「栄養士ってどんな仕事をするんだろう?」と考えている方もいるかもしれません。この記事では、栄養士の仕事内容についてくわしく紹介するとともに、活躍しやすい職場もお伝えします。管理栄養士との仕事の違いについても解説しますので、ぜひ参考にしてみてください。
- 栄養士になるための試験は無いが、大学などの養成課程を卒業する必要はある
- 管理栄養士は、栄養士の上位資格。国家資格を受けなければならない
- 栄養士は健康な人が対象。管理栄養士は傷病者向けにも栄養指導や管理ができる
- 栄養士/管理栄養士が活躍する職場は、学校・医療現場・福祉施設・スポーツ団体など
栄養士になるためには
栄養士になるためには、養成課程を卒業する必要があります。なお、栄養士には試験がありません。そのため養成課程を卒業し、申請さえ済ませれば資格が手に入ります。具体的には、厚生労働大臣認定の養成課程をもつ栄養士養成施設(昼間部)に進学し、卒業後、都道府県知事に申請することで「栄養士」の資格が手に入るのです。
栄養士養成施設は、次の3つに分けられます。夜間部、そして通信課程は用意されていない点に注意しましょう。
- 大学(4年制)
- 短期大学(2~3年制)
- 専門学校など(2~3年制)
どのルートに進んだとしても、栄養士として身につけておきたい知識は手に入ります。大卒にこだわらず、なるべく早く栄養士になりたい場合には、2年制の短期大学か専門学校への入学を検討してみるとよいでしょう。
管理栄養士を目指すには
栄養士からさらにステップアップし、将来的には管理栄養士を目指そうと考えている人も多いかもしれません。管理栄養士を目指す場合には、大きく次のふたつのルートが用意されています。
- 栄養士養成課程を卒業後、実務経験を経て管理栄養士国家試験を受ける
- 管理栄養士養成課程を卒業後、実務経験「免除」で管理栄養士国家試験を受ける
管理栄養士になるためには、国家資格を受けなければいけません。そして管理栄養士養成課程で学んでいない人の場合、国家資格を受ける条件として実務経験が課されています。実務経験の年数は、基本的には以下のとおりです。
- 4年制卒:1年間
- 3年制卒:2年間
- 2年制卒:3年間
一方、管理栄養士養成課程で学んでいる人の場合には実務経験は必要ありません。つまり大学などを卒業後、そのまま国家資格取得にチャレンジできるのです。
以上のことから「管理栄養士を目指す」と決めている人の場合には、はじめから管理栄養士養成課程に進学しておくのがおすすめです。実務経験が必要ないため、卒業後すぐに国家試験を受けることができるからです。
管理栄養士取得を現段階では考えていない、または迷っている場合には2年制の養成課程に進学し、まずは栄養士資格を早々に取得してしまうのが効率的といえるでしょう。栄養士取得後、仕事をするなかで経験を積み、実務経験の要件をクリアしたタイミングで管理栄養士取得を冷静に考えてみるのも手といえます。
栄養士と管理栄養士の仕事内容
栄養士と管理栄養士の仕事内容、役割の違いについて解説します。
管理栄養士は、栄養士の上位資格です。そのため栄養士では扱えない専門的な業務にも多く携わることができます。ただし「栄養面のアドバイスをする」といったことは栄養士でもおこなえます。そのため食習慣の改善をはじめとする基本的なアドバイスをしたい場合には栄養士、専門的なアドバイスまでおこないたい場合には管理栄養士を目指すのがおすすめです。
では、それぞれの仕事内容についてもう少し具体的に見ていきましょう。栄養士、管理栄養士が共に働く環境についても紹介していきますので参考にしてみてください。
栄養士の仕事内容
栄養士の仕事は、大きく次のふたつに分けられます。
- 栄養指導
- 食事の管理/提供
栄養指導の例としては、地域住民に対しての講演活動、学校での「食育授業」のサポート、といったことが挙げられます。食は、老若男女問わずさまざまな人の生活に関わるものです。年齢や生活環境によって摂取すべき栄養素やエネルギーも変わってくるため、対象とする相手に合わせた指導が栄養士には求められます。
