扶養者控除と確定申告の時期になると耳にすることあります。扶養者や被扶養者とは一体どういう人のことを言うのか、扶養者が増えてくると何ができるようになってくるのか、よく聞く「控除」とは何なのか、様々な事例をもとに詳しく紹介していきます。
この記事の目次
扶養者、被扶養者とは?
「扶養」とは、老人や子どもなどの収入を得ることが困難な者や、失業や貧困などの社会的な理由により労働が困難で、保有資産が十分にないために独立して生計を立てられない人の生活を、他者が援助する行為を指します。
収入が少ないために金銭面でサポートを必要とし、何らかの形で援助を受けて扶養されている者を被扶養者と呼びます。扶養者とは、生計の面倒を見る者の意味を持ちます。
未成年の子供がいる家庭の場合、一般的に親が扶養者となり、子供が被扶養者となることが多いです。逆に、高齢などの影響で収入が得られなくなった親が被扶養者に、成人した子供が扶養者になる場合もあります。
健康保険上の被扶養者とは?
健康保険における被扶養者の範囲は、健康保険法によって定められており、税法上の被扶養者とは考え方が少し異なります。
親など、一般的に扶養者になるような人でも被保険者の収入によって生活をともにしていれば、被扶養者の立場として健康保険料を納めなくとも健康保険の給付を受けられます。
同居をしている家族以外も被扶養者になりえる
内縁を含む配偶者や養子を含む子ども、孫や兄弟姉妹、養父母を含む父母などの直系親族は、同居していることは当然のこと、同居していなくても被扶養者の範囲に入ります。先ほど述べた以外で三親等内に当てはまる親族や、内縁の配偶者の父母や連れ子の場合は、同居が条件で被扶養者に認定されます。
被扶養者になる他の場合
内縁の配偶者が亡くなったあとの父母や連れ子も対象で、被保険者と養子縁組をしていない配偶者の子も該当します。扶養家族の条件には、収入の上限額が設けられており、被扶養者の年収が被保険者の二分の一未満であり、かつ年間130万円未満であることが条件です。60歳以上、または59歳以下の障害年金受給者の場合、年収の上限は180万円未満となります。
被保険者が扶養家族を、経済的な面で負担している事実がある場合に被扶養者として認定されます。75歳以上の後期高齢者、65歳から74歳までで一定の障がい基準を満たす人は、後期高齢者医療制度へ加入することになるため、健康保険上の被扶養者から外れます。
よく聞く控除って、結局何?
所得税の控除対象となる被扶養者がいる場合は、所得額に応じた一定金額の所得控除が受けられるため、税法上のメリットがあります。
被扶養者の条件
所得税法上に規定されている被扶養者は、その年の12月31日時点で以下に記載する認定基準全てに該当する人が対象です。配偶者以外の親族、あるいは都道府県知事から養育を委託された児童、市町村長から養護を委託された老人であり、納税者と生計を一にしていることが前提条件です。
親族の範囲
親族の範囲は、6親等内の血族、及び3親等内の姻族、里子などが対象で、配偶者の場合は「配偶者控除」として別で扱われます。「生計を一にしている」は、必ずしも同居している必要はなく、学校や仕事の都合上別居している場合でも休日などの余暇に同居しているか、常時生活費などの送金がされていれば該当します。
所得金額や給与支払いも条件の1つ
年間の合計所得金額が38万円以下であることも被扶養者になる条件の一つです。被扶養者が給与所得のみの場合は年間103万円以下、公的年金などの雑所得のみの場合、65歳未満であれば108万円以下、65歳以上の年齢ならば158万円以下が対象の範囲です。
青色申告者の専業専従者として、年間を通じて一度も給与の支払いを受けていないこと、白色申告者の専業専従者でないことも扶養条件に当てはまります。
履歴書に扶養者の事はどう書けばよい?
