「中卒でも看護師を目指せるのかな」と考えている方もいるのではないでしょうか?結論からお伝えすると、中卒でも看護師として働けます。ただし、厳密に言うと「准看護師」は目指せますが、「正看護師」はすぐには目指せません。では、それぞれの違いはどこにあるのでしょうか?
この記事では、まずは「准看護師」と「正看護師」の違いを紹介した後に、中卒から准看護師を目指せる最短ルートを解説していきます。記事の後半では、正看護師を目指すルート、また准看護師の給料事情や、働く上で理解しておきたいデメリットについても触れていますので、中卒でこれから看護師として働くことを考えている方は、ぜひ参考にしてみてください。
この記事の目次
中卒が看護師を目指す場合は「准看護師」のみ
まず、しっかりと理解しておきたいのが、中卒の学歴で目指せるのは「准看護師」ということです。一方で、一般に看護師と呼ばれる「正看護師」をすぐに目指すことはできません。
そもそも准看護士とは、主に医師や看護師からの指示を受けて業務を行う看護師のことで、平成28年時点で見ると、全国で約32万人(※)が就業しています。
正看護師との主な違いを表にすると、次のとおりです。
准看護師 | 正看護師 | |
最終学歴 | 中卒以上 | 高卒以上 |
資格発行元 | 都道府県知事 | 厚生労働大臣 |
業務 | 自らの判断で看護業務ができない | 自らの判断で看護業務ができる |
キャリアアップ | 看護師 | 保健師・助産師・特定看護師・専門看護師・認定看護師・診療看護師 |
※厚生労働省「平成28年衛生行政報告例(就業医療関係者)の概況」より
中卒が準看護師を最短で目指す流れ
では、中卒から准看護師を目指すルートについてお伝えします。基本的には、次のステップを踏むことで最短で准看護師としての就業が可能です。
- ステップ1:中学校卒業
- ステップ2:准看護学校に2年通う
- ステップ3:准看護師試験
- ステップ4:免許取得
なお、中卒からいきなり「正看護師」を目指すルートも存在します。この記事内の「5年一貫看護師養成課程校に通う」で解説していますので、気になる場合にはこちらもチェックしてみてください。
では、まずは准看護師を目指すステップについて見ていきましょう。
ステップ1:中学校卒業
まずは「中卒」の学歴を手に入れることが最初のステップです。准看護師の学歴要件が「中卒以上」となっているからですが、逆に言うと「高校未進学」や「高校中退」でも准看護師を目指せます。
なお、准看護師になるためには「准看護師試験」に合格しなければいけません。この試験は中学を卒業してすぐには受けられず、次にお伝えする「准看護学校」に通う必要があります。
ステップ2:准看護学校に2年通う
中卒の場合には、准看護学校に通うことで「准看護師試験」の受験資格を得ることができます。
准看護学校とは、2年制の専門学校です。どの学校でも、基本的には1年目は座学を中心に講義を受け、2年目は実習中心に進みます。なお、准看護学校に入学するには「入学試験」を受けなければいけません。ただし問題の難易度は中卒レベルに設定されているため、コツコツと勉強すれば入学は十分可能です。
また、働きながら准看護学校に通う人も多いため、全日制だけでなく、平日の午後や夜間に授業を行う「半日制」を用意している学校もあります。
准看護学校の一覧を確認したい場合には、准看護師養成校の一覧|日本准看護士連絡協議会を確認してみてください。
ステップ3:准看護師試験
准看護師学校を卒業する見込みが得られると、准看護師試験を受験できます。
准看護師試験は、毎年2月の中旬から下旬にかけて実施されます。47都道府県ごとに別々に試験を実施していることが特徴で、それぞれ入試日が異なるため、県をまたいでの複数受験も可能です。
試験は「人体の仕組みと働き」「食生活と栄養」など、計13項目から150問が出題されるのが例年のパターンです。ボリュームが多いように感じるかもしれませんが、令和2年度の合格率を見ると約99%(※)と、ほとんどの人が合格していることが分かります。
東京都の場合には、東京都福祉保健局が試験要綱を発表しています。試験要綱は変わる可能性があるので、各都道府県が発表する情報は必ずチェックするようにしましょう。令和3年度東京都准看護師試験の実施について|東京都福祉保健局や、厚生労働省「令和2年度准看護師試験の実施状況を公表します」などが参考になります。
ステップ4:免許取得
准看護師試験に合格すると、合格証書が交付されます。そして合格証書をもとに、准看護士免許の申請手続きを行います。このときの申請先は、住民票のある都道府県知事です。
