旅行業界は旅行を楽しむ学生にとって身近に感じることもあり、就活において毎年人気のある業界です。この記事では旅行業界の細かい内訳や仕事内容、仕事を遂行するうえで求められるスキルなどについて紹介します。業界について詳しく理解することで志望動機をより具体的にしていきましょう。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
旅行業界は3区分に分けられる
一言に「○○業界」といっても、その中には様々な業種があるのが通常です。その中でも旅行業界は、大きく3つの区分に分けられており、どの区分に分類されるかで、行う業務内容も変わってきます。ここでは旅行業界の3区分について、それぞれ紹介します。
区分その1.第1種旅行業
第1種旅行業は、海外旅行、国内旅行のどちらも企画できる会社のことを指します。第1種旅行業の業務内容としては「海外募集型企画旅行」と「国内募集型企画旅行」の計画実施が挙げられます。ここでいう「募集型企画旅行」とはいわゆる「パッケージツアー」のことを指し、旅行サイトや旅行会社で見られるような商品は、ほとんどが第1種旅行業の会社によって企画されたものです。多くの人が思い浮かべる「旅行会社」は、ほとんどがこの第1種旅行業に分類されます。
第一種旅行業は、国への登録が必要な旅行業であり、国土交通省によって管轄されています。その登録には定められた「財産要件」を満たす必要があり、一定以上の「営業保証金」や「基準資産額」が求められます。
区分その2.第2種旅行業
第2種旅行業は、国内旅行のみを企画できる会社のことを指します。第2種旅行業が行える業務内容は、「海外募集型企画旅行に分類されない全ての旅行契約の取り扱い」となっており、海外募集型企画旅行の計画実施が行えない分、第1種旅行業より業務内容が狭くなっています。
第2種旅行業を行う会社は、各都道府県への登録が必要となります。登録には第1種旅行業と同じく一定の財産要件を満たす必要がありますが、営業保証金や基準資産額などについては、第1種旅行業と比較して低く設定されています。
区分その3.第3種旅行業
第3種旅行業は、募集型企画旅行の計画実施そのものを行わない会社のことを指します。業務内容としては他社が企画した旅行商品の委託販売、国内、海外旅行の手配(宿泊施設や乗り物チケットの予約代行など)が挙げられます。また例外として、会社の営業所が存在する区市町村内を催行区域にする場合に限り、募集型企画旅行の計画実施を行うことができます。第3種旅行業は、第2種旅行業よりさらに業務内容が狭く設定されています。
第3種旅行業を行う会社は、第2種旅行業と同じく、各都道府県への登録が必要となります。登録には先に述べた二つと同様に一定の財産要件を満たす必要がありますが、その基準は第2種旅行業と比較しても、さらに低く設定されています。
旅行業と旅行業者代理業は違う!
ここまで3つの旅行業について紹介しましたが、それらとよく似た業種に「旅行業者代理業」というものが存在します。旅行業者代理業は、旅行会社が企画した旅行商品(パッケージツアーや旅行プランなど)の委託販売業務などを行う、まさに旅行業者の代理店というべき存在です。
旅行業者代理業の営業に際しては、各都道府県の登録を得る必要があります。また、他の旅行業と違い、業務を行うための営業保証金や基準資産額が必要ないのも特徴です。
旅行業者代理業は、旅行業者が行えるような、募集型企画旅行の計画実施はできません。しかし、契約時に旅行業者から委託された業務については全て行うことができ、また「本来の商品に加えて旅行商品を販売する」ようなことも可能です。例としては、スポーツショップが旅行業者代理業に登録することで、店頭商品の一つとしてプロ野球観戦ツアーを販売する、といったことが可能となります。ただし、旅行業者代理業は基本的に、旅行商品の売り上げそのものを得ることはできません。旅行業者代理業の収入としては、旅行商品を代理販売することによる、「仲介手数料」が主となります。
旅行業界の仕事内容
旅行業界には様々な特有の職種が存在します。行う仕事内容には職種ごとに差があり、必要とされるスキルや適性も変わってきます。ここでは旅行業界特有の職種とその仕事内容について紹介します。
旅行業界の仕事1.ツアープランナー
「ツアープランナー」は、旅行観光業界の中でもツアーの立案、計画をする職種です。仕事内容としては、パッケージツアーなどの商品企画を行ったり、顧客の個人旅行に対して、個人の要望に合わせた旅行内容をアドバイスすることなどを行います。具体的には、ツアーで訪れる観光地について選定を行ったり、現地における宿泊先や交通機関など移動手段の手配、海外旅行の場合は日本からの航空機の手配なども仕事内容に含まれます。必要部材の仕入れや手配など、現場仕事に携わる機会も多く、プランニングの段階からオペレーションまで、旅行にまつわる様々な役割を果たさなければならない職種といえるでしょう。小規模の会社では添乗員、営業職などを兼ねている場合もあり、非常に幅広いスキルが必要な職種といえます。
