高卒採用は例年通り実施されていますが、2021年卒の高校生は、新型コロナウイルス感染拡大の影響でスケジュールが変更になりました。2022年卒も日程が変わる可能性があるため、動向をチェックしましょう。
この記事では、高卒採用における新型コロナウイルスの影響、高卒採用のスケジュールや基本的なルール、高卒採用で就職するメリット・デメリットについてご紹介します。
高卒の採用はコロナでどう変わる?
厚生労働省の「令和2年度の高校生の就職活動日程の変更について」によると、21卒(2021年3月卒業)の高卒採用のスケジュールは、新型コロナウイルス感染拡大による影響で、選考スケジュールの一部が変更になっています。
具体的には、以下のように変わっています。
つまり今回は、就職活動の日程が通常よりも1か月後ろ倒しになっているということです。これは、新型コロナウイルス感染拡大が理由で就職活動に影響が出てしまうことを防ぎ、就職準備期間を確保することが目的です。
新型コロナがいつ頃収束するか、現時点ではまだ見えていません。そのため、22卒(2022年3月卒業)の高卒採用のスケジュールも、今回同様変更になる可能性もあります。22卒の高校生も、日程変更が起きる可能性もあることを視野に入れながら、就職活動をする必要があります。
高卒採用の全体スケジュールを紹介
高卒採用の全体スケジュールとその内容をご紹介します。21卒に関しては新型コロナウイルスの影響で時期がずれていますが、基本的な内容は変わりません。就職活動の流れを理解しましょう。
4月~5月-採用準備期間
企業の採用準備期間です。企業の採用担当者はこの期間に欲しい人物像を決定したり、自社の強みを確認したりします。求人情報が公開される前に実施される「名刺交換会」の情報収集や、求人情報に記入する内容の確認も行われます。
高校生はこの期間に採用スケジュールを確認し、名刺交換会について調べておくようにしましょう。4月~5月は進級したばかりのタイミングでなにかと落ち着かず、就活のことまで意識できないという人も多いと思いますが、早めに情報を集めることで効率的に進められます。
6月-企業からハローワークへ求人票の提出が始まる
高卒採用の求人は、ハローワークで内容が確認された後に高校生へ求人情報が公開されます。ハローワークの確認印がない求人票は無効で、採用活動は認められません。企業からハローワークへ求人票の提出が始まるのは、6月1日です。
ハローワークへ提出された求人票は内容を確認された後、ルールに従って情報が解禁されます。高校生はこの時点で求人を確認できませんが、学校によっては去年の求人を使って、生徒に求人票の見かたなどを学ばせることもあります。
7月前半-求人情報の公開が解禁される
ハローワークに確認された求人票の情報が解禁されるのは7月1日です。同時に学校訪問も解禁されるため、企業の採用担当者は求人票を学校に持参して進路担当者へ挨拶することが多くあります。
高卒求人の出し方は「指定校求人」と「公開求人」があり、それぞれの方法に従って企業が求人を公開します。
指定校求人
指定校求人は指定の学校に求人を公開する採用方法です。指定校求人を採用している企業へ応募する際は、学校の推薦が必要です。一般的には、学校内で成績をもとにした選考が行われ、通過した高校生が学校推薦をもらえます。
公開求人
公開求人とは、高卒就職情報WEB提供サービスで求人票を公開する採用方法です。企業がハローワークへ求人票を提出する際に「公開希望」を選ぶと、翌年の6月までハローワークのWEBサイトに求人票が掲載されます。
公開求人は指定校求人とは異なり、どの高校へ通っている人でも応募できるため、企業は良い人材を集めるためにPR活動を行います。PR内容は企業によって異なりますが、公式サイトで高卒社員の働き方などを紹介する企業が多くなります。
高校生が公開求人情報を閲覧するには、高校に割り当てられているハローワークのIDやパスワードが必要となるため、高校の先生に相談しましょう。
7月後半~8月-企業のPR活動が活発化
7月後半になると、企業のPR活動が活発化します。高校生は部活を引退して夏休みに入る時期です。「一息つきたい」と考える人もいると思いますが、9月から本格化する採用活動に乗り遅れないように就活を進めましょう。
夏休み期間は職場訪問や会社見学などが実施されていることも多いので、積極的に参加して自分に合った企業を探すのがおすすめです。
9月-応募開始
9月5日になると、学校から企業へ生徒の応募書類を提出できるようになります。そして、9月16日に選考と内定が開始されます。
一般的に、高卒の採用では合否結果は1週間以内に届きます。高卒採用は内定をもらった企業に必ず就職しなければならないので、内定をもらった時点で就活は終わりです。
翌年の4月-就業