食事の管理/提供の仕事については、いわゆる「学校で給食をつくっている人」をイメージするとわかりやすいでしょう。給食施設に勤め、毎日の給食の献立を作成するのが主な仕事ですが、職場の衛生管理も大切な役割のひとつです。
学校以外にも、医療現場や福祉施設、スポーツ施設、企業の社員食堂などの食事の管理/提供の場面で、多くの栄養士が活躍しています。
管理栄養士の仕事内容
管理栄養士の主な仕事は、患者さんに対する食事のケアをおこなうことです。具体的には、病院や福祉施設、診療所などに勤め、患者さんに必要な栄養管理の指導をメインの仕事としておこなっています。管理栄養士も栄養士のように食生活全般のアドバイス、献立の作成などは可能ですが、栄養士は健康な人を対象としているのに対し、管理栄養士は傷病者の人も対象に仕事ができる、といった点に違いがあるといえるでしょう。
管理栄養士のなかには、その高度な知識を活かし、アスリートの食事管理、さらには行政の一員として「健康社会」構築の施策立案、といった方面で活躍している人も少なくありません。食は健康に直結するため、そのアドバイスには責任が伴います。一方で専門的な知識がより求められる環境で仕事をしていきたい人にとっては、管理栄養士としての仕事は大きなやりがいを感じられるものになるはずです。
栄養士/管理栄養士が活躍する環境
栄養士と管理栄養士は、同じ職場で働いていることも珍しくありません。具体的には、次のような環境で多くの栄養士管理栄養士が活躍しています。
- 学校
- 医療現場
- 福祉施設
- スポーツ団体
それぞれについて、ご紹介します。
学校
小学校、中学校で働く栄養士/管理栄養士の多くは、給食の献立作成や食材の選定、調理場の衛生管理に従事しています。なお学校には、「学校栄養職員」と「栄養教諭」のふたつのポジションがあります。学校栄養職員には、栄養士または管理栄養士の資格を取得していれば就けますが、栄養教諭として働く場合には「栄養教諭免許」の取得が必要です。
栄養教諭免許を取得すると、学校内の食育計画立案や個別指導といった業務にも携わることができます。
医療現場
医療現場でも多くの栄養士/管理栄養士が働いています。管理栄養士は、入院患者や通院中の患者に対し、その病状に合わせた栄養管理栄養指導を主な仕事としておこなっています。
病院としての収入、いわゆる「診療報酬」の算定も管理栄養士の大切な業務のひとつです。一方で栄養士は、病院内の厨房業務や食材発注といったフードサービス全般を担っています。
医療系の仕事を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
福祉施設
保育園、老人ホーム、障害者施設をはじめとする「福祉施設」に勤める栄養士/管理栄養士も少なくありません。未就学児、高齢者、障害者一人ひとりに合わせた食事管理が主な仕事で、季節感を取り入れた献立や目で見て楽しい献立など、「食べる意欲」を引き出す食事の提供も役割のひとつです。
保育士や医師・看護師、リハビリ職員と連携して働く環境でもあるため、多くの人とコミュニケーションを取りつつ働きたい人も、福祉施設での勤務を考えてみるとよいでしょう。
福祉関係の仕事を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
スポーツ団体
アスリートに対し、身体づくりのサポートをおこなう場面でも多くの栄養士/管理栄養士が活躍しています。スポーツチームの専属アドバイザーとして働くケースもあれば、国際大会に出場するチームに帯同し、現地の食事管理に従事する人もいます。
スポーツ栄養学など、専門的な知識を学ぶ必要がある仕事ですが、サポートした選手から感謝される機会も多く、大きなやりがいを感じながら働ける仕事ともいえるでしょう。
スポーツの仕事を知りたい人は、こちらの記事も参考にしてください。
栄養士の仕事の選び方
栄養士として働くうえで、あらかじめ知っておきたいポイントをお伝えします。栄養士が活躍するフィールドは広がってきていますが、一方で選択肢が多いぶん「どの環境が自分に合っているんだろう……」と悩んでしまう人も少なくありません。
