
大学院を辞めたいと思う人も中に入るでしょう。
また、やめることで今後に影響することはあるのか、という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
結論から言うと、大学院中退が、就職などに影響を及ぼすことはあり得ます。
ただし、文系なのか?理系なのか?などによっても異なり、すべての人に影響するわけではありません。
この記事では、大学院を辞めると今後にどのような影響があるのか?について紹介しています。
最後までご覧いただければ、大学院を辞めることで起きる影響や得られるもの・失うものについて理解でき、今後の就職活動に活かせることと思いますので、大学院を辞めたいと考えている方はぜひ参考にしてみてください。




- 大学院を辞めると「就職」に影響が出ることも。文系・理系の選択や課程でも異なる
- 大学院卒で得られるのは「学歴」「余裕」「思考力」「探求心」「研究職のキャリア」
- 大学院に卒業するまで在籍することで「社会経験の年数」など失うものもある
この記事の目次
大学院を辞めると場合によっては影響がある
大学院を辞めると、どういった影響を及ぼすことがあるのでしょうか。
大学院を辞めたい方向けに、大学院中退が就職に支障をきたすことがあるのかについて解説します。
就職に関わる影響が出ることも
大学院を中退した場合、就職において以下のような影響が出る可能性があります。
- 最終学歴が「大卒」になる
- 「中退」という経歴がマイナスの印象になることもある
- 「大学院卒」が条件の求人に応募できなくなる
まず、大学院をどの時期に辞めたとしても、最終学歴は大卒になります。
少なくとも大卒ではありますから、学歴が低いとはみなされません。ですが、たとえ過去に有名大学院へ行った実績があるとしても、中退の経歴がある時点で、大学院へ通ったことを評価される可能性は低くなります。
本来、大学院まで通っていれば、企業からは「勉強熱心」「特定の分野に長けている」などプラスの印象を持ってもらえそうですが、修了せず辞めていることで「うちの会社も長続きしないのでは?」などといった印象を、多少与えてしまうことはあり得ます。
また、次で解説しますが、大学院を辞めたことで、特定の職業への就職の可能性がなくなってしまうことはあるでしょう。
文系・理系の選択や課程でも異なる
大学院で学んだことと無関係の仕事に就きたい場合には、中退してもほとんど支障は出ないかもしれません。しかしそうではない場合、大学院中退が就職の幅を狭めてしまう可能性があるのです。
大学院中退の経歴が不利になる可能性が高いのは、文系よりも理系かもしれません。
たとえば理系の専門職としてある程度の企業で働きたい場合、多くは「大学院卒」が条件になっています。実際に、東洋経済オンライン「『大学院卒の採用が多い会社』ランキングTOP200」に記載されている、大学院卒の採用が多い会社ランキングTOP5と、大学院卒の採用割合は、以下の通りです。
- 1位:ホンダ…68.9%
- 2位:ダイキン工業…68.3%
- 3位:京セラ…54.2%
- 4位:新日鐵住金…66.8%
- 5位:野村総合研究所…58.3%
自動車、電子、化学製品、鉄鋼など、理系の知識・技術を必要とする企業が上位にランクインしており、大学院卒の採用割合は全体の半数以上~7割程度にのぼります。
一方で文系の場合には、そもそも大学院へ進学する人自体が少なく、仮に文系大学院を中退しても、就職にはさほど影響しないといえそうです。
ただし、文系でも以下のような場合には、特別な事情がない限りは大学院を中退しないほうがよいでしょう。
- 弁護士などを目指し、法科大学院に通っている
- 音楽や絵画の道を志し、専門の大学院に通っている
- 「将来、大学院に残って働きたい」という希望がある
上記のような場合には、自分の目標を叶えるために、大学院を修了するのがもっともスムーズにいく方法です。
また、大学院は修士課程と、修士課程を修了した後には博士課程に進むこともできます。修士課程は2年程度、博士課程は3~5年程度です。
博士課程まで進んで中退した場合、20代半ば~後半になっていることも多いでしょう。それから就職するとなると、普通に大卒で就職するよりも数年遅れのスタートになり、かつ、中退という経歴で就活をすることになるため、大学院中退後の就職活動に苦戦する可能性はあります。
