公務員は終身雇用が一般的であり、それは自衛官も変わりません。しかし、自衛官には終身雇用とは別に、任期を満了すれば退職を選択できる任期制も存在します。終身雇用と任期制の違いはどのようなものでしょうか。この記事では、任期制自衛官の特徴や任期期間とともに、任期を満了すれば受け取ることが満了金やその他のメリットなどについて紹介していきます。
この記事の目次
自衛官の任期制とは?
自衛隊入隊者は「自衛官候補生」と呼ばれ、最初の3ヶ月は国防や災害派遣の重要性などを学びながら、自衛官として活動するための基礎的な訓練を受けることになります。訓練期間終了後は、それぞれの希望や適性に沿って陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊、どの隊に入隊するかを選択します。任期は隊によって差があり、陸上自衛隊であれば1年9ヶ月、海上・航空自衛隊であれば2年9ヶ月です。そして任期を満了すると民間に就職するか、引き続き自衛官として任期を継続するか選択することが可能になります。つまり任期制自衛官は、自分の希望に合わせて将来進む道を選択することができるわけです。
自衛官の任期制の待遇について紹介!
自衛官の職責は国防にあるため、任期制自衛官と言えど日々の訓練や任務が過酷であろうことは想像に難くありません。一般企業に勤めた場合のように、休日やプライベートな時間を持つことは難しいのではないか、と考える方もいるでしょう。しかし、任期制自衛官になったとしてもプライベートな時間を持つことは可能です。
任期制自衛官の休日は週休二日制となっており、心と身体をリフレッシュするための時間は十分持つことができます。他にも夏冬の長期休暇や年次休暇も設けられているので、帰省や旅行なども計画しやすいでしょう。このように任期制自衛官の休日面に関する待遇は、一般企業に勤めた場合と大差ないものになっています。
給与面はどうでしょう。教育訓練中の自衛官候補生の場合、毎月13万円程度が支給されることになっています。その後任期制自衛官として入隊すると、勤務年数に応じて昇給していきます。6ヶ月まではおよそ16万7千円、さらに1年まではおよそ19万円までアップするので、比較的短期間で昇給することが可能だと言えるでしょう。そして任期制自衛官は、所属する隊により金額は異なりますが、任期を満了するごとに任期満了金を受け取ることができます。
任期制自衛官は配属先によって任期が変わる!
先に少し触れましたが、自衛隊は陸上自衛隊・海上自衛隊・航空自衛隊の3部隊から構成されています。任期制自衛官はいずれかの部隊に、本人の希望と適正を考慮して配属されるわけですが、配属される部隊によって任期に違いがある、ということも解説しました。ではなぜ配属される部隊によって違いがあるのでしょう。それは特技・術科教育期間の差によります。
陸自・海自・空自いずれの部隊も、3ヶ月の教育期間が設けられていることは共通しています。しかしその後の特技・術科教育期間は配属先にもよりますが、海自・空自は陸自よりも長期間設けられているのです。陸自が8~13週であるのに対し、海自は15~52週、空自は4~46週となっています。この差は海自・空自の専門性に起因しています。海自・空自では船舶や航空機などを扱うため、専門的な知識や技術を習得するのに時間が掛かることを考慮して、特技・術科期間が長く設定されているのです。そのため、教育期間3ヶ月を含めた最初の任用期間は陸自で2年、海自・空自で3年となっています。
ただ、陸自の中でも一部技術系は、最初の任用期間が海自・空自と同じく3年となる場合があります。理由は海自・空自と同じく専門性によるものです。このように陸自・海自・空自では最初の任用期間が異なるので、任期満了金にも差があります。しかしこの差は先程説明したように任期期間による差なので、部隊の格や重要性などとは一切関係がありません。
任期制自衛官が受け取る任期満了金について
陸上自衛官、海上・航空自衛官には、それぞれ決められた任期があり、任期満了まで勤務すると、任期満了金が給付されることは前段で解説しました。任期満了金は特例退職手当とも言うのですが、具体的な額はどれくらいになるのでしょう。それは陸士(陸上自衛官)でおよそ57万円、海士・空士(海上・航空自衛官)でおよそ94万円となっており、この額は任期が長いほど加算されていきます。たとえば2回の任期が満了した場合、陸士でおよそ144万円、海士・空士でおよそ150万円が給付されることになります。
任期満了金の扱い方のポイント!
