「ニートが年金を免除できる方法について知りたい」という方もいるかもしれません。この記事では、日本年金機構の情報を参考に、年金を支払えないニートが全額免除をしてもらう方法、そして免除申請のメリット・デメリットについてご紹介します。収入がなく、どうしても年金を払えないというニートの方は、ぜひ参考にしてみてください。
- 年金を払えないニートは「全額免除」の制度利用を検討しよう
- 保険料免除制度には4パターンある。どれを受けられるかは所得によって異なる
- 免除手続きの流れ、必要なもの、注意点も詳しく解説
この記事の目次
ニートが年金を払えない際に全額免除できる方法
年金を全く支払えないニートの方は「全額免除」を検討してみましょう。今回の記事でその方法をご紹介しますが、日本年金機構「知っていますか?国民年金保険料の免除制度」なども参考にしてみてください。全額免除とは、その名の通り年金の支払いを全額免除してくれる制度のことで、経済的な理由により年金を納めることができない人がその対象とされています。ただし審査があるため、必ずしも全額免除になるわけではありません。
日本年金機構によると、最新の令和3年度(令和3年4月~令和4年3月)の国民年金の保険料は月額16,610円です。全額免除の適用を受けると、支払える状態になるまで、この額を支払う必要がないということになります。
「年金」とは?
そもそも「年金」とは、国が運用している“保険”のことです。老後に働けなくなったとき、病気やケガで障害が残ったときなどの「リスク」を想定し、保険料を毎月積み立てていくもの、とイメージするとわかりやすいかもしれません。
年金は「国民年金」と「厚生年金」のふたつに大別されます。ただし厚生年金は会社勤めの人が支払う年金のため、今回は国民年金にしぼってお伝えします(なお、毎月支払っていく保険料のことを「年金」と呼ぶケースもあるため、この記事内でも月々の保険料のことを「年金」と呼称します)。
国民年金
国民年金は、日本に住んでいる20歳以上60歳未満のすべての人に加入が義務付けられている年金です。そのため理由がないのに支払わないでいると、場合によっては資産が差し押さえられてしまうリスクもあります。
国民年金は、さらに次の3つに分けられます。
- 老齢基礎年金
- 障害基礎年金
- 遺族基礎年金
これらは年金を毎月支払うことで受け取れるものですが、いわゆる「老後に毎月受け取れる」といったイメージに近いのは「老齢基礎年金」です。
老齢基礎年金とは、基本的には国民年金を10年以上払った人が65歳から受け取れる年金のことです。受け取れる額は納めた年数や支払った金額などによって異なりますが、受け取り条件をクリアした場合には亡くなるまで年金を受け取ることができます。
国民年金についてくわしく知りたい方は、日本年金機構「知っておきたい年金のはなし」なども一読してみることをおすすめします。
免除制度とは
「年金を毎月支払うことで老後も毎月お金をもらうことができる」とお伝えしましたが、経済的な理由から、毎月の年金が払えない人も少なくありません。
こうした人への救済措置として用意されているのが、免除制度(保険料免除制度)です。簡単にいうと毎月の年金の一部、または全額を支払わなくて良くなる制度のことで、収入源がないニートが真っ先に申請したい制度ともいえます。
具体的には、免除制度には以下の4つが用意されています。
- 全額免除
- 4分の3免除
- 半額免除
- 4分の1免除
4つのうちどれを受けられるかは所得によって異なりますが、たとえば全額免除の場合には所得57万円(年収122万円)以下の人が適用を受けることができます(※)。
また、令和2年度のそれぞれのケースの免除額は次のとおりです。
- 全額免除:16,540円(月々支払う年金:0円)
- 4分の3免除:12,400円(月々支払う年金:4,140円)
- 半額免除:8,270円(月々支払う年金:8,270円)
- 4分の1免除:4,130円(月々支払う年金:12,410円)
※令和2年度/単身の場合(年収所得は目安)
免除手続き
免除の手続きは、次の流れに沿っておこないます。
- 申請書の提出
- 審査
- 承認
それぞれについて、順を追ってご紹介します。
申請書の提出
