「建築(建設)業界に就職したい」「業界が今後どうなっていくのか知りたい」という就活生もいるでしょう。建築業界は、設計や施工管理、設備管理などのほか、いわゆる現場仕事のように数多くの職種があります。この記事では、建築業界の概要や今後の動向、主な職種などをご紹介します。
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建築業界とは
建築(建築)業界の概要や向いている人、業界の現状と課題などの動向についてご紹介します。
建築業界の概要
建築業界とは、ビル、マンションの建設工事、橋梁、道路、鉄道、港湾施設などの工事を行う業界のことをいいます。また、電気、空調、通信など設備工事を行う会社も含みます。
ちなみに建築業界の仕事は、インフラ整備がメインの土木と学校など建物を建てることがメインの建築の2つに分けることが可能です。そ建築工事の全般を行う会社のことをゼネコン、超高層ビルの建設や市街地再開発など大きな案件を取り扱うゼネコンをスーパーゼネコンと呼びます。
建築業界は、色々な業種企業がかかわってひとつの建築物を完成させるという特徴を持っています。ちなみに元請として現場を取りまとめる業者を総合工事業、現場作業がメインの職別工事業、そして水道電気など設備関連の業務を行う設備工事業の3つに分けられ、これらすべてが連携して業務を行わなければいけません。
それに加え、建築業界にはいわゆる「下請け企業」が何層にも発生するという特徴もあります。下請け構造は、発注者が元請(ゼネコン)に委託し、足りない分の人手をさらに下請企業に委託し、その下請けが足りない人手を下請企業に委託する、というシステムです。
このシステムの理由は、建築業界の受注が増える時期とそうでない時期の仕事量の差が関係しています。忙しい時には、下請け企業から人を雇って足りない分の穴埋めをする風潮があります。
建築業界に適性があるタイプ
まず、建築業界で現場での作業を希望する場合には、特に暑い夏や寒い冬は気候のせいで体力を奪われてしまいがちなので、体力に自信がある人が向いているでしょう。
また、IoTやAIの導入を進めていますが、基本的には人の手で作業が進められます。気候などによっても作業の進み具合に影響が出ることから、計画通りに進まないことも多いといえます。予定通りに進まないときでもイライラせず、冷静に対処する胆力も求められます。
建築業界の仕事はできる限り計画通りに進めなければいけない仕事ですが、遅れが発生する前提でスケジュールを立てられる能力も必要となります。
細かい積み上げが求められるため、建築業界の仕事はちょっとしたスケジュールのずれ込みが重なって大きな遅れに繋がってしまうことが多くあります。大きなずれが起こらないよう管理する能力に加えて、たとえずれ込んだとしても、最後までやり遂げる能力も必要となります。
建築の現場の仕事は危険と隣り合わせであり、事故やトラブルが起こる可能性も高いといえます。そのため、事故やトラブルが発生しやすい部分を細部まで把握し、ケアできる能力も求められます。事故やトラブルが発生した際は素早く対応し、問題を解決しなければいけません。
正社員としてゼネコンなどに入社した場合、基本的に現場の人たちをまとめる仕事を任される可能性が高いでしょう。そのため、リーダーシップのある人のほうが向いているでしょう。
建築業界は若い人材の確保が難航しており、職人の高齢化が進んでいます。いろいろな業種の人と関わる仕事でもあるため、信頼関係構築能力やコミュニケーション能力も求められます。
建築業界の動向
建築業界の動向としては、以下があります。これから就職を目指す人は頭に入れておきましょう。
オリンピック終了後の懸念
東京オリンピックパラリンピックに関する直接的な投資は1兆円と言われており、新国際競技場はじめ、各競技会場の整備、不動産など、建設需要は非常に高いものでした。間接的な投資は合計で10兆円をも超えるといわれ、建築業界は大手中小企業問わず、ここ数年は好景気となっていました。
しかし、新型コロナウイルスの影響で2020年の開催は叶いませんでした。2021年に無事開催されたとしても、その後はオリンピック関連の建設需要などはなくなるため、そのぶん、建築業界の売り上げなどに影響する可能性は多少なりともあるでしょう。
震災復興分野での需要
2011年の東日本大震災の災害の復興に加えて、度重なる自然災害も続いています。日本は三角州や扇状地など水はけが悪い土地や、濁流で形成された土地が多く、それに伴って地盤も弱い土地が多いといえます。
日本は河川自体も多いことから水害が発生しやすい傾向があり、災害被害の復旧に建築業界は欠かせません。災害は景気に関係なく発生するものであり、大災害が一度起こると地元の建築業者では対応しきれないほどの需要が起こります。
特に専門的な強みを持っている建築会社は、震災復興の分野では強いといえます。
建築業界の今後の課題
建築業界の今後の課題は、以下が考えられます。
労働環境の改善
建築業界は現段階で人材不足が問題となっており、将来的にはさらにそれが進んでいくといわれています。建築の仕事はきつい汚い危険の3つが揃った「3K」の仕事であると昔からいわれており、若者の建築業離れも問題です。
建築業界ではこの問題の早急な解決が求められていますが、解決にはまだ時間がかかるでしょう。企業によっても異なるものの、建設の現場仕事などの場合、仕事量に対する給与の低さなども、以前から問題視されています。
建築業界ではIT化やAIの導入が進められ、業務効率化による労働環境を目指していますが、それでも人の手による仕事が今すぐなくなるということはありません。
労働環境を改善するために、国土交通省が働き方改革加速化プログラムの一環として適切な工期設定を推奨していたり、週休2日制や長時間労働の防止に対する取り組みを会社で行っていたりと、少しずつではあるものの、建築業界の労働環境は改善されつつあります。
中小企業の利益率の低さ
