「不動産業界の給料がどれくらいか知りたい」と考えている方もいるのではないでしょうか。不動産会社の給料は会社によって異なるものの、インセンティブなどで収入をアップできるケースもあります。この記事では、不動産業界の平均年収を紹介するとともに、年収をさらにアップさせる方法についてもご紹介します。
不動産業界の平均年収は約446万円である
国税庁発表の「平成30年分 民間給与実態統計調査」によると、不動産業界(不動産業物品賃貸業)の平均年収は446万円となっています。ただし「446万円」といわれても、あまりピンとこないかもしれません。そこでこの年収について、もう少し深堀りして見ていきましょう。
結論からお伝えすると、不動産業界の年収は以下の特徴があるといえます。
- 他業界と比べて平均年収が高め
- 不動産金融やデベロッパーの年収は特に高い
それぞれについて解説します。
他業界と比べて平均年収が高め
不動産業界の平均年収「446万円」は、ほかの業界と比べると高めです。業界ごとに比べると以下の通りです。
- 宿泊業、飲食サービス業:251万円
- 農林水産、鉱業:312万円
- サービス業:363万円
- 医療、福祉:397万円
- 運輸業、郵便業:445万円
- 製造業:520万円
- 金融業、保険業:631万円
引用:国税庁発表「平成30年分 民間給与実態統計調査」
平均年収が300万円台の業界が多いことからも、不動産業界は比較的年収が高い部類に入るといえるでしょう。
不動産金融やデベロッパーの年収は特に高い
不動産業界と一口にいっても、実はその職種によって年収はさまざまです。dodaの「業界別平均年収ランキング【最新版(2019年)】」によると、不動産金融の平均年収は483万円となっており、さらにデベロッパーも469万円と高めです。一方で不動産仲介は396万円と、年収が低めであることが分かります。
ちなみに不動産金融とは、不動産証券化や不動産投資信託(REIT)をはじめ、不動産を投資対象として扱うビジネスのことを指します。デベロッパーとは、街の大規模開発や、オフィスビルの建設といったプロジェクトを主体となっておこなう事業者のことです。
これらの仕事は、大きなお金が動くといわれる不動産の仕事のなかでも、特に巨額のお金が動く仕事です。そのため大きな利益が生まれやすく、その利益が従業員にも多く還元されるため、年収も高くなっているのです。
不動産業界の年収が高い理由とは
不動産業界の年収が高い理由としては、以下の3つが考えられます。
- 大手不動産会社の年収が高いため
- インセンティブが発生するため
- 募集時の年収が高いため
それぞれの理由について解説します。
大手不動産会社の年収が高いため
不動産業界の年収が高いのは、大手不動産会社の年収が高いことがその一因といえます。具体的には、一部の大手不動産会社の年収がかなり高いため、業界全体の年収が底上げされているのです。
たとえば財閥系の不動産会社の平均年収は、のきなみ1000万円以上を超えています。さらには年収が1500万円近い会社も存在し、不動産業界のみならず、日本の全企業のなかでもトップクラスの年収を誇っています。
ただし、これは一部の大企業の例に過ぎません。中小規模の不動産会社の場合には、年収300万円台ということも一般的です。
そのため「不動産業界は年収が高い」といった情報だけをもとに入社するのはおすすめできません。「年収が意外に低く辞めることになった」といった結果にもなりかねないため注意しましょう。
インセンティブが発生するため
インセンティブが発生する業界であることも、不動産業界の年収が高い理由のひとつです。インセンティブとは、個人の売上(成果)に応じて支払われる「追加報酬」のことを指し、「歩合」とも呼ばれます。
インセンティブが月100万円を超える人もいるなど、インセンティブの存在が不動産業界の年収を下支えしていることは疑いようがありません。
そもそも不動産業界で働く人の多くは、マンションや戸建て住宅の売買や交渉、それらの販売といった「営業の仕事」をおこなっています。そして不動産の営業職は、一件成約させるとその受注額が大きい仕事です。つまり成約すると、会社の売上に大きなインパクトを与えるのです。
こうした理由もあり、売上をあげた社員の頑張りに報いる意味も込め、インセンティブを出す不動産会社もあります。
社員のモチベーションアップという理由も
社員のモチベーションアップのためにインセンティブを出している会社も少なくありません。不動産の仕事は、たしかに一件成約させると大きな売上をあげられる仕事です。しかし裏を返すと、一件成約させることがむずかしい仕事ともいえるのです。
不動産は、それを買う顧客にとっては大きな買い物です。つまり、購入の判断を慎重におこなうため、買い手がなかなかつかないことが多いのです。事実、不動産の営業活動は難しく、その難しさから不動産業界を後にする人も少なくありません。
一方で社員が出て行ってしまっては、会社としては大きなダメージです。そのため社員のモチベーションを高め、離職を防止するといった意味も込めて、インセンティブを出しているという事情もあります。
募集時の年収が高いため
求人を募集する際の年収が高いことも、不動産業界の年収が高い理由のひとつといえます。不動産の仕事は簡単な仕事ではありません。ストレスも多く向き不向きも影響するため、ほかの業界と比較すると離職者が多い傾向にあります。
人手不足に悩まされている会社は多く、社員を集めるために年収を高めに設定していることも珍しくないのです。ちなみに、はじめの提示年収は高くても、いざ入社してみると給料がほとんど上がらない会社もあります。
