「薄給で生活が不安」「薄給から抜け出すために転職したい」という方もいるのではないでしょうか。給料が低い労働条件で働いていると、ほかの職業に転職すべきか悩むことがあるでしょう。この記事では、薄給の仕事を続けた場合に考えられる将来≒末路をお伝えするとともに、薄給の企業の特徴や業界、薄給からの抜け出し方について解説します。
- 薄給とはいくらぐらい?「年収300万円以下」を薄給と感じる人が多い
- 「薄給の企業に共通する5つの特徴」を知って、就活の参考にしよう
- 薄給の傾向がある業界3選は【宿泊・飲食業、サービス業、卸売・小売業】
- 薄給から抜け出す方法は【昇給を目指す、副業をはじめる、転職を考える】
薄給とはいくらくらいなのか
薄給にはそもそも明確な定義がありません。人それぞれでどのくらいの額を薄給と感じるかは差があるため、具体的な金額は各個人の印象によるでしょう。
ただし、一つの目安として「年収300万円以下」の人を薄給と感じる人も多いようです。
たとえば、年間のボーナスが月給の3か月分だと仮定して300万円を月換算に直すと、月給は20万円です。この20万円はあくまで額面上の数字のため、ここから社会保険料や所得税住民税が引かれると、手取りは16~17万円 ほどになります。
仮に一人暮らしで月の家賃が7万円だとすると、残りは約9~10万円となります。そこから食費や生活費などを賄うと、手元に残るお金は少なくなってしまうでしょう。
ちなみに、国税庁が発表している「平成30年分 民間給与実態調査」を見ると、日本人の平均年収は「441万円」ということがわかります。
しかし一方、実際に年収帯の人口割合を比べると、「年収300万円以下」だと1/3以上の人が当てはまることがわかります。
年収帯 (単位: 万円) | 割合(%) |
---|---|
100未満 | 5.4 |
100以上~200未満 | 13.1 |
200以上〜300未満 | 13.3 |
300以上〜400未満 | 13.4 |
400以上〜500未満 | 10.5 |
500以上〜600未満 | 8.3 |
600以上〜700未満 | 7.9 |
700以上〜800未満 | 6.0 |
800以上〜900未満 | 5.3 |
900以上〜1000未満 | 4.0 |
1000以上〜 | 12.8 |
1/3以上の人が年収300万円以下と考えると「年収300万円以下」を薄給というには、少々早計かもしれません。
薄給のまま生活した人の末路
薄給のまま何年も生活を続けると、考えられる将来のリスクには具体的に以下のようなものがあります。
- 70代でも働き続ける可能性が高い
- スキルがつかず昇給が期待できない
- ライフイベントに影響が出る
金銭は人生において様々な面で影響するため、影響の範囲が広くなってしまうようです。
では具体的に一生涯で必要なお金はいくらなのでしょうか?
一生に必要なお金と年収300万円の比較
一生に必要なお金はひとり3億円程度といわれることがあります。
年収300万円の場合、22歳から65歳まで43年間働くと、総収入は1億3千万円です。
これでは、必要な額に1億7千万円足りず、65歳以降に年金を受け取るようになっても、3億円にはまだ足りません。
厚生労働省年金局の「平成30年度 厚生年金保険国民年金事業の概況」によると、一般的なサラリーマン(厚生年金保険第1号)がもらえる年金は、平成30年時点で月平均14万6千円です。
年金を65歳から20年間もらうと仮定するとその総額は約3,500万円で、先ほどの1億7千万円と足しても2億円となるため、3億円にはまだ1億円近く足りません。
もちろん、3億円という数字はあくまで一般的な数値のため、人によって必要な額は異なります。しかし、薄給のまま生活していくと不都合なことに見舞われやすいのは事実です。
薄給の場合は年齢を重ねるほどバリエーションが増える出費などに苦しさを感じる人が多いでしょう。
具体的に想定される将来のリスクや展開を解説していきます。
70代でも働き続ける可能性が高い
薄給のまま生活していくと、70歳を超えて高齢になっても働き続ける未来が待っているかもしれません。
年金が満額支給されたとしても、薄給だと生活費が足らなくなる可能性があるからです。
高齢になるにつれ病気になるリスクも高まり、介護を必要とする人も出てくるでしょう。
受け取る年金が将来的に減る可能性もあるなか、支出だけが増え続ける事態になることも考えられます。
大学を出て、年金受給開始年齢の65歳まで休まず働いても、老後も休めないという未来が現実的なものとして迫ってくることがあり得ます。
スキルがつかず昇給が期待できない