任期満了金は毎月の給与よりもかなり高額です。たとえば2任期を満了した場合、陸士はおよそ201万円、海士・空士はおよそ244万円を受け取ることができます。これだけのまとまった額なら、頑張った自分へのご褒美として少しくらい散財してもいいだろうと考える方がいるかもしれません。もちろん自分のお金なのでどう使おうと自由ですが、お金を使う前に知っておかなければならないことがあります。それは、任期満了金はボーナスではないということです。
任期制自衛官の任期は2年、もしくは3年です。つまり、任期を全うすれば退職することになります。任期を継続した場合も、契約上は1度退職し、新たに入隊した、ということになるのです。たとえば海士もしくは空士で2任期、合計4年間自衛官として勤務した場合、2年で満了する任期を2回全うして2回退職したことになります。そのため、任期満了金はボーナスではなく、退職金としての色合いが強いと言えます。
また、任期制で勤めている間は入隊と退職を繰り返していることになるので、その期間は退職金の算出期間に入りません。そのため、仮に定年まで勤めても、退職金は一般企業に勤めた場合より少なくなっているでしょう。将来のことを考えれば、任期満了金は退職金を分割して支給されているのだと捉え、貯蓄に回すのも選択肢の1つです。
任期満了金の受け取り方のポイントもチェック!
任期満了金は任期を満了するごとに支給されるのですが、任期を満了するごとに受け取るか、最後の任期満了時にまとめて受け取るかを選ぶことができます。満了金は受け取り方で総額に差が出るので、少しでも増やしたいならまとめて受け取った方がお得です。たとえば3任期を満了した場合、最後にまとめて受け取ると、満了ごとに受け取るよりも20万円程多く受け取ることができます。なぜこのような差が出るかと言うと、満了金の計算は給与額がポイントになるからです。任期ごとに受け取る場合、退職時点での給与額と支給日数をもとに満了金を計算します。しかしまとめて受け取る場合、任期ごとの支給日数は合算されています。その全てと昇給した給与額を元に計算することができるので、満了金が大きくなるのです。
自衛官の定年は民間企業よりも短い
公務員の定年は60歳ですが、自衛官の場合は少し異なります。60歳で定年を迎える自衛官もいますが、それはごく少数です。自衛隊では「若年定年制」と「任期制」を採用しており、多くの自衛官が若年定年制で採用されています。そのため、ほとんどの自衛官は50代前半までに定年を迎えます。自衛官の定年は階級によって段階的に設定されており、将や将補であれば60歳、2~3曹であれば53歳です。階級が上の者ほど、定年を迎える年齢は高く設定されています。
一方、任期制で採用されるのは「自衛官候補生」、いわゆる任期制自衛官です。自衛官候補生として採用されるのは18歳以上27歳未満の者に限られます。任期が定められている点を考慮すると、一般企業で言うところの契約社員にあたると言えるでしょう。任期制自衛官の定年は任期満了日とされているため、多くの任期制自衛官が20代~30代で定年を迎えることとなります。
また、自衛隊を退職する理由として定年の他に、自己都合退職や死亡による退職が挙げられます。自己都合退職は一般企業でも見受けられますが、死亡による退職はあまり見かけないでしょう。自衛官の任務は危険なものもあるので、他の仕事よりも過酷であると言えます。その厳しさに耐えるためには強い身体が必要です。言い換えれば、加齢による衰えがダイレクトに職務遂行能力に影響する仕事だと言えます。そのため、他の職業よりも定年が早めに設定されているのです。
任期制自衛官のメリット
まずは任期制自衛官のメリットを確認していきましょう。ここでは2つご紹介します。
メリットその1:資格を取得できる
任期制自衛官は他の職業よりも定年を迎える年齢が若いです。しかし、任期制自衛官になれば勤務上必要な技術を習得する他に、様々な資格を取得することができます。その数はおよそ50種類にものぼり、技能訓練科目も用意されています。たとえば大型特殊自動車や自動車整備などは、運輸関係の就職に有利な科目です。ニーズが高まっているIT企業や医療施設への就職を希望するなら、パソコン基礎を学んだりホームヘルパーの資格取得を目指せる環境もあります。また、マンション管理士やリフォーム関連の資格も、民間企業へ就職する際に有利な資格と言えるでしょう。このように、任期制自衛官になれば様々な資格取得を目指したり、就職に有利な知識を学ぶことができます。
メリットその2:生活費の負担が少ない
任期制自衛官になるメリットは他にもあります。一般社会で日常生活を送ろうと思えば、生活費が必要です。家賃や食費など様々な面で費用が掛かります。しかし任期制自衛官になれば、生活費を抑えることができます。まず、自衛隊には無料で利用できる宿舎が用意されており、家賃を払う必要がないので住居費が発生しません。食事は栄養バランスが整ったものが支給されるので、毎日を健康的に過ごせます。制服や作業服、寝具なども支給・貸与されるので、生活費をかなり抑えることが可能なのです。そのため、給与の多くを貯蓄や趣味に回すことができます。
自衛官が任期満了したときの選択肢には何がある?