旅行業界の仕事2.ツアーコンダクター
「ツアーコンダクター」は、顧客の旅行に同行し、観光地の案内役を務める職種です。一般的には「添乗員」とも呼ばれます。
ツアーコンダクターにはツアー中、旅程について全ての「運営」が任されます。ホテルの手続きやレストランの予約はもちろんのこと、旅行先での注意事項の説明、海外旅行の場合は空港での出入国手続きなども仕事内容に含まれるため、非常に責任ある職種といえるでしょう。旅行を先導する運営能力はもちろん、突発事態への対応力も求められる職種といえます。また、特に海外で活動するツアーコンダクターの場合、現地の言葉を理解する語学力も求められるでしょう。
ツアーコンダクターの就業形態には旅行会社に所属するパターンと、ツアーコンダクター専門の会社に所属するパターンがあります。ツアーコンダクター専門の会社に所属する場合は、旅行会社からのツアー同行依頼の度に働く、フリーランス、派遣社員としての就業が多いです。
旅行業界の仕事3.ツアーオペレーター
「ツアーオペレーター」は、旅行会社の依頼に応じて旅行先現地での手配を専門に行う職種です。仕事内容としては、交通機関やホテル、レストラン、アミューズメント施設といった、旅行先施設等への予約連絡を専門に行います。
ツアーオペレーターは、国内旅行では非常に珍しい存在です。というのも国内旅行の場合、施設の予約手配などといった作業は、ツアープランニングした担当者に任されるのが一般的であるためです。しかし、言葉が通じにくい海外旅行の場合、施設の手配に間違いが生まれないよう、専任のツアーオペレーターが担当して行う場合があります。必然的に外国人と話す機会が多くなるため、非常に高い言語能力が必要とされます。
ツアープランナーやツアーコンダクターの顧客が観光客であるのに対して、ツアーオペレーターの顧客となるのは、ツアーを企画運営する旅行会社です。観光客が直接ツアーオペレーターと接することはあまりなく、旅行観光業界においては影の実力者とも呼べる職種です。
旅行業界の仕事4.営業
旅行観光業界には、先に述べたようなツアー行程に直接的に関わる職種のほか、「営業職」とも呼べる職種が存在します。ここでは旅行観光業界における営業職とその仕事内容について紹介します。
カウンターセールス
旅行業界における「カウンターセールス」は、主に個人客に対する営業を行う職種です。基本的に店頭にて顧客への営業を行い、カウンター越しに顧客に応対することから、カウンターセールスと呼ばれています。
カウンターセールスの仕事内容は、顧客の予算や旅行先、旅行する人数や日程、要望などをヒヤリングし、顧客のニーズに応じた旅行プランを提案することです。旅行先での観光アドバイスはもちろんのこと、それに必要な宿泊先や交通手段の予約手配などを行うことも、カウンターセールスの仕事です。
カウンターセールスは、旅行に関する「コンサルタント」といって良い職種です。顧客と話し合いを行っていく職種でもあるため、高い接客スキル、提案スキルが求められる職種といえるでしょう。
アウトセールス
旅行業界における「アウトセールス」は、主に大口顧客に対して営業を行う職種です。外回り営業を主体とする職種であり、企業や官公庁、学校などに営業をかけ、社員旅行や修学旅行など、大人数で行う旅行契約を取り付けます。実際の仕事内容としては営業先に赴き、旅行プランの提案などを行います。
いざ旅行計画が実現に至ったら、その内容について詳細なプランや予算などについて話し合うのも、アウトセールスの仕事です。そのため仕事を円滑に進めていくためには、自社の旅行商品への深い理解、高い交渉能力などが求められます。仕事の特性上、アウトセールスの契約は大口案件となる場合が多いです。契約一件あたりの売り上げが大きな傾向があるため、会社にとっても貢献度の高い、非常に重要な職種といえるでしょう。
案件によっては海外からの団体観光客を手掛けるケースなどもあり、その場合には高い語学力が必要となります。近年では旅行企画の営業活動のみに限らず、広告会社などと提携した上で、大型のコンベンションなどを手掛けるアウトセールスも存在します。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
旅行業界で働く人に求められるものとは
旅行業界は、顧客を満足させることに主眼を置いた業界です。旅行業界で活躍していくためには、相手にどうされたら嬉しいか、もてなされる相手の立場に立って、自らの個性やスキルを磨いていく必要があります。ここではそれを念頭に、旅行業界で働く際求められるものについて解説します。