大学院を辞めたい方は安易に決断せず、慎重に考えて決めたほうがよさそうです。
大学院を辞めたいと思う主な理由6選
次に「大学院を辞めたい」と考えるきっかけとして多い、6つの理由をご紹介します。
理由1:大学院で過ごすよりも就職したくなった
大学院を辞めたいと思った理由は、就職したくなったためです。
就職したくなる理由として、経済的理由や学業不振などが考えられます。
実際に文部科学省のデータでも、修士と博士の中退理由は「その他」を除いて「就職」がトップです。
修士と博士の中退理由については、以下の表をご覧ください。
修士(中退理由として選択した方の割合) | 博士(中退理由として選択した方の割合) |
---|---|
就職(26.1%) | 就職(21.2%) |
経済的理由(12.7%) | 経済的理由(8%) |
学業不信(7.6%) | 転学(4.4%) |
参考:文部科学省『学生の中途退学や休学等の状況について』
修士課程では就職や経済的理由が大きな割合を占めるのに対し、博士課程では割合が相対的に低くなっています。
要因は博士課程に進学する時点である程度の覚悟や経済的な準備ができているためと考えられます。
Yahoo!知恵袋でも次の口コミがありました。
1年半の授業料を払ってもらうことがとても申し訳なく、学校をやめて今すぐに働いて自立したくて仕方ないです。
Yahoo!知恵袋
大学院が本当につまらない。適当に過ごして早く就職したい。
Yahoo!知恵袋
「大学院を辞めて就職したい」と思うことは、決して珍しいことではありません。
悩みを抱えて決断に迷っている方は、自分にとって最善の選択は何か、時間をかけながら考えるようにしましょう。
理由2:研究内容が難しい
大学院での研究が難しすぎると感じ、辞めたいと思う人は少なくありません。
特に、周囲の同期が優秀に見え、自分だけが取り残されているように感じることもあるでしょう。
実際にYahoo!知恵袋でも次のような投稿があります。
研究テーマが難しいから大学院辞めたいです。M1だけど何かもう修了できそうにないです
Yahoo!知恵袋
今年度頭に外部の大学院に入学したM1です。知識が足りなすぎて論文も読み進められず、絶望しています。研究テーマすら決まっていません。
Yahoo!知恵袋
大学院の研究は学部時代と異なり、既存の知識を学ぶだけでなく、新しい知見を見出すことが求められます。そのため、正解のない課題に取り組む必要があり戸惑いを感じる人もいます。
研究内容が難しいと感じるのは研究テーマの選択や指導体制、個々の適性などが影響している場合もあるでしょう。特に研究テーマが自分の興味や得意分野と合致していないと気付いた場合、学ぶ意欲が下がってしまう場合があります。
また、指導教員や先輩からのサポートが十分でないと孤独感や不安が増し、研究が難しいと感じることもあるでしょう。
大学院に進んでも研究の難しさに悩む学生は多く存在します。そのため自分だけが悩んでいるわけではありません。一人で悩まず、信頼できる人に相談してみましょう。
理由3:金銭面が不安
大学院を辞めたいと思った理由は金銭面が不安だからです。大学院進学には多額の学費が必要であり、奨学金を利用する場合でもその返済額の負担が増えます。
また、大学院中退者で「家庭・経済的理由」を最も重要な中退理由とする割合は、男女あわせて17.4%でした(参考:労働政策研究・研修機構『大学等中退者の 就労と意識に関する研究』)。
中退理由の中で2番目に多い理由だったため、悩む方が多いと言えるでしょう。
大学院生の口コミには以下のような声が寄せられています。
文系の場合には予習が欠かせないように、理系の場合だと実験の準備などでてんてこ舞いになるでしょう。アルバイトをすることによって、授業や実験をないがしろにすると、研究室に居辛くなります。
Yahoo!知恵袋
研究もう興味ないし大学院辞めたいけど、お金も人も動いちゃってるから辞めるに辞めれなくてしんどい
X(旧Twitter)
アルバイトで学費を補おうと考える人もいますが、研究活動と両立可能なアルバイトを見つけることは容易ではない点も金銭面に悩む人が多い理由でしょう。
特に実験系の研究室では、不規則な実験スケジュールのためアルバイトの調整が困難な場合もあります。
