勇気を振り絞って休職を伝えたにもかかわらず「休職するなら退職しろ」と上司に言われ、どうしたらいいか分からないと悩んでいるのではないでしょうか。
結論、退職しろと言われても応じる必要はありません。
本記事では、退職を促されても無視していい理由や、なぜ上司が「休職するなら退職しろ」と言ったのかを解説します。
休職と退職のメリット・デメリットもそれぞれ紹介しているので、判断に迷った時はぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
「休職するなら退職しろ」と言われても応じる必要がない理由2選
「休職するなら退職しろ」と言われたとしても、応じる必要はありません。なぜなら、就業規則で休職制度が設けられているのであれば、自分の意思で休職制度を利用することができるからです。また、退職を強要する行為は違法にあたります。
退職しなくてよい理由を、注意点を交えながら詳しく解説します。
休職制度を利用する権利があるから
「退職しろ」と言われても応じなくていい理由は、休職制度を利用する権利があるからです。
休職制度が設けられている会社の従業員は、自分の意思で制度を利用するかどうか決められます。上司の勝手な判断で、休職の申し出を断ることはできません。
ただし、従業員が以下の要件を守っていなければ、休職制度を利用できない場合があります。
- 休職の要件を満たしていない
- 診断書など証明書類が提出されていない、または書類に不備がある
- 休職日数の上限を達している
休職の要件や何の書類が必要かチェックしたい場合は、まず就業規則を確認しておきましょう。
度を超えた退職の強要は違法にあたるから
上司に休職相談をして「退職しろ」と強要されたのであれば、違法にあたる場合があります。
休職条件を満たしていれば制度を利用できるので、上司からの強い言葉を真に受ける必要はありません。
もし、退職を強く求められた場合は、以下のように対処するのをおすすめします。
- 退職を勧められても断り続ける
- ボイスレコーダーで録音するなど証拠を残す
- 労働局や弁護士に相談する
ただし、会社が「退職した方が良いのではないか」と提案すること自体は、何も問題ではありません。
上司からのアドバイスに納得できる部分があれば取り入れて、納得できない部分があれば聞き入れないようにしましょう。
「休職するなら退職しろ」と言われる理由3選
「休職するなら退職しろ」と言われると、上司に嫌われているのかもしれないと思う方もいるはずです。
しかし、実際は本当に辞めてほしいわけではなく、休職だと企業の負担が大きくなるので退職を促している場合があります。
詳しい理由は以下の3つをご覧ください。
休職中も給料を支払わなければいけない場合があるから
会社が「休職するなら退職しろ」と伝える理由は、休職中の従業員にも給料を支払わなければいけない場合があるからです。
本来、会社は休職中の従業員に給料を支払う必要はありません。
しかし、就業規則によって、休職者に対しても給料を支払うと決まっている場合があります。
会社を辞める方は退職日までの給料しか発生しないからこそ、働いていなくても給料が出る長期休職者はコストがかかると認識しているはずです。
金銭面に余裕のない会社は「なるべくコストをかけたくない」という思いから、退職を促している可能性があります。
社会保険料を負担しなければいけないから
「休職するなら退職しろ」と言われる理由は、休職中の従業員の方にも社会保険料を負担しなければならないからです。
休職中で働いていない期間であっても社会保険料は変わらず、企業と従業員で折半することになるため、コストがかかると思われても仕方ありません。
一方、休職せずに退職した場合は、退職日の翌日が社会保険の資格喪失日となりますです。
休職者のように社会保険料を負担し続ける必要がないので、企業としては退職をおすすめしたくなるのでしょう。
人事側の負担が増えるから
従業員が休職する場合は、人事側の負担が増える傾向にあります。
就業規則に基づいて、手続きを正確に進めなければならないからです。
休職者に対して人事がやるべきことは、以下を参考にしてみてください。
