「教育学部は民間企業への就職には不利」だと思っている人も多いのではないでしょうか?世間一般的にも「教育学部=教師を目指す人のための学部」というイメージは持たれがちです。しかし教育学部は、教師以外にもさまざまな就職先があります。
この記事では、教育学部はどのような職場に活躍の場があるのか、具体的な就職先についてご紹介します。
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教育学部ではどのようなことを学ぶ?
教育学部とは、子供たち一人ひとりの成長のためにどのような教育が適切なのかを、さまざまな観点から探究していく学部です。
学ぶ内容は、主に大きく4つに分類されます。「よい教育とは何か」といった根本的な問いに対して研究していく哲学や思想、教育史や教育思想史を通じて歴史を遡り、教育の歴史的背景や変遷、未来に向けての教育制度についても考えていく教育歴史、人間はどのように変化して成長するのか、児童の年齢ごとの発達やそれに応じた教育法を学ぶ人間学、そして学んだ内容を教育の現場で活かすべく、授業研究や教育工学などの授業を通して生身の人間と接する力を身につけていく臨床哲学です。
単に学校教育について学ぶだけではなく、親のしつけをはじめとした家庭教育や、企業における人材教育についても学ばなければいけません。つまり教育学の世界では、哲学や文学、社会学、社会科学、心理学、人文科学など幅広い分野の知識を身につけていくことになります。
そのため必然的に教員を目指す人の割合が多くなりますが、希望する進路に応じて必要な資格を取得することも可能です。
また、教育学部といっても、教員養成を目的としたカリキュラムを組んでいる学部以外に、日本と海外の教育を比較する「比較教育学」や教育による心の変化を見ていく「教育心理学」など、教育そのものを研究対象としている学部もあります。
教育学部出身者の就職先
ここでは、教育学部の就職先の例を5つご紹介します。
教育学部の就職先1:公務員
教育学部出身者に人気がある就職先といえば、まずは公務員が挙げられます。公務員は地方公務員と国家公務員に分かれますが、公立の小学校、中学校、高等学校の教員は地方公務員に該当するため、公立教員は必然的に地方公務員として働くことになります。
教師以外でも警察官や市役所で働く職員など、地方公務員にはさまざまな職種がありますが、世間体がよい、休みがきちんと取れる、ボーナスが出るなど、民間の企業に比べても待遇や働き方が安定しているという点が人気の理由と言えます。
また、国家公務員を目指す人も少なくありません。教員採用試験は国家公務員になるための試験と内容が通ずるものがあるため、学んでいく過程で教師から国家公務員へと進路を変更する人もいます。
教育学部で学んだ内容は、国家公務員として文部科学省に入る際にも役立ち増す。難関ではあるものの、教育全体を変えていきたいという強い志を持つ人なら、文部科学省はまさに夢を実現するための職場と言えます。
文部科学省以外の機関にも財務省や国土交通省など活躍できる場はたくさんあり、キャリア官僚と呼ばれるポジションを目指すなら総合職、専門領域でのスペシャリストを目指すなら一般職が、進むべき道となります。
教育学部の就職先2:教育関係
学校教師以外にも、生徒に教える立場として活躍できる方法もあります。その具体例として就学期の子供が通う塾や予備校などの学習機関、社会人向けの語学スクールや資格取得のためのスクール、社員研修を行う企業などが挙げられます。
なかでも英語や韓国語を学べる外国語学校は、グローバル化に伴い急成長を遂げているため、講師の需要も高まっています。
教育機関に就職するメリットは、教えることに集中できる点です。学校の教員は文部科学省に決められたプログラムにそって生徒に指導することになります。一方で塾や予備校、語学スクールならば、自分がよいと思う指導スタイルを推し進められます。
学校では子供の成長全般に関わる指導を行うため、生徒同士のトラブル対応や学校行事の準備、部活の顧問などにも多くの時間を割くことになります。一方、塾講師は学力アップに特化した指導を求められる仕事です。事務と授業の担当も明確に分かれているため、「教える」という仕事にだけ集中できます。
教育学部の就職先3:メーカー
メーカーとはいわゆる製造業のことで、身の回りのモノを作る企業を指します。メーカーにも色々な種類があり、自動車メーカーや家電メーカー、電子部品を扱う部品メーカーなど多岐に渡ります。興味のある分野がある場合、特に教育に関係するメーカーにこだわる必要はありません。食品メーカーや精密機器メーカーなど、大学で学んだ内容とまったく無関係の仕事に進む人もいます。
ただ数あるメーカーの中でも、特に教育学部出身の就活生にチャンスが多いのは玩具メーカーです。玩具は子供の遊ぶものですが、知育や教育に関わる玩具を開発しているメーカーも多数存在します。
