「車関係の仕事に興味がある」という方もいるのではないでしょうか。整備士や設計、ディーラーなど職種も幅広く、正社員のほか派遣の期間工などで働くことも可能です。この記事では、車関係の仕事の種類、内容、年収、メリット・デメリットについてご紹介します。車好きのあなたにぴったりの仕事を見つけてみましょう。
車関係の仕事とは【種類と仕事内容もご紹介】
自動車産業は日本の基幹産業のひとつであり、すそ野が広いことが特徴です。まずは、車関係の仕事は何があるのか、どんな内容の仕事なのかについてご紹介します。
設計・開発 【車関係の仕事 1/7】
設計・開発の仕事は、開発する新車の基本となる設計を行い、開発やテストを指揮します。
よく聞く「チーフエンジニア」は、開発責任者という意味で使われています。基本的に、自動車メーカーの社員が設計開発を行っています。新車を発売する上で、設計開発工程は最も重要な部分であり、故障や事故が起きると、人命に関わってしまうためです。
自動車メーカーの設計開発部署で働くためには、大学の工学部などで機械工学や流体力学、材料力学を学ぶ必要があります。
専門知識は専門学校で学ぶこともできますが、ホンダやトヨタなどに代表されるように自動車メーカーは大企業が多く学歴も重視されるため、ある程度のレベルの大学や大学院を卒業していることが求められるケースも多いでしょう。
設計・開発職としての入社難易度は非常に高いといえますが、自分が設計開発に関わった車が、世に出る喜びは代えがたいものがあるでしょう。
生産管理(工務) 【車関係の仕事 2/7】
生産管理や工務の仕事は、主に自動車メーカーや部品メーカーの工場での生産を管理する仕事です。
自動車本体や部品の生産計画を作成して、プロジェクトを立ち上げ、実生産数や品質を管理します。働くためには、自動車メーカーや部品メーカーに就職し、工場に配属される必要があります。
特別な資格は必要ありませんが、最近ではメーカーの工場が海外にあることも多く、TOEIC等の英語力がないと、昇格できないこともあるようです。
工場で働く何千人を管理するリーダーとなるため、プロジェクト管理能力など、得られるスキルが多い仕事です。
宣伝・マーケティング 【車関係の仕事 3/7】
自動車メーカーの宣伝・マーケティング部門の仕事もあります。新車が出る際にどのような車が求められているのか市場調査を行ったり、訴求ポイントを整理し、話題をつくって販売台数を稼ぐための施策を企画実行します。
CM制作が含まれますが、車関係の仕事の中でも花形であり、自動車メーカーに就職し、宣伝・マーケティング部門に配属される必要があります。設計開発職と同様に就職難易度は高いですが、企画やアイディアが実際に形になることはやりがいになるでしょう。
自動車メーカーに就職できなくても、広告代理店に就職するという手もあります。プロモーションは、自動車メーカーの宣伝マーケティング部門から広告代理店に外部委託されることも多く、実際にプロモーションを手がけているのは広告代理店側ということもあります。
自動車メーカー系列の広告代理店や、自動車メーカーを担当している広告代理店もあるため調べてみましょう。ただし、入社したからといって必ず担当できるとは限らない点には注意が必要です。
カーデザイナー 【車関係の仕事 4/7】
カーデザイナーになるためには、美大のデザイン科などを卒業し、自動車メーカーへ就職してデザイン部門に配属される必要があります。新車のデザインは、自動車メーカーのデザイン部門が行っているためです。
まれに外部のデザイン事務所が参画することもありますが、基本的には自動車メーカーの範疇になるでしょう。デザイナーといってもその役割は細かく分業されており、車全体のデザインを行えるのは一握りで、ホイールやハンドルなど、車の一部をデザインすることからキャリアがはじまります。
自動車本体のデザインでなくとも、カタログやアフターパーツのデザインを行うデザイナーの仕事もあります。その場合、自動車メーカーへの就職ではなく、広告代理店やアフターパーツメーカーなどの選択肢を選ぶことができます。
ディーラーでの販売 【車関係の仕事 5/7】
ディーラーでの販売の仕事は、車を通じて顧客との継続的なコミュニケーションを取りながら、新車を実際に販売していく仕事です。各エリアの自動車販売会社に就職し、営業に配属されることで可能になります。
販売会社は店舗数も多いため、自動車業界のなかでも比較的就職しやすい職種といえるでしょう。販売台数を稼ぐことによって、インセンティブがつく場合もあり、車が好きで、人とのコミュニケーションが得意であれば、天職になるかもしれません。
最近ではテスラのように、販売会社を持たずにメーカー直販する会社もありますが、日本の自動車メーカーのほとんどが販売会社制をとっているので、各地域に販売会社があります。
引っ越しや転勤をしたくないという人の場合、自分の地元の店舗で働くことも可能であるという点もポイントになるでしょう。
整備士 【車関係の仕事 6/7】