まずは申請書を提出します。申請書は、次の場所で手に入ります。
- 年金事務所
- (住民登録をしている)市区町村の年金窓口
- 日本年金機構のホームページ
年金事務所等の検索や、日本年金機構「国民年金関係届書申請書一覧」などを確認しましょう。なお、手続きは年金事務所、または市区町村の年金窓口で行えます。郵送での手続きも可能です。
また、申請書以外の必要書類は次のとおりです。
- 年金手帳(または基礎年金番号通知書)
以下は、人によっては用意しなければいけないケースがあります。
- 前年(または前々年)所得を証明する書類
- 所得の申立書(所得についての税の申告を行っていない場合)
- 雇用保険受給資格者証など(失業の場合)
必要書類を用意し、スムーズに申請ができるよう準備しておきましょう。
審査
市区町村によって異なりますが、審査終了までには2~3ヶ月程度かかります。書類に不備がある場合にはそれ以上かかる場合もあるため、提出書類は事前にしっかりチェックしておきましょう。
審査が終わると、その結果が日本年金機構から届きます。
承認
無事、審査に通過すると免除の承認を受けられます。免除された場合の適用期間は7月~翌年の6月の1年間です。
なお、申請は原則として毎年度必要です。ただし全額免除を受けた人が翌年度以降も全額免除を希望する場合には、申請があったものとして審査がなされます。
免除制度の留意点
免除制度はニートでも適用できる可能性が高いものですが、次のような人は別の免除猶予制度が用意されています。
- 学生
- 障害年金を受けている人
- 生活保護を受けている人
学生の場合には年金を支払えない場合の救済策として「学生納付特例制度」が、障害年金や生活保護を受けている人の場合には「法定免除」といった特別な免除制度が用意されています。
失業者向けの免除制度、産前産後期間の免除制度もありますが、こうした免除を受けると「付加年金」「国民年金基金」といった制度に加入できないことも、あわせて押さえておきましょう。
ニートが年金免除の申請を行うメリット
ニートが年金の免除を行うメリットは次のとおりです。
- 「年金を納めた」とみなされる
- 障害年金や遺族年金を受け取れる
- 資産を差し押さえられるリスクがない
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
「年金を納めた」とみなされる
年金の支払いを免除された場合であっても「年金を納めた」とみなしてくれます。そもそも年金(老齢基礎年金)を将来受け取るためには、国民年金等を納めている期間が10年以上必要です。
この場合、たとえば年金の支払いを10年間全額免除されていても、その10年間は「年金を支払った期間」としてカウントされます。つまり、年金受け取りの条件「10年」を満たしているとみなされ、年金を受け取ることができるのです。
ただし後述しますが、受け取る年金の額は減ってしまう可能性がある点には注意が必要です。
障害年金や遺族年金が手に入る
年金を免除された場合であっても、障害年金や遺族年金の受給資格を得られます。障害年金とは、病気やケガなどによって働くことが困難になってしまった場合に受け取れる年金のことです。免除期間などの条件はあるものの、条件をクリアした場合には不慮の事故などによって働けなくなった場合に保障を受けることができます。
一方で遺族年金とは、夫が急に亡くなった、といった場合にその遺族に支払われる年金のことです。
年金を支払わず、免除などの申請もしない「未納」の状態だと障害年金や遺族年金を受け取れない可能性があります。一方で免除の申請をしておけば、こうした“もしもの時の年金”も受け取ることができるのです(※)。
※一部免除において減額された保険料を納付していない場合を除く
資産を差し押さえられるリスクがない
免除をしておけば、年金未納により資産を差し押さえられるリスクがありません。
年金を支払わないでいると、資産の「差し押さえ通知」が日本年金機構から届く場合があります。これは「年金を支払ってください」という督促を何度も無視した場合の最終手段ではありますが、仮に資産を差し押さえられてしまうと銀行に預けたお金が差し押さえの対象となります。