建築業界は、何層もの下請構造によって成り立っています。このピラミッドの下に行けばいくほど中抜きされる金額が大きくなり利益率が下がってしまうので、中小企業はたくさん現場を担当することで利益を出している状態です。
そのため、建築業界は受注数が減ったり、赤字現場があるとすぐに会社自体が赤字になってしまうといわれており、世間一般の会社の7割が赤字なのに対し、建築業界は8割以上が赤字となっています。
大手はまだ経営に余裕があっても中小企業は余裕があるとはいえず、業界全体の利益率改善にはまだ時間がかかるでしょう。
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建築業界の職種
建築(建設)業界の主な職種について、それぞれご紹介します。
営業
工事の発注者と業者を結ぶ役割を持った仕事です。発注者からヒアリングを行って社内の色々な部署とやり取りを進め、企画書提案書をまとめます。
営業の仕事は土木や建築の専門知識がそこまで厳密には求められない傾向があり、それ以上に、コミュニケーション能力が必要な仕事となります。
学歴不問の企業もあり、建築業界に興味があるけれども大学の学部が建築とは一切関係ない学部である、そもそも学歴が足りなくて建築業界の求人がなかなか見つからないなどといった状況ならば、営業職から建築業界でのキャリアアップを目指すのもひとつの手でしょう。
一般の営業の仕事と同じで、既存顧客への営業活動と新規開拓の2つに分かれます。既存顧客に関しては、たとえば「過去に自社が担当した建物の耐用年数が近づいているので、建物を改築しないか」などの提案をする仕事であることから、比較的、新規開拓よりも契約が成立しやすい傾向があります。
新規開拓はこれまで一緒に仕事をしたことがない企業に対して自社の強みを伝え、契約に繋げます。
建物に関しては安全性が何よりも重要であり、欠陥があると建物の利用者や従業員など人の命に係わるので営業担当者が取引先と強固な信頼関係を結ぶ必要があります。「この会社になら任せても大丈夫」と思ってもらわなければいけません。
途中で建物のメンテナンスなども発生するため、取引先とは長い付き合いになる可能性が高いでしょう。そのため、新規開拓をしつつも既存の取引先との関係もおろそかにしないよう、バランスを考えて業務に取り組める能力も必要です。
施工管理
現場の作業や建物の品質の管理を任されます。建築の現場では、納期を守ることが重要です。そのため、施工管理は納期通りに納品できるように現場の人をマネジメントし、指示を出さなければいけません。責任のあるポジションを任されるのが、施工管理の仕事の魅力のひとつといえるでしょう。
施工管理の仕事のメインとなるのは、現場で働く人をまとめることです。現場で働く人の中には自分より年上だったり、年下でも現場での経験が自分より豊富だったりすることも少なくありません。このような目上の人に対しても指示を出さなければいけないのでコミュニケーション能力が求められます。
また、工事がスケジュール通りに進まない場合、施工管理の責任となってしまいます。そのため、納期通りに納品できるように、スケジュールを管理し、万が一遅れそうな場合もとにかく早く把握して発注元に伝えなければいけません。このようにやりがいはあるものの、その分責任も求められる仕事といえるでしょう。
研究開発
建築の技術は日々進歩していますが、これは、研究開発担当者の日頃の工事における工法や資材の研究開発の貢献も大きいといえます。この分野は競争が激しく、どの企業も企業独自の技術開発に余念がありません。
試行錯誤を重ねたうえで工法や資材が開発されており、何度も実験を行わなければいけないので、結果が出るまで耐えられる体力や集中力、忍耐力が求められます。
この分野に関しては研究職扱いとなるため、大学や大学院で専門的な知識を学んできていないと、研究開発職としての就職はむずかしいケースが多いでしょう。学部学科としては建築系や化学系の学部の出身者などが考えられます。
設計
発注元の希望に応じたデザインを提案し、それを実現できるように企画立案、測量、工事管理、検査など幅広い業務を行います。自分がデザインしたものが形になって、世に出ていくという点が魅力です。
建築士などの資格が必要であるうえに、仮に資格を取得したとしても、実務経験がない段階ですぐにデザインを任されるということはなかなかありません。デザイン事務所などで経験を積み、一人前と認められてからようやくデザインを担当できるケースが多いでしょう。
設計の仕事をする場合、建築事務所などで働くケースが多いでしょう。また、設計の仕事の流れは、建物の見た目や間取りなどを担当する基本設計と、実際に工事を行うための柱の太さや位置などを決め、図面を作成する詳細設計に分けることができます。
発注者が提案する予算に合ったデザインや間取りを実現できるかなどを判断する意匠設計、図面を作成する構造設計、基本設計でも詳細設計でも、基本的には意匠設計構造設計という順に進んでいきます。
設備管理
設備関係の仕事では、建物の電気やエレベーターなどの設備配置を考え、いかに建物が使いやすいものにできるかを考える仕事です。この仕事では利用者の立場に立って、いかに使いやすかを考えて機器を配置する想像力が求められます。
施工管理技士など資格が必要であることが多く、設備管理の仕事を目指すにあたっては求人の必要資格を確認しておきましょう。ただし、学歴に関係なく取得できる資格が中心であり、学歴より経験が求められることから、新卒で設備管理の仕事を目指したいのであれば大学在学中に関連資格を取得しておくのが良いでしょう。
建築業界はまだまだ人の需要が高い
建築業界の働き方は今後、AIやロボットなどの導入、働き方改革の推奨、少子高齢化などにより大きく変化していくでしょう。しかし、人間がかかわる仕事がなくなるわけでは決してありません。むしろ、経験を積んだ人にしかできない仕事もたくさん存在します。建築業界を希望する人は、これからの時代を生き残れるような技術者を目指すとよいでしょう。
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