入社の判断は、求人票に記載の年収だけでなく、入社後の給料の上り幅も踏まえて決めるようにしましょう。
不動産業界で年収アップをさせる方法
不動産業界で年収をアップさせる方法について紹介します。不動産業界は年収が高めの業界ではありますが、一方で金融業界など、不動産業界よりも平均年収が高い業界も存在します。
なかには「不動産業界のなかで、できるだけ多く稼いでいきたい」と考える人もいるかもしれません。そこでおすすめしたいのが、以下の4つに挑戦してみることです。
- 資格を取得する
- 成果に注力する
- 昇給を狙う
- 転職を考える
それぞれの方法について解説します。
資格を取得する
不動産業界のなかで年収を上げていくには、資格の取得がおすすめです。なぜなら、資格手当などが支給されることが多いためです。特に以下ふたつの資格は、給料アップが期待できる資格の代表格といえます。
- 宅建
- 不動産鑑定士
それぞれの資格についてお伝えします。
宅建
宅建(宅地建物取引士)を取得すると、毎月3万円以上の資格手当を支給する会社が多い傾向にあります。宅建とは「不動産取引法務」の専門家として認定される資格のことです。
国家資格のひとつで、合格率は10〜15%と難関ですが、毎年20万人近い受験者を集める人気資格です。
宅建を取得すると「重要事項の説明」と呼ばれる業務をおこなえるようになります。これは「独占業務」と呼ばれ、宅建士のみに認められている仕事です。さらに、不動産を扱う事業所には、「業務に従事する者」5人につき1名以上の割合で宅建士の設置が義務付けられています。
つまり宅建士は不動産会社には欠かせない存在といえ、そのために資格手当の支給などの点で優遇されているのです。勉強は簡単ではありませんが、一発合格する人も少なくないため、挑戦する価値が十分にある資格といえるでしょう。
不動産鑑定士
不動産鑑定士の平均年収は約700万円ともいわれ、比較的高年収の資格として知られます。
不動産鑑定士とは、不動産の鑑定評価を仕事としておこなう人のことです。具体的には、土地や建物の利用価値や、経済的な価値の算出をおこなっています。近年は、その専門的な知識を活かし、金融業界やコンサルティング業界で活躍する不動産鑑定士も増えています。
不動産鑑定士は、いわゆる「稼げる資格」として高い注目を集めていますが、一方で簡単に取得できない資格としても有名です。国家資格であるだけでなく、最終的な合格率は約5%と、数ある国家資格のなかでもかなりの難易度を誇っています。そのため、資格取得は一筋縄ではいきません。
ただし、この先も需要が高い仕事であることはたしかです。不動産業界で年収アップを狙っていきたい人は、宅建同様、取得を検討する価値のある資格といえるでしょう。
成果に注力する
成果に注力することも、不動産業界のなかで年収を上げていくためには欠かせません。先述したとおり、多くの不動産会社ではインセンティブを用意しています。
ただし不動産業界は、売上をあげることが簡単な世界ではありません。「実力主義」の世界は、厳しい競争の世界でもあります。
不動産業界で年収アップを考えている人は、こうした大変なことは覚悟のうえで、それでも高年収を狙っていきたいか、いま一度冷静に考えてみるようにしましょう。
また、早朝から深夜までとにかく営業電話をかけさせるなど、悪質な不動産会社があることも事実です。心身を病んでしまうことのないよう、会社選びは注意しましょう。
昇給を狙う
昇給を狙うのも、不動産業界で年収アップを実現する方法のひとつです。たとえば、エリアマネージャーを目指して働くことも手です。もちろん、課長や部長といった役職に就くことで、そのポジションに見合った高い報酬も期待できます。
そもそも不動産業界のなかには、実力主義を掲げる会社が少なくありません。そのため、成果を上げれば社内から実力が認められ、若くても役職を与えられる可能性もあるのです。
すぐに年収を上げられる方法とはいえませんが、昇給もひとつの選択肢として覚えておきましょう。
転職を考える
不動産業界で年収アップを狙うためには、転職も考えてみてください。具体的には、以下のような会社に入社できると年収アップが見えてきます。
- 大手不動産会社
- 都会の不動産を扱う会社
それぞれの会社の特徴をお伝えします。
大手不動産会社
大手不動産会社に転職すると、中小の不動産会社の1.5倍以上の年収が手に入ることも珍しくありません。たとえば、有名なブランドマンションを展開する大手デベロッパーの場合、基本給が高く、会社としても安定しています。さらに、退職金制度や福利厚生が充実していることも魅力のひとつです。
入社倍率は高く簡単には入社できませんが、高年収を目指す場合には大手不動産会社への入社が年収アップへの近道となることでしょう。
都会の不動産を扱う会社
都会の不動産を扱う会社への入社も考えてみましょう。なぜなら、土地単価の高い都会エリアの場合、仲介手数料の額が大きく、1件の成約で得られる利益が大きいためです。
利益が上がりやすい構造ゆえに、それに比例して社員の年収も高くなる傾向があるのです。
一方で、土地単価の安い地方の場合、都会エリアほど稼ごうとすると何件もの成約が必要です。こうした理由もあり、都会の不動産を扱う会社に入社したほうが、営業成績を効率的に伸ばせる可能性があります。
もちろん都会には競合も多く、厳しい営業ノルマを課されるケースもあるでしょう。それでも、年収アップを狙った転職を考える場合には、都会エリアで展開する不動産会社への入社は現実的な選択肢のひとつといえます。
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