整備士の仕事は、車の修理や整備を行う仕事です。整備工場や販売会社の整備工場、カー用品のピット、ガソリンスタンドなど、さまざまな就職先があります。
タクシー会社や運送会社など、自社で多くの車を持つ会社では、自前の整備士を雇っている場合も多く、就職できるチャンスも高いでしょう。
整備の仕事は無資格でもできますが、関われる業務が限られてしまうため、自動車整備の資格を取得することが一般的です。資格は1級から3級までありますが、一通りの業務をこなすならば2級以上に合格する必要があります。
専門学校での自動車整備士コースもあり、若いうちから資格取得を目指すこともできます。
製造(期間工) 【車関係の仕事 7/7】
自動車メーカーや部品メーカーの工場ラインで製造する仕事もあります。自動車メーカーなどから期間工(期間限定の契約社員)として募集されることも多く、比較的仕事に就きやすいことが特徴です。
寮が用意されたり就職お祝い金が出されたりするなど高待遇な部分もありますが、その多くは、3ヶ月や半年単位で契約が終わってしまいます。これは、自動車メーカー側の流動的な生産計画を調整する人員であるためです。
求人内容によっては、採用試験を受けてそのまま自動車メーカーの正社員になることも可能です。正社員を目指す場合は、あらかじめ正社員登用制度の有無を確認しておきましょう。
車関係の仕事の年収
自動車業界は、他の業界に比べて平均年収が高そうな印象がありますが、職種によってもさまざまです。
先ほどご紹介した5つの職業の年収を、それぞれ比較します。
1. 自動車メーカー
国内の自動車メーカーは、トヨタ、ホンダ、日産など7社の主要メーカーと、トラックメーカーも含んだ9社があります。
2018年度の各社有価証券報告書をもとに作成したデータでは、1位のトヨタ自動車は「851.6万円」となっています。9位までの自動車メーカー平均年収は「741.4万円」となり、全体の平均年収は「441万円」と比べると、1.5倍以上の金額です。
自動車メーカー自体も、従業員数が数万人いる大企業が多く、就職難易度も高い傾向にありますが、その分年収も非常に高い結果になっています。
2. 部品メーカー
国内の部品メーカーの中では、トヨタ系のデンソーが1位で「816.8万円」となっており、トヨタ自動車にもせまる年収の高さとなっています。
2018年度の有価証券報告書のデータでは、調査対象とした33社の部品メーカーの平均年収は「705.2万円」となり、700万円を超える高い水準となっています。これは、各社安定した基盤を持つ大企業が多いことが理由です。
3. ディーラー
ディーラーは、社名の一部に自動車メーカーの名前が入っていることが多くあり、自動車メーカーと同様に高収入のイメージがあるかもしれません。しかし、自動車メーカーとは別会社であることが多く、給与体系も異なっています。
厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、ディーラーの平均年収は「514.3万円」となっており、全体の平均年収に比べて高い結果となりました。
ただし、営業職であれば、販売台数に応じてインセンティブがつくことが多く、成績が良いと年収1,000万円を超えることもあるでしょう。新人でも、人によっては月収30~40万程度と、新卒の給料よりも高い金額を受け取れるケースもあります。
4. 整備士
整備士の平均年収は、令和元年賃金構造基本統計調査によると「440.8万円」となっています。大企業の自動車メーカーと比べてしまうと低く見えますが、そこまで高額ではないといえるでしょう。ただし資格取得をして1級の自動車整備士となれば、年収アップも期待できます。
また、整備士といっても中小規模の整備工場や、大手のカー用品チェーン、ディーラーの整備工場などさまざまな会社があるため、会社によって年収は異なるでしょう。
5. 期間工
期間工の平均年収は、令和元年賃金構造基本統計調査によると「506.7万円」となっており、全体の平均よりも高水準であることがわかります。期間工は雇用の調整弁として契約期間を定めているため、その分高待遇となっているケースが少なくないためです。
期間工には、自動車メーカーからの直接雇用と派遣会社を通じた間接雇用の2種類がありますが、派遣会社を通じた方が、内定祝入社祝などの一時金を派遣先(メーカー)と派遣会社の両方から支給される場合があり、待遇はよいといわれています。
また、どちらのパターンで雇用されても、正社員へのチャンスは残されています。
引用:厚生労働省「令和元年賃金構造基本統計調査」
車関係の仕事に就くメリットとデメリット
車関係の仕事に就くメリットとデメリットを、職種ごとにご紹介します。企業規模や待遇などメリットの多い自動車業界ですが、テスラなどのEVメーカーの台頭や自動運転技術やサブスクリプションサービスなど、業界全体が変革の時期を迎えています。これまでの延長で安定した業界とは言い切れないところもあるため、デメリットも知っておきましょう。
