自宅で仕事をする「在宅勤務」は、情報通信技術の発達によって実現可能なものとなり、新しい働き方として定着しつつあります。この記事では、「在宅勤務したい」「在宅勤務に興味はあるけれど、具体的にどうすればいいのか分からない」と考えている人へ向けて、在宅勤務の概要やメリット・デメリットを解説します。さらに在宅勤務に必要なものや在宅勤務しやすい仕事・しづらい仕事についてもご紹介していますので、ぜひ参考にしてください。
この記事の目次
在宅勤務とは?テレワークとの違い
テレワークとは、在宅勤務のうちの一つで、会社や事務所に出勤せず、毎日生活している自宅で仕事をすることです。一般社団法人日本テレワーク協会の定義によると、テレワークには大まかに分けて4種類の勤務体系が含まれています。
- 在宅勤務(自宅で働くこと)
- モバイルワーク(移動中や移動の合間に働くこと)
- サテライト/コワーキング(企業の本社から離れたサテライトオフィスやコワーキングスペースで働くこと)
- ワーケーション(リゾート地などでバケーションを楽しみながら働くこと)
自宅で仕事をする在宅勤務には、基本的に場所の移動が必要ありません。大げさにいえば、朝起きてすぐに部屋着のままで働くことも可能です。
在宅勤務とテレワークは何かと混同されがちなものですが、「在宅勤務=テレワーク」の意味で使っていると、誤解を与えてしまう可能性があります。自宅で働くことを指す場合は「在宅勤務」と表現すべきでしょう。
在宅勤務のメリット
在宅勤務をすると、ストレスが減り生産性や生活のクオリティーがアップします。出勤せずに自宅で働くことで得られるメリットを具体的に紹介します。
時間を有効活用できる
在宅勤務の大きなメリットは、通勤するが必要なく最大限に時間を有効活用できることです。毎日電車やバスに乗ったり、車を運転したりして自宅と会社を往復すれば、時間をとられるだけでなく体力や気力もごっそりと消耗します。「すし詰めの満員電車に乗りたくない」と思ったことがある人も多いのではないでしょうか。
在宅勤務なら始業時間ぎりぎりまでプライベートを満喫でき、仕事が終わればすぐにくつろぐことができます。昼休みを利用して、掃除や洗濯などの家事をすることも可能です。さらに、仕事に行くために時間をかけて身だしなみを整える必要もありません。女性であればメイクも省略できます。時間的なメリットは非常に大きく、心にも生活にもゆとりが生まれるでしょう。
仕事に集中できる
職場にいるとさまざまな要因によって仕事が中断されることがありますが、在宅勤務なら目の前の仕事に黙々と集中できます。
社内で働いていると、以下ような理由で手を止めなくてはならないことが少なくありません。
- 電話応対
- 来客応対
- 同僚が話しかけてくる
「集中して作業をしたいのに、ひんぱんに電話が鳴るので進まない」「隣の人に話しかけられて集中力が切れてしまった」という事態になれば、生産性が落ちてしまうでしょう。
在宅勤務なら周囲の雑音が気になることはなく、さらに自分が集中しやすい環境を整えることもできます。好きなBGMを流したり、アロマを焚いたりするのも自由です。自分のペースをキープしながらリラックスして仕事に打ち込めば、その分成果につながります。
勤務地の制限がない
毎日通勤する場合は、会社や事務所に無理なく通える場所に住む必要がありますが、在宅勤務ならその必要はありません。都心の会社に在籍しつつ、豊かな自然に囲まれたエリアで暮らすことも可能です。
また、会社の規定によっては自宅以外の場所で働くこともできます。
- お気に入りのカフェ
- 働く人が集まるコワーキングスペース
- 家族やペットがいる実家
- レンタルスペース
時々自宅を出てこういった場所で働くのは、気分転換にもなるでしょう。
ただ、会社のルールとして「フルで在宅勤務」という場合もあれば、「週に2日は出社が必要」など定期的に出勤しなければならない場合もあります。もし出勤が必要なら、ある程度の通いやすさは確保しておかなくてはいけません。
家庭やプライベートと両立しやすい
在宅勤務をすることで、家庭(プライベート)と仕事との両立がしやすくなります。
- 子どもの世話や、幼稚園・保育園などへの送り迎えができる
- 家族の介護や介助がやりやすくなる
- 休憩時間を活用してさまざまな家事を進められる
- 住宅設備の点検のために仕事を休まなくてもいい
特に、毎日早朝に出勤して深夜に帰宅していたような人が在宅勤務になれば、家族と過ごす時間が増え、育児や介護にも参画しやすくなるでしょう。