求められるもの1.コミュニケーション能力
旅行観光業界は直接的な顧客に限らず、様々な人々と関わり合いながら仕事していく機会の多い業界です。そのため、人付き合いを円滑に進められる「コミュニケーション能力」は、旅行観光業界で活躍するため必須の能力といえます。
旅行観光業界は他の業界に比べ、顧客と会話する時間が長くなりがちな業界です。たとえばツアーコンダクターの場合、旅程中は観光地に関する質問から突発的な要望、他愛ない世間話のようなものまで、「話すことが仕事」といって良い状況が続きます。営業職に就いた場合も同様です。旅行プランについての提案や企画、細部の詰めから販売手続きまで、顧客と綿密かつ分かりやすい話し合いを続けていく必要があるのです。また、旅行を企画する際は自社だけでなく、外部の会社と連絡を取り合いながら行っていかなければなりません。
顧客と円滑なコミュニケーションを行うため、また、関連会社としっかり連携を取っていく上でも、高いコミュニケーション能力は、必要不可欠な要素といえるでしょう。
求められるもの2.企画力
特にツアープランナーなどの職種に就く場合に求められるのが、高い「企画力」です。顧客の要望にあった旅行プランを提示するためには、観光地の情報を総合的に整理し、適切に提案していく能力が必須となります。また、一言に企画力といっても、旅行のエンターテイメント性のみを追求していくのでは足りません。自社だけでなく関連会社の都合なども考慮した上で、会社同士の関係を良好に保てるような、無理のない企画を立てられるスキルが必要となります。
また、日々移り変わる流行に対しての対応力も重要です。インターネットが普及したことによってSNSなど新たなツールが現れ、旅行業界を取り巻く現況は、めまぐるしく変化し続けています。その時々に合った適切な企画を打ち立てる能力は、流行り廃りの激しい旅行観光業界で活躍していくために、非常に重要な要素といえるでしょう。
求められるもの3.思いやり
旅行業界へと就職するに当たって何より大切な要素といえるのが、他者に対する「思いやり」の心です。
旅行業界の仕事には、顧客が本当に満足、感動できるサービスを提供することが求められています。顧客の希望を最大限に満たすサービスを提供するためには、他者の立場に立って物事を考え、その想いに沿うような提案、行動をしていかなければなりません。そのためには、どんな時でも顧客のニーズを汲み取れるような心構えを持ち、臨機応変に対応できるようにしておく心の準備が求められます。他者への思いやりを持つことは、そうした心の準備をする上で、非常に大きな助けになってくれるはずです。
旅行業界の現状と今後~コロナ禍の旅行業界~
2020年最大のトピックとして新型コロナウイルスの感染拡大、また感染拡大に伴う世界中の経済への大きな影響がありますが、旅行業界も新型コロナウイルスの影響をロに受けている業界です。外出自粛と渡航制限により国内旅行客・海外旅行客共に減少し、その影響で、各社大幅な減益予測が予測されています。ウイルス流行以前はは外国人観光客の増加に伴いインバウンド需要ということで順調に業績を伸ばしていましたというのに、見る影もありません。
ただ、政府主導の旅行観光業界救済策の「go to」事業はかなり盛況で、自粛を経た消費者の旅行への渇望感、ニーズの大きさが浮き彫りになりました。観光庁はホームページなどで「新しい旅のエチケット」「新しい旅のルール」を公開し、「握手より、笑顔で会釈」「おみやげは、あれこれ触らず目で選ぼう」などの標語を掲げながら感染防止対策を十分に行ったうえでの旅行業界の活性化を模索しています。
今後コロナが収束しても、海外からの需要が回復するのはまだ先になるはずです。近場のユーザーに向けた価値として何を提供できるか、また「安心」「清潔感」をいかにして提供していくかが今後旅行業界に問われていきます。かつてのオイルショックやバブル崩壊も乗り越えた旅行業界、コロナ禍をどう乗り越えるのか注目です。
旅行業界のまとめ
旅行業界は顧客と直接関わる機会が多く、その要望をかなえるための対人力が求められる業界です。また新型コロナウイルスの旅行業界への影響は大きく、業界で働く人は感染防止対策を十分に行ったうえで顧客を呼び込むという難題に向き合っていっる最中です。旅行業界にあこがれ就職を検討している人は、自分なぜ旅行業界を志望するのか、これから業界でどのように働き、どのように活躍したいのか改めて考えたうえで就職活動に臨んでください。
※2022/3~2023/3の当社相談参加者へのアンケートで『満足』『どちらかといえば満足』を選んだ方の割合
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