
今の会社を退職しようと考えている人のなかには、キャリアブレイクをしてから転職を考えている人もいるでしょう。またキャリアブレイクがどのような意味なのかをあまり知らないまま、なんとなくキャリアブレイクをしてみたいと考えている人もいるかもしれません。
そこでこの記事では、キャリアブレイクの意味やメリット・デメリット、キャリアブレイクと転職の関係などについて解説します。自分に合ったキャリアブレイクの過ごし方を見つけ、次の仕事につなげるためにもこの記事を参考にしてください。
この記事の目次
そもそも「キャリアブレイク」とは
法政大学学術機関リポジトリの「キャリアブレイクを経験した女性の変容パソコンインストラクターを対象とした実証研究」によると、キャリアブレイクは次のように定義されています。
このことからキャリアブレイクとは仕事から離脱している状態でありながらも、自己のスキルなどを向上させるといった今後のキャリアに役立つ期間であるといえます。そのためキャリアブレイクは、仕事をしていない状態かつ仕事探しもしておらず、自由な時間を過ごしている「ニート」などとは意味合いが異なるといえるでしょう。
引用:法政大学学術機関リポジトリ | キャリアブレイクを経験した女性の変容パソコンインストラクターを対象とした実証研究
キャリアブレイクの由来
キャリアブレイクという用語は、特に欧州で使われている言葉です。欧州では職務を長期休暇で離れることを「sabbatical(サバティカル)」といい、この同義語として「キャリアブレイク」が使用されています。
また日本においてキャリアブレイクは、離職期間を否定的な意味ではなく肯定的に捉える際に使用されるケースが多いです。
キャリアブレイクのメリット
キャリアブレイクのメリットは、以下の通りです。
- 気持ちをリフレッシュさせられる
- 新しいスキルや知識を身に付けられる
- 視点や考え方の視野を広げられる
- 家族や友人と過ごす時間を増やせる
- ライフバランスを整えられる
- 新しいキャリアへの準備を整えられる
- 仕事からのストレスから解放される
キャリアブレイクのメリットとしては、社会人としての生活から解放されるため、仕事に対するストレスを感じなくなるほか、気持ちをリフレッシュできるなどのメリットが挙げられます。
また、キャリアブレイクは離職期間中に自己の成長を高める意味合いでもあるため、新しいスキルや知識を身に付けられるメリットもあるといえるでしょう。
このようにキャリアブレイクを実施することで、心身の健康を整えることから自己成長までさまざまなメリットを得られるため、キャリアブレイクの期間を計画的に過ごすことで将来の人生に役立つ有意義な時間を過ごせるのです。
キャリアブレイクのデメリット
キャリアブレイクのデメリットは、以下の通りです。
- 収入が途絶える
- 職歴に空白ができる
- 再就職に抵抗を感じる可能性がある
- 生活リズムが乱れる可能性がある
- 精神的に病んでしまう可能性がある
- 家族や友人から心配される
キャリアブレイクのデメリットとしては、会社からの収入が途絶えることや職歴に空白期間ができることなどが挙げられます。
たとえば、余裕を持って生活を送れるほどの貯蓄が貯まっていない状態でキャリアブレイクをしてしまうと生活が苦しくなってしまい、自己成長に取り組む前に再就職先を探さなければならなくなってしまう可能性があります。
またキャリアブレイク中は職歴が空くため、今後の人生で企業の選考を受けた際に採用担当者からキャリアブレイク中の期間について説明を求められる可能性は高いでしょう。
これらのことからキャリアブレイクを実施する際は事前に期間を決めておき、その期間は余裕を持って生活を送れるほどの貯蓄をしてから今の会社を退職することが大切だといえます。そして今後の企業選考でキャリアブレイク中の期間を前向きに伝えられるようにするためにも、キャリアブレイクの過ごし方を有意義な時間にすることも重要なのです。
キャリアブレイクは長いほど転職は不利になる?
