高卒の初任給・年収がどのくらいなのか気になる人も多いのではないでしょうか。大卒に比べて低いと一般的に言われる高卒の初任給や年収ですが、実際にはどの程度の差があるのかについて解説していきます。
高卒でも努力次第で、大卒と同じ給料をもらうことも可能です。高卒からどのようにして給料や年収を上げていくのがよいのかについても、ご紹介します。
この記事の目次
【最新版】高卒の初任給/給料について解説
そもそも、高卒の初任給はどの程度もらえるものなのでしょうか。まずは年度別、都道府県別、職種別に、高卒の給料についてご紹介します。
高卒初任給を年度別に紹介
産労総合研究所「決定初任給調査の結果」によると、過去3年間の高卒の初任給(※)は以下の通りです。
※全国1、2部上場企業と会員企業3,000社の平均
●【年度別】高卒の初任給
年度 | 高卒の初任給 |
2020年(令和2年) | 16万9687円 |
2019年(令和元年) | 16万8617円 |
2018年(平成31年) | 16万7249円 |
いずれも大きな金額の変化はなく、16万円台が平均的な高卒の初任給であることがわかります。
高卒初任給を都道府県別に紹介
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)」によると、各都道府県別の高卒の初任給は以下の通りです。
●【都道府県別】高卒の初任給
都道府県別 | 高卒の初任給 |
東京 | 17万8100円 |
神奈川 | 17万5600円 |
愛知 | 17万800円 |
北海道 | 15万8400円 |
宮城 | 16万4100円 |
福岡 | 16万3000円 |
東京と北海道では約2万円の差があるなど、地域別に高卒の初任給の額は異なり、都心部の企業のほうが給料はやや高めに設定されている傾向が見えます。
高卒初任給を職種別に紹介
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給)」、総務省「平成31年地方公務員給与の実態」を参考に、公務員(※)、製造業、卸売業/小売業のそれぞれの高卒初任給についてご紹介します。
※以下表の「公務員」は、地方公務員一般行政職の高卒初任給の全国平均
●【職種別】高卒の初任給
職種 | 高卒の初任給 |
公務員(一般行政職) | 15万988円 |
製造業 | 16万6300円 |
卸売業/小売業 | 16万8400円 |
公務員の初任給はほかの職種と比較してやや低めになっていますが、初任給には手当や賞与などの額は加味されていないため、仕事を探す際には初任給だけでなくトータルの年収も確認しておくことをおすすめします。
高卒と大卒では初任給から違う?-/給料/年収どこで差がつくか解説-
高卒の初任給についてイメージできたでしょうか。次に、高卒と大卒の初任給は実際にはどの程度違うのかや、学歴によって、給料や年代ごとの年収などが異なる理由についてご紹介します。
高卒と大卒の初年度の給料を比較
産労総合研究所「決定初任給調査の結果」によると、令和2年(2020年度)の高卒と大卒の初年度の給料(初任給)は以下の通りです。
●高卒と大卒の初年度の給料
高卒 | 大卒 |
16万9687円 | 20万9014円 |
高卒と大卒の初年度の給料には約4万円の違いがあることがわかります。年間換算すると約48万円、10年換算だと約480万円の差があるということです。
ただし大卒の場合は大学の学費が数百万円かかっていて、奨学金を借りていた場合は毎月給料から返済が必要です。高卒はその費用負担がないということは理解しておきましょう。
高卒と大卒の初年度の年収を比較
厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査(初任給…※1)の概況」によると、令和元年度の高卒と大卒の初年度の年収(※2)は次の通りです。(男女計)
●高卒と大卒の初年度の年収(男女)
高卒 | 大卒 |
200万8800円(月16万7400円) | 252万2400円(月21万200円) |
これを見る限り、高卒と大卒では年収でおよそ50万円の差があることが分かります。
なお、男女別に示すと、男性は以下の通りです。
●高卒と大卒の初年度の年収(男性)
高卒男性 | 大卒男性 |
202万6800円(月16万8900円) | 255万3600円(月21万2800円) |
女性は、以下のようになっています。
●高卒と大卒の初年度の年収(女性)
高卒女性 | 大卒女性 |
197万5200円(月16万4600円) | 248万2800円(月20万6900円) |
男女ともに、高卒と大卒の初年度の年収の差はおよそ50万円です。男女別に見てみると、男性のほうが女性よりも高卒・大卒それぞれで年収が約5万円高いことも見て取れます。