乳幼児の頃は玩具との関わりも重要で、年齢ごとの発達の程度や年齢に応じた教育法を学んでいると、玩具を使っての学習方法にも興味がわいてくるかもしれません。企画や開発部門などに所属すれば、教育学部で習得した知識も存分に活かせますし、製品の特性や強みなどを理解できるため、営業や広報などの部署でも活躍できるでしょう。
教育学部の就職先4:出版機関
出版社のなかでも、小説や雑誌などを出版する総合出版社ではなく、教科書や子供向けの教育本を専門にしている出版社が特に人気の高い傾向にあります。取り扱う商品は幼児や学生向けの学習教材をはじめ、受験対策に特化した教材、英検や簿記など資格取得のための教材などで、さまざまなカテゴリーの教材に携わる事ができるのが魅力です。
たとえば教材開発の担当になれば、間接的ではありますが「生徒に教える」ことができます。テキストの制作や編集部ではなく、営業職として自社の書籍を書店や教育機関などに提案する際にも、大学で得た知識を活かして本の魅力を伝えられます。
教育学部で学んだ知識を根拠としているならば説得力があり、取引先からの信頼も厚くなります。本を作成する側と売り込む側のいずれの立場でも、学ぶことのお手伝いができるため、やりがいは感じられる仕事といえます。
教育学部の就職先5:金融機関
金融業界は教育学部のみならず、文系の学生全般に人気があります。金融関係の仕事には銀行や証券会社、保険会社などが挙げられます。
特に、銀行員は人気の職業のひとつです。そもそも大学入学時に教育学部を選ぶ人は、安定した仕事に就きたいと教師を目指す人が多い傾向にあるかもしれません。銀行員も公務員同様に収入が安定していて定年まで働きやすい、制度が充実しているため子育てとの両立がしやすいなどというメリットもあります。
もちろん教員を目指して教員養成課程を修了した人でも、金融機関への就職の可能性がないわけではありません。真面目にコツコツと努力できる人柄は企業からの評価にもつながるため「教員を目指していたが、金融機関への就職に方向転換したい」と考えたとしても、チャンスはあります。
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教育学部は就活で不利なのか
教育学部出身者が教師の道ではなく民間企業への就職を目指す場合は不利になってしまうのか、教師になることをやめるケース、教育学部出身者が就職活動をする際に注意すべき点についてご紹介します。
教育学部出身でも教師にならない人は一定数いる
教育学部を卒業したからといって、必ずしもその全員が教師になるわけではありません。そもそも教師になるために必要な教員免許も、国語や社会科の教師なら文学部、数学や物理、化学の教師なら理学部といったように、教育学部以外の学部でも取得可能です。
それでも教育学部から多くの教員が輩出されるのは、教育学部は教育学を学ぶ学部であり、他学部よりも教員免許が取りやすいといった理由が挙げられます。
教育学部出身と聞くと、やはり「教員」というイメージが強いかもしれません。確かに教育学部に入る学生は、幼稚園教諭、小学校教諭、中学校教諭、高校教諭など「教育者」を志す人の割合が高いことは事実です。
教員養成課程を修了した教育学部卒業生なら皆が教員になっていると思いきや、実際に教員として就職した割合は6割で、他の4割は教員以外の職業に就いています。また教育を研究対象にして学んできた教育学部卒業生に関しては、教員になる人がほとんどいない大学もあります。ひとえに教育学部と名前がついていても、大学によってカリキュラムもさまざまで、入学当初から教員になる事は全く考えていない人も多数いるのです。
学生が教師になることをやめる理由とは
教育学部に属していながら、教員にならなかった理由は人それぞれです。たとえば教育実習や教育現場の観察を通して「自分が思っていた仕事と違った」「予想以上に大変だった」という判断をする学生もいるでしょう。
実際に公立教員の仕事は多岐にわたり、ただ生徒を教え導くだけではなく、授業の準備やテストの採点、進路指導、学校行事や部活動への参加、保護者への対応、その他事務作業など、長時間労働で疲弊しがちという点が指摘されています。実際に、公立教員はストレスによる精神疾患や休職・離職者の多さも知られているほか、教員間におけるいじめ、教員が問題行為を起こし処分されたなどの不祥事もメディアで報じられています。
教員という仕事の現実を見聞きするなかで不安になったり「教師になったとしても、自分が思い描いている教育はできないのではないか」と考えたりして、方向転換をする学生もなかにはいます。
教育学部出身者が企業の面接を受ける際のコツ
