保険業界は、昔から就活生に人気のある業界です。保険業界は大きく「生命保険」と「損害保険」の2種類に分けられますが、保険業界を志望し始めたばかりの就活生の中にはそれぞれの詳細につい実はよくわかっていないという人も多いかもしれません。
この記事では、保険業界の概要やビジネスモデルについて紹介します。就活の参考になれば幸いです。
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この記事の目次
「保険」とはそもそも何か。なぜ存在するのか?
そもそも、保険というのは何のために存在しているのでしょうか。それは、一人ひとりの努力ではどうすることもできないような不測の事態に備えるためです。例えば、いくら健康に気を使っていたとしても病気や怪我になるリスクをゼロにはできませんし、注意して車を運転していても事故に巻き込まれるおそれを完全に排除するのは困難です。また、家に籠っていても大きな地震などの自然災害に見舞われる可能性はあるでしょう。これらのような様々なリスクについて、個人だけで対応するのは必ずしも現実的ではありませんし、いかなる事態が生じても大丈夫なように完全に準備をしておくというのも困難です。そこで一人ひとりが個別に備えをするのではなく、同様の不安を抱えている人たちから保険料を徴収して、万が一の事態が生じた際に、その資金を使って保険金を受領できるようにしておくという仕組みが考え出されました。これが、保険という金融商品が誕生した背景です。
保険には「生保」と「損保」がある
保険には、大きく分けて生命保険(生保)と損害保険(損保)の2種類があり、これらは保険業法という法律に基づく分類となっています。生保は、人の生死をトリガーとして保険金が支払われるタイプの保険で、第一分野と呼ばれています。終身保険や定期保険も、同じ第一分野に含まれる保険です。一方、損保は、地震や台風といった災害や、交通事故などの偶発的な要因によって生じる事故によって受けた被害に対して保険金が支払われるタイプの保険で、第二分野とも呼ばれます。では、この2つにはどのような違いがあるのでしょうか。
生保と損保の大きな違いとしては、まず保険期間を挙げることができます。一般的に、生保の場合には保険期間が10年から20年の長期になる場合が多いのに対し、損保の場合にはほとんどが1年契約です。ただし、火災保険や地震保険のように、損保であっても5年から10年契約となるものも存在します。また、加入動機についても、生保と損保とでは異なります。生保の場合には、保険会社からの勧誘を受けて加入するのが一般的であるのに対し、損保の場合は、自らの考えに基づいて自発的に加入するケースが通常です。これ以外に、保険金の支払われ方も両者の大きな違いです。生保の場合には、契約において定められている一定金額が支払われる定額契約型が主流ですが、損保は、事故によって被った損害相当分を保証する実損補填型が中心です。さらに、生保の販売は、外交員のような営業職が担っているのに対し、損保は主に代理店によって販売されているという違いもあります。
生命保険について
生命保険について解説していきます。
生命保険とは
生命保険の代表格は、病気になった場合に生存中の医療費を補填してもらえる「医療保険」や加入者が死亡してしまった場合に遺族が保険金を受け取れる「死亡保険」ですが、その種類はこれだけに留まりません。ただし、生命保険の場合には、加入者の病気や死亡といった事象が生じた場合に、事前に定めていた金額を満額支払うことが義務付けられていますので、損害保険のように損失に応じて保険金が支払われるような商品は存在しないという点に注意する必要があります。
金融商品としての生命保険を取り扱っているのは、生命保険会社と呼ばれる金融機関です。代表的な生命保険会社には、日本生命や明治安田生命、第一生命、住友生命、かんぽ生命などが挙げられます。テレビCMなどでもおなじみの名前ばかりですので、一度は名前を聞いたことがあるという方は多いのではないでしょうか。実際、いずれの会社も就活生の間の知名度が高く、毎年のように高い人気を集めています。
生命保険会社のビジネスモデル
生命保険会社のビジネスモデルは、長期にわたって定期的に加入者から保険料を受領し、加入者が死亡してしまった場合に、遺族に保険金を支払うというものです。契約期間後も加入者が生存している場合には、元利金を取り崩す形で満期保険金が支払われるようになっています。保険料は、支払われる保険金の源泉になるものですので、万が一不足してしまったりしないように、予定死亡率や予定利率、予定事業費率という3つの要素を使って精緻に計算されます。このうち、予定死亡率というのは、1年間にどれくらいの人が死亡するのかを表す数値、予定利率というのは、保険料を運用して得られる収益を保険料から割り引く際に用いられる数値、予定事業費率とは、経営において必要になる経費が保険料に占める割合です。
死亡者数が予定死亡率から導かれる人数よりも少ない場合や、運用収入が予定利率を上回った場合などには、受け取った保険料の金額よりも支払う保険金の金額は少なくなりますので、その差分が生命保険会社の利益となります。実際に要した事業費が予定事業費率以下に収まったような場合にも、同様に生命保険会社に利益が発生することになります。なお、これらの保険料収入から得られる利益に加えて、生命保険会社は、それらの利益をさらに国債や社債を使って運用することも可能です。そのため、彼らは機関投資家としても一面を有しているとされています。
生命保険業界のトピック
日本は世界でも有数の保険大国として知られており、特に生命保険の市場規模はアメリカに次ぐ世界第2位となっています。もっとも、約40兆円と規模は大きいものの、少子高齢化による人口減少と、中央銀行のマイナス金利政策によって、必ずしも楽観視できる環境ではありません。生命保険会社の収益源の一部は、前述したとおり、国債などを使った資産運用益だったわけですが、マイナス金利が常態化してしまったことで、国債から十分な利回りが得られなくなり、それによって得られる利益が大幅に減少している状況です。また、人口の減少により保険の加入者も減ってきており、かつては人口の増加や経済の発展を背景に保険業界のけん引役であった第一分野の商品は、1996年を境にして伸び悩みを見せています。