※1 初任給:通常の所定労働時間日数を勤務した新規学卒者の令和元年6月分の所定内給与額(所定内労働時間に対して支払われる賃金。基本給のほか諸手当が含まれているが、超過労働給与額は含まれていない)から通勤手当を除いた額
※2 年収:※1「初任給」を12倍(12カ月分)した額
高卒と大卒の年収推移
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」によると、高卒と大卒の20代〜40代の年収推移にはやはり違いが見られます。
高卒は、以下のようになっています。
●高卒の年代別年収推移
年代 | 年収(月の給料) |
20代 | 331万2900円(月27万6000円) |
30代 | 406万2100円(月33万8500円) |
40代 | 473万3000円(月39万4400円) |
大卒は、以下のようになっています。
●大卒の年代別年収推移
年代 | 年収(月の給料) |
20代 | 375万4400円(月31万2900円) |
30代 | 533万8400円(月44万4900円) |
40代 | 677万2400円(月56万4400円) |
上記のデータからわかる通り、20代のうちは高卒と大卒の年収差は小さくなっていますが、年齢が上がるとともに、年収差が開いていくことがわかります。
高卒と大卒は生涯賃金で差がつく
前述の通り、高卒と大卒では初年度の時点で年収におよそ50万円の差があります。独立行政法人労働政策研究研修機構「ユースフル労働統計2020 ―労働統計加工指標集―」を見ると、男女の生涯賃金(※1)は次のようになっています。
男性の生涯賃金は、以下の通りです。
●男性の生涯賃金(高卒・大卒)
高卒 | 大卒 |
2億1000万円 | 2億7000万円(※2) |
女性の生涯賃金は、以下の通りです。
●女性の生涯賃金(高卒・大卒)
高卒 | 大卒 |
1億5000万円 | 2億2000万円(※2) |
上記を見る限り、男性ではおよそ6000万円、女性ではおよそ7000万円の差が開いています。
なお、企業規模別に見ると生涯賃金の差が大きくなる傾向も見られ、たとえば男性の大学/大学院卒の場合には企業規模10~99人では約2億円、一方で企業規模1000人以上では約3億1000万円と、同じ大卒でも大企業のほうが、やはり生涯賃金は高くなります。
ただしこのデータは「60歳までフルタイムの正社員だった場合」です。そのため、途中で働き方を変えたり、独立や起業をするなどして正社員でなくなったりした場合などはまた変わってくるでしょう。
※1 学校卒業後、フルタイムの正社員を続けた場合の60歳までの生涯賃金(退職金を含めない)をもとに算出
※2 大学院卒も含む
高卒と大卒の初任給に違いが生じる理由
前述の通り、高卒と大卒では給料や年収に差があります。ですが「高卒だからずっと低収入のまま」などと思い込んで悲観する必要はありません。
高卒と大卒の初任給や年収が違う理由と、高卒からの給料アップは可能なのかについて解説します。
日本はまだ学歴社会が残っている
多くの日本企業では、学歴をある程度重視しています。高卒と大卒で給料が異なる企業は一定数あるほか、そもそもの応募資格を「大卒以上」としている企業もあります。
企業によっては大卒のほうが昇進スピードが早い、役職に就きやすい傾向も見られます。また、一部の大手企業などでは「〇〇大学△△学部出身者」「〇〇大学××部出身者」などによる「学閥」があるところも一部あります。
学歴は企業から見たらわかりやすい努力の証
企業が学歴を見る理由として「学歴は本人の努力の証だから」という点があります。一定レベルの大学を出ているということは、ある程度時間をかけて受験勉強をやり遂げ、入学後も必要な単位を取得して学んできたということです。
もちろん「高卒は努力していない」と判断されるわけではありません。しかし、客観的な指標として「大卒=一定の能力がある人、がんばって成果を出せる人」と見なされやすいのは確かです。
初任給は違えど、努力すれば給料アップは可能
前述の通り、一般的には大卒よりも高卒の初任給は低めです。しかし、入社後の努力によって、給料を上げていくことはできます。
まずは仕事で成果を出して昇進・昇格を目指すことはもちろん、働きながら資格を取得して資格手当をもらう、自分に合った職種を選んでスキルを身につけていくなど、高卒で就職してからも収入を増やしていく方法は複数あります。
高卒必見!-業界別年収ランキング-
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」をもとに、業界別の年収ランキングをご紹介します。