キャリアブレイクは長く取ったとしても、転職で不利になる傾向はないと研究結果で明らかになっています。全国就業実態パネル調査の「WorkcReport2023」によると、ブランクなしの基準を0%にした際の離職期間別での再就職率は、以下の通りです。
離職期間 | 再就職確率 |
---|---|
3カ月以内 | およそ-15% |
4カ月以上6カ月未満 | およそ-20% |
6カ月以上9カ月未満 | およそ-22% |
9カ月以上1年未満 | およそ-25% |
1年以上2年未満 | およそ-21% |
2年以上 | およそ-27% |
この調査を考慮すると、たとえ離職期間が2年以上あったとしても、6カ月以内の離職期間の再就職確率と大きな変化はないことがわかります。また、離職期間における再就職活動確率は次のとおりです。
離職期間 | 再就職活動確率 |
---|---|
3カ月以内 | およそ-13% |
4カ月以上6カ月未満 | およそ-19% |
6カ月以上9カ月未満 | およそ-22% |
9カ月以上1年未満 | およそ-29% |
1年以上2年未満 | およそ-35% |
2年以上 | およそ-50% |
離職期間の長さによる再就職活動確率は、離職期間が長いほど再就職活動を諦めてしまう人が多くいる傾向にあることがわかりました。したがって、キャリアブレイクで長期間の離職期間を設けることは、転職が不利になるというよりは、再就職の意欲が損なわれてしまう危険性があるということがわかります。
参考:WorkcReport2023|なぜ転職したいのに転職しないのか(ブランクの期間が長くなると再就職は難しくなるのか)
キャリアブレイクの取得期間
アクシス株式会社がキャリアブレイクを取得した300名に対し、キャリアブレイクの取得期間について調査したところ、次のような結果となりました。
取得期間 | 回答者数 | 割合 |
---|---|---|
3カ月未満 | 87名 | 29% |
3カ月~6カ月以内 | 85名 | 28% |
6カ月~1年以内 | 79名 | 26% |
1年~2年以内 | 29名 | 10% |
2年~3年以内 | 9名 | 3% |
3年以上 | 11名 | 4% |
この調査結果を考慮すると、キャリアブレイクを取得した83%の人は1年以内に再就職していることがわかりました。
このことからキャリアブレイクを取得した多くの人は、1年以上かかる自己成長への投資をするというよりも、離職期間の1年間で日頃の疲れをリフレッシュするとともに、この先の人生に役立つ比較的短期間で取得できるスキルを身に付けている人が多くいるといえます。
参考:アクシス株式会社|全体の8割の人がキャリアブレイクは個人のキャリアにとって有益であると回答/日本国内のキャリアブレイクに関する意識調査(キャリアブレイクを取った期間はどれくらいですか?)
キャリアブレイクからの転職を成功させる秘訣
キャリアブレイクからの転職を成功させるためには、企業の選考でキャリアブレイク中の過ごし方を具体的に伝えるなど、いくつかの秘訣があります。
そのため、キャリアブレイクからの転職を不安に感じている人は、こちらで紹介する秘訣をしっかりと確認しておきましょう。秘訣を確認しておくことで、企業の選考でキャリアブレイクを前向きな印象としてアピールできるようになりますよ。
キャリアブレイク中の過ごし方を具体的に伝える
キャリアブレイクからの転職を成功させるためには、キャリアブレイク中の期間は資格の取得など自己のスキルアップに取り組んでいた期間であると、採用担当者に具体的に伝えることが大切です。
なぜなら、企業によってはキャリアブレイクという言葉に馴染みを持っていない可能性もあるからです。このような企業の場合、あなたの離職期間をマイナスなイメージとして捉えてしまう可能性が考えられます。
そのため、離職期間について問われた際に、ただ「キャリアブレイクをしていました」と回答するのではなく、具体的な過ごし方まで伝えることが大切なのです。
キャリアブレイク中の期間をポジティブな表現で伝える
キャリアブレイク中の期間が人生のなかでも重要な時間であったことを企業側にアピールするためにも、キャリアブレイク中の期間はポジティブな表現で伝えることが大切です。
たとえば、採用担当者からキャリアブレイク中の過ごし方について問われた際に、「キャリアブレイク中はこれまでの仕事の疲れを癒すために海外に行き、自由な時間を過ごしていました」と回答したとします。
この場合、採用担当者からすると「社会人としてのモチベーションは低いのでは?」と疑問を感じてしまう可能性があるでしょう。
一方で「キャリアブレイク中は海外に訪れ、異なる価値観や考え方を持つ人々とふれあい、これまでにない新しい視点で物事を見る力を養いました」と回答した場合は、採用担当者はポジティブな印象を受ける可能性が高いです。
このようにキャリアブレイク中の過ごし方は伝え方によっても印象は大きく異なるため、できる限りポジティブな表現になるような伝え方を心掛けてみてください。
再就職の意欲が高いことを伝える