- 休職者への現状確認
- 必要であれば休職者から診断書を回収
- 休職制度の説明
- 休職中の連絡対応
- 復職に向けたサポート・手続き
また、休職から退職に至った従業員がいるのであれば、新たな人材を採用する場合があります。
人事は採用活動も行っているので、休職者が発生すると負担が大きくなりやすいポジションと言えるでしょう。
もし、上司が人事の仕事を理解していれば、休職者への対応が大変だと分かっているはずです。
あなたの話を聞いて「休職しても最終的に退職しそうだ」と思った上司は、人事の負担を考慮したうえで、退職を促す場合があります。
退職のメリット・デメリット4選
「退職しろ」と言われて動揺したものの、本当に退職した方がいいのか不安になった方もいるでしょう。
退職にはメリットとデメリットがあるので、見比べながらどうするかを選択してみてください。
退職のメリット①復帰への心配がなくなる
退職すれば「復帰する際はどうしたらよいか」と考える必要はありません。
嫌な上司や同僚ともう会わなくてすむので、すがすがしい気持ちになる人もいるはずです。
休職して間もない頃も、しばらくは会社の人と顔を合わせる機会がないので、のんびり心を落ち着かせられます。
しかし、休職期間が終わりに近づくにつれて、以下のような気持ちになるでしょう。
- 周りから変な目で見られないだろうか
- 以前と同じように仕事ができるだろうか
状況が大きく変わっていたらどうしたらいいのか
不安な気持ちが大きくなると1日中復帰について考えたり、眠れなくなったりする場合があります。
退職を決断するだけで、もやもやとした悩みを抱えずにすむでしょう。
退職のメリット②すぐに転職に切り替えられる
退職すると、転職に向けてすぐ気持ちを切り替えられます。
仕事のモチベーションが下がっていた方も、本格的に転職活動を開始すれば、新たな仕事へ興味を抱くはずです。
休職している時は復職という選択肢があるからこそ、本当に転職すべきかじっくり考えられます。
ただ、悩んでいる間も時間は進んでいるので、一人で悩み続けているとなかなか行動に移せません。
新しい仕事にチャレンジしたい方や、環境を変えて仕事したい方は、退職をきっかけに良い企業と巡り合える可能性があります。
退職のデメリット①収入が途絶える
退職すると収入が途絶えてしまうので、早く次の職場を見つけなければ、貯金は早く尽きてしまいます。
退職すると安定的な収入はなくなりますが、基本手当(いわゆる失業手当)の申請が可能です。
受給期間は基本的に離職日の翌日から1年間なので、その間は収入がなくてもお金に困ることはないでしょう。
しかし、転職先が決まっていなければ、毎月の給料はいつまで経ってももらえません。
「失業手当があるから大丈夫」と安心していると、万が一転職活動がうまくいかなかった際に、大変な思いをする場合があります。
退職してゆっくり休養するのも大事ですが、転職活動はコツコツ行うようにしましょう。
退職のデメリット②空白期間が長いと転職が難しくなる
退職してから転職するまでの期間が長いと、転職が難しくなる傾向にあります。
転職活動を開始してから入社までの期間は、だいたい3か月かかるのが一般的な考え方です。
3か月以上空白期間がある方に対して、企業は「転職先が決まらないのは何か問題があるのではないか」と懸念を抱く場合があります。
ちなみに、休職中は働いていなくても会社に属しているので、空白期間という扱いにはなりません。
休職で一時的に休みを取ったとしても、また復職して問題なく働いていれば、転職活動をする際にマイナスだととらえられないでしょう。
退職後しっかり休みを取ってから転職活動を始めたい方は、選考対策を万全にしておくと、自信を持って自分をアピールできるようになります。
休職のメリット・デメリット4選
上司から「休職するなら退職しろ」と言われて退職を考えたものの、やはり休職したい気持ちが強い方もいるはずです。
休職のメリットとデメリットを以下をご覧ください。
休職のメリット①会社に所属している安心感がある
休職のメリットは、会社に所属している安心感があることです。
退職してしまうと「もう一度職場に戻りたい」と思っても、なかなか引き返せません。