1人暮らしの人にとっても、「雨が降ってもすぐに洗濯物を取り込める」「いつでも宅配便が受け取れる」など、ささやかだけれどありがたいメリットがたくさんあります。プライベートを充実させたい人にとっては、在宅勤務というスタイルは最適です。
在宅勤務のデメリット
在宅勤務のデメリットは、主にプライベートとの線引きがしづらいことと、会社との心理的な距離が生まれやすいことです。具体的にご紹介していきます。
オン・オフの切り替えがしずらい
在宅勤務では「身じたく」や「出勤」が必要ないため、どうしても仕事とプライベートの切り替えがあいまいになりがちです。多くの人は、きちんとした服装に着替えたり出社したりすることで無意識のうちに仕事モードに切り替わるものですが、在宅勤務にはそれがありません。
また、つい夜遅くまで仕事を続けてしまい、知らず知らずのうちに長時間労働になっていた、ということも。つまり在宅勤務では、意識的にオンとオフのスイッチを切り替える必要があります。
- 仕事用の服を決めておいて毎日着替える
- 自宅の中に仕事専用のスペースを設ける
- 仕事中は集中できるBGMをかける
「自宅にいるせいでなかなか仕事モードに切り替わらない」「ダラダラと働いてしまう」という人は、こういった工夫を取り入れてみるといいでしょう。
孤独を感じることがある
在宅勤務では、同僚とのやりとりがオンラインに絞られるため交流が生まれにくく、一人ぼっちで仕事をしているような孤独感を味わうことがあります。特に人とコミュニケーションをとることが好きな人にとっては大きなストレスとなり、心身に不調をきたしかねません。
人との関わり合いが減ることがプラスに働くかマイナスに働くかは、個人の性質にも大きく左右されます。つまり在宅勤務には「向いている人」と「向いていない人」がいるといえるでしょう。
また、仕事の合間に雑談をしたり、一緒にランチに行ったりすることから新しいアイディアがひらめくことも多々あります。在宅勤務でのコミュニケーションは業務上必要な連絡のみになりがちですので、無意識のうちに生産性や創造性が落ちてしまっている可能性があります。
正当に評価されない不安がある
在宅勤務では、「会社は在宅勤務の成果をきちんと評価してくれるだろうか」という不安が生まれやすくなります。会社側は「在宅勤務をいいことに手抜きしているのでは」と考える一方、従業員は「きちんと仕事をしていないと思われるのでは」と感じることで、疑心暗鬼の状態が発生しやすいともいえるでしょう。
これは営業やマーケティングなど、仕事の成果が目に見えて分かる職種ではさほど問題にならないものの、広報や経理といった成果が見えづらい職種では特に起こりやすい問題だといえるでしょう。結果ばかりが重視され、目に見えないプロセスや他者へのサポートが軽視されれば、仕事に対する評価が不当なものとなってしまう可能性も否めません。
在宅勤務を快適にするポイント
在宅勤務を快適に行うには、仕事がはかどる環境を整えることとセルフマネジメント、そしてコミュニケーションの工夫が重要です。具体的なポイントをご紹介します。
働きやすい環境を整える
在宅勤務をする際は、まず自宅内を働きやすい環境に整えることからスタートしましょう。
- 長時間座っていても疲れない椅子と、椅子に合った机を用意する
- 書類や資料を保管する場所を作る
- ゲームや漫画を視界に入らない場所に片づける
- 大きめのモニターに買い換える
- モニターを買い足してデュアルモニターにする
自宅の中に仕事専用の部屋を用意できるのであれば、それに越したことはありません。とはいえ一人暮らしの人にはハードルが高いので、まずは机と椅子を用意して仕事用のスペースを確保しましょう。そのうえで仕事に必要ないものを片づけ、業務に集中できる環境を作ることをおすすめします。
さらに効率よく仕事をするには、モニターのサイズも重要です。見やすくて作業がやりやすいモニターを選びましょう。
健康管理を行う
在宅勤務の天敵ともいえるのが「運動不足」や「不規則な生活」です。出勤しなくなることで歩く機会が減るばかりではなく、早起きが必要なくなることで夜更かし気味になる人もいます。心身の健康管理には特に気を配りましょう。
- 毎日同じ時間に起床し、寝る時間になったら眠くなくても布団に入る
- 1日に1回は外に出て歩く
- 自宅でできるストレッチや筋トレに取り組む
- 食事はなるべく自炊でまかなう
- ジュースやアルコールを飲む量を減らす
食事を自炊にすると、買い物で外に出る機会を作れるうえ、食事のカロリーもコントロールしやすくなります。1日中自宅で椅子に座りっぱなしだと「腰痛」や「肩こり」といった問題も出てくるので、意識的に体を動かす時間を作るようにしましょう。
コミュニケーションの頻度を上げる