キャリアブレイクをしていると、企業側から「仕事に対するモチベーションが低い人材」だと思われてしまう可能性があります。そのため、再就職の意欲が高いことを伝えることも転職を成功させる秘訣です。
たとえば、志望企業の仕事内容と絡めながらキャリアブレイク中に培ったスキルや経験をアピールしたり、再就職した際に仕事を通じて何を成し遂げたいのかを伝えたりしましょう。
そうすることで採用担当者に再就職の意欲が高いことを伝えられ、長く活躍してくれる人材であると認識してもらえます。
キャリアブレイク中の過ごし方4選
キャリアブレイク中の過ごし方は、資格を取得したり海外留学などで新しい文化を学んだりと、人それぞれ異なります。そのため、どのようなキャリアブレイクの過ごし方が自分自身が望んでいるのかを、会社を退職する前に整理しておきましょう。
ここでは、キャリアブレイク中の過ごし方を4つ紹介するので、自分に合った過ごし方があるか確認してみてください。
心身をリフレッシュさせる
社会人としての生活に疲れやストレスを感じているのであれば、まずは心身をリフレッシュさせることから始めてみると良いでしょう。たとえば、山や海といった自然豊かな場所に訪れ、1週間ほど非日常的な生活を味わってみるなどです。
社会人として生活していると、1週間以上の長期休暇を取得する機会は限られてしまいます。そのため、社会人としては挑戦できないようなことをキャリアブレイク中に挑戦し、疲れやストレスをリフレッシュしてみてください。
ただし、リフレッシュばかりしているとキャリアブレイクの本来の意味を見失ってしまう可能性があるため、リフレッシュ期間はあらかじめ決めておきましょう。
資格を取得する
キャリアブレイクは自己のスキルを成長させるための期間です。そのため、将来のキャリアプランに合わせて専門的な資格を取得することは有意義な過ごし方だといえます。
たとえば、再就職後は海外での仕事を視野に入れていて、キャリアブレイク中に語学に関する資格を取得したり、在宅ワークなど多様な働き方を実現させるためにIT系の資格を取得したりなどです。
資格にはさまざまな種類があるため、自分のキャリアプランが定まっているのであれば将来に役立つ資格をキャリアブレイク中に取得することを前向きに検討してみてください。
海外留学など新しい文化を学ぶ
キャリアブレイクの期間を6カ月以上取得できるのであれば、海外留学をして新しい文化を学ぶことも一つの過ごし方です。
たとえば、将来的に在住したいと考える国があったり、その国ならではの仕事に興味があったりする場合は、キャリアブレイクという期間を有効活用して海外留学することも良いでしょう。海外留学でその国の文化を肌で体感すれば、その国に支店をおくグローバル企業などの選考で強いアピールポイントにもなります。
子育でや家事に専念する
キャリアブレイクを取得する人のなかには、子育てや家事に専念する人もいます。たとえば、共働きをしている家庭である場合、子どもの大事な成長時期に親とのふれあいが少なくなってしまう可能性は高くなります。
そのため、子どもがある程度成長するまでは、キャリアブレイクをして片親が子育てや家事に専念するケースもあるのです。この場合、家族でしっかりと話し合った結果、仕事よりも子どもと向き合うことが大切だという結論が出たのであれば、最善の選択肢だといえるでしょう。
また再就職を考える際も子育てや家事に専念していたことを企業側に伝えることで、採用担当者側も離職理由について納得してくれる可能性は高いといえます。
【年代別】キャリアブレイク中の過ごし方
キャリアブレイク中のおすすめの過ごし方は、年代によっても異なります。
たとえば、20代であれば自己成長のために資格を取得したりキャリアスクールに通ったりすることが大切である一方、40代であれば今後のライフスタイルや働き方についてしっかりと考えることが大切です。
そこでここでは、キャリアブレイク中の過ごし方を年代別で解説するので、あなた自身の年代と照らし合わせてどのような過ごし方をしたら良いのか参考にしてください。
20代
20代はこれからキャリアを広げていく年代です。そのため、キャリアブレイクをするのであれば、将来のキャリアについて整理し、自分自身が歩みたいキャリアに役立つスキルをキャリアブレイク中に身に付けることが大切です。
たとえば、資格の取得に専念したりハローワークなどのキャリアスクールで専門的なスキルや知識を学んだりなどが挙げられます。
20代のうちに将来のキャリアを考えてキャリアブレイクを実施できると、キャリアブレイクの期間は有意義な時間であったと30代になったときに認識できるでしょう。
30代
30代のなかでも30代前半であれば、20代同様にキャリアの方向性を考えられる年齢であるといえます。そのため、キャリアブレイク中は自分自身が思い描くキャリアの方向性を考え、それに合わせて新しいスキルを身に付けることに専念すると良いでしょう。
たとえば、あなたの周りには学生時代の同級生や以前勤めていた会社の同僚など、これまでの人生のなかで出会ってきたさまざまな知人がいるかとおもいます。
したがって、興味のある仕事に勤めている知人がいれば、その仕事について詳しく聞いてみると良いでしょう。そうすることで、これまで気づけなかったようなキャリアへの道を切り開ける可能性があります。