任期を満了した自衛官は、今後の進路について選択を迫られます。それは自衛隊に残るかどうか、ということについてです。自衛隊を退職するのであれば、必然的に民間企業への転職を目指すことになります。しかし自衛隊に残るのであれば、継続任用の他に選抜試験を受けて昇進を目指す道もあります。選抜試験に合格すれば曹に昇進できるので、そうなれば50代までは自衛隊に務めることが可能です。自衛官は公務員なので民間企業と比べれば仕事は安定している他、福利厚生の充実など多くの面でメリットがあります。もし自衛官が自分に向いていると感じるのなら、昇進を目指すのも選択肢の1つとして考えてみてもいいかもしれません。
ただ、自衛隊にメリットが多い一方で、民間企業にも多くのメリットがあります。たとえば自衛官は集団生活が基本なので、生活の様々な面でルールを守らなければなりません。それは業務時間に限った話ではなく、業務前後においてもです。しかし民間企業に勤めた場合は、基本的に業務前後の時間は完全にプライベートな時間です。それに民間企業は多種多様な事業を展開しているので、本当に自分がやりたい仕事を探すことも可能です。
自衛隊を退職すべきかどうかで迷っているなら、ひとまず継続任用しておくのも1つの手です。1度任期を全うしたのならば、自衛隊に残っても仕事に関する苦労は転職するよりも少ないでしょう。そして次の任期満了までに自分はどうしたいのか、方向性をきちんと定めるのです。もしやりたいことや就きたい仕事が明確にイメージできているのなら、任期満了は退職のタイミングとしては最適です。上官に引き留められるかもしれませんが、自分の決意と覚悟を話して理解してもらいましょう。
自衛官が任期満了時に金を受け取るときの注意点
先に述べましたが、任期制自衛官の勤務期間は退職金の計算対象外です。そのため、任期満了金はボーナスではなく退職金の一部だと考えておきましょう。また、民間企業へ転職した場合でも、自衛官として勤務していた年数は退職金の対象になりません。この点はよく認識しておく必要があります。まとまったお金があると「少しくらい使ってもいいか」と油断しがちです。もう一度言いますが、任期満了金はボーナスではなく、退職金の一部です。それを踏まえた上で、受け取った任期満了金は適切に管理するよう心掛けましょう。自衛官として勤務していれば生活費はかなり抑えることができるので、毎月の給与だけでも十分やっていけるはずです。
任期制自衛官は企業に人気の人材!
企業が任期制自衛官を雇用するメリットは多くあります。通常、企業が採用活動を行う場合、広告料や人材紹介手数料など採用コストが掛かります。任期制自衛官は国が助成する就職支援を受けることができるので、企業側が負担する費用は主に人件費だけで済ませることが可能になるのです。また、任期制自衛官の能力が高いことも挙げられます。自衛官は集団生活が基本なので、礼儀作法や忍耐力、協調性などに優れた人材だと考えられているのです。また、多様な技術・知識を身につけているので、職種によっては即戦力として期待されています。さらに自衛隊での訓練によって気力・体力は充実しており、ストレス耐性も高いので企業に定着しやすい点も大きな魅力です。
企業に人気の自衛官!任期満了時には継続・転職を選択しよう
自衛官は常日頃から己を律し、仲間と協力しながら過酷な訓練や任務にあたっています。その中で培われた人間性や能力は、民間企業においても活躍できる下地となります。だから民間企業からの信頼も厚いのです。任期制自衛官は任期満了後、就職支援を受けて民間へ再就職するか、継続して昇進を目指すのかを選ぶことができます。もし進路を決めかねているのなら、任期制自衛官という選択肢も一考の余地があるのではないでしょうか。
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