履歴書の「扶養者欄」には漏れなく確実に、正しく記載することが大切です。記載漏れや空欄のままで企業に提出すると、健康保険の給付や所得税の所得控除など、手続きが取れないために支給開始日が遅れることがあります。
扶養家族の数え方
「扶養家族の人数」を記載する際、配偶者と自分自身はカウントから除外します。自分と配偶者、子どもの3人家族の場合、扶養人数は配偶者と自分を除いた「1人」です。「配偶者の有無」欄には、夫や妻などの結婚相手がいれば「有」に丸印を記入します。
扶養家族がいない場合
事実婚や内縁の妻、同棲中の方は、民法上の規定で配偶者控除が認められていないため「無」を選択します。独身者や離死別の場合は「無」となります。「配偶者の扶養義務」欄には、履歴書を書いている本人が家族を経済的にサポートしている被保険者であれば「有」に丸印を書き、被扶養者の場合は「無」の欄に記入します。
金銭的な事務手続きを確実に行うためには、扶養の欄は扶養者でも被扶養者でも、空欄にせず正しく記入することが重要なポイントです。
入社後に扶養者となった場合の手続き方法
入社後に自分が扶養者となって、家族を扶養に入れたい場合は「被扶養者届」や「被扶養者認定状況説明書」などの書類に記載の上、必要とする添付書類を付けて人事担当者に提出します。
保険給付の受け取り方
健康保険組合に被扶養者届を提出後、被扶養者として認められると、認定日以降に被保険者本人と同様、ケガや病気の治療などの保険給付を受けることができます。被扶養者の認定日として、子どもが生まれた場合は「出生日」で取り扱います。
また、入社後新たに扶養に入れる場合は、事由発生日の1ヵ月以内に届出を行い健康保険組合に受理されると、事由発生日が認定日となります。事由発生日以降に書類を提出した場合は、健保での受理日が認定日となるため注意しておきましょう。
扶養申請中に病院に行く場合は?
扶養申請中に医療機関にかかる必要に迫られた場合は、事前に健康保険組合に連絡を入れ、急病の場合は事後速やかに報告します。連絡を怠った状態で認定前に通院した場合や、認定が受理されなかった場合は全額自己負担になるため、できるだけ早い段階で申請の手続きを取ることが大切です。
被扶養者の増減時には速やかに手続きを
結婚や出産などで扶養家族が増えたり、子どもの就職などの変化点で扶養家族が減ったりした場合には、分かった時点で速やかに手続きを行います。扶養者が増えた場合、被扶養者届に沿えて必要書類を準備します。
16歳以上で収入が無い場合
16歳以上で収入がない者の場合は、内容を省略していない直近の非課税証明書の原本を用意します。16歳以上で収入のない人には、通信制の学校に働きながら通学している学生を含みます。16歳以上で収入のない学生の場合、在学証明書の原本か、有効期限が分かる学生証の写しを準備します。学生の範囲には高校や大学、大学院のほか、修学期間が6か月以上の専門学校や予備校に通う人も含まれます。
収入減がなくなった人の場合
また、退職の影響で収入源がなくなり、扶養家族としての要件を満たす場合、雇用保険失業給付の受給を希望するかしないかで必要とする添付種類が異なります。雇用保険失業給付を受給する場合は、雇用保険受給者証の原本を手元に用意しておきます。年金受給者の場合は、改定通知書等、現在の年金受給額が分かる書類の原本を提出できるようにします。同居者を扶養に入れたい場合は、世帯全員の住民票が必要となりますが、内容の省略がなく続柄が記載されているものが必要ですので覚えておきましょう。
被扶養者が減った場合
一方、就職や別居、死亡などの影響で被扶養者が減った場合、被扶養者から外す手続きを取るための被扶養者届を速やかに作成します。被扶養者が75歳以上になると、後期高齢者医療保険へ加入することになるため、被扶養者から外す手続きが必要です。扶養者や被扶養者の仕組みを知ることで、何ができるようになるかが分かるようになります。全体概要をつかみ、適切に手続きを行いましょう。
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