また30代後半である場合は、これまでのキャリアを整理してこれまでのキャリアに沿ったキャリアプランを考えることが大切であるため、キャリアブレイク中はこれまでのスキルをより高められるスキルや知識の定着を前向きに検討しましょう。
40代
40代であれば、定年まで残り20年ほどの年代です。しかし20年という期間は長いので、現在の体力やスキルレベルを考慮し、定年まで活躍できる仕事が何かをキャリアブレイク中に整理してみてください、
たとえば、体力に自信がないのであれば、製造職や事務職などが挙げられます。またこれまで管理職として活躍した経験があれば、同じ業界の企業で管理職としてキャリアブレイク後に活躍する選択肢もあるでしょう。
このように40代のキャリアブレイクでは、定年までの20年間のライフスタイルや働き方をしっかりと考え、再就職後に役立つ資格やスキルの取得を目指すと今後の人生に役立つ可能性は高いです。
50代
50代のキャリアブレイクではこれまでの経験を棚卸し、定年後を考えた再就職を視野に入れたスキルアップに取り組むと良いですよ。
たとえば、65歳以上も働き続けることを視野に入れているのであれば、再就職や定年のない仕事に対応した資格を取得するなどです。
65歳以上でも企業から必要とされやすい資格例は、以下のとおりです。
- 宅地建物取引士
- 中小企業診断士
- マイクロソフトオフィススペシャリスト
- 管理業務主任者
- 日商簿記
- 介護福祉士
たとえば、宅地建物取引士や管理業務主任者などの資格は、独占業務を担う資格です。そのため、65歳以上であっても資格を保有しているというだけで、戦力として考えてくれる企業も多いでしょう。
このように50代のキャリアブレイクでは、定年後を考慮したスキルアップに取り組むことがキャリアブレイクの有効的な過ごし方だといえます。
キャリアブレイクから転職する3つのステップ
キャリアブレイクから転職を目指すには、自己分析で自身の経験やスキルを整理するなど、3つのステップを踏む必要があります。
そこでここでは、キャリアブレイクから転職する際の3ステップを紹介するので、どのような流れでキャリアブレイク後に再就職するのか参考にしてください。
ステップ①自己分析で自身の経験やスキルを整理する
キャリアブレイクから転職する際は、まず自己分析で自身の経験やスキルを整理し、自分自身についての理解を深めることが大切です。
たとえば、これまでどのような仕事の経験をしてきたのか、仕事を通じてどのようなスキルを身に付けたのかなどです。これまでのキャリアを見つめ直すことで、今後のキャリアに活かせる経験やスキルを見つけられるため、自分自身の経験やスキルを紙に書き出してみてください。
ステップ②自身の経験やスキルを活かせる仕事を洗い出す
これまでの経験やスキルを整理できたら、それらの経験やスキルからキャリアブレイク後にどのような仕事に挑戦できるかを考えてみましょう。
たとえば、これまで販売職として接客を中心に経験を積んできたのであれば、幅広い年代と話せるコミュニケーション能力も養っているといえます。そのため、営業職や事務職、介護職といった人とのコミュニケーションが必要とされる仕事で活躍できる可能性は高いでしょう。
このように自分自身のスキルを整理し、再就職後にどのような仕事で自分のスキルや経験を活かせるのかを考えてみてください。
ステップ③転職エージェントなどを活用して企業選考を有利に進める
キャリアブレイク後の転職成功率を高めるためには、一人で転職活動を進めるのではなく、転職エージェントを活用することも重要です。
なぜなら、転職エージェントを活用することで、キャリアブレイクについて企業から問われた際に悪い印象を持たれない説明を一緒に考えてくれるほか、あなた自身のスキルや経験に合った求人を多くの求人から厳選してくれるからです。
そのため、企業の選考通過率を高めるだけでなく、転職後に長く活躍できる仕事への転職成功率も高められます。転職エージェントは基本的に登録料・利用料が無料であるため、キャリアブレイク後の転職活動を少しでも有利に進めたい人は、積極的に活用することが大切です。
まとめ
会社を退職しようと考えている人のなかには、キャリアブレイクについて興味を抱いている人もいますよね。しかし、キャリアブレイクをすると、その後の転職活動に影響が出るのでは?と疑問を感じている人もいるでしょう。
結論としては、キャリアブレイクの期間が長かったとしても、キャリアブレイク中の過ごし方を具体的に説明し、採用担当者にポジティブなイメージを持ってもらえることで選考通過率を高めることができます。
そのため、キャリアブレイクをしてから転職を考えているのであれば、この記事で紹介したキャリアブレイク中の過ごし方や転職を成功させる秘訣などを参考に、自分のキャリアを見つめ直す時間を設けてみてはいかがでしょうか。



「育児、介護、体調不良、転職準備などあらゆる理由で、職業もしくは所属する会社から離職している期間であり、体職は含まれない。ただし、離職期間の経験が自己効力感を高めるものであり、その後のキャリアに役に立ったと本人が主観的に認知している場合に限る」