たとえ同じ仕事をしていたとしても、業界が違えば年収は異なります。少しでも年収を上げたいという高卒の方は、ぜひこのランキングも参考にして、業界選びに取り組んでみてください。
1位:インフラ業界
「インフラ業界(電気ガス熱供給水道業)」の平均年収は622万円です。
インフラ業界の年収が高い理由は、人がほとんど介在していないビジネスだからです。基本的に多くの仕事は、サービスや製品の供給から、それらが会社や消費者に届くまでに多くの会社人が介在しています。そのため利益率が低く、結果的に供給者側に残る手残りが少なくなるため、社員の給料が低く抑えられてしまう傾向があります。
一方で、たとえば電気の供給の場合には、発電所の管理などの仕事はあるものの、それらを除けば人や会社が介在する余地は多くありません。つまり仲介が入る仕組みではないため人件費が抑えられ、その分の給料がインフラ業界の社員に高年収という形で還元されているのです。
大卒と高卒の人数の割合は、下記の通りです。
- 高卒:約60%
- 大卒:約18%
高卒の人の割合のほうが高くなっていて、学歴がない人でも就職できる可能性は大いにあります。
2位:情報通信業
情報通信業の平均年収は621万円です。
情報通信業の年収が高い理由は、新規参入が難しいからです。情報通信業とは、携帯電話業やテレビなどの放送業、サーバ運営業などが含まれますが、これらの多くは法律で厳重に守られています。つまり一から新規参入するのが難しく、既存の会社に収益が集中するため、情報通信業に勤める社員の年収は、比較的高くなっているのです。
大卒と高卒の人数の割合は、下記の通りです。
- 高卒:約9%
- 大卒:約59%
採用においては学歴が重視される傾向があるため、高卒の場合、就職は少し苦戦するかもしれません。ただし携帯電話ショップの店員などの販売職は、学歴がなくとも就職しやすい仕事です。
3位:金融/保険業界
金融/保険業界の平均年収は613万円です。
年収が高い理由は、人件費があまりかからないビジネスだからです。たとえば株の売買にあたっては、一度株を買ってもらえたらその先は継続的に手数料が収益として入ってきます。
保険料も同様です。もちろん金融商品を顧客に販売する営業社員などは多く必要ですが、自動的に収益が入ってくる仕組みも構築されているため、ほかの業界より収益性が高く、結果的に金融/保険業界で働く人の年収の底上げにつながっているのです。
大卒と高卒の人数の割合は下記の通りです。
- 高卒:約21%
- 大卒:約59%
高卒でも就職しやすい業界であり、なかでも、保険会社の営業職は学歴が重視されないことも多くなっています。
4位:教育/学習支援業界
教育/学習支援業界の平均年収は582万円です。
教育/学習支援業界の年収が高い理由には、労働時間の長さが関係しています。たとえば学校の教職員や学習塾の講師の場合には「過重労働」が社会的な問題になっています。
公立学校の教員の場合は「給特法」という法律が適用されていて、あらかじめ残業代を上乗せした給料になっています。しかし休日出勤や持ち帰り仕事なども多く、仕事自体はハードであることも実情です。
大卒と高卒の人数の割合は、下記の通りです。
- 高卒:約8%
- 大卒:約44%
教育に関する仕事は、やはり大卒の方が就職には有利です。ただし資格が必要な仕事の場合には、専門学校や短大卒なども問題なく仕事に就けるでしょう。
5位:建設業
建設業の平均年収は540万円です。年収が高い理由は、人件費が高騰しているからです。
人件費が高い理由は、主に下記の3つです。
- 人材が不足しているから
- 技術者の高齢化が進んでいるから
- リニア新幹線、大阪万博、インフラ工事など今後も大型の工事が多いから
わかりやすくいうと人材不足が理由で、年収が高めに設定されているといえます。
大卒と高卒の人数の割合は下記の通りです。
- 高卒:約47%
- 大卒:約27%
現場で身体を動かす仕事も多く、学歴よりも仕事への適性が重視されることから、高卒でも就職しやすいことが考えられます。
高卒の給料アップの秘訣を紹介!-方法次第では年収1,000円以上も可能!-
高卒と大卒の初任給や年収の違いとその理由を把握できたでしょうか。最後に、高卒者が給料をアップするための秘訣についてご紹介します。
秘訣1.単純労働以外の職に就く
マニュアルなどに沿って取り組めば誰でもできる、特別なスキルや知識が必要ないなどのいわゆる「単純作業」の仕事は、長期的なキャリアの面で考えるとおすすめできません。
もちろん単純作業といっても立派な仕事であり、それによって世の中が成り立っていることは確かです。ただし、ひたすら同じ作業を繰り返したり、あまり頭を使わなくてもできたりする仕事の場合「数十年後も同じ仕事をして生活できるか」という点では、少々厳しい面があります。