経済的な理由で大学院を辞めたいと考える人が多いことがわかります。焦らず、納得のいく決断をしましょう。
理由4:教授との関係作りがうまくいかない
教授との関係がうまくいかない場合も大学院を辞めたい要因の一つです。大学時代は教授とそこまで関わりを持たなくても問題なかったかもしれません。
しかし大学院では研究指導だけでなく、就職の支援や研究室に残る際の推薦など、教授との関係がキャリアにも直結する場合があります。そのため、教授と相性が合わないと「このまま続けるのは厳しい」と感じ、大学院を辞めたい気持ちになる人もいるでしょう。
また、教員とうまく関われないことが原因で大学を中退した割合は12%でしたが、大学院だと同じ原因で中退した方の割合は、40.8%と大学の約3倍にのぼります。(参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『大学等中退者の 就労と意識に関する研究』)。
大学院は研究室の閉鎖的な環境や指導方法の厳しさが影響し、人間関係の悩みが深刻になりやすい可能性があるでしょう。
Yahoo!知恵袋にも次のような投稿があります。
現在、修士課程の1年生です。卒業研究のときから現在の研究室に所属していますが、研究室の先生や先輩と合わず、もう限界が来てしまいそうです。
Yahoo!知恵袋
教授に対する不満です。教授は生徒の好き嫌いがはっきりしています。気に入ってる生徒には甘いし、気に入らない生徒には強く当たります。
Yahoo!知恵袋
教授との関係に悩むことは珍しくありません。無理に我慢せず、納得できる道を見つけることが大切です。
理由5:研究に興味が持てない
大学院の研究に興味を持てないことも、中退を考える大きな要因の一つです。
学業不振や無関心で大学院を辞めた割合は、男女ともに多いとわかりました。具体的な割合は以下の表をご覧ください。
性別 | 学業不振・無関心 | 人間関係・大学生活不適応 | 進路変更 | 病気・ケガ・休養 | 家庭・経済的理由 | 特に何もない・その他 |
---|---|---|---|---|---|---|
男性 | 22.9% | 22.9% | 14.3% | 17.1% | 22.9% | 0% |
女性 | 45.5% | 9.1% | 18.2% | 18.2% | 0% | 9.1% |
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『最も重要な中退理由』
「学業不振・無関心」とは、研究内容への興味喪失やモチベーションの低下を指します。
研究テーマが自分の関心と合致しない場合や、思うような成果が得られないとき、研究への意欲が薄れてしまう状態のことです。
Yahoo!知恵袋にも次のような声が投稿されています。
大学院を中退したいです。理由は大学院での研究に興味がなくなり、他にやりたいことが見つかったからです。
Yahoo!知恵袋
私立の大学から国立の大学院に来ましたが、研究内容が全く面白くないため、全然研究が進みません。今いる研究室は志望度が高くない研究室ということもあり、やる気が沸きません。
Yahoo!知恵袋
大学院への進学をあまり深く考えずに選択してしまった方は、学業不振や無関心に陥りやすい可能性があります。
一人で抱え込まず、適切なサポートを受けることで、解決の糸口が見つかるかもしれません。
理由6:研究のストレスが原因で体調を崩した
研究のストレスで体調を崩すことも大学院を辞めたくなる理由です。
大学院生からの口コミでも次のような声があります。
大学院でうつ病・・・中退か(略)
OKWAVE Plus
実は,M1の秋ごろにも研究が上手くいかず登校拒否になってしまい適応障害だと診断され精神的にも身体的にもかなりダメージを受けていた時期がありました。実際,今もその当時に近い感じで徐々に大学に行くこと自体が辛くなっています。
Yahoo!知恵袋
大学院では高度な専門知識の習得や独自の研究成果の追求が求められるため、学生はストレスを抱えやすい場合があります。
研究成果や将来のキャリアに対する不安などがストレスにつながる人もいるでしょう。
いくつかの要因が重なると、精神的・身体的な不調をきたす学生も少なくありません。
実際に大学院の中退理由に「病気・ケガ・休養」を挙げる割合は、大学と比較して高い傾向にあります。具体的な割合は以下をご覧ください。