在宅勤務では、職場の仲間と積極的にコミュニケーションを取ることも大切です。同じフロアで仕事をしていれば、お互いの進捗状況や忙しさは聞かなくてもなんとなく伝わるものですが、在宅勤務ではそうはいきません。
- 途中経過の報告や確認
- 業務に関する連絡
- 疑問点や不安なことに関する相談
このような、いわゆる「報連相」と呼ばれることは特に意識して行いましょう。そうすることで仕事の連携が取りやすくなり、さらに「どんなふうに仕事をしているのか」「どれだけ仕事をしたのか」といった評価につながることも伝わります。
また、後輩や在宅勤務に慣れていない人に「困っていることはないか」「仕事は順調に進んでいるか」と声をかけることも、コミュニケーションという点でプラスに働きます。
仕事以外の会話をする時間も設ける
仕事とは直接関係ない会話をすることでお互いに信頼感を築きやすくなり、仕事の息抜きにもなります。
Web会議システムやチャットツールなどを使ったオンラインでのコミュニケーションは、どうしても事務的な会話だけで終わってしまいがちなもの。仕事の合間に、雑談やプライベートに関する相談の時間を積極的に取り入れましょう。雑談のネタがないときは、次のような話題がおすすめです。
- その日話題になったニュース
- 最近食べておいしかったもの
- 自分のちょっとした失敗談
会社によっては「上司の目が光っていて無駄な話ができない」「雑談できる雰囲気ではない」というケースもありますが、在宅勤務の普及とともに雑談の重要性も認知されつつあります。仕事以外の会話も、チームに必要なコミュニケーションだと認識しておきましょう。
在宅勤務に必要なもの
在宅勤務をするには、自宅の環境をできる限りオフィスに近づける必要があり、そのために自分で用意しなくてはいけないものもあります。すぐに在宅勤務が始められるように、最低限必要なものを把握しておきましょう。
インターネット環境
インターネット環境(回線)は基本的に自分で用意します。在宅勤務には、通信制限がなく通信速度が安定している固定回線がおすすめです。主流なのは光回線ですが、提供地域外の場合はCATV(ケーブルテレビ)回線なども視野に入れて検討する必要があります。
工事不要のポケットWi-Fiを使うという方法もありますが、使いすぎると速度制限がかかるサービスが多く、画像や動画などの重いデータをひんぱんにやりとりする人にはあまり向いていません。スマートフォンのモバイル通信をテザリングで利用すれば、貴重なデータ通信量を消費してしまいます。
すでに固定回線を引いている人はそのまま使えますが、新たに開通させるときは、自分が利用できるサービスを調べて比較・検討しましょう。
パソコン
パソコンは会社から支給されることが多いものの、自分で用意しなければならないケースもあります。ノートパソコンの場合は、業務内容によってはサブモニターを導入してデュアルモニターにしたほうがいいことも。また、Web会議用のツールも揃えておきましょう。
- パソコン本体
- モニター
- キーボードやマウス
- Webカメラ
- マイクまたはヘッドセット
- プリンター
- スキャナー
- 外付けストレージ
さらに環境によっては、通信用の機材も必要です。
- ルーター(無線・有線)
- スイッチングハブ(ネットワーク用の中継機器)
これらのツールのうち、「自分の業務には何が必要なのか」「会社はどこまで用意してくれるのか」をしっかり確認しておくことをおすすめします。
セキュリティ管理ツール
企業秘密や顧客の個人情報と行った業務上必要な情報を流出させないために、セキュリティ面は万全にしておきましょう。
在宅勤務のセキュリティレベルや使用ツールは会社によってまちまちですが、何より重要なのは「会社が決めたルールに従うこと」です。たとえば、仕事のデータはクラウド上にのみ保存するというルールなら、自分のパソコンのハードディスクには残さないようにします。会社が決めたルールを守っていれば、万が一情報が流出したとしても、個人が責任を問われることはありません。
また「デジタル」の部分だけでなく、「アナログ」の部分でも重要です。書類の処理のためにシュレッダーが必要になることもあります。セキュリティソフトを勝手にオフにしたり、大切な書類を人目につくところに置いたりするのは厳禁です。
在宅勤務しやすい業界や職種
在宅勤務がしやすい業界や職種は、現物のやりとりがほとんど必要なく、デジタルデータのやりとりがメインとなる仕事です。パソコンとインターネット回線さえあれば仕事を完結させられることが多いIT業界は、在宅勤務しやすい代表的な業界だといえるでしょう。一例をご紹介します。
- プログラマー
- IT系のエンジニア