自動車メーカーのメリット
自動車メーカーは、「年収」「年間休日」「教育制度」「福利厚生」など、あるゆる面で最高クラスの待遇となることがメリットです。ほとんどのメーカーが、日本を代表する大企業であるためです。
今後は自動車製造メーカーから自動車に関わるサービスを提供する会社へ変わっていく可能性が高く、ビジネスモデルを変革するダイナミックな仕事ができる可能性のある環境でもあります。
自動車メーカーのデメリット
自動車メーカーのデメリットは、学歴重視で就職難易度が高い傾向があることです。日本を代表する大企業のため各一流大学からの人気も高く、海外からの入社組もいます。
もちろん、中途採用や期間工からの正社員採用など新卒以外の入社方法もありますが、特別なスキルや専門的な知識がなければ、ハードルは高いでしょう。
また、今後の業界自体の変革により、企業の合併などの業界再編が起こる場合もあります。大幅なリストラが発生する可能性もありますので、注意しましょう。
部品メーカーのメリット
部品メーカーは、自動車メーカーに次いで待遇がよい大企業が多くあります。年収や休日、福利厚生なども非常に高い水準にあるでしょう。トヨタやホンダなどのメーカー系列の会社でも、海外のメーカーも含めて部品供給をしています。
国内の自動車メーカーがグローバル競争で海外勢に敗れたとしても、海外メーカーへ部品供給を行うことで、生き残りが可能になるという点はメリットといえるでしょう。
部品メーカーのデメリット
部品メーカーのデメリットは、現在主力となっている部品が、今後必要とされなくなる可能性があることです。
たとえば、今後EVが増えていく中で、エンジンの部品だけを作っていたら会社はつぶれてしまうかもしれません。タイヤやボディ、シートなどエンジンがなくなっても変わらない部品を高品質でつくれる会社は生き残ることが可能でしょう。
国内の自動車メーカーの力が弱り、業界の再編が起こると、国内の部品メーカーと合併したり、海外の大手部品メーカーから買収される可能性もあります。
ディーラーのメリット
ディーラーのメリットは、何といっても販売台数によってインセンティブがもらえることでしょう。就職の難易度も自動車メーカーに比べそこまでは高くなく、学歴重視も強くないため、営業経験があれば中途採用も期待できます。
新車だけでなく、外車や中古車などさまざまな販売ディーラーがありますので、チェックしてみましょう。
ディーラーのデメリット
ディーラーのデメリットは、自動車メーカーの車種の人気よって、販売台数に影響があることです。中古車ディーラーを除く新車ディーラーは、決まったメーカーの車種しか扱えないためです。
最近ではディーラーへの来店数は減少傾向にあり、従来型の車の売り方にも変革の波が押し寄せているという点には注意が必要です。
整備士のメリット
整備士のメリットは、何といっても手に職をつけられることです。学歴も関係なく、自分の努力次第で整備士資格を手に入れられれば、整備工場だけでなく、ディーラーやカー用品、ガソリンスタンド等でも働ける汎用性があります。
自分の車を整備できるというメリットもあるので、車好きにはおすすめです。
整備士のデメリット
整備士のデメリットは、給与や待遇がそれほど高くないことでしょう。自動車メーカーや、ディーラーに比べて、中小規模の会社が多いため、企業としての安定性や、給与、待遇はどうしても劣ってしまいます。
また、整備工場はエアコンがないため、夏は暑く冬寒いといった労働環境も、人によってはデメリットになる可能性もあります。
期間工のメリット
期間工のメリットは、短期間で高収入を稼ぐことができ、正社員になるチャンスもあることです。期間工は流動する生産台数の調整のための雇用形態であり、契約期間が決められているため、入社一時金などの待遇が高くなっています。
また、狭き門ですが正社員になれば自動車メーカーの給与水準になるため、かなりの高年収となるでしょう。寮や社食が完備されていることも多く生活費を節約できるため、期間を決めてお金を貯めたい方には最適です。
期間工のデメリット
期間工のデメリットは、契約期間内に正社員になれなければ、退職しなくてはならないことです。契約社員のため当然と言えば当然ですが、高待遇から一気に職がなくなってしまうのは、つらいところです。
正社員試験の募集は少なく、あったとしても試験にパスすることは簡単ではないので、注意しましょう。
車関係の仕事に就こう
自動車業界の仕事は、日本国内の多くのすそ野に広がっていて、年収や待遇も、平均よりも高い傾向にあります。EVや自動運転、MaaS(モビリティ・アズ・ア・サービス…サービスとしてのモビリティ)への変革で、この先の未来が安泰である保証はありません。しかし、国の基幹産業であり人の生活と切っても切れない自動車業界は、国の支援も含めて将来有望であることは間違いありません。あなたが車関係の仕事に興味があれば、ぜひさまざまな視点で業種職種をチェックし、チャレンジしてみましょう。