このような厳しい環境を打開すべく、生命保険会社は、販売チャネルを多様化させたり、海外への進出を図るといった取り組みを進めています。特に、保険の普及率があまり高くない東南アジアをはじめとする新興国は、海外の中でもビジネス拡大の余地が大きいため、M&Aなどを駆使して生保各社が進出を加速化させている状況です。
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損害保険について
損害保険について解説していきます。
損害保険とは
損害保険の主な役割はリスクへの備えです。世の中には自分ではコントロールできない様々なリスクが存在するわけですが、それらの一部を損害保険会社に転嫁することによってリスク回避を図るというのが損害保険の主たる役割なのです。損害保険においては、あらかじめ契約において補償を受ける対象や範囲などを細かく定め、契約期間中に偶発的な事故が発生した場合に、それによる損害に応じて保険金が支払われることになります。保険金によって損害分を補償するというのが損害保険の基本的な考え方であり、その契約期間は通常は1年間です。
損害保険の対象となる偶発的な事故の範囲は非常に広く、自動車事故や地震などの災害に加え、海運の事故やコンピューターなどの故障なども対象となり得ます。それらの中でもっともニーズが大きいのは自動車事故で、それをカバーする自動車保険は、損害保険の実に半数以上を占めています。なお、損害保険会社も、保険金の支払いに備えるべく加入者から支払われた保険料を使って資産運用を行うという点では生命保険会社と同様ですが、生保に比べて契約期間が短く、そこまで大きな積立金が必要ではないため、その運用残高は生命保険会社よりも小規模になりがちです。
損害保険会社のビジネスモデル
損害保険の存在意義は、モノに関する損害リスクをヘッジできるようにすることで、人々や企業の活発な活動や新たな挑戦などを促すという点にあります。そのような損害保険を商品として取り扱う損害保険会社では、生命保険会社と同じく、保険料と保険金の差額を主な収益源としているわけですが、安定的に収益を得るためには、加入者の損害リスクを補償するために、保険料がどれくらい必要となるかを可能な限り精緻に算出できなければなりません。損害保険の場合には、掛け捨ての商品が基本ですので、もし保険金の支払額が、加入者から受け取った保険料の総額に事業コストを加算した金額を超えてしまうと、損害保険会社が破綻することになってしまいます。といっても、損保会社の一存で保険金の支払額を減らしたりすると、他社にシェアを奪われてしまいかねないため、基本的にはいかにしてサービスのクオリティを向上させて、顧客の満足度を高められるかが経営戦略を決めるうえでは重要になるのです。
損保の場合には、保険対象になる事故の発生確率は一律であるため、保険の内容が同じであれば保険料が安い方、保険料が同じであればよりサービスが充実している方を、顧客が選択する傾向にあります。そのため、損害保険会社では、保険料を定める際の原則として、「not excessive」、「adequacy」、「equity」の3つを掲げ、数学や統計学に加えて、これまで培ってきた経験なども駆使して、サービスの内容や保険料の水準などを決定しているのです。
損害保険業界のトピック
減少傾向にある生保市場とは逆に、国内の損保市場の規模は拡大傾向にあります。好調な市場動向に、自動車保険の改定や新等級制度の導入が相まって、損保各社は増収基調となっているのですが、状況は必ずしも予断を許しません。足元では自動車保険が約6割と過半数を占めていますが、この状況がいつまでも続くとは限らないからです。実際、収益源である自動車の販売台数は、若者の車離れや修理費の高騰などによって、減少傾向に歯止めがかかっていません。一方で、他業界からの新規参入やインターネット代理店の登場によって、簡単に保険料を引き上げることも難しくなっているのです。
このような環境下では、市場の9割近くを占めるとされている3メガ損保と呼ばれる東京海上グループ、SOMPOグループ、MS&ADグループであっても、現状に胡坐をかいているわけにはいかないでしょう。保険料の値上げに代わる新たな収益源の確保は各社にとって解決しなければならない喫緊の課題ですし、競争を勝ち抜くためには、リストラクチャリングを行ったり、規模の拡大や業務の効率化を目指して、さらなる業界再編を行う必要もあるかもしれません。
保険業界が求める人物像とは?保険業界で活躍できる人は?
国内市場が飽和しつつある中、保険各社は、海外展開を加速化させることが予想されます。そのため、海外ビジネスにおいて戦力となりそうな人材、具体的には語学に堪能であったり、海外の在住経験がある人、グローバル志向がある人などは向いているといえるでしょう。また、インターネットの発展によって、世界中のあらゆる情報が瞬時に知れ渡るようになる中、他社との激しい競争に勝ち抜いていくためには、保険会社で働く人には、社会の動きを常に頭に入れたうえで、より良い商品やサービスを提案できるだけの分析力を備えていることが求められます。
加えて、保険会社にとっては、顧客との信頼が何よりも重要になります。会社の業績を伸ばすために、顧客の利益を顧みないような販売手法が社会的にも問題視されるようになってきている中で、顧客と誠実に向き合い、真面目に仕事ができる人材が重視されているのです。
保険業界~まとめ~
この記事では保険業界について、生保と損保の違いの面から重点的に解説させていただきました。業界についての理解があいまいなままだと、面接で志望意欲を疑われてしまうおそれがあります。業界の勘所はしっかりと頭に入れたうえで選考に臨むようにしましょう!
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