ニートでも生活保護は受給できるのか疑問に思う方も多いでしょう。
この記事では、生活保護の受給条件や支給される金額について解説しました。生活保護の受給は簡単でないことを理解し、将来の過ごし方について考えてみましょう。
- ニートの生活保護受給には、最低生活費未満の世帯収入、仕事ができない状態かなどの条件を満たす必要がある
- 収入ゼロで1人暮らしのニートなら、生活保護受給額は月に10〜15万円くらい
- 生活保護受給のための最初のステップは、管轄役所の生活保護担当窓口に行くこと
この記事の目次
ニートの生活保護の受給額
ニートが生活保護を受給する場合、どのくらいの金額が受給できるのかを解説します。現在ニートでこれから生活保護の申請をしたい人は、受給額がどういった基準で決められているのかについて知っておきましょう。
受給金額の目安は「最低生活費」
生活保護受給額の目安は「最低生活費」です。具体的には、以下の項目が最低生活費に含まれます。
- 生活扶助:日常生活にかかる費用
- 住宅扶助:住まいにかかる費用
- 教育扶助:中学生以下の子どもがいる場合、義務教育を受けるためにかかる費用
- 出産扶助:出産にかかる費用
- 生業扶助:就労に必要なスキル習得にかかる費用
- 葬祭扶助:葬儀にかかる費用
これらの項目に対して、健康状態や家族構成が加味されて受給額が決まります。実際の受給額は「最低生活費−世帯収入」の差額です。収入が全くない1人暮らしニートの場合、月の平均受給額は10〜15万円程度ですが、ニートでも子どもを育てている場合は20万円程度支給されることもあります。
また住宅扶助は住んでいる地域によっても差があります。なぜなら都心部と地方では、家賃が大きく異なるからです。さらに寒冷地に住んでいる人は、冬季になると暖房費が加算されます。このように受給額は一概には説明できず、様々な条件が考慮されて決定されます。
支払いが免除されるもの
生活保護期間中は、以下の支払いが免除されます。
- 各種税金
- 医療費
- 介護費
- 水道の基本料金
- NHKの受信料
- 公立高校の授業料
- 保育園の保育料
- 粗大ゴミの廃棄料
このように生活保護の対象者になると免除される支払いも多いため、最低限生活することには困らないでしょう。
生活保護を受給することで受ける制限
一方生活保護を受給していることで、受ける制限も多いです。具体的には以下の制限があります。
- 資産を持つことができない(持ち家を売却して、引っ越しさせられる場合もある)
- ローンが組めない
- クレジットカードが使えない
- 飲酒、喫煙、ギャンブルは制限される
- ケースワーカーに収入状況を報告する義務がある
- 定期的にケースワーカーが家庭訪問に来る
ここでいう資産とは、主に不動産や車です。しかし以下のようなケースに限り、所有を認められる場合もあります。
- 田舎の家で、資産価値がない場合
- 家の周りに公共交通機関がなく、車がないと生活に支障をきたす場合
このように生活保護を受けるとなると、非常にたくさんの制限を課せられます。お金の使い道も完全に自由ではないため、ストレスを感じる場面も多いでしょう。
生活保護の受給を断られやすいニートの特徴
ここでは、生活保護の受給を断られやすいニートの特徴を解説します。その特徴を一言でいうと「生活保護を受けなくても、しばらくは生活が破綻しなさそうな人」です。詳しい特徴は以下の6つで、1つでも当てはまっているものがあると、ニートでも生活保護の受給は厳しいといえるでしょう。
10万円以上の預貯金がある人
1つめの特徴は、10万円以上の預貯金がある人です。なぜなら10万円以上の預貯金があると「少しの間は生活ができる人」と思われるからです。ニートでもその間に健康状態の回復が見込まれる場合や、就職先が見つかりそうだと判断されれば生活保護の受給はできません。
資産を持っている人
2つめの特徴は、資産を持っている人です。なぜならニートで収入がなかったとしても、資産を売れば生活費が手に入るからです。ここでいう資産とは、以下のものを指します。
- 不動産(条件によっては住宅も含む)
- 車
- 株
- 保険
- 高級ブランド品
資産を売却して10万円以上の現金を手にできる人は、生活保護の受給を断られやすいです。
借金を抱えている人
3つめの特徴は、借金を抱えている人です。借金があるほどお金に困っている人がなぜ受給できないのかというと、債務整理もしくは自己破産をするのが先だからです。生活保護の申請は、借金が整理できた状態ですることを求められます。ただしこれは民間の金融機関から借り入れをしている場合で、奨学金などの場合は例外です。
経済的に余裕のある家族・親戚がいる人
4つめの特徴は、経済的に余裕のある家族・親戚がいる人です。ニートであっても十分な収入を得ている親と同居している場合は、断られる可能性が高いです。現在1人暮らしをしているニートでも「実家に戻れば親からの支援が受けられる」と判断されれば、生活保護の受給は認められません。
福祉事務所の調査に協力的でない人
5つめの特徴は、福祉事務所の調査に協力的でない人です。生活保護の必要性を判断するには、ケースワーカーによる家庭訪問をはじめ数々の調査が必要となるからです。ニートで本当に生活に困っている場合でも、各種調査に協力的でない人は生活保護の受給が断られます。
生活保護以外にも公的制度が利用できる人
6つめの特徴は、生活保護以外にも公的制度が利用できる人です。他の公的制度の受給資格を持っている場合は、基本的にそちらが優先されます。他の公的制度とは、以下のものです。
- 年金
- 失業保険
- 傷病手当金