- Web関連のクリエイティブ職
- カスタマーサポート
- 各種コンサルタント
- ライター・編集・校閲
- デザイナー
- 営業(現物が必要ないもの)
- バックオフィス(経理・労務・人事など)
- 教育
- 個人で完結する仕事(翻訳・弁護士・行政書士など)
ただし、こういった業種や職種でも「データが重すぎてリモートでは扱いづらい」「機密性が高く社内のネットワーク内でしか作業できない」というケースがあります。在宅勤務できる仕事の範囲は、社内の体制がどこまで整っているかにもよるので、一概にいうことはできません。
在宅勤務しにくい業界や職種
在宅勤務がしにくい業界や職種は、現場作業が必要なものや直接人と顔を合わせる必要がある仕事です。一例をご紹介します。
- 医療・介護
- 飲食業
- 農業・酪農業
- 漁業
- 製造業
- 観光業
- 建築業
- 土木業
- 配送業
日本の主要産業のひとつに自動車や機械を造る「製造業」がありますが、ものづくりには設備の整った工場での作業が不可欠です。製造業の会社でも、経理や広報担当であれば在宅勤務できる可能性はあるものの、多くの人は現場へ行かなくてはなりません。
「医療」に関しては、一部でオンライン診療の仕組みが整いつつあるものの、リモートで手術や処置ができるようになるのはまだ先のことでしょう。「介護」も事務作業であれば在宅勤務が可能ですが、生活支援や身体介助はリモートではできません。
作物や家畜を育てる「農業・酪農業」、海や川で魚介類を獲る「漁業」といった第一次産業も、在宅勤務ではほぼ不可能な業種です。在宅勤務で働きたいときは、業種や職種選びも重要だといえます。
在宅勤務を正社員で実現する方法
正社員として働きながら在宅勤務をするには、まず会社に許可を得なくてはいけません。在宅勤務を実現する方法について解説します。
在宅勤務を今の会社に相談する
今の勤め先に在籍したまま在宅勤務がしたいのであれば、まずは在宅勤務の制度があるかどうかを確認し、なければ会社に相談してみましょう。在宅勤務の制度や実績がない会社でも、社員に「育児」や「介護」といった特別な事情がある場合は、認めてもらえる可能性が上がります。
ただ、在宅勤務には仕組みづくりや新システムの導入といった準備が必要なので、すぐに実現するのは難しいでしょう。また、一部の社員にだけ在宅勤務を認めることで社内に不公平感が生まれてしまい、周囲の反発にあう可能性もあります。
相談した結果、在宅勤務ができるようになったとしても、「午前中は要出社」「在宅勤務は週に2日のみ」など、制限がつくことも少なくありません。担当している仕事によっては、そもそも在宅勤務は不可能と判断されることもあります。
在宅勤務可の会社に就職・転職する
思い切って、在宅勤務をすでに実施している会社に就職・転職するのもいい方法です。在宅勤務に対する考え方は会社によって大きく異なり、積極的に推し進めていこうとする会社もあれば、導入を渋る会社もあります。そのため在宅勤務を実現する一番の近道は、在宅勤務への理解があり、すでに環境が整っている職場で働くことです。
ただ、「在宅勤務可」としている会社でも、職種によってできる場合とできない場合があるので、その点は事前に確認しておきましょう。また、以下の項目も要チェックです。
- 定期的に出社する必要があるのか(フルで在宅なのか、週に何日かは出社なのか)
- 勤務場所は自宅のみなのか、自宅以外(コワーキングスペースやレンタルスペースなど)も認められるのか
まずは自分の理想を明確にして、それに合う会社を探してみてください。
まとめ
在宅勤務にはメリットとデメリットがあり、人によって向き不向きもあります。また、仕事に打ち込むための環境づくりや体調管理といったセルフマネジメントも欠かすことができません。実際に在宅勤務できるかどうかは、自分がやりたい仕事や働きたい業界が在宅勤務に向いているかどうかにも左右されます。
在宅勤務可能な会社でも、細かなルールや条件はそれぞれ異なるので、その点には注意しておきましょう。さらに在宅勤務するための前提として「インターネットのセキュリティに関する知識」や「オンラインコミュニケーションのスキル」などを求められることもあります。場合によっては、パソコンやネットワークの設定を自分で行わなくてはならないため、ITに関する知識も重要です。
在宅勤務を選ぶ理由は人それぞれですが、「社内の密な人間関係がストレス」「通勤がつらい」といったことから在宅勤務を取り入れている企業に転職する人は大勢います。在宅勤務可能な会社を探すときは、ぜひジェイックにご相談ください。希望を叶えられるよう、就職・転職のプロが支援いたします。