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なぜ日本はニートが多いのでしょうか?に対する回答を紹介【世界との比較も】

なぜ日本はニートが多いのでしょうか?に対する回答を紹介【世界との比較も】

なぜ日本はニートが多いのでしょうか?

日本でニートが多い理由としては、閉鎖的な学校生活や会社生活のなかで人間関係の面で苦労し、社会復帰を不安に感じている人が多いことが挙げられます。

総務省労働局の調査によると、日本の15歳~24歳のニート数は2022年時点で約26万人と推定されており、15歳~24歳の人口割合では2.2%となっています。

とはいえODCD諸国との比較でいうと、日本のニート率はそこまで高くありません。

たとえば15~29歳のニート率のOECD平均は13.2%であるのに対し、日本は9.8%となっています(2018年時点/日本のみ2016年のデータで算出)。

ちなみにILO(国際労働機関)によると、2023年の“世界の若者”のニート率は20.4%とされています。

これらのデータはニートの算出方法が異なるため、一概には比較できませんが、世界規模でみると「日本よりも若者のニート率が高い国は多い」といえそうです。

参考:

総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」p.17

Yahoo!ニュース「ニート数比率の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

ILO(国際労働機関)「Global Employment Trends for Youth 2024」p.2

日本のニート率の推移

総務省統計局の調査によると、多少の増減はあるものの、日本のニート率は2012年以降ほぼ横ばいを維持しています。

日本の人口に占める15歳~34歳(若年無業者)のニート率は、2022年時点で2.3%です。コロナ禍の2020年に2.7%へと上がったものの、2012年以降、ほぼ2.1%~2.3%の間で推移しています。

なお、日本の人口に占める35歳~44歳のニート率は2022年時点で2.4%です。2.3%~2.4%の間に収まっており、一部の年を除き、15歳~34歳よりも高い割合で推移しています。

引用:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」p.17

日本のニート人口

日本のニート人口(15歳~34歳の若年無業者数)は57万人です(2022年平均)。

2021年と比べると約1万人減少しており、全体的な傾向でみると緩やかに減少ペースが続いていることが特徴です。

実際、2012年のニート人口(若年無業者数)は63万人と推定されており、2022年はそこから6万人ほど減少していることが分かります。

なお、35歳~44歳のニート(無業者)の数も減少傾向にあり、たとえば2012年は44万人であるのに対し、2012年は36万人へと減少しています。

参考:総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」p.17

日本でニートになる人が多い理由

日本でニートになる人が多い理由としては、大きく次の3つが挙げられます。

  1. 学生生活につまづいて引きこもる人が多いから
  2. コミュニケーションが苦手な人が多いから
  3. 長時間労働など仕事の面で苦労する人が多いから

1.学生生活につまづいて引きこもる人が多いから

日本では、学生時代のつまづきによって社会復帰に不安を感じる人が少なくありません。

たとえば学校でのいじめや人間関係のトラブル、学業不振などが原因で不登校になってしまうケースが多々見られます。

そして高校や大学に進学しても同じような状況に再び陥(おちい)ることを恐れ、学校生活に馴染めずに引きこもってしまう子が多いのです。

引きこもり状態が長引くと社会との接点が失われ、社会人マナーやコミュニケーションスキルなどを身につける機会も失われてしまいます。

結果として働くことにも強い不安を覚え、ニートから抜け出せなくなってしまう傾向も見られます。

2.コミュニケーションが苦手な人が多いから

諸外国と比べると日本はコミュニケーションが苦手な人が多く、これもニートになってしまう一つの要因と考えられています。

団体行動が良しとされる日本では、学校や職場をはじめ、どんな場面でも周りと円滑なコミュニケーションを取ることが求められます。

とはいえコミュニケーションが苦手な人は周囲との関係を築くことが難しく、孤立してしまうケースも少なくありません。

結果として良好な人間関係を築けず、ニートになってしまう人が多いのです。

3.長時間労働など仕事の面で苦労する人が多いから

日本では長時間労働に追われ、体力的・精神的に疲弊してしまう人も多くいます。

厳しいノルマを達成するために、常にプレッシャーを感じながら働かなければならない人も多いでしょう。

残業を減らす動きや、リモートワークの導入など、働き方改革に乗り出す企業はたしかに増えています。しかしながら、いわゆる「ブラック企業」と呼ばれるような会社はまだまだ多いのが実情です。

実際、過労が原因で精神疾患を発症し、休職や退職を余儀なくされた結果としてニートになってしまう人は珍しくありません。

日本でニートが大々的に報道される理由

日本では「ニートが増えている」といったニュースがワイドショーを賑わせることが多く、ネットやSNSなどでは“ニートの是非”についての論争も絶えません。

特に、ニートの問題が顕在化し始めた2003年頃からは国をあげてニート対策が取られ始め、それに伴ってニートに関する報道が過熱していった経緯もあります。

そもそも日本では、どうしてニートについて大々的に報道されやすいのでしょうか?

