求人情報などでは正社員の他に嘱託社員や契約社員の募集を見かけることがあります。嘱託とはどのような雇用形態なのか疑問に思っている方や、同じような雇用形態である契約社員との違いがわからないという方も多いのではないでしょうか?
そこで、嘱託社員とはどのような立場の社員で、どのような雇用形態なのかを契約社員との違いを含めて詳しく解説します。
この記事の目次
嘱託とは法律的には定められていない雇用形態
本来「嘱託」には、仕事を頼んで任せることという意味があります。嘱託社員とは、一般的に正社員のような正式な雇用関係によらずに業務を依頼された社員のことで、法律的には嘱託という明確な区分はありません。
企業によって嘱託の定義は様々
そのため、企業によって嘱託の雇用条件や呼び方が様々で、定年退職後に再雇用された人や契約社員、準社員などを嘱託社員と呼んでいるところもあります。
契約社員も嘱託社員と同様に、法律的には明確に定められていません。
あえて違いを設けるなら、もともと契約社員は、専門的な知識や技術を持っている人を一定の期間に特定の条件で雇うという意味合いがありました。
契約社員の定義
現在の契約社員の定義は、労働時間や休日、計算方法や支払い方法までを含めた賃金、仕事の内容など決められた労働条件で契約して働く雇用形態のことが一般的です。労働する期間が決まっているため、途中で辞める場合や契約の更新には別途手続きが必要になります。
契約社員と嘱託社員の違い
嘱託社員か契約社員かは、企業の就業規則や契約内容によるところが大きいといえます。
一般的には契約社員はフルタイムで働くことが多く、そのため契約社員は労働期間が決められてはいても、業務の内容は正社員とあまり変わらない場合が多い傾向がみられます。
一方で、嘱託社員とはフルタイムの人もいれば短時間の勤務の人や、週に3~4回などの非常勤や臨時で働く人もみられるなど雇用条件によって働き方は様々です。
嘱託社員とは一般的に2種類に分けられる
憲法において国民には働く義務があります。「労働三法」といわれる「労働基準法」「労働組合法」「労働関係調整法」によって労働者は守られています。
労働基準法
その中でも、労働条件の最低基準を定めているのが労働基準法で、船員法によって守られている船員や家族経営の親族などを除いた、ほとんどの労働者に適用されます。
つまり、嘱託社員や契約社員も労働基準法に適用されます。また、賃金に関連することは「最低賃金法」、安全や衛生に関連することは「労働安全衛生法」など様々な法律が嘱託社員を含む労働者を守るために定められています。
嘱託社員の待遇
企業によって嘱託社員の待遇は違いますが、大きく2つの種類に分けられます。一つ目は、定年退職後に再雇用された嘱託社員です。
この場合は労働契約を結んで雇用されるため、労働基準法が適用されます。
もう一つは、医師や看護師、弁護士などの専門的な高度なスキルを持ち業務を任されている嘱託社員です。
この場合は起業から仕事を請け負う形で、契約内容によっては業務委託という形態になるケースもあります。
期限が決められた臨時の嘱託職員の場合
行政機関の中には、非常勤職員の雇用形態の一つに嘱託職員が定められています。地方公務員法では、地方公務員の種別に臨時的任用職員が定められ、その中に非常勤職員があり嘱託職員が含まれています。
地方公務員法による嘱託職員は、通常であれば任期が3年ほどで常勤のフルタイムの職員より勤務時間が短くなっています。市役所などでは、民間企業とは違い医師や保健師、運転など専門的な知識や技能を持っている人を嘱託職員として、期限が決められている臨時の職員として雇用しています。
嘱託社員の待遇は企業によって違う
嘱託社員の雇用条件は企業によって異なりますが、共通しているのは嘱託社員や契約社員は、非正規雇用であり雇用期間が制限されているため不安定な雇用形態ということです。
労働基準法は誰にでも適用される
正社員でも嘱託社員でも労働基準法が適用されるため、法律上では違いはありません。勤務時間など条件を満たせば社会保険等にも加入できます。
