公務員として働くことに興味がある人は多くいます。
安定している、残業が少ない、失業する心配がない、などプラスイメージを持っている人が多いのではないかと思います。一方、ルーティンワークが多くつまらなそう、何をするにも融通が利かなそう、などマイナスイメージを持つ人もいるかもしれません。一口に公務員と言っても様々な職種があり、職種によって実態は大きく異なるため、どちらが正しいと決めることはできません。
この記事では、公務員の種類や職種、それぞれの仕事内容や年収、さらには就職の難易度までご紹介します。
この記事の目次
公務員の種類と平均年収
公務員は大きく分けて、国家公務員と地方公務員の2種類があります。
それぞれの職種や平均年収について紹介していきます。
1. 国家公務員
国家公務員とは、国家機関や行政執行法人で働く公務員のことです。
国家公務員は「総合職」「一般職」「専門職」の3つに分けられます。
総合職は、基本的に1府12省庁で働く公務員です。いわゆる官僚やキャリアと呼ばれる人たちです。1府12省庁とは、内閣府、総務省、法務省、外務省、財務省、文部科学省、厚生労働省、農林水産省、経済産業省、国土交通省、環境省、防衛省、警察庁です。これに、現在はデジタル庁や復興庁が含まれます。
一般職は、各省庁の出先機関などで、主に事務処理の業務を担当します。
専門職は、国税専門官や財務専門官、労働基準監督官など、特定の分野で働く公務員になります。
総合職と一般職は官庁訪問で内定を取るまでは、基本的にどの官庁で働くことになるのか分かりませんが、専門職は合格すると希望の官庁で働くことができます。
国家公務員の平均給与は、人事院の『令和3年国家公務員給与等実態調査』によれば、諸手当を含む月給が41万4,729円(基本給33万6,333円)。夏と冬のボーナス4.5ヶ月分をプラスすると、平均年収は649万247円となります。
2. 地方公務員
地方公務員とは、都道府県や市町村といった地方自治体で働く公務員のことです。現在、公務員として働く8割以上が地方公務員です。「特別職」「一般職」の2つに分かれており、特別職は自治体の首長や議会議員のことで、それ以外は一般職になります。
一般職のなかでも複数の職種に分かれています。「行政職」技術職、専門職、公安職、福祉職、心理職に分かれています。
- 行政職:都道府県庁や市役所、区役所などの出先機関で働く職種
- 技術職:建築土木電気農業化学などの専門知識を活かして、インフラの整備をする職種
- 専門職:看護師や薬剤師、司書など、特定の免許や国家資格を必要とする職種
- 公安職:警察官や消防士など治安を守る職種
- 福祉職:介護福祉士や点字通訳者など福祉に関わる職種
- 心理職:児童心理士心理判定員など心理に関わる職種
地方公務員の平均年収は、総務省の『令和2年4月1日地方公務員給与実態調査』によると、諸手当を含む平均月給が40万860円(基本給34万4338円)。これにボーナス4.5ヶ月分を加えると、635万9,841円になります。
公務員の職種と平均年収
続いて、公務員の具体的な職種と、それぞれの平均年収について紹介します。
行政系[公務員の職種 1/5]
地方公務員の行政職は、もっとも身近な存在でいえば、市役所などの住民課戸籍課年金課などの部署で働きます。それ以外にも、学校事務、警察事務などがあります。
行政事務
地方自体が住民のために行う事業について、行政施策の企画立案、予算編成、それらに関わる事務処理を担当します。
また、住民登録や戸籍関連、地方税の事務作業、小中学校の運営や、医療介護福祉年金の手続き、保健、水道事業、ごみ収集と処理。それらの窓口対応など、その仕事は多岐にわたります。
さらに、都道府県の場合は、道路や河川、海岸等の整備や建設、農地や都市開発なども行います。部署異動が多く、さまざまな分野の業務に携わることになり、たくさんの知見を得ることができます。
就業するための条件は各自治体によって異なりますが、おおむね以下のとおりです。
- 高校以上を卒業する
- 地方公務員の採用試験選考に合格する(1次・2次試験)
行政事務の平均年収は625万4,208円です(総務省HP)。
行政事務は、一般市民と接する機会が多いので、コミュニケーション能力が高い人が向いています。また、住民生活の改善などの企画も行うので、日頃から改善意欲が旺盛な人も向いています。
学校事務警察事務
学校事務は、主に小中学校に配属され、学校の会計や備品管理、行事の準備などの業務を行います。教員とは違って教員免許は必要ありません。学校で発生する事務作業のほとんどをこなすことになります。