性別 | 大学院生の中退理由(病気など) | 大学生の中退理由(病気など) |
---|---|---|
男性 | 17.1% | 7.9% |
女性 | 18.2% | 17.4% |
参考:独立行政法人労働政策研究・研修機構『大学等中退者の 就労と意識に関する研究』
大学院は研究に伴うストレスや過重労働により、体調を崩しやすい可能性があります。
ストレスから体調を崩す前に、一度立ち止まって今後の選択肢を整理するのも良いかもしれません。




大学院を辞めるメリット
大学院を辞めるメリットは下記4つのとおりです。
- 人間関係のストレスが解消される
- お金の心配をする必要がなくなる
- 就職活動に時間を費やせる
- 大学院に進学した実績が評価される場合がある
詳しくお伝えします。
人間関係のストレスが解消される
大学院を辞めるメリットは、人間関係のストレスから解消されることです。
教授や同期との関係に悩んでいた場合、中退すれば精神的な重圧から解放されます。
また、研究室のプレッシャーやコミュニケーションの負担で体調を崩してしまった人にとって、大学院を辞めることは早期回復への一歩となるでしょう。
環境を変えることで、心身の不調の原因となっていた要因が取り除かれ、健康な状態を取り戻せる可能性があります。
研究生活を続けることで症状が悪化するリスクを考えると、大学院を辞める選択は前向きな一歩かもしれません。
お金の心配をする必要がなくなる
大学院を辞めることで学費や生活費の負担が軽減されるため、金銭的な不安が減るメリットがあります。
特に私立の大学院では学費が高額になるため、経済的な理由で中退を考える人も少なくありません。
大学院にかかる費用に関しては、以下の表をご覧ください。
学校 | 入学金 | 年間授業料 | 合計 |
---|---|---|---|
国立 | 282,000円 | 535,800円 | 817,800円 |
公立 | 392,391円 | 538,734円 | 931,125円 |
私立(博士前期) | 201,752円 | 798,465円 | 1,000,217円 |
私立(博士後期) | 192,686円 | 604,592円 | 797,278円 |
専門職学位課程 | 194,492円 | 1,067,207円 | 1,261,699円 |
参考:文部科学省『国公私立大学の授業料等の推移』
参考:文部科学省『私立大学等の令和5年度入学者に係る学生納付金等調査結果について』
また、上記に加え施設設備費や実験実習料もかかります。
大学院を辞めることで支出を抑えることができ、奨学金の借入額が減ったり、生活費の負担が軽くなったりする可能性があります。
経済的な余裕が生まれることで、新たな選択肢を考えやすくなるでしょう。
就職活動に時間を費やせる
就職活動に多くの時間と労力を注ぐことができるのも大学院を辞めるメリットの一つです。
研究や論文執筆と並行して就職活動を行うと、研究室の予定と面接日程が重なるなど、両立の難しさに直面するケースがよくあります。
大学院を辞めれば企業研究や面接対策、業界研究などに十分な時間を確保できるでしょう。
また、インターンシップやアルバイトなど、就職に向けた実践的な経験を積む機会も広がります。
自分の興味のある業界や企業を丁寧に見極め、納得のいく就職先を見つけやすいでしょう。
大学院に進学した実績が評価される場合がある
大学院を中退しても、進学時に厳しい入学試験を突破した実績は変わりません。
意欲的に専門性を高めようとチャレンジした姿勢を評価する企業もあります。
特に研究職や技術職の採用では、大学院で培った専門知識や研究スキルが強みとなるでしょう。
たとえ修了までは至らなくても、大学院での経験を通じて得た論理的思考力や課題解決能力は、ビジネスの現場でも十分に活かせる要素として認められる可能性があります。
大学院を辞めるデメリット
大学院を辞めるデメリットは下記のとおりです。
- 新卒扱いで就職活動を行えない場合がある
- 大学院修了者よりも給与が低くなる場合がある
- 推薦を活用した就職活動が行えない
- 就職活動で中退理由を聞かれる可能性がある
- 親が悲しむ可能性がある
- 大学院を卒業しなかった自分を責めてしまう場合がある