薄給かつ単純作業などが中心の仕事は、働いてもスキルがつきにくい傾向があります。
長年働いても昇給できず、場合によっては新入社員と似たような給料で過ごす人もいます。
薄給で働く人の多くは、以下いずれかのケースが考えられます。
- スキルや経験を問わないいわゆる「誰にでもできる仕事」をしている
- 業界自体の給料の相場が低い
- 儲かっていない零細企業やブラック企業に勤めている
いずれにしてもその仕事をしている限り、大きく収入がアップする可能性は低いといえます。
ライフイベントに影響が出る
ライフイベントとは、結婚や子育て、住宅の購入、親の介護といった、多くの人が経験するようなイベントのことです。
たとえば正社員で年収300万円の人の場合、結婚後は共働きをしなければ生活が大変になってしまう可能性があります。
もしも薄給のなかから毎月の奨学金返済や親への仕送りなどをしている場合、お金の問題があるために結婚に二の足を踏んでしまうこともあり得ます。
もちろん人によって状況や価値観は異なりますし、少ないお金でも満足して暮らしている人も大勢います。
しかし、たとえば「結婚後に家や車を買いたい」「子どもに奨学金を背負わせず大学進学させたい」などと望むのであれば、薄給のままでは実現がむずかしくなってしまう可能性があります。
薄給の企業の特徴
薄給の企業には、以下の5つの特徴が考えられます。
- ボーナスが出ない
- 平均年齢が低い
- 下請け仕事がメイン
- 売上が赤字
- 事業拡大を目指していない
必ずしもすべての特徴が当てはまるわけではありません。
しかし、将来的にその企業で給料があがるかなど、企業への理解を深めるためにそれぞれ参考にしてみてください。
それぞれの特徴について解説します。
ボーナスが出ない
薄給企業の多くは、ボーナスがありません。そのため、社員は月給だけで生活していくことになります。そして、その月給も低く設定されていることがほとんどです。
結果として、薄給企業で働く社員は金銭的にじゅうぶんな生活を送れないことも多いのです。
平均年齢が低い
そもそも平均年齢が高い企業の場合、平均年収も年齢と比例して高くなる傾向があります。年齢があがるほど必要なお金が増えたり、昇給したり役職がついたりするためです。
薄給企業の場合は20代が中心など働いている社員の年齢が低く、そこで働く社員の給料は「若いから」という理由だけで低く抑えられている可能性もあります。
こうした状況に嫌気が差し、会社をすぐに辞めていく若手社員も少なくありません。しかし結局は、その企業の給与体系は変わらず安いまま、というケースが多いといえます。
下請けが多い
薄給企業はいわゆる「下請け」であることが少なくありません。下請けとは、個人や企業から仕事を受ける立場の会社のことです。きちんと利益が出る企業もありますが、そこまでの経営力がない下請け会社も残念ながら多いといえます。
仕事を受注するためにライバル企業との競争のなかで安い価格で案件を受注している下請け会社の場合、そもそも、社員に多くの給料を払うことができません。
足元を見られてクライアントにさらに値切られたり、金額以上の仕事を求められたりするという悪循環にもなり得ます。会社としては売上が上がらず、その代償が「社員の給料の安さ」として表れてしまうのです。
売上が赤字
売上が赤字であれば、薄給になってしまう会社もあります。とはいえまともな会社であれば、融資を受けるなどしてなんとか社員に給料を支払おうとはします。
そもそも業績が赤字だとしても、それは会計上の話であるため、基本的には会社がすぐに倒産するようなことはありません。
ですが会社のなかに「お金(資産)」がないと話は別です。決算が赤字なだけでなく資産にも乏しいため「いつ倒産してもおかしくない」といった状況に追い込まれている薄給企業は少なくないのです。
事業拡大を目指していない
時代が大きく変化しているなか、これまでと同じ商品やサービスが世の中に受け入れられ続ける保証はありません。そのため会社としては既存ビジネスだけでなく、新しいビジネスにも果敢に取り組んでいく必要があります。
一方で薄給企業の多くは、いままで通りのビジネスを、いままで通りのやり方で淡々とこなす傾向がみられます。そこには、事業拡大を目指す姿勢は感じられません。
そのため世の中の動きから取り残され、売上が年々減少していくといった状況に直面している企業が、薄給企業のなかには特に多いのです。
薄給と言われやすい業界
具体的には、以下3つの業界が薄給といわれやすいです。
- 宿泊業飲食サービス業
- サービス業
- 卸売業小売業
業界の平均給与が、そもそもの従事する人に人数が多いなどが原因でもあるでしょう。