その理由としては、次の3つが考えられます。

  • 少子高齢化で若年層の割合が減っているから
  • 様々な社会問題と密接に関わっているから
  • 真面目に働くことがまだまだ美徳とされているから

少子高齢化で若年層の割合が減っているから

1つめの理由は、少子化の進展によって若年層の割合が減っていることです。

ただでさえ若者が減っている日本にあってニートの数がさらに増えてしまうと、日本の社会保障システムそのものが崩壊しかねません。

つまり無職のニートからは所得税などを徴収できないため、社会保障システムを安定的に運営していけない可能性があるのです。

むしろニートは、税金などで賄(まかな)われる「生活保護」を受け取る側に回ってしまうこともあります。

このようにニートの増加は、社会保障制度を支える側の減少と、受給する側の増加という“二重の負担”を社会に強(し)いる問題のため、日本では大々的に報道されているのです。

様々な社会問題と密接に関わっているから

2つめの理由は、ニートの増加が様々な社会問題と密接に関わっているからです。

たとえば「年金問題」もそのひとつです。

働かない若者が増えることは、年金制度を支える現役世代が減ってしまうことを意味します。

つまり年金を十分に支給できない可能性があり、これは高齢者の生活を脅(おびや)かす深刻な問題といえるでしょう。

ほかにも「パワハラ問題」や「経済状況の悪化」、「就職活動の長期化」など、ニート増加の背景には様々な問題や課題が潜んでいます。

このようにニートの問題は社会問題と複雑に絡み合っており、社会全体に大きな影響を与える可能性があるため、メディアで大きく取り上げられることが多いのです。

真面目に働くことがまだまだ美徳とされているから

日本では、真面目に働くことが美徳とされる風潮が根強く残っています。

そのためニートのような「働いていない人」は、社会から厳しい目で見られがちです。

一方で、こうしたことは日本以外、特に欧米ではあまり見られません。

たとえばヨーロッパでは、仕事よりもプライベートを重視する価値観が強く、家族や友人との時間を持つために休暇をしっかりと取る国が多くあります。

しかし日本では「仕事熱心であること」「会社に貢献すること」がまだまだ評価される傾向にあります。

そのため、働いていないニートは“社会のレールから外れた存在”として異端の目で見られることが多く、視聴者や読者の注目も集められることからニュースとして取り上げられる機会が多いのです。

OECD諸国と日本のニート率の比較

日本のニート率は、海外と比べると高いのでしょうか?

結論からお伝えすると、OECD諸国*と比較した日本のニート率はそこまで高くありません。

2018年(日本のみ2016年のデータを適用)の数値では、日本の15歳~29歳のニート率は9.8%です。

これはOECD平均(13.2%)を下回る数値であり、データを集計した国の中では下位に位置しています。

一方でトルコ(26.5%)やイタリア(23.9%)など、割合でいうと日本の2~3倍の国々も多く、こうした国では15歳~29歳の約4人に1人がニートとして判定されています。

*OECD諸国:「経済協力開発機構(OECD)」に加盟している先進国38か国の総称

引用:Yahoo!ニュース「ニート数比率の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

OECDのニートの定義
15歳~29歳で就業も就学も職業訓練もしていない者。
就学は短時間の就学行程にある人も含まれるが、短期就学は含まれない。

15歳~19歳

日本の15歳~19歳のニート率は3.7%で、OECD平均6.4%を下回っています。

OECD諸国でみるとトルコの15.3%が最も高く、メキシコの13.7%、チリの11.7%が続きます。

※こちらのデータでは、高等教育を受けている人はニートとしてカウントしていません。そのため、各国の高等教育の普及率が多少なりとも影響していることに留意ください

引用:Yahoo!ニュース「ニート数比率の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

20歳~24歳

20歳~24歳のニート比率をみると、日本(10.1%)は低い値ですが、15歳~19歳のニート率(3.7%)と比べると割合が増えています。

ニート率が最も高いのはトルコです。ちなみにトルコに関しては、本調査のどの年代でもトップに位置しています。

引用:Yahoo!ニュース「ニート数比率の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

25歳~29歳

25歳~29歳のニート比率は、次のとおりです。

日本の25歳~29歳のニート比率は15.8%となっており、15歳~19歳(3.7%)、20歳~24歳(10.1%)よりも割合としては増えています。

引用:Yahoo!ニュース「ニート数比率の国際比較をさぐる(2020年時点最新版)