しかし、それ以外の入社してからの試用期間や転勤の有無、ボーナスや退職金の規定などの条件は企業の就業規則や、労働条件の契約内容によって違いがでてきます。
有給休暇や福利厚生なども正社員と差があることが少なくありません。嘱託社員は月給制ではなく時給制であることが多く、ボーナスや退職金がないケースが多くみられます。
定年後に嘱託採用されるケースも
定年退職後に嘱託として雇用される時は、正社員と同じような業務に携わるケースもあります。しかし、嘱託社員は簡易な仕事を任せられることになり賃金も安くなる傾向があります。
一方で、雇用する側の企業としては、知識も経験もある社員を定年退職後に嘱託として再雇用することは即戦力にもなりますし、一定のスキルを持った社員を低い賃金で雇用することは人件費を抑えることにも繋がります。また、「社内でカバーできない業務量があるが正社員を雇うほどの量ではない」といった場合に、嘱託社員などの非正規雇用者を採用してコストを削減し業務の効率化を図ることも可能です。
嘱託社員として働くメリット
企業によって違いますが、多くの場合は定年退職後の再雇用で嘱託社員となった場合には、給与が正社員の時より大きく下がります。嘱託社員や契約社員は、勤務時間や賃金などの働く条件を企業と結ぶ労働契約によって決まります。
嘱託社員の給与体系は様々
再雇用により嘱託社員は時給制であったり、月給制でも基本給は正社員より低く設定されたりするケースがほとんどです。ただし、嘱託職員の賃金は必ずしも正社員より低いとは限らず、専門的なスキルを必要とする業務につく場合には、比較的高い賃金で契約される場合もあります。
また、定年後の再雇用は正社員を退職する時の退職金を一旦受け取ってから嘱託社員になることもできますし、公的な年金を受給しながら働くことも可能です。
社会保険に加入することも可能
さらに、一定の労働時間を超えて働くなど条件が合えば、継続して社会保険に加入することもできます。勤務時間も正社員と比べると融通が利きやすく柔軟性がでてきます。そのため、定年後のライフスタイルに合わせた働き方をしやすくなります。
その他では、医師や弁護士などの高いスキルを持っている場合には、実際の職場でのスキルが生かせるかどうかを確認できる働き方といえるでしょう。
企業の「嘱託社員」の条件を確認する
一昔前とは違い、少子高齢化や人手不足などの社会環境の変化や働き方の多様化などで、定年退職後の再雇用は珍しくなくなりました。実際に定年退職後の社員を嘱託社員として採用している企業も増加しています。
非正規雇用者を取り巻く環境は変わっている
ただし、嘱託社員をはじめ非正規雇用者を取り巻くビジネス環境は変わってきています。定年後にも即戦力として働ける嘱託社員ですが、契約社員と同様に雇用期間が決められているため、契約が更新できない場合は辞めざるを得ません。
また、法律的に明確に定められた雇用形態でないため、企業によって嘱託社員の定義が異なり労働日数や賃金などの待遇も大きく違います。雇用契約書の内容と就業規則を確認することが、嘱託社員という雇用形態を選択した時に注意しなければならないことです。
雇用契約書を細かくチェック
雇用契約書には、嘱託社員として働く際の細かな条件が記されています。雇用契約の締結は嘱託社員として働き始める前に行う必要があるため、契約を締結する前に内容を詳しくチェックし理解しておくことが大切です。
企業の就業規則には、勤務時間や有給休暇を始めとする休暇の規定などの詳細な労働条件が記載されています。定年後などの再雇用の場合は、正社員と就業規則が変更になっているため、契約を結ぶ前に開示を受けて内容を確認しておきましょう。正社員の時と同じ就業規則と勘違いをして違反をしてしまうケースも考えられます。
総務や人事の説明をしっかり聞く
正社員と嘱託社員の就業規則の違いを含め、総務や人事の担当者から説明を受け、疑問な点は事前に質問することも大切です。
働き始めてから「こんなはずではなかった」とならないためにも、雇用条件の確認は丁寧に行いましょう。
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