休職を選んだからこそ、復職という選択肢が手に入ります。
また、休職中に給料が支給される会社もあるので、金銭面に余裕がない方も安心です。
ただし、給料が出ない会社もあるので、くわしくはあなたの会社の就業規則をチェックしてみてください。
いきなり退職すると収入源がなくなるので、慎重に行動したい方は休職がおすすめです。
休職のメリット②ゆっくり今後について考えられる
休職すると、ゆっくり今後について考えられます。
仕事に追われている方は、目の前のタスクをこなすのに必死です。
今後のキャリアについてじっくり考える機会は、なかなか持てないでしょう。
退職すると仕事から離れられるものの、空白期間が長くならないよう転職活動を進めなければいけません。
状況によっては慌ただしく選考を進めなければいけない場合もあるので、退職したからといって、ゆったりとした時間を過ごせるわけではないようです。
休職に関しても期間は設けられていますが、復職すればキャリアは途絶えないので、自分のペースで今後を考えられます。
心に余裕のある状態で将来の方向性を定めたいのであれば、まずは休職制度を利用して時間を作るのが大事でしょう。
休職のデメリット①給料が出ない場合がある
基本的に休職中は給料が支給されませんが、休職制度の内容は会社ごとに異なるので、給料がもらえる場合もあります。
「休職中でも給料は入ってくるから」と思い込んでいると、あとで痛い目を見るでしょう。
また、無給で働いている休職者であったとしても、社会保険料は払い続けなければなりません。
貯金が減っていく様子を目の当たりにしたら、早く働かなければならないと焦るはずです。
休職中の給料がどうなっているか心配な方は、まず就業規則をチェックしてみてください。
事前に休職中の給料や社会保険料の支払いについて知っておけば、貯金額を照らし合わせながら、どう決断すべきかを考えられるでしょう。
休職のデメリット②昇進が難しくなる場合がある
休職すると、昇進が難しくなる場合があります。
人事評価に遅刻や欠勤を組み込んでいる会社だと、休職がマイナスに働く可能性があるからです。
コツコツ休まず働いている方は仕事に費やしている時間が長いので、その分評価されるのは当然と言えるでしょう。
また、昇進すると部下や数値管理を任される場合があります。
過去にメンタルの不調で休職した方を昇進させると、責任の重さからふたたび休みを取ってしまうかもしれません。
会社は安心して仕事を任せられる方を昇進させたいはずなので、気持ちが不安定になりやすい方の昇進は時間がかかるでしょう。
しかし、結果を出していれば昇進できる会社もあるので、休職したからといってキャリアアップができないというわけではありません。
それでも、休職すると周りの方があなたの仕事を巻き取らなければいけないので、復職後は信頼を取り戻せるよう挽回する必要があります。
退職か休職で迷った時に判断する基準2パターン
退職と休職のメリット・デメリットを知って、自分の中ではだいたい答えが出ていても、本当に決断して良いのか迷う方もいるはずです。
判断に迷ったら、以下の基準を参考にしてみてください。
退職を選んだ方がいいパターン
退職を選んだ方がいいパターンは、あなたがいくら頑張っても状況が改善されない場合です。
たとえば残業時間の長さが原因で、退職と休職を迷っていたとしましょう。
休職で日頃の疲れを癒したとしても、復職後の業務量が多かったり、残業するのが当たり前な環境だったりする場合があります。
上司に仕事の量を調整してもらえれば、復職後も残業なしで働けるはずです。
しかし、定時で帰っている人がいない職場の場合、復職してすぐに残業なしで帰宅するのは気が引けるでしょう。
「全員が残業しないようにしてほしい」と訴えても、あなた一人の力では何も変わらないケースがほとんどです。
退職して別の環境へ移った方が、理想の働き方に近づけるでしょう。
休職を選んだ方がいいパターン
休職を選んだ方がいいパターンは「退職を選ぶと後悔するかもしれない」と少しでも思った場合です。
退職を伝えると会社は手続きを進めてしまうので、戻りたい気持ちが出てきた時に言い出しづらくなるでしょう。