詳しくお伝えします。
新卒扱いで就職活動を行えない場合がある
大学院を辞めると、新卒扱いで就職活動を行えない場合があります。
厚生労働省は若者の雇用機会を広げるための施策の一環として、企業に卒業後3年以内の既卒者は新卒扱いで採用するよう呼びかけています。
(参考:厚生労働省『3年以内既卒者は新卒枠で応募受付を!!』)
しかし、全ての企業がこの指針に従っているわけではありません。
既卒者を新卒扱いしない企業もあり、その場合は「既卒」として扱われます。
既卒とは一般的に学校卒業後、一度も勤務した経験がない人を指します。
新卒と既卒の主な違いに関しては、以下の表をご覧ください。
応募できる求人の範囲 | 採用選考プロセス | 研修制度 | |
---|---|---|---|
新卒 | 新卒募集枠に応募可能 | 一括採用スケジュールに沿った選考 | 充実した新入社員研修あり |
既卒 | 経験者枠や中途採用枠での応募が中心 | 基本的に随時募集 | 即戦力としての活躍を期待され、研修が限定的 |
就職活動は新卒か既卒かで進め方が大きく変わってくるため、応募前に企業の採用方針を確認しましょう。
大学院修了者よりも給与が低くなる場合がある
大学院を中退すると、修了者と比べて給与面で大きな差が生じる可能性があります。
文部科学省の調査によると大卒の1ヶ月の平均給与が36万9,400円であるのに対し、大学院修了者は47万6,700円と、月額で10万7,300円もの差があります。
(参考:厚生労働省『(3) 学歴別にみた賃金』)
年収に換算すると、約129万円(10万7,300円×12ヶ月)の差です。
中退を選択する場合は、長期的な収入面での影響も考慮に入れる必要があるでしょう。
特に研究職や技術職は大学院修了が求められるケースも多く、中退による給与面での影響が大きくなる可能性があります。
推薦を活用した就職活動が行えない
大学院を中退すると、推薦を受けられなくなることもデメリットです。
推薦とは、大学や教授と関係のある企業に学生を就職先として紹介する仕組みです。
多くの研究室では、企業との共同研究や教授の人脈を通じて、学生の就職をサポートする体制が整っています。
特に理系の研究室では、教授推薦による就職が一般的なケースも少なくありません。しかし、中退を選択すると推薦は活用できなくなるため、就職活動の選択肢が限られてしまう可能性があります。
就職活動で中退理由を聞かれる可能性がある
大学院を中退した場合、就職活動の面接で「なぜ辞めたのか」と質問される可能性があります。企業は応募者のキャリアの一貫性や困難に直面した際の対応力を知るために、中退理由を確認する傾向があるためです。
特に、研究職や専門職を希望する場合は、大学院での学びを途中で辞めたことに対する説明を求められる場合が多いでしょう。
正直に伝えながらも、前向きな姿勢を示すことが大切です。
中退理由を聞かれた場合の回答例は、以下の表をご覧ください。
伝え方のポイント | 回答例 |
---|---|
ポジティブな理由を強調する | 「新たに挑戦して可能性を広げたい」 「早く実務経験が積んで良さを広めたい」 |
中退後に努力したことを伝える | 「独学で専門知識を深めた」 「インターンを経験した」 |
決断力や適応力をアピールする | 「環境を変えることで新しい可能性に気づいた」 |
事前に答えを準備しておけば、スムーズに説明できるでしょう。
親が悲しむ可能性がある
大学院を辞めることで、進学を支援してくれた親を悲しませてしまうのではないかと心配になる人は多いでしょう。
特に、教育熱心な家庭や経済的な支援を受けている場合は、親の期待に応えられないことへの申し訳なさを感じやすいかもしれません。
しかし、親のプレッシャーを過度に気にして無理を続けることは、心身の健康を損なうリスクにつながります。
むしろ自分らしい新しい道を見つけて前に進むことで、親も安心するはずです。
今後の人生を自分らしく輝かせることが、親への最大の恩返しになる場合もあるでしょう。
大学院を卒業しなかった自分を責めてしまう場合がある
大学院を辞めることで「最後まで頑張れなかった」「自分は意志が弱いのではないか」と自分を責めてしまう人もいます。
特に、周りの同期が研究を続けている様子を見聞きすると、自己否定的な感情が強まってしまうかもしれません。