生活保護は公的制度の中でも「最後の砦」であることを理解しておきましょう。
ニートが生活保護を受給する条件
ニートが生活保護を受給できる条件は、以下の4つです。これらの条件をすべて満たしている場合に、生活保護の受給が認められます。
世帯収入が最低生活費未満
1つめの条件は、世帯収入が最低生活費未満であることです。生活保護の受給金額は「最低生活費−世帯収入」で計算されます。世帯収入とは「あなたとあなたの同居家族の合計収入」で、ニートでも家族に収入がある場合は、最低生活費から差し引かれることを押さえておきましょう。
仕事ができない状態である
2つめの条件は、仕事ができない状態であることです。病気やケガなどの理由によって、仕事ができない状態と判断される場合に、生活保護の受給が認められます。ここでポイントとなるのは「仕事をする意思はあるが、できる状態でない」という点です。つまり「働きたくないから」という理由だけでニートをしている人には支給されません。
ただし本人が元気でも、以下のような理由で働けない場合は受給対象になります。
- 乳幼児を育てている人
- 親の介護が必要な人
一定以上の資産を持っていない
3つめの条件は、一定以上の資産を持っていないことです。なぜなら資産を持っていると先に資産を売却して、生活費を得ることを求められるからです。ここでいう資産とは、以下のものを指します。
- 10万円以上の現金
- 保険
- 土地
- 家
- 車
これら資産状況については、ケースワーカーによる調査が入ります。
家族からの経済的支援が困難
4つめの条件は、家族からの経済的支援が困難なことです。本人が病気やケガで働けない場合であっても、親が十分養えるくらいの収入がある場合は、生活保護の受給はできません。具体的には、以下の条件に当てはまる人が「家族からの経済的支援が困難」とみなされます。
- 両親がいない
- 両親が病気やケガで働けない
ただし親や兄弟が支援を拒否して支援が受けられない場合は、生活保護の受給対象となります。
ニートが生活保護の受給資格を停止される条件
1度生活保護の申請が通ったとしても、永続的に支給されるわけではありません。以下で説明する3つの条件のうち1つでも満たした時点で、生活保護の支給は停止されます。
仕事ができる状態になった
1つめの停止条件は、仕事ができる状態になった場合です。病気やケガから回復し、最低生活費以上の収入を稼げると判断されれば、生活保護の受給はストップされます。この判断は「医師の診断書」を基に判定されるのが一般的です。
今の日本ではアルバイトだけでも最低生活費は稼げるので、病気やケガが完治していなくても状態によっては「仕事ができる状態」と判断される場合もあります。
ケースワーカーの指示に従っていない
2つめの停止条件は、ケースワーカーの指示に従っていない場合です。担当ケースワーカーからは以下のような指示をされます。
- 健康状態が良くなったので、求職活動をしましょう
- 病院に行って、医師から診断書をもらってきてください
ケースワーカーは「自立して生活すること」を目指した指導をします。生活保護受給者は基本的にケースワーカーの指示に従うことが義務付けられており、指示通りに行動しないと生活保護の受給は止められます。
不正受給をしていた
3つめの停止条件は、不正受給をしていた場合です。生活保護の受給が止められた不正事例としては、以下のものがあります。
- 貯金があることを隠していた
- こっそりと収入を得ていた
悪質だと判断された場合、逮捕される場合もあります。絶対に生活保護の不正受給はしないようにしましょう。
生活保護を受給するために必要な4ステップ
ここまでの内容を踏まえると、単なるニートでは生活保護の受給が困難といえるでしょう。しかし病気やケガなどの働けない理由があってニートになっている場合は、生活保護が受給できるかもしれません。そういった人に向けて、生活保護を受給するために必要な4ステップを紹介します。
STEP1:管轄役所の生活保護担当窓口に行く
まずは管轄(住んでいる地域)役所の生活保護担当窓口に行きます。そこで生活保護を申請したい旨を伝えましょう。申請時には、以下のものがあると便利です。
- 預貯金を証明できる通帳
- 「仕事をしていない」ことを証明できるもの(離職票などがある場合)
- 医師の診断書(自身が病気やケガで働けない場合)
これらのものを提示できると、申請がスムーズに進みます。このときニートの場合は「本当に働けない状態なのか」を詳しく聞かれる可能性が高いので、答えられるようにしておきましょう。
STEP2:ケースワーカーによる家庭訪問を受ける
申請が済んだら、ケースワーカーが家庭訪問に来ます。このとき以下の状況に関する調査がされます。
- 生活状況や家庭環境
- 資産や収入の状況
- 病気やケガの度合い(仕事への支障の有無)
- 家族関係(支援を受けられる身内の有無)
ケースワーカーから聞かれたことに対しては、正直に答えましょう。
STEP3:生活保護の審査を受ける
家庭訪問で得た情報をもとに生活保護の受給が必要かどうかを、管轄地域の福祉事務所が審査します。具体的には、以下の項目についての審議をされます。
- 預貯金と資産状況から、どのくらい生活ができそうか
- 身近に支援者はいるか
この間家族(親や兄弟)にも連絡が行くので、事前にそのことを伝えておきましょう。
STEP4:審査結果が通知される
生活保護の申請をしてから原則14日以内に、郵送もしくは電話で審査結果が通知され、審査に通っていれば手続きに進みます。しかし先ほども紹介した通り、生活保護を受給すると多くの制限がかかります。生活保護を受給するデメリットを十分に理解したうえで、受給を開始しましょう。