テレビ業界はその華やかなイメージから就職先として人気が高い業界です。しかし昨今メディアの主役がテレビからインターネットにうつるなかで、テレビ業界は逆風にさらされていると言われています。この記事ではテレビ業界のビジネスモデルや仕事内容、業界の課題などを詳しく解説します。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
テレビ業界基礎知識
まずはテレビ業界とは何か、知っておくべき基礎知識を解説します。
テレビ業界のビジネスモデル
テレビ番組を制作する番組政策会社から優良なコンテンツの配信依頼を獲得し、テレビ局で放送することで視聴者に番組を見てもらう、その視聴者に対してCMで商品やサービスを宣伝したい企業が番組の広告枠を買い上げ、その広告収入によって主な利益を得る、というのがテレビ業界のビジネスモデルです。有料放送によって受信料による利益を得るなど、他の方法で利益を得るのに成功しているケースも増えてきているのが現状です。
どのような形式で利益を得ていたとしてもテレビ局は他社が制作した番組を放送することが役割です。スケジュールの調整をして自社制作した番組を含めて無駄がないようにしつつ、視聴者の傾向や広告枠の価格も加味した番組表を作り上げます。また、広告主などのスポンサーとの取引もテレビ局が担っていて、番組制作費用獲得の手段にもなることから重要業務となっています。一方、番組制作会社は視聴者を魅了するような番組を作ることが役割です。テレビ局と相談しながらスケジュールに収まるように番組制作を行います。タイムリーな制作とコスト削減が求められることも特徴として知られています。
テレビ業界の業界規模
テレビ業界で働きたいと考えているなら業界規模についても理解しておくのが大切です。業界規模としては2兆5000億円程度で、他の業界と比較すると決して大きいわけではありません。成長傾向があるわけでもなく、安定した推移を示しています。しかし、業界単独で存在しているわけではなく広告主となる他の業界との連携が強いのが特徴で、単純に業界規模だけで業界価値を評価することはできないでしょう。あらゆる業界を支える重要産業とも言えるのがテレビ業界なのです。
テレビ業界で働いている人の平均年収は999万円でかなり高い水準にあり、全業界の全職種の平均年収の二倍くらいになっています。特に民法キー局では高い傾向があって1000万円を超えるのも決して難しいことではありません。平均継続年数は19年で定着率が高いこともわかります。他の業界では10年未満のこともある点を考慮すると、やりがいがあってずっとテレビ業界に残っている人が多いと考えることが可能です。
テレビ業界の仕事内容
このような全体構造の中で、テレビ業界に就職するとどのような仕事をすることになるのでしょうか。仕事内容はスタッフとしての種類によって異なります。制作スタッフと呼ばれるテレビ番組の制作に関わる仕事が代表例ですが、制作スタッフにも担当する業務がたくさんあります。資金調達やスポンサーとの交渉などのように裏方としても重要な役割を果たすのが特徴で、業務量が多いのが一般的です。技術スタッフもテレビ業界では欠かせない人員で、カメラマンや美術、音声などの専門的な技術職になっています。主にテレビの撮影を技術面でリードするのが仕事になっていて、得意とする分野に特化して働くことができるのが一般的です。
この他にもテレビ業界に限らず存在する様々な職種が存在しています。営業職はスポンサー獲得に欠かせない存在であり、バックオフィスでは経理や総務などのスタッフも活躍しています。花形としてよく注目されるのは制作スタッフや技術スタッフですが、実際には目立たないところでテレビ業界を支えている人たちは他にもたくさんいるので就職の際には視野に入れておきましょう。
テレビ業界の職種を紹介!