OECD平均17.1%に迫る値であることからも、他の年代に比べ、日本では20代後半のニートが相対的に多いことが分かるでしょう。

こうした傾向はその他のOECD諸国でも同様に見られ、多くの国で25歳~29歳の割合が他の年代を上回っています。

世界と日本のニート率の比較

世界と日本ではニート率の計算方法に違いがあるため、一概には比較できませんが、一般的には世界のほうがニート率が高いといわれています。

たとえば総務省統計局の調査によると、日本の15歳~24歳のニート率は2022年時点で2.2%です。

一方で「Global Employment Trends for Youth 2024(邦題:若者の世界雇用動向2024)」によると、2023年では世界の若者の20.4%がニート状態にあるとされています。

これらのデータを参照する限り、若者のニート問題に関しては日本以上に深刻な課題を抱えている国が多いようです。

参考:

総務省統計局「労働力調査(基本集計)2022年(令和4年)平均結果の要約」p.17

ILO(国際労働機関)「Global Employment Trends for Youth 2024」p.2

世界でニートになる若者が多い理由

世界規模で捉えてみると、働きたくても仕事がなく、ニート状態に追い込まれている若者が多い現状が見えてきます。

ニートになる若者が世界の国々で多い理由としては、大きく次の3つが考えられます。

  • 正規の職に就く機会が限られているから
  • 女性の就業機会が限られているから
  • 紛争などにより不安定な状況が続いているから

正規の職に就く機会が限られているから

経済のグローバル化や、技術革新などの影響によって、世界中の企業がコスト削減のために非正規雇用を増やしています。

スキルがない若者は非正規雇用として働かざるを得ないケースが多いですが、正規雇用(正社員)よりも賃金が低く、雇用が不安定な場合も少なくありません。

そのため将来の見通しが立たず、働く意欲を失ってしまった結果としてニートになってしまう若者が出てきてしまうのです。

特に経済状況が不安定な国や地域は、正規雇用の機会がさらに限られています。そのため若者たちは希望する仕事に就くことができず、本人の希望とは裏腹に、ニートのような状態に陥ってしまうケースも少なくありません。

女性の就業機会が限られているから

男女の役割において伝統的な価値観が残っている国や地域では、女性の就業機会がまだまだ限られています。

女性に対する偏見が存在する職場では昇進や昇給の機会が限られ、自分の力を十分に発揮できないことに落胆する女性も後を絶ちません。

このように、女性の就業機会が限られている国では思うようなキャリアを歩めず、良い条件の仕事も見つからないことからニートになってしまう女性が多いのです。

実際、ILO(国際労働機関)の調査「Global Employment Trends for Youth 2024」を見ても、ニート状態にある若者の3人に2人が女性であることが指摘されています。

参考:ILO(国際労働機関)「Global Employment Trends for Youth 2024」p.2

紛争などにより不安定な状況が続いているから

世界には紛争などにより、社会情勢が不安定な国が多く存在します。

このような地域では経済が停滞しがちなため、就労の機会がかなり制限されてしまいます。将来の見通しが立たない状況では、企業は新規の採用を控える傾向があるからです。

また、紛争地域では学校などの教育機関が十分に機能していないケースも多く、若者たちが教育を受ける機会が奪われていることも深刻な問題となっています。

教育を受けられない若者たちは職に就くために必要な知識やスキルを身につけられず、貧困から脱出する道が閉ざされてしまいます。

このように、紛争や政情不安は世界の若者たちの未来を奪い、ニートの状態に追い込んでいる要因となっているのです。

まとめ

この記事では、日本にニートが多い理由を解説しました。

主な理由としては、次の3つが挙げられます。

  1. 学生生活につまづいて引きこもる人が多いから
  2. コミュニケーションが苦手な人が多いから
  3. 長時間労働など仕事の面で苦労する人が多いから

世界と比べると日本よりもニート比率が高い国は多いですが、だからといって日本のニート問題を軽視することはできません。

実際、日本の15歳~34歳のうち57万人もの若者がニート状態にあり、その数はここ10数年で大きくは減っていないのです。

こうした背景には「真面目に働くことがまだまだ美徳とされている」など日本特有の問題も隠れているため、多様な働き方を許容する社会の構築など、政策面からの強い介入や支援も求められています。

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ABOUT US
池本 駿
株式会社ジェイックマーケティング開発部。2016年慶応義塾大学経済学部卒業。2018年慶應義塾大学大学院経済学研究科修了(修士課程)。2019年慶應義塾大学大学院理工学研究科修了(修士課程)。同大学経済学部附属経済研究所「こどもの機会均等研究センター」協力研究者。元・三菱経済研究所研究員。経済産業大臣登録 中小企業診断士。著書「教育経済学の実証分析: 小中学校の不登校・高校における中途退学の要因分析」