「食で人を支えたい」という気持ちは共通だと思いますが、働く職場に対しての向き不向きは人によってそれぞれです。自分にとって最適な環境で働くためにも、次の3つを意識して仕事を探してみてください。
- 規模感にとらわれない
- 働きたい分野を明確にする
- 復帰のしやすさを意識する
それぞれについて、ご紹介します。
規模感にとらわれない
まず大切なのは、働く環境の規模感にとらわれ過ぎないことです。たとえば、大きな病院などで働くと比較的高い給料がもらえる傾向にありますが、そこで働く栄養士の数が多いため、任される仕事は少なくなる可能性もあります。この場合、仕事に対してやりがいを感じられず、毎日の出勤が苦になってしまう可能性もあるのです。
一方で、たとえば個人経営の産婦人科や小規模な保育園など、比較的規模が小さい職場は若い栄養士でも任される仕事が多く、やりがいをもって働ける可能性があります。このように、規模が大きい職場が必ずしも自分にとって「よい環境」であるとは限りません。
栄養士は、人の健康を支える大切な仕事です。責任が伴う仕事も多いため、精神的に辛い場面も訪れることでしょう。こうした仕事をしていくなか、もしも職場の居心地が悪ければ、栄養士の仕事に喜びや楽しさを見出すのは難しいかもしれません。
繰り返しにはなりますが、仕事を探すうえで大切なのは「自分にとって理想の環境はどこか」といった視点をもつことです。任された仕事を誠心誠意こなすことにやりがいを覚える人もいれば、職員の気持ちがまとまっている環境で働くことにやりがいを覚える人もいます。まずは「自分にとって理想の環境」で働くことを目的に、仕事を探してみてください。
働きたい分野を明確にする
働きたい分野を明確にしておくことも大切です。栄養士が活躍する環境は、学校や病院、福祉施設など数多く存在します。なかには次のような仕事もあり、食や健康に対する意識の高まりを受け、そのフィールドはますます広がってきています。
- ドラッグストアで栄養指導
- ダイエットアプリの開発会社に勤務
- ジムの専属トレーナーとして健康管理
栄養士は、サポートする相手によって求められる知識や技術が異なる仕事です。そのため「献立をつくりたいから小学校の職員を目指そうかな」といった考えで仕事を探すのはおすすめできません。献立作りひとつとっても、子どもと高齢者ではメニューが大きく異なるからです。つまり誰に献立を提供したいかによって、身につけていくべき知識や技能が変わってくるのです。
栄養士は多くの現場で求められていますが、だからこそ仕事選びは慎重におこないましょう。とりあえず就職して、その仕事や環境が合わなかった場合には再就職の苦労も伴います。働いたあとに後悔しないためにも、まずは以下のポイントをもとに自分の気持ちを整理したうえで仕事を探してみてください。
- どの領域で活躍していきたいか
- 将来は何がしたいか
- どういった知識を身につけていきたいか
自分なりにある程度明確なビジョンを持ったうえで、仕事探しをしていきましょう。
復帰のしやすさも意識する
栄養士は生涯に渡り活かせる資格のため、妊娠や出産で一定期間休んで復帰をしたり、子育てがしやすい職場へ転職したりすることもしやすい仕事です。将来的な子育てとの両立を踏まえ、栄養士資格の取得を考える女性も多い傾向にあります。
ただし人員に余裕のない職場では、復帰直後から一般の職員と変わらず忙しい業務を頼まれる可能性もあります。逆に、女性が多い職場は特に施設独自のサポート体制を敷いている事業所もめずらしくなく、こうした環境で働くと、子どもが産まれても安心して働き続けられるイメージを持ちやすいといえます。
同じ仕事や給料だとしても、その施設の方針や経営者の考えによって子育て中の職員に対するケアには大きな違いがあります。妊娠や出産を経た後も同じ職場で長く働いていきたい場合には、会社独自の制度や、福利厚生の手厚さを重視して仕事を探すようにしてみてください。