テレビ業界と一口に言っても職種は様々です。ここでは7つの職種を紹介します。
テレビ業界の職種1.ディレクター
ディレクターは番組撮影における中心人物で、企画を立ち上げる段階から補助的に参画し、最終的には制作スタッフを率いて現場監督として責任を負う立場になります。後述のプロデューサーよりも現場では高い権限を持つことになるのが通例ですが、プロデューサーとの連携をしながら意図に沿った仕上がりにするのも重要業務です。
ディレクターは現場での業務範囲がかなり広いことから一般的にはアシスタントディレクターが配置されます。ADとも略されるアシスタントディレクターは将来的なディレクター候補として配置されるのが特徴で、主な業務は撮影補助です。実際には雑用や出演者のフォローまで幅広い仕事があって大変ですが、経験を積むには適している職種です。この修羅場を乗り切ることでディレクターとして手腕を振るえるようになるので、登竜門として考えると良いでしょう。
テレビ業界の職種2.プロデューサー
プロデューサーは番組制作の最高責任者とも言われる番組制作会社の要です。プロデューサーは番組の企画を立ち上げる段階から中心的な役割を果たし、担当する制作スタッフの選定や予算の策定などを一通り担います。実務的な部分の大半は選定したスタッフに任せますが、責任者として番組の制作を成功させるために全面的なリードをするのが特徴です。予算獲得のために上層部にプレゼンテーションをしたり、資金を得るためにスポンサーとの交渉をしたりするのが使命とも言えるほどに重要になります。番組が終わるまでずっと責任を負うことになるため、多数の部署と連携を取りながら撮影も放映も円滑に進むように手はずを整えるのも仕事です。
プロデューサーは番組一つにつき一人というのが昔は主流でしたが、現在では一つの番組に対して複数のプロデューサーが割り当てられることもあります。これはそれぞれの役割が異なっているのが理由です。お金回りを担当するエグゼクティブプロデューサー、制作を担うテレビ局のプロデューサー、さらには外注をしたときにはその依頼先のプロデューサーという形になっているのが通例です。
テレビ業界の職種3.アナウンサー
アナウンサーはテレビ業界でも人気が高い職種で、端的にはテレビ撮影でアナウンスをするのが仕事です。ただ、実際の仕事内容は担当する番組によって違うことが知られていて、情報系の番組ではアシスタントとして幅広い業務を担い、バラエティ番組ではタレントなどと並んで出演者と同じような役割を果たすことも少なくありません。報道番組であれば現場に向かって最前線で状況を身をもって実感しながら解説をすることも多く、スポーツや競馬などの番組では実況放送をすることもあれば、選手の密着取材をすることもあります。
人気の職種なので競争率が高いのがアナウンサーの特徴で、民放キー局では毎年一桁前半しか採用されないこともあります。専門学校で学んで就職しているケースが多く、様々な技術を身に付けておくことが就職の成功に直結するでしょう。
テレビ業界の職種4.技術スタッフ
技術スタッフは専門性が極めて高いのが特徴で特別なスキルを持っている人が活躍できます。テレビ撮影においてはカメラマンが目立ちますが、他にも照明や音声、効果音などの色々な技術スタッフがいることで番組が完成しています。タイムキーパーのように進行の担い手や、撮影終了後の映像編集も技術スタッフの代表例です。一つ一つの業務に応じて技術スタッフがあてがわれているのが一般的で、その業務に必要な機材の操作のノウハウを持ち、経験が豊富で知識も十分に蓄えている人が重視されています。現場慣れやディレクターとの連携も求められることから異動が少ないのが一般的です。
技術スタッフは専門学校や養成校などの専門機関で教育を受けてきた人が配属されることが多くなっています。臨時スタッフを雇用することやアウトソーシングをすることも増えていることから、技術スタッフとして就職するのは難しくなっているのが現状です。
テレビ業界の職種5.制作・進行スタッフ
テレビ業界の職種として制作スタッフも中心的な役割を果たします。制作スタッフは進行スタッフと呼ばれることもあり、番組撮影の進行をサポートする役割も果たすのが通例です。民放キー局では番組制作会社に依頼してしまうことが増えてきているものの、局内にも制作チームを設けていてスタッフを抱えています。仕事の内容は多岐にわたっていて、番組の企画時点から関わるのは大半のスタッフに共通していますが、その後は担当を割り当てられていくのが一般的です。