しかし、過度なストレスを抱え続けることは、深刻な心身の不調を引き起こす可能性があります。
一度体調を崩してしまうと、回復までに長い時間がかかる場合も少なくありません。
今の自分の状況を受け止め、新しい一歩を踏み出すことが大切です。
大学院卒が得られる5つのもの
大学院を修了すると、以下のような要素を得ることができます。大学院を辞めたい人は、これらの要素を失ってもよいと思えるかどうか、考えてから検討することをおすすめします。
1. 学歴
当然ですが、大学院卒は大卒よりも学位が高くなります。企業によっては、大卒と大学院卒で給料が違うところもあります。学費はかかるものの、生涯年収を考えれば「大学院を辞めずに修了しておいて結果的によかった」と感じる人もいるかもしれません。
特に、有名大学院を修了した場合には「一定以上のレベルの学びをしてきている学生」という目で見てもらえます。学歴は何歳になっても失われるものではないため、学歴がなくて困ることはあっても、学歴があってマイナスになることはまずないでしょう。
2. 仕事に対する余裕
大学院によっては、研究や課題などが忙しくて休むヒマもなかなかない…ということもあります。日々、勉強漬けでプライベートの時間も少ないという学生生活を送ることもあるでしょう。
就職すれば、仕事が忙しかったとしても、休日はきちんと休むことができ、基本的には労働時間なども決まっています。大学院が大変だった人ほど、社会に出てから「大学院のときと比べたら楽」と思えて、仕事への疲れを感じにくいことがあるかもしれません。
3. 論理的な思考力
いわゆる「ロジカルシンキング」の能力が、大学院での研究を通じて鍛えられるという効能もあります。特に理系の大学院に通った場合、論理的に考えるv力は身に付きやすいでしょう。
感情ではなく論理的にものごとを考えることができる力は、研究のみならず、卒業後にどんな仕事に就いても多いに役立ちます。ロジカルシンキングはすぐに獲得できる力ではないため、大学院時代の数年間で培ったことが、その後の人生にプラスになることがあるのです。
4. 探求心
大学院では、特定の分野について深く学びます。その数年間を通じて、ひとつのことを深く狭く追及していく探求心を満たすことができます。
いわゆる「広く浅く」の知識ではなく、ある分野のスペシャリストになることも、とても価値があるものです。大学院に残って研究を続けるにしても、社会に出て一般企業で働くにしても、大学院時代に身に付けた飽くなき探求心が、よい成果につながることはあるでしょう。
5. 研究職という職業
前述しましたが、理系の研究・開発の仕事に就きたい場合には、圧倒的に大学院卒が有利です。理系とひとことでいってもそのジャンルは幅広くありますが、メーカーの研究職などは、あらかじめ一定以上の知識・技術があってはじめて、働くことができます。そのため「未経験者をゼロから育てる」ような通常の新卒とは、異なるといえます。
研究が天職だと感じる人にとっては、研究職の仕事はずっと続けていきたいと思えるものです。貴重な研究の機会を得るために、がんばって大学院を修了する価値はあります。
大学院卒が失う3つのもの
最後に、大学院を卒業することで失われてしまう可能性がある3つの要素をご紹介します。
1. 社会経験
大学院を修了したとき、早くても24~5歳、遅ければ30歳手前の年齢になっています。大学を卒業して就職した同級生と比較すると、2~7年程度の社会人経験の差が出ることになります。
学校での学びももちろん大切ですが、実際に社会の荒波に揉まれ、実務を経験したり、組織に入って働いたりすることで得られるものはたくさんあります。学生時代より、精神的に大人になるきっかけにもなるでしょう。
大学院で学ぶことはもちろん悪いことではありませんが、同級生と比較したときの社会経験の少なさが、人によってはコンプレックスになることもありそうです。
2. 視野の広さ
大学院では、限られたメンバーと特定の分野だけを研究する日々を送ることになる人も少なくありません。バイトをする時間も遊ぶ時間もままならず、毎日研究室にこもる生活を数年間続けた結果、悪い言い方をすれば「世間知らず」になってしまうこともあり得ます。
世の中に出ると、自分が知っていたことやいた世界はちっぽけなもので、世の中は広く、いろんな人がいることに気づかされます。意識的に視野を広く保つ努力をしないと、偏った考え方をしてしまうことがあるかもしれません。