申請にあたっては住民票などの資料が必要で、また実際に免許が発行されるまでに数ヶ月かかる場合もあるので、合格を確認した後ですぐに免許取得の手続きを始めるのがおすすめです。
中卒が正看護師を目指す方法
准看護師を目指すルートはイメージできましたか?では、ここからは「正看護師」を目指す3つのルートについて解説していきます。
- 1、准看護師から正看護師を目指す
- 2、5年一貫看護師養成課程校に通う
- 3、高認を得る
准看護師と正看護師では業務内容に大きな差はありませんが、正看護師のほうが給料が高い傾向にあったり、目指せる仕事が多かったりと、メリットが多いのも確かです。キャリアアップを図っていきたい人は、正看護師としての就業も視野に入れてみると良いでしょう。
1、准看護師から正看護師を目指す
1つ目は、准看護師から正看護師を目指すルートです。
この場合、主に次の3つのステップを踏む必要があります。
- ステップ1:准看護師として3年以上働く
- ステップ2:看護師養成校に通う
- ステップ3:看護師国家試験&免許取得
それぞれのステップについて解説します。
ステップ1:准看護師として3年以上働く
中卒の場合、まずは准看護師として3年以上の実務経験が必要です。実務経験とは「病院などで実際に働いた経験」のことで、就業場所や、就業形態は問われません。そのため地域のクリニックでの就業や、パートなどで働いた年数も実務経験にカウントできます。
ステップ2:看護師養成校に通う
実務経験をクリアしたら、次は看護師養成校に通います。養成校は、大きく次の3つの課程に分かれています。
- 全日制(2年)
- 定時制(3年)
- 通信制(2年)
平日5日間の「全日制」への通学が一般的ですが、昼間か夜間に授業を行う定時制の学校もあります。定時制の場合には平日の一部が休校となっている場合もあります。
なお、家の中でも授業を受けられる「通信制」の学校もありますが、通信制の場合には「実務経験7年以上」という制約がついています。また、2年間で50日以上の登校日が別途設定されているため、通信制といえども通学の必要があることは理解しておきましょう。
全国の看護師養成校の学校名と所在地については、厚生労働省が発表しています。「厚生労働省医療関係職種養成施設 看護師[2年課程(短大含む)]」や「厚生労働省医療関係職種養成施設 看護師[2年課程通信制(短大含む)]」を参考にしてみましょう。
ステップ3:看護師国家試験&免許取得
看護師養成校を卒業する見込みが得られれば、看護師国家資格に受験できます。
看護師国家試験は、年1回、2月に実施される試験です。問題は例年240問が出題されますが、看護師養成校でしっかりと学んできた人であれば特に難しいことはなく、事実、2021年に実施された試験の合格率は「90.4%(※)」となっています。
無事に合格したら、次は看護師免許の取得に移ります。健康診断書や住民票の写しなどの資料を準備し、医療従事者免許申請窓口に提出することで、早ければ2ヶ月ほどで免許が手に入ります。免許が得られれば、正看護師として働くことが可能です。
2、5年一貫看護師養成課程校に通う
中卒から正看護師を目指す場合には、「5年一貫看護師養成課程校」に通うという選択肢も考えられます。これは中卒から正看護師を目指す場合の最短ルートとも言え、具体的には、前半の看護科3年間で看護に関する基礎科目を学び、後半の専攻科2年間でより発展した内容を学んでいきます。
看護科の3年を修了すると高卒資格も得ることができ、5年間を修了すると看護師国家資格の受験資格も手にできます。なお、周りには10代の学生も多いため、年齢が離れすぎている場合には気後れしてしまう人もいるかもしれません。そうした人は、次の「高認を得る」のパターンも確認してみてください。
3、高認を得る
中卒から正看護師を目指す場合には、「高認を得る」という方法も考えられます。高認とは、文部科学省が実施する「高等学校卒業程度認定試験」の略で、この試験に合格すると、実際に高校を卒業していなかったとしても「高卒と同等以上の学力がある」と認められます。
高認を得ると、看護専門学校や看護大学、または看護短大を受験できます。その後は大学などで学び、看護師国家資格の受験資格を得る、といった流れで正看護師を目指すのが一般的です。
准看護師の働き方給料など
ここからは、准看護師の働き方や、気になる「給料事情」などについて解説します。
お伝えした通り、看護師は「准看護師」と「正看護師」に分けることができますが、中卒の場合、准看護師を目指すのが王道のルートとも言えます。これから紹介する内容をもとに、まずは准看護師として働くイメージを掴んでいきましょう。
