質問3選
退職するつもりで休職する際によくある質問は、以下の3つです。
休職中に退職を伝えるタイミングはいつ?
休職中に退職を伝える場合は、就業規則に書いてある期日までに退職を申し出るようにしましょう。
2週間前と記載している会社もあれば、1か月前までに退職を伝えなければならないと記載している会社もあります。
ただ、あなたが復職しないと分かった場合、会社はあなたの代わりになる人材を雇わなければいけないはずです。
退職までの期間が短ければ、急ピッチで採用を進めなければなりません。
会社に負担をかけたくない方は、退職意思が固まった段階ですぐ上司に思いを伝えるようにしましょう。
休職か退職で迷った時はどうしたらいい?
職場の人間関係や仕事に関して悩みを抱えているのであれば、まず休職をおすすめします。
疲れが溜まっている時は、冷静な判断ができません。
しっかり休養を取って考えを整理できれば「もう一度頑張ってみよう」と前向きに考えられる場合があります。
また、休みを取っても退職への思いが変わらなければ、強い気持ちで上司に辞めたいと伝えられるでしょう。
メンタルの不調が原因で休職したら自然退職はできる?
就業規則で「休職期間満了後は自動的に退職になる」と書いている場合は、自然退職になる可能性があります。
ただし、休職した原因が改善されているのであれば、退職ではなく復職になるはずです。
自動的に退職になるのは、あくまでも状況が改善されていない時のみと認識しておきましょう。
また、就業規則によっては自然退職ではなく、解雇になる場合もあります。
解雇扱いになると次の転職で不利になる可能性があるので、休職期間満了後はどうなるのか、事前に就業規則をチェックしておきましょう。
まとめ
退職するつもりで休職するのは、法律上問題ありません。
会社によっては休職中に給料が支払われる場合があるので、ゆっくり体と心の調子を整えられるでしょう。
しかし、休職制度は企業ごとにルールが決まっています。
給料が出ると思い込んで休職したものの、実際は無給だったというケースもあり得るので注意が必要です。
休職を検討する場合は、まず就業規則をチェックしましょう。
会社のルールに従って行動していれば、トラブルを未然に防げます。
そして、転職活動を行う際は応募先にも休職中と正直に伝えてください。
今の職場にも応募先にも誠意ある行動を示した方が、堂々とした気持ちで次のステップへと進めるはずです。
こんな人におすすめ!
- 自分に合った仕事や場所を見つけたい
- ワークライフバランスを重視したい
- 会社に属する安定ではなく、能力/スキルの獲得による安定を手にしたい
お疲れ様です。〇月より休職させていただいております□□です。
ご迷惑をおかけしてしまい、申し訳ございません。
今後についてご相談できればと思い、ご連絡いたしました。
ただいま、お時間よろしいでしょうか。
△月に復職予定でしたが、体調の回復が見込めず復帰が難しいと判断いたしました。
突然の申し出で大変恐縮ですが、△月いっぱいでの退職をお願いできれば幸いです。
本来であれば出社してお伝えすべきではありますが、お電話という形となってしまい、大変申し訳ございません。
お手数おかけいたしますが、何卒宜しくお願いいたします。