世間一般的にも、教育学部の生徒は教師になるものと考えている人が多いため、一般企業の就活の際には「なぜ教師にならなかったのか」といった質問を受ける可能性が高いといえます。ただし面接の場で「教師の仕事が向いていないと思ったから」といったネガティブな表現をすることは、面接官によい印象を与えません。
面接官が「なるほど」と納得できる理由を、きちんと準備しておく必要があります。「教員はやりたくない」ではなく、「教員より目指したい仕事が見つかった」と表現した方がポジティブで、仕事への意欲もアピールできます。
「なぜ御社を選んだのか」という質問も面接の場では定番です。塾講師や出版社、地方自治体の教育機関なら教育学部で学んだ内容が活かせるので、比較的質問にも答えやすいかもしれません。教育現場を実際に見て教科書の制作に携わりたいと思った、教育のあり方を変えたいなど明確な理由を述べると気持ちも伝わりやすくなります。
具体的、かつ自分の経験談は面接官にインパクトを与え、他の就活生に差をつけられるポイントにもなります。
一方、大学で学んだ内容が活かせない分野への就職を目指す際は、より仕事へのやる気や興味を表現していく必要があります。自己分析や業界・企業分析は必須で、自分と企業の接点を少しでも多く見つけておくと、その企業でなければならない理由も明確になっていきます。
入社後にどのような仕事をしていきたいかも、具体的に答えられるようになっておかなければいけません。入社したら終わりではなく、入社した後は自分が企業に利益を還元できるよう、戦力として働いていかなければならないのです。
会社説明会やホームページから情報を収集して考えをまとめるのもよいですが、もっとも効率的な方法は企業のインターンシップへの参加です。企業の仕事を実際に体験できるため、自分の得意分野や挑戦したい事などが自ずと明確になっていきます。
大学のOB・OG訪問など、実際に働いている先輩に話を聞いてみることで、一般企業で働くための心構えや体験談など参考になる話を聞くことができます。
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教育学部で取得できる資格
教育学部以外では文学部や理学部でも教員免許の取得は可能ですが、高等学校教諭免許または中学校教諭免許のみとなります。つまり中学校よりも年下の世代を指導するには教、育学部で学んでいく必要があります。
教育学部では幅広く、さまざまな資格が取得できます。それぞれについて、ご紹介します。
幼稚園教諭免許
幼稚園教諭として働くために必要な資格です。4年制大学を卒業すると一種免許が取得可能で、一種免許があれば幼稚園の園長や経営者、養成学校の講師などになることも可能です。
似ている資格として保育士資格がありますが、保育士資格は厚生労働省管轄の福祉分野の資格であるのに対し、幼稚園教諭免許は文部科学省管轄で、学校教育法に基づいて教育を行うための資格となります。
小学校教諭免許
国公立および私立の小学校にて教員として教えるために必要な免許で、4年制大学では一種が取得出来ます。大学によって小学校教諭免許が取得できる所もあれば、できない所もあります。専門的な教科を持つのではなく、国語も算数も体育も全教科を一人で教えていきます。
中学教諭免許
中学校で教員として指導するために必要な免許です。4年制大学では一種が取得可能で、幼稚園や小学校教諭と違うのは担当教科がある点です。国語、数学、英語、理科、社会、体育など教科ごとに資格を取得していかなければいけません。
高等学校教諭免許
国公立および私立の高等学校で教員として指導するために必要な免許です。4年制大学では一種が取得可能で、中学校教諭同様にひとつの教科を担当していきますが、より専門性の高い高度な知識が求められます。
特別支援学校教諭
特別支援学校や盲学校、ろう学校で教員として指導を行うために必要な免許です。4年制大学では一種が取得可能ですが、特別支援学校で指導を行う場合は小中高、いずれかの教員免許も持っていなければなりません。
ちなみに一般校に併設されている特別支援学級で指導を行う場合は、特別支援教諭免許は必要ありませんが、的確な指導を行うためには、やはり持っておいた方が安心です。言語障害や肢体不自由などさまざまな障害を抱えている生徒を対象とするため、より専門性の高い仕事といえます。
教育学部生の就職活動では自己分析をしっかりと!
教育学部の学生は教員を目指すのはもちろん、教員以外のさまざまな仕事に就くことも可能です。一般企業への就職が不利と考えている人も少なくありませんが、就職先としてその企業を選んだ理由、どのような仕事に取り組んでいきたいのかなどを明確に伝える事ができれば、民間企業への就職も十分に可能です。そのためにも事前にしっかり自己分析をして、自信を持って面接に挑むことが大切です。
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