准看護師の仕事内容
准看護士の仕事内容は、主に次のとおりです。
- 測定業務(血圧、体温、脈拍など)
- 医療業務(点滴、注射採血など)
- 介助業務(食事、排せつ、入浴のサポートなど)
- 事務業務(カルテ記載、受付業務など)
このようにさまざまな仕事がありますが、実はこれらは正看護師が行う業務と変わりません。一方で准看護師の場合には、他の看護師に指示を出したり、自らの判断で業務を行ったりすることができない、といった特徴があります。
准看護師の給料
国税庁発表の「賃金構造基本統計調査(2019年)」を見ると、准看護師の平均年収は約403万円となっています。日本人の平均年収が433万円(※)という点から見ると、准看護士の給料は低い部類に入ることが分かるでしょう。
なお、一般には東京神奈川をはじめとする首都圏の年収が高く、それ以外の地域では年収が低くなる傾向も見られます。
准看護師が働く場所
准看護師が働く場所は、正看護師と同じく「病院」がメインです。ただし正看護師と比べると、特に「診療所」で働く准看護士が多く、その割合には以下のような違いがあります。
准看護師 | 正看護師 | |
病院 | 36.3% | 68.9% |
診療所 | 34.6% | 15.0% |
参考:日本看護協会「(4)看護師、准看護師(年次別就業場所別) 令和元年」
なお、病院と診療所の違いは次のとおりです。
- 病院:患者が入院できるベッドが20床以上
- 診療所:患者が入院できるベッドが19床以上
その他の勤務場所としては、介護老人保健施設や、介護老人福祉施設、または訪問介護ステーションなども挙げられます。
中卒が准看護師を目指すメリット
ここまで、中卒から准看護師を目指すルート、そして働き方について紹介してきました。一方で、正看護師についても補足して説明を加えてきたため、「一体どっちを目指したらいいんだろう?」と迷っている人もいるかもしれません。
そこで一つの参考として、中卒から准看護師を目指すメリットをお伝えします。
- 看護業務に早く就ける
- 働きながらでも学校に通える
- 中卒でも看護師の就職では不利にならない
後半ではデメリットも解説しますので、あわせて確認してみてください。
看護業務に早く就ける
まずメリットとして挙げられるのが、「看護業務に早く就ける」ということです。
中卒から准看護師を目指すには准看護学校に2年通う必要がありますが、正看護師をいきなり目指そうとすると、5年一貫看護師養成課程校を修了しなければいけません。つまり、最短でも5年はかかってしまうのです。
期間が短くて済むということは、それだけ通学費用が安く済むことも意味します。実際の仕事内容も正看護師とほとんど変わらないので、すぐにでも看護業務を行いたい場合には准看護師を目指すのが手と言えるでしょう。
働きながらでも学校に通える
准看護師は、働きながらでも目指すことが可能です。前述の通り、准看護学校には平日の午後、または夜間にだけ授業を行う「半日制」の学校があります。こうした学校は、平日の日中に授業がある「全日制」と比べると、仕事をしている人でも通いやすいのがメリットです。特に中卒者の場合には仕事をしている人も多いでしょうから、「半日制」の学校が用意されているのは嬉しいポイントと言えるでしょう。
一方で、中卒から正看護師をダイレクトに目指す場合には、たとえば5年一貫看護師養成課程校の場合には日中は授業が詰まっているケースがほとんどのため、「働きつつ通う」というのは難しいのが現実です。
中卒でも看護師の就職では不利にならない
准看護師だったとしても、就職に不利に働くこともほぼありません。なぜなら、看護師は常に人手不足であること、さらには准看護師は「正看護師と同様の業務を行える人」と見なされているためです。特に中小の病院やクリニック、または介護施設では看護師不足が深刻なため、勤務先で困ることはまずありません。
中卒が准看護師を目指すデメリット
次に、中卒が准看護師を目指すデメリットについてお伝えします。
- 正看護師と比べると給料が低い
- 正看護師を目指す場合には時間が必要
- 仕事の選択肢が狭まってしまう
いざ目指し始めたあとに後悔しないように、デメリットについてもしっかりと理解しておきましょう。
正看護師と比べると給料が低い
1つ目のデメリットは、給料が低いことです。先ほどお伝えしたとおり、准看護士の年収は約403万円で、これは日本人平均433万円よりも低い金額です。また、正看護師の平均年収は約482万円(※)となっており、准看護師とはおよそ80万円の差が開いています。