休職中は退職か復職を選べるからこそ、今後について後悔のない選択ができます。
ただし、休職中にいくら考えても復職できるイメージがわかないのであれば、退職を選択するのがおすすめです。
復職しても職場環境はほとんど変わらないので、時間が経てばまた辞めたいと思う可能性があります。
仕事が忙しくてなかなか冷静に考える時間が持てない方は、まず休職して考えを整理するとよいでしょう。
上司に休職を認めてもらう方法2選
上司から「休職するなら退職しろ」と言われても、やはり休職したいと考える方は、以下2つの方法を試してみてください。
もう一度休職したいと伝えるのは勇気がいりますが、あなた自身が正しいと思える選択をするためにもきちんと意思を伝えましょう。
復帰する意思があることをはっきり伝える
上司に休職を認めてもらうためには、復帰する意思をはっきり伝えましょう。
「最終的に退職するのではないか」と悩む上司に、復職への強い意思を伝えれば、休職に応じてくれる場合があるからです。
実際に、メンタルの不調が原因で休職した方の42%は退職しているので、上司が不安になるのも無理はありません。(参考:日本経済新聞『メンタル休職、42%退職 期間短く完治せぬまま』)
復帰への意思を伝える時は、以下のポイントをおさえると上司は安心するはずです。
- いつまでに復職するか上司よりも先に伝える
- 復職後の働き方について相談する
復職する前提で話を進めれば、会社に戻りたい気持ちがあると理解してもらえるでしょう。
就業規則に基づいて申請方法や必要書類を準備する
休職は就業規則に基づいて申請する必要があるので、まずはあなた自身が休職して問題ないか確かめることから始めましょう。
「就業規則にしたがって申請した」と上司へ伝えれば、休職への本気度が伝わるはずです。
また、病気で休職する場合は診断書を用意しなければいけません。
前もって診断書が必要だと分かれば、上司との面談時に提出できます。
診断書があるにもかかわらず出勤を命じた会社は、労働者の安全への配慮が欠けているとみなされる場合があるでしょう。
実際に、労働契約法でも労働者の安全に関して明記されています。
第五条 使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ労働することができるよう、必要な配慮をするものとする。
就業規則に基づいて休職準備を進めれば、上司も納得できるはずです。
「退職しろ」と言われた時によくある質問2選
「休職するなら退職しろ」と言われた時によくある質問は、以下2つです。
休職したまま退職はできる?
休職したまま退職は可能です。
正社員など雇用期間に定めがない場合、民法第627条では「いつでも解約の申し入れをすることができる」と記載されています。
休職しているかどうかは関係ないので、休職してから退職したいと思った時も安心です。
ちなみに、休職したまま退職しても失業保険(失業手当)は申請できます。
休職しても辞めない人の特徴は?
休職しても辞めない人の特徴は、以下のとおりです。
- 新しい職場へ移る自信がない
- 収入面に不安があるため転職活動にお金をかけられない
とくに、うつ病などメンタルの不調で休職している時は、次の転職先を見つける気力がわかない場合があります。
回復には時間がかかる傾向にあるので、すぐ会社を辞めるという選択肢は取らないでしょう。
まとめ
「休職するなら退職しろ」と言われても、応じる必要はありません。
休職制度の条件にあてはまっていれば、休職を選ぶ権利があるからです。
ただ、あなたが休職を選択すると会社はコストがかかるため、退職を促す場合があります。
「あなたが好きではない」といった感情的な理由ではないので、深く思い悩む必要はありません。
退職を勧められても休職したい時は、復職する意思を上司に伝えましょう。
就業規則にしたがって申請すれば、会社側も応じてくれるはずです。
今も決断に迷う方は、前述で記載した休職のメリット・デメリット、退職のメリット・デメリットをもう一度読んでみてください。
あなたにとって後悔のない決断ができるよう、まずは考えを整理しましょう。
こんな人におすすめ!