平均月収や平均年収も交え、それぞれの業界の特徴について解説します。
宿泊業飲食サービス業
「平成30年分 民間給与実態調査」を見ると、宿泊業飲食サービス業の平均年収は251万円で、ボーナスを除いた年収は233万円であることから、平均月収は約19万円です。
宿泊業飲食サービス業で薄給企業が多い理由は、ライバル企業が多いために売上が上がりづらい、人件費を抑えて運営しているといった点が考えられます。
サービス業
サービス業の平均年収は363万円で、ボーナスを除いた年収は321万円であることから、平均月収は約26万円です。
サービス業には警備会社やWebサービス会社なども含まれますが、サービス業には下請けも含まれています。
ビジネスの構造上高い利益が生まれにくく、結果として社員に十分な給料を還元できない企業が多いことが考えられます。
卸売業小売業
卸売業小売業の平均年収は383万円で、ボーナスを除いた年収は328万円であることから、平均月収は約27万円です。
ネット通販などが主流となっているいま、従来型の卸売ビジネスをおこなっている会社や、店舗型の小売業に関しては、かなり厳しい状況に追い込まれています。新たなビジネスに打って出るような会社は少なく、売上が上がるどころか、下がっていく一方の会社も少なくありません。
そのしわ寄せが、卸売業小売業で働く社員の給料に「薄給」というかたちで表れているのです。
薄給から抜け出す方法
薄給から抜け出すためには、以下の3つに取り組む必要があります。
- 昇給を目指す
- 副業をはじめる
- 転職を考える
それぞれの方法についてご紹介します。
昇給を目指す
まずは、社内での昇給を目指しましょう。なぜなら、次長や部長といった「役職者」、常務や専務などの「経営者」になると、給料は間違いなく一般社員よりも多くなるためです。
もちろん、すべての社員がこうしたポジションに就けるわけではありません。しかし、目の前の仕事で成果を出すことに注力する、資格を学んで仕事に活かす、といった先に出世の道が見えてくるのも事実です。
薄給から抜け出したいのであれば「いまの環境でもできることはないか」と考え、自分の状況を、自分自身で一歩前進させることが欠かせないのです。
副業をはじめる
ある程度の収入を副業から得ることができれば、たとえ本業の給料が少なくても、生活していけるだけの余裕が生まれます。
たとえば副業のブログ収入などで生活に必要なお金を得ながら、本業では好きな仕事をしている人もいます。副業で何を選択するかにもよりますが、多くの場合、副業でじゅうぶんな収入を得るには相当な苦労が伴います。
一方で、一度軌道に乗せることができれば継続的にお金が入ってくることもあります。「薄給のままでは将来が心配」といった人は、リスクの低いところから副業にチャレンジしてみてもよいでしょう。
転職を考える
たとえば同じ法人営業という仕事でも、小売業の営業と金融業界の営業ではその給料に大きな差があります。
商品知識の複雑さや、顧客から期待されるレベルの高さなどに違いはありますが、そもそも業界の「構造的な面」から差が生まれていることも知っておいてください。
まず、小売業は単価が低く薄利多売になりがちで、在庫が経営を圧迫することもあります。一方で金融業の会社が売るのは高価なサービスで、在庫も抱えません。つまり金融業のほうが、“お金が貯まりやすい”構造といえるのです。
そのため、たとえ同じ法人営業という仕事をしていたとしても、小売業の営業社員の何倍もの給料を金融業の営業社員がもらっていることが珍しくないのです。
もちろん、給料が高い仕事にはそれなりのプレッシャーや苦労が伴います。ですが、薄給を抜け出したいと本気で考えているのであれば、同じ職種でも異なる業界を選んで転職するのもひとつの手段です。
こうした状況を踏まえると、以下の2つのポイントを押さえて転職活動をおこなうことが、薄給を抜け出すための現実的な方法であることがわかります。
- これまでと同じ仕事ができる会社を目指す
- いまの業界より平均年収が高い業界を目指す
転職は、年齢が早ければ早いほど内定の確率が高まる傾向もあります。給料の少ない現状に不満や不安を抱いているのであれば、転職を考えてみるのもひとつの手です。いまの行動が、未来の自分を救うこともあるでしょう。
「薄給」によくある質問
薄給には明確な定義はありませんが、一般的には年収300万円以下の人を指すことが多いです。
薄給の企業には様々な特徴がありますが、ボーナスが出ないなどの特徴もあります。
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