このように、その仕事内容はほぼ変わらないにも関わらず、両者には年収に大きな違いがあります。そして准看護師は患者の命に関わるような仕事をしている、という点も考えると、「仕事量や精神的なプレッシャーに反して給料が低過ぎる」という声も少なくないのです。
※国税庁「賃金構造基本統計調査(2019年)」(「看護師」の数値)
正看護師を目指す場合には時間が必要
給料という点だけを考えると正看護師を目指すのも手と言えますが、一方で中卒の場合には正看護師としてすぐに働くことはできません。具体的には、まずは准看護師として3年以上働いた後に准看護学校に通う、または5年一貫看護師養成課程校への通学などが必要です。そのため、これから目指そうと考えている場合には、最低でも5年間は正看護師としては働けないのです。
一方で高卒者の場合には、たとえば「3年制の専門学校」に進学して看護師国家資格の取得を目指せたりと、中卒に比べると一足早く正看護師になれる道が開かれています。
仕事の選択肢が狭まってしまう
中卒から准看護師を目指すデメリットとして、「仕事の選択肢が狭まってしまう」という点も挙げられるでしょう。
准看護師は中卒であっても目指せる仕事ですが、他にも、中卒であっても働ける仕事はたくさんあります。たとえば「人と接する仕事がしたい」という場合には販売職も当てはまりますし、「手に職をつけたい」と思っている場合にはIT業界のプログラマーなども選択肢に入ってくるでしょう。
もちろん、「小さい頃から看護師に憧れていた」という人も多いかもしれません。しかし、どんな仕事にも向き不向きはあります。いざ准看護師として働き始めたあとに「想像していた仕事じゃなかった」「自分には合わない」と感じても、その時点では准看護師以外のスキルがないため、今後のキャリアをどうしていけばよいのか戸惑う事態に陥ってしまう可能性もあるのです。
このような准看護師としての現実を踏まえた上で、それでもその道を進むのか、または他の道を目指すのか、をまずは冷静に考えてみることは大切です。世の中には准看護師よりも安定して働けたり、給料が高かったりする仕事も多いので、もしも違う道を考えてみる場合には次の方法も検討してみてください。
- まずは「高認」の取得を目指す
- 就職エージェントで仕事の紹介を受ける
では、それぞれについて解説します。
まずは「高認」の取得を目指す
まず考えたいのが、「高認」の取得を目指すことです。なぜなら「高卒程度の学力がある」とみなされると、挑戦できる仕事や会社の幅がぐっと広がるからです。
さらには、正社員として働ける確率も高まります。事実、厚生労働省が発表したデータによると、15歳~34歳までの若年労働者における正社員の割合は次のようになっています(※)。
- 中卒:35.4%
- 高卒:56.3%
- 大卒:80.9%
大卒の割合が図抜けているのが分かりますが、注目したいのが中卒と高卒の違いです。中卒の場合、正社員として働いている人の割合が約35%なのに対し、高卒者は約56%と、およそ20%もの差があることが分かります。
なお高卒の学歴を目指す場合には、「高校に入学し直す」といった手も考えられますが、10代の生徒と混じって授業に参加する可能性もあるなど、人によっては抵抗を感じることも多いでしょう。こうした人は「高等学校卒業程度認定試験」を目指してみてください。勉強は必要ですが、上手く行けば1年で合格できるため、「高認」という“武器”をもとに正社員就職に向けていち早く行動を起こせます。
※厚生労働省|平成30年若年者雇用実態調査の概況 現在の就業状況
就職エージェントで仕事の紹介を受ける
正社員就職を目指す場合には、就職エージェントから仕事の紹介を受けてみるのも一つの手です。
たしかに中卒でも挑戦できる仕事はありますが、そうは言っても「学歴の壁」は存在するので、高卒者や大卒者と比べると仕事が見つかりづらいのが現状です。そこで力になるのが、就職エージェントです。
たとえば私たちジェイックが運営する就職エージェントでは、正社員就職を目指すフリーターやニートの方を中心に、無料で就職活動をサポートしています。「学歴にこだわらず若者を採用したい」と考えている企業の紹介や、応募書類不要で参加できる選考会も行っているため、自分で就職活動を進めるよりも正社員就職に近づけるのがメリットです。
中卒の方であっても18歳以上であればサポートが可能ですので、仕事探しに少しでも不安がある場合にはまずはお気軽に相談にお越しください。
中卒が看護師を目指す時に抱く疑問
では最後に、中卒から看護師を目指す時に多くの人が抱く疑問についてお答えします。
- 准看護師がなくなる、ってウワサを聞くけど……
- 准看護師が行ける通信制の学校はある?