高卒採用の雇用開始は4月1日です。雇用開始までには内定者交流会や研修などが実施され、就職に向けての準備が進められることが多くなります。
高卒採用のルールを解説
高卒採用の基本的なルールについて、それぞれ解説します。
学校斡旋と自己開拓
高卒就職のメインの方法である「学校斡旋」と、それ以外の方法のひとつとして「自己開拓」をご紹介します。これらのほかには、親や親戚、知り合いなどの会社に就職する「縁故就職」があります。
学校斡旋
自分が通う学校にある求人情報のなかから希望する企業を選び、学校からの推薦のような形で採用試験を受けるものです。つまり、学校から紹介された企業を受けるという方法です。大半の高卒採用は、学校斡旋によるものです。
自分で就職先を探してくる「自己開拓」と、家族や親族などの紹介による「縁故就職」がありますが、この方法で就職する生徒はごく少数です。
自己開拓
学校からの紹介ではなく、自分で就職先を探す方法です。高卒を対象としたインターネットの求人サイトや企業説明会などに参加するなどの方法が考えられます。少数派ではあるものの、なかには自己開拓で就職する高卒生もいます。
自己開拓は自分が興味のある仕事やより自分に合う企業を見つけられる可能性がある一方で、情報収集力や行動力、企業が怪しくないか見極める力などがないと、成功させるのは簡単ではありません。
1人1社制
大学生の就活は数十社の選考を併願して進めるのが一般的ですが、高卒採用には「1人1社制」というルールがあり、基本的には数社の選考を同時に進められません。
高卒採用は1人1社制が基本
1人1社制とは、1人の高校生が選考を受けられるのは1社のみというルールです。高校生は第一志望の企業のみの選考を受け内定をもらった場合は、その企業で働きます。採用されなかった場合は、不採用通知を受け取った後に、次の企業を探すことを認められます。
これは就就職活動によって高校生活に支障をきたすことがないように、また就職希望者の内定率を高めることなどを理由に定められた、高卒採用独特のルールです。
ある時期になると2社への応募が可能
1人1社制は高卒採用ルールの基本ですが、東京などでは10月1日以降、企業が複数社応募を認めた場合にのみ、同時に2社の求人に応募できます。
高校生の場合、1人1社制の時期に採用試験を受けた企業に受かればそこで就活は終了し、ほかの企業を受けることはできません。決まらなかった場合に、その後2社への応募が可能となるのです。
地域で時期やルールが異なるため要確認
1人1社制のルールは都道府県ごとに決められます。そのため、細かいルールは選考を受ける企業がある都道府県によって違うことには注意が必要です。
例えば、多くの県では10月1日以降に2社の求人への応募が可能となりますが、大阪府や愛知県など、2社への同時応募が認められるのは11月1日以降というところもあります。なお、秋田県と沖縄県は1人1社制を採用しておらず、最初から、1人3社まで同時に選考を受けられます。
求人票
高卒採用の求人票はほとんどの場合、学校の進路指導室などで閲覧できます。主に、以下の要素が記載されています。
- 雇用・就業形態
- 職種・仕事の内容
- 就業場所等
- 加入保険・福利厚生等
- 賃金形態等
- 手当
- 月額の計算について
- 賞与・昇給について
- 就業時間
- 時間外
- 休日等
- 応募・選考について
- 補足事項・特記事項について
- 青少年雇用情報
面接
高卒採用では、面接に関してもさまざまなルールが決められています。
書類選考のみの採用はない
高卒採用では書類だけで合否を決めることは認められず、面接や適性検査、一般常識テストなどが行われます。
書類選考だけで合否を決めた場合、ハローワークから企業に対して指導が入ります。なお、履歴書や調査書など必要書類の提出は必要です。高卒採用で用いられる履歴書や調査書は全国統一式用紙となっており、企業は高校生や学校に対して、それ以外の書類の提出を要求できません。
面接は1回が基本
高卒採用の選考はできるだけ1日で済ませることが求められています。2日以上に渡って選考を実施しても罰則はありませんが、ほとんどの企業は1日で選考を行います。面接も新卒や中途採用のように何回も実施するのではなく、1回がほとんどです。
面接と別の日に一般常識テストなどを実施する企業も存在しますが、この場合は連日で選考を行うことが多くなります。
面接の質問内容は制限されている
高校生の潜在能力を確認したり、就職差別をなくしたりするために、高卒採用の面接では質問内容に制限があります。具体的には次のような質問が、企業が高卒の就職希望者に尋ねてはいけない違反質問です。
- 住所
- 両親の職業
- 家族構成
- 尊敬する人物
高校生は、面接後にハローワークへ受験報告書を提出します。受験報告書には違反質問についての確認項目があるため、企業が面接で違反質問をした場合は、ハローワークが確認して、企業に指導することになっています。