出演者のオファーや大道具の手配、衣装の準備や管理などに加え、撮影時のケータリングやロケ弁当の手配などの細々とした業務を担うことになります。関連するタレントの所属事務所やスポンサー企業などとの調整に携わることも多く、ビジネスマナーに基づいた高いレベルのコミュニケーション能力を求められるでしょう。
テレビ業界の職種6.編成スタッフ
テレビ業界でのスケジュール管理における重要な役割を果たすのが編成スタッフです。編成スタッフは番組編成の担当をする部署に所属して、人気の動向を主な指標として放映スケジュールを策定します。新しい番組を立ち上げるときにどの枠に入れるかを考えるのも仕事ですが、シリーズ番組の打ち切りの最終決定をするのも編成スタッフです。その選び方によってどれだけ視聴者が集まるかが変わり、広告枠の価値も大きく変動します。そのため、所属している局の将来性を大きく変える可能性がある重要な責務を果たす職種です。番組のスケジュールを決める役割については高い権限を持っていて、プロデューサーの意見を断って番組を編成することもできます。
テレビ業界の職種7.営業・事務など
テレビ業界では一般的な企業と同じように様々な職種の人たちが採用されています。営業職だけでなく、人事や経理、総務や法務、さらには経営戦略や広報などの多岐にわたる職種があり、誰もが会社経営における欠かせない役割を果たしています。営業活動は特に売り上げを増やすために欠かせないもので、テレビ局では広告枠を売るために代理店と協力しながらスポンサー企業に売り込みをしています。イベントを実施するときにも協賛企業を探すのに欠かせない役割を果たしているのが営業職です。
テレビ業界では法務部の役割も大きいのが特徴です。テレビの放映には公共の電波を用いることから、法令に従って適切な対応をしなければなりません。また、公共機関が放映を依頼することもあるため、その窓口業務を行う部署もあります。
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テレビ業界の現状と課題、そして今後の展望
依然として人気業界であるものの、インターネットメディアの台頭による視聴者離れが続くテレビ業界です。現状と課題、今後の展望を解説します。
テレビ業界の現状と課題
テレビ業界の現状として視聴者が減少している状況があるため、いかにして打開するかが課題になっています。インターネットによる動画配信や定額制動画配信サービスなどが広まった影響を受けて若者のテレビ離れが進んでいます。視聴者が求めている企画や番組がないという声もあり、見たいものや知りたいものを簡単に見つけて視聴できる動画配信サービスがテレビよりも人気になっているのです。この影響は広告収入に直結していて、広告枠の価値が低くなります。つまり、テレビ業界のビジネスモデルで言及したような広告収入による利益が得にくくなっているため、対策が必要となっているのです。
テレビ業界の今後の展望
このような利益獲得の課題があるテレビ業界の将来展望はどうなっているのでしょうか。視聴率の課題を克服するための方策が必要とされていて、インターネットによる動画配信などとの差別化や、番組やキャストなどの価値を高めるための変革が求められています。広告主からの広告収入で成功するビジネスモデルとなっているため、視聴率の課題を解決しない限りは広告主が減少し、将来性が危ぶまれることになりかねません。
テレビ業界では視聴率向上の取り組みと並行して、広告収入以外で利益を上げるための施策も展開するようになっています。不動産業や都市開発事業を手がけたり、大手フィットネスクラブや動画配信サービスの企業をグループに加えたりするなど多岐にわたる方策が取られています。このような変革の行く末を見ながら働く必要があるのがテレビ業界です。
テレビ業界の研究まとめ~幅広くアンテナを立てよう~
テレビ業界の基本的な特徴を理解することができたでしょうか。人気の業界で倍率も高いことから就職のハードルは決して低くはありません。業界研究を徹底して行って就活対策をするのが大切です。また、報道を担うことからテレビ業界の就活では幅広い知見が求められます。常日頃から色々な情報にアンテナを張ってインプットすることを心がけるようにしましょう。
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