3. 素直さ
「大学院卒が素直ではない」ということでは決してありませんが、素直さは、若ければ若いほど備わっている能力ともいえそうです。人から教えてもらったことをやってみたり、指摘されたことを直そうとしたりする姿勢を積み重ねることで、自分の成長にもつながります。
大学院生でハイレベルな勉強をしていた人の場合、なんでも頭で考える癖がついてしまい、助言を聞き入れなかったり、「そんなことをするのはバカバカしい」と考えたりするなど、いわゆる「頭でっかち」になってしまう人もいるかもしれません。




大学院を辞めるかどうか判断する方法
大学院を辞めるかどうか判断する方法は次のとおりです。
- なぜ大学院を辞めたいのか明確にする
- 信頼できる人に大学院を辞めるかどうか相談する
- 大学院を辞める前に休学して今後の方向性を考える
一つずつ詳しく解説します。
なぜ大学院を辞めたいのか明確にする
大学院を辞めたいと悩んでいる人は、辞めたい理由を明確にしましょう。
漠然とした不安や迷いだけで辞めてしまうと、後悔する可能性が高くなるためです。
具体的な方法は、用紙に自分の気持ちを書き出すのがおすすめです。
たとえば「研究にやりがいを感じない」と考える思いの背景には「実験がうまくいかない」「将来の目標が見えない」などの具体的な要因が隠れているかもしれません。
「経済的な不安」の場合、実際の支出と収入を細かく書き出すことで、問題の本質が見えてくる場合もあります。
理由を深堀りしてみると、大学院を辞めたい本当の課題が何なのかが明らかになり、中退以外の解決策が見つかる可能性もあります。
信頼できる人に大学院を辞めるかどうか相談する
大学院を辞めるかどうかの悩みは一人で抱え込む必要はありません。
むしろ、信頼できる人に相談することで、自分では気づかなかった視点や解決策が見つかることもあります。
親への報告は避けては通れない道ですが、いきなり中退の意向を伝えると強い反対を受ける可能性があります。
まずは信頼できる友人など、客観的な立場の第三者に相談するのがおすすめです。
また、同じような経験をした先輩や大学のキャリアカウンセラーなどは、中立的な立場から適切なアドバイスをくれるでしょう。
第三者の意見を参考にしながら自分の考えをまとめることで、親への説明もスムーズになるはずです。
大学院を辞める前に休学して今後の方向性を考える
大学院を辞める前に休学も一つの選択肢として検討してみましょう。
休学中は研究や授業の義務から一時的に解放され、自分の将来について冷静に考える時間を確保できます。
休学する場合は、明確な期限を設定するのがおすすめです。
具体的な期間を決めると、休学期間にやるべきことが明確になるためです。
就職活動を始めたり別の研究テーマを探したりと、今後の方向性を見極める行動が計画的にできます。
期限を設けることで復学に向けて気持ちを切り替えやすくなり、建設的な判断ができるでしょう。
まとめ
大学院を辞めたい人は、なぜ辞めたいのか、辞めたら何が失われてしまうのかということをじっくり考えてみましょう。
大学院卒で得られるものと、大学院を中退して得られるものの両方を見てみて、辞めたほうが得られるものが大きいと考えるのであれば、中退は決してマイナスにはならないでしょう。
大学院を辞めたいと悩んでいる方は、ぜひジェイックのキャリアアドバイザーへご相談ください。今後のキャリアについて、プロがアドバイスいたしまます。
大学院の中退や大学院が卒業できないと感じている方は、ぜひ以下の記事を参考にしてください。
「大学院 やめたい」によくある質問
就職に影響が出ることもありますが、文系・理系の選択や課程によっても異なります。詳しくは「大学院を辞めると場合によっては影響がある」の章をお読みください。
「大学院を辞めたいと思う主な理由」の章では、「大学院を辞めたい」と考えるきっかけとして多い、5つの理由を解説しています。ご参照ください。

こんな方におすすめ!
- 学歴に自信がないから就職できるか不安
- 就職について、誰に相談したら良いか分からない
- 中退しようかどうかを迷っている
- 学歴に自信がないから就職できるか不安
- 就職について、誰に相談したら良いか分からない
- 中退しようかどうかを迷っている