こうしたケースは、申請もせずに年金を支払わない「未納」の人が主な対象です。一方で年金を支払えなくても、免除などを申請している人は差し押さえの心配をする必要はありません。
ニートが年金免除の申請を行うデメリット
ニートが年金免除の申請を行うデメリットは次のとおりです。
- 将来受け取れる年金が減る
- 追納できない場合がある
それぞれ、具体的に見ていきましょう。
将来受け取れる年金が減る
年金免除を行った場合、将来受け取れる年金の額は減ってしまいます。たとえば保険料を40年欠かさず納めた場合には、1年間に受け取れる年金は781,700万円です(令和2年度)。一方で40年全額免除となった場合には、その半額の390,850円しか受け取れません。
なお、それぞれの免除額に応じて支払われる年金額の目安は次のとおりです(※)。
- 全額免除:保険料を全額納付した場合の年金額の2分の1
- 4分の3免除:保険料を全額納付した場合の年金額の8分の5
- 2分の1免除:保険料を全額納付した場合の年金額の8分の6
- 4分の1免除:保険料を全額納付した場合の年金額の8分の7
※平成21年4月分からの免除期間を対象
追納できない場合がある
保険料の支払いを免除された場合であっても、後からその分の保険料を追加で納めることは可能です。しかし追納できるのは「10年以内」とされています。そのため免除期間が15年あった場合には、10年間分を追納したとしても残り5年間に関しては基本的には納めることができません。
また追納する場合には、免除された期間の翌年度から起算して3年度目以降に保険料を追納すると、支払金額に一定の金額が加算されてしまいます。
ニートは年金免除を申請しよう
ニートで収入がない場合には、まずは年金の免除を申請しましょう。全額免除をされた場合には、1円も支払う必要がありません。保険料を欠かさず支払っている人と比べると将来受け取れる年金額は減ってしまいますが、それでもある程度の年金をもらうことができます。
繰り返しにはなりますが、年金を受け取るためには「年金を10年間支払った」という証明が必要です。この場合、免除されていた期間もその年数にカウントされるため、たとえば免除申請の審査に10年間通った場合には、将来の年金を受け取る資格を得ることができるのです。
一方で、申請をせずに保険料の支払いをしない「未納」の状態だと、その未納の期間は年金の支払い年数にはカウントされません。未納期間が10年だった場合、その期間は年金の受給資格の10年にはカウントされず、あくまで「0年」として扱われてしまうのです。この場合、将来的に年金を受け取れない可能性が出てきます。また未納のまま年金支払いの督促を無視し続けると、資産が差し押さえられるリスクも待っています。
上記の理由からも、保険料を払えない場合にはまずは「免除」の申請を行うことがおすすめです。手続きも難しくないため、何の手続きもせずに「未納」の状態となっている人は早めに免除申請を行うようにしましょう。
なお、仮に未納の状態であっても「年金の免除申請は過去2年(申請月の 2 年 1 ケ月前の月)までさかのぼって行える」という規定もあります。これは、たとえばニートになった後に年金を2年間支払っていない場合であっても、申請を行うことで、その期間を「免除の申請をしていた」といった期間に変更できるという規定です。
年金を支払っていない場合であっても、このような救済措置はいくつもあります。自分が対象者かを詳しく知りたい人は、住所を管轄する年金事務所や役所に問い合わせてみてください。年金が払えなくて困っている方は、日本年金機構「国民年金保険料の納付が困難な方へ」などの公式情報も参考に、早めの対策をおすすめします。
他にも無職の年金免除について知りたい方は、以下の記事もぜひ参考にしてください。
「ニート 年金 免除」によくある質問
ニートで年金を免除する方法は、4つです。全額免除、4分の3免除、半額免除、4分の1免除の4つです。詳しくは「ニートが年金を払えない際に全額免除できる方法」で解説を行っております。
ニートが年金免除の申請をするメリットは3つあります。(年金を納めた)とみなされる、障害年金や遺族年金を受け取れる、資産を差し押さえられるリスクがないの3つです。詳しくは、「ニートが年金免除の申請を行うメリット」で解説を行っております。