- 中卒シングルマザーで看護師はきつい?
- 勉強が苦手だけど試験に合格できるかな……
代表的な疑問について丁寧に回答していきますので、ぜひ参考にしてみてください。
准看護師がなくなる、ってウワサを聞くけど……
一部の都道府県で、准看護師課程の新規募集を停止する動きがあるのは確かです。ただし、病院内で看護師が不足していること、また正看護師を目指すよりも早く看護師として働けることなどから、現場、そして看護師を目指す人にとってメリットが大きいことは間違いありません。
そもそも「准看護師廃止」の動きが起こったのは、1990年代までさかのぼります。正看護師の指示のもと働く、という制約があることに疑問符がついたことから、正看護師と准看護師を一本化、つまり「両者を一つの仕事にしよう」といった提言が厚生労働省から提出されました。
その後、准看護士はわずかずつですが減少を続け、平成22年から令和元年にかけては、毎年およそ5000~20000人ずつ減っています(※)。令和元年時点では約30万5000人が准看護師として働いていますが、仮に20000人ペースで減少していくとすると、あと15年ほどで准看護士の新規募集はなくなる、との予測もできます。
一方でお伝えのとおり、特に看護師不足に悩む中小の病院などでは「正看護師よりも安く雇える」といった側面もあり、准看護師を求める声は少なくありません。また、准看護師を目指す人からしても比較的早く看護業務に就けることなどから、双方ともにメリットが大きい働き方でもあります。
いずれにしても今後の動きに注目ですが、「看護師が足りない」という現状は国としても喫緊の課題です。そのため仮に准看護師がなくなったとしても、たとえば今よりも早く、または学費を押さえつつ正看護師を目指せるルートが新設される、といった可能性も考えられるでしょう。
准看護師が行ける通信制の学校はある?
看護師養成校の中には、通信制の学校も存在します。ただし「7年以上の実務経験」があることが前提です。准看護師としての経験が7年に満たない場合には、基本的には全日制2年課程か、定時制3年課程を経て、看護師国家資格を目指すことになります。
なお「厚生労働省医療関係職種養成施設 看護師[2年課程通信制(短大含む)]」では、通信課程を設定している学校を一覧で確認できます。
中卒シングルマザーで看護師はきつい?
きついことは確かですが、働くことは可能です。たとえば入院施設を持たないクリニックであれば、勤務は日中のみであることが一般的です。実際、子どもを保育所に預け、平日に働いている看護師は少なくありません。また、病気を持つ方の自宅などに訪問する「訪問介護」は夜勤はほとんどないので、子育て中でも働きやすい、といった一面もあります。
また、社会的にも「育児短時間勤務制度」や「短時間正社員制度」などが設定され始めたりする中で、看護師のワークライフバランス改善に真剣に取り組む病院なども増えています。
そのため、仕事内容と勤務場所を精査すればシングルマザーでも働ける可能性はありますが、一方で看護師の年収は総じて低く、さらには体力仕事でもある、という点は覚悟しておいたほうが良いかもしれません。
勉強が苦手だけど試験に合格できるかな……
学力に自信がなくても、看護師になることは可能です。もちろん、ある程度の勉強は必要ですが、たとえば令和2年度の准看護師試験の合格率は「約99%(※1)」と、ほとんどの人が合格しています。
同様に、令和3年度に実施された看護師国家試験の合格率は「90.4%(※2)」と、こちらも多くの人が合格していることから、決して難しい試験ではありません。そのため、過度に恐れる必要はないでしょう。
※1 厚生労働省「令和2年度准看護師試験の実施状況を公表します」
※2 厚生労働省「第108回看護師国家試験の合格発表について」
まとめ
中卒から看護師を目指すルートについてお伝えしてきました。まずは、看護師は「准看護師」と「正看護師」に分けられること、そして中卒の場合には准看護師を目指すルートが一般的であることを押さえましょう。そして准看護師は社会からの需要が大きい仕事である一方で、給料の低さや、将来のキャリアという点において可能性が狭まってしまう、というリスクがあることも知っておいて損はありません。
もしも「安定して働きたい」「給料が高い仕事に就きたい」といった場合には、民間企業への正社員就職も考えてみるのがおすすめです。看護師の道を歩み始めたとしても、正社員という道を吟味した上での選択であれば、この先の後悔も減らせるはずです。お伝えした情報を参考に、いま一度、自分が進むべき道を冷静に考えていきましょう。