身元調査のような内容や、本人の自由であることを面接で聞き出して企業が合否の参考にすることは厳しく禁止されているのです。
高卒採用で就職するメリット・デメリット
高卒採用で就職するメリット・デメリットをそれぞれご紹介します。
高卒採用で就職するメリット
高卒採用で就職するメリットは、以下が考えられます。
平等に就職の機会を得られる
高卒採用を目指す場合、基本的には学校に届いた求人のなかから応募先企業を選び、選考を受けることができます。1人1社制が採用されていたり、先生が親身になってくれたりすることもあり、就職を希望すれば平等にその機会が得られます。
これが既卒やフリーター、中途になると、サポートしてくれる機関やサービスなどを利用することはできるものの、基本的に自分で行動しなければいけなくなります。大学生の新卒採用も、学校が手取り足とり就職のお世話をしてくれるわけではありません。
学校のフィルターを通した求人のため安心
高卒採用は学校からの紹介がほとんどです。つまり、学校がチェックした求人のなかから応募することになるため、怪しい企業やブラック企業などに入社してしまうリスクは比較的少ないといえます。
学校としても、あまりに問題のある企業に生徒を就職させてしまうと、悪い評判が立ってしまうことにもなりかねません。企業側も学校を通した求人であるということで、法律やルールなどを守っているところが多いでしょう。
高卒を採用したい企業と出会える
学校に届いている求人は、高卒採用を中心としたものです。つまり、高卒を採用したいと考えている企業が基本であるということです。
企業によっては「大卒以上」と定めていたり、高卒を採用した実績がないというところもあります。一方、高校生を対象に求人を出している企業は、応募者が高卒であることを理解しています。
学歴や経歴などでなく、学生の人間性や適性などを重視して採用する企業であることは、高卒での就職を目指す人にとっての安心材料となるでしょう。
高卒採用で就職するデメリット
高卒採用で就職するデメリットは、以下が考えられます。
学業と同時並行のため負担が大きい
高卒採用の準備は、高校の勉強と同時進行でやらなくてはいけません。学校の課題やテスト、部活、学校行事など、高校生はやることが多いものです。そのなかで就職活動もしていくとなると、高校最後の1年はどうしても忙しくなってしまうでしょう。
早い段階で就職が決まればその後は比較的余裕が生まれますが、社会に出るための準備も必要です。なかには、高校生で就活をすることが負担に感じる学生もいるでしょう。
高卒の早期退職率が高い
厚生労働省の「新規学卒者の離職状況」によれば、2017年3月に学校を卒業した新規就職者のうち、最終学歴が高校の人の3年以内の離職率は39.5%です。約4割が、高卒で就職した企業を辞めていることがわかります。
高卒での就職は、選べる企業が限られていて選択肢が少ない、入社後のミスマッチ、自分のやりたいことや適性がわからないまま就職したなどの理由から、早期離職につながることも少なくないのです。
基本的に内定辞退ができない
たとえば新卒や中途採用の場合、企業から内定が出たとしても、行きたかった企業から別で内定をもらったなどの場合、辞退することも可能です。
高卒採用の場合、1人1社制が基本ということもあり、受かった企業を辞退することは、特別な理由がない限りむずかしいといえます。学校斡旋がほとんどということもあり、採用となったら、その企業に就職することになると考えておいたほうがよいでしょう。
内定が出たあとに「やっぱり別の企業がいい」「自分には合わないかも」などと感じても、辞退がしにくい点には注意が必要です。
高卒採用に関するよくある質問
高卒採用のスケジュールは毎年、大きくは変わりません。高校三年生になったら、スケジュールに沿って就職活動をすすめていくことになります。本記事内でくわしくご紹介していますので、高卒採用での就職を検討している高校生の方は参考にしてみてください。
2020年の高卒採用は、新型コロナウイルスの影響で一部日程が変更になりました。具体的には、書類応募の期日や選考期間の調整がメインで、双方が不利にならないような日程に変更となっています。
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まとめ
高卒採用のスケジュールは、今後も変更となる可能性があります。新型コロナウイルス感染拡大が落ち着くまでは、高卒採用を目指す学生は日程などに注意して就活を進めましょう。不安なことや疑問点があったら早めに相談するなどして、一人で抱え込まないように就職活動を進めていきましょう。
こんな人におすすめ!
- 自分に合った仕事や場所を見つけたい
- ワークライフバランスを重視したい
- 会社に属する安定ではなく、能力/スキルの獲得による安定を手にしたい