どの企業でも活躍できる専門スキルを身につける職に就くことで、将来の選択肢も広がります。たとえば営業職は比較的転職もしやすく、他業種へ方向転換した際にも役立つ傾向があります。
秘訣2.実力主義の会社へ就職/転職する
学歴不問など実力主義の企業で働くのは、高卒者には特におすすめです。理由は、学歴によるコンプレックスを感じたり、不利になったりする機会が格段に少ないからです。
たとえば小売業などの場合「大学卒」「大学中退」「専門学校卒」「高卒」など、働いている人の学歴がバラバラだったり、高卒の上司が大卒の部下を指導しているケースも見られます。これは、企業が学歴よりも人間性や適性、前職や保有スキルなどを見て採用し、入社後は学歴に関係なく、実績や社内試験など本人の実力に応じて昇進・昇格をしているということです。
インセンティブ制度が導入されている企業で働くのも、収入やモチベーションアップのためによいでしょう。仕事の業績や成果などに応じて給料やボーナスなどの金額に反映されたり、お金だけとは限らず、表彰や品物などが贈られたりすることもあります。
秘訣3.平均年収の高い企業・業界へ就職する
平均年収の高い企業/業界に就職することで、年収アップを狙うことができます。
たとえばインフラ業界は年収が比較的高く、高卒でも多くの人が就職している業界のため検討の余地があるでしょう。一方でサービス業なども高卒が就職しやすい業界ですが、年収が全業界のなかでも低く、年収アップを視野に入れた転職の場合にはあまりおすすめできません。
ただし、平均年収が高い企業/業界は、事前のリサーチが必須です。学歴がなくとも高収入が可能であるということは「それなりの理由」があることも多いため、ミスマッチになるリスクもあるからです。たとえば拘束時間が長い、ノルマが厳しい、試験に合格しないと給料が上がっていかないなどが考えられます。
秘訣4.目先の給料ではなく、自分のスキルの向上を図る
高卒であっても就職してある程度キャリアを積めば、同じ職種で給料が高い企業に転職することはできるでしょう。最初に就職した企業で給料に不満が出たとしても、給料を上げたいことだけが目的なのであれば、いまよりも待遇のよい企業への転職に成功すれば解決します。
ただし、いまの給料だけを重視するよりも、スキルアップを意識して働くほうが将来的に収入を増やすことにつながるため、おすすめです。仕事のスキルを磨いていくことは自己投資の一環であり、身についたスキルが誰かに奪われることはありませんし、結果として自分のためになることなのです。
秘訣5.独立・起業
将来的に年収1000万円以上を稼いでいきたい人は、独立や起業も視野に入れてみるのもひとつの方法です。会社員の場合、どれだけその会社で成果を上げても、年収には上限があります。役員や社長などを目指す方法もありますが、一定規模の組織のなかでトップクラスまで出世できる人はごくわずかです。
自分でビジネスを興して軌道に乗れば、自分の手元に入ってくる収入を増やしていくことができます。うまく時代の流れに乗りビジネスを大きくすることができれば、20代で年収1000万円も夢ではないかもしれません。
もちろん簡単なことではなく、稼げないリスクも当然あることは理解しておくべきです。しかし学歴が一切影響せずに高収入を目指せる方法としては、独立・起業は現実的ともいえます。
まとめ
高卒の初任給は、大卒より低い面はどうしてもあります。年代が上がるごとに、給料や年収でも差が開いていく傾向があります。そこがどうしても気になるのであれば大学に行くか、今回ご紹介したように、実力主義の企業への就職/転職などがおすすめです。
ただし、高卒で低い初任給からスタートしても、その後の給料を上げていくことは可能です。ジェイックでは、高卒の方の長期的なキャリアを考えた就職支援も実施していますので、ぜひご相談ください。
こんな人におすすめ!
- 自分に合った仕事や場所を見つけたい
- ワークライフバランスを重視したい
- 会社に属する安定ではなく、能力/スキルの獲得による安定を手にしたい
「高卒の給料」に関するよくある質問
2020年度の高卒の初任給は16万9687円です。16万円程度が基本で、都道府県や職種によってもやや変わってきますが、ほとんどが15~17万円代です。高卒の初任給の平均は、そこまで大きくは変わらないと考えてよいでしょう。
高卒で就職したものの、初任給の額に不満があるという方もいるでしょう。その場合、まずは現状の分析が先決です。初任給が低いからと安易に退職してしまうと、転職が難しくなる可能性があります。まずは、就職や転職のプロへ相談するのがおすすめです。ぜひジェイックの「就職相談」をご利用ください。
高卒の方が給料アップのためにできる秘訣として、いわゆる単純労働の仕事に就くことは避ける、学歴を問わない実力主義の会社を選ぶ、自分のスキルを磨いていく、の3つが考えられます。