警察事務は、警察署内の予算編成や予算管理、福利厚生、給与計算、広報などを担当します。また、遺失物届や拾得物の管理、犯罪情報の収集と分析なども行います。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 一次試験に合格する(一般教養と数的処理や文章理解などの一般知識)
- 2次試験の面接選考に合格する
学校事務警察事務の平均年収は統計されていませんが、331万円~368万円となっています。ただし、警察事務の場合、地域によって「地域手当」が支給されるので、年収も大きく変わってきます。
学校事務にせよ警察事務にせよ、現場内の調整役を務める必要があるため、コミュニケーション能力や協調性が高い人が向いています。
また、給与計算や備品管理など細かい作業をミスなくこなす責任感がある人も向いています。
技術系[公務員の職種 2/5]
地方公務員の技術職は、土木や建築などの専門知識を活かして、インフラ整備など住民が暮らしやすい社会を作っていきます。都市計画や、エネルギー開発などに携わることもあります。
土木職
各自治体によって業務内容は異なりますが、主にダムや河川、上下水道、公園、港湾、砂防など、インフラと環境の整備を行います。事業計画、予算管理から、測量や設計、発注、監督、維持管理など、さまざまな業務に対応します。
実際の工事は民間に委託しますが、工事中の苦情対応などの地元調整や、定期的な現場確認も重要な仕事となります。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 公務員試験に合格する
- 各自治体の採用試験に合格する
土木職の公務員試験は専門知識を問われることが多いので、相応の難易度となっています。
平均年収は、各自治体で差があり、公表されているケースも少ないのですが、おおむね350万~450万円といわれています。
専門知識を勉強することは大前提として、民間業者との打ち合わせなども多いので、人付き合いが得意、人見知りしない人が向いています。
建築職
庁舎や出先機関、学校や図書館などの施設について、安全性や利便性の対策、整備を行います。また、前記のような一般施設以外にも、浄水場や下水処理場、橋梁、トンネルなどの新設工事や増築工事に関して、企画立案や監督、メンテナンスなどを行います。ほかにも、景観の維持、文化財の管理などが加わります。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 公務員試験に合格する
- 各自治体の採用試験に合格する
試験内容は一般教養以外に、建築計画施工、構造力学など専門知識も問われます。
建築職の平均年収は、自治体ごとに違います。たとえば、東京都特別区は初任給が約24万円。愛知県名古屋市は約17万円になっています。
各施設との折衝や打ち合わせを行うので、プレゼンテーションスキルに長けている人は向いています。また、予算作成や、案件ごとの概算工事費の積み上げなどの業務もあるので、数字を扱うことに抵抗がある人はあまり向いていないと考えられます。
福祉系[公務員の職種 3/5]
福祉系公務員は、ケースワーカーとして児童相談所や福祉事務所で働くことが多くなります。指導員や相談員として、訪問者の指導、相談、調査を行います。
東京都や特別区では、「社会福祉士」「児童指導員(教員免許で代用可)」といった資格が必要なケースもあり、多くの自治体で「社会福祉主事任用資格」が必要になります。また、無資格でも大丈夫な自治体もあるので、募集要項を確認するようにしてください。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 募集要項にしたがって、必要となる資格を取得する
- 地方上級福祉職の1次試験に合格する
- 地方上級福祉職の2次試験に合格する
福祉系の職種の平均年収は531万7,737円です(総務省HP)。
相談内容は十人十色で、まったく一緒というケースの方が稀です。したがって、紋切り型の対応ではなく、臨機応変に対応できる柔軟さがある人が向いていると言えます。
心理系[公務員の職種 4/5]
心理学の専門知識を活かして働く公務員です。住民の心のケアや、カウンセリングを行うのが主な業務となります。
心理判定員
心理判定員は、身体障害者更生相談所や知的障害者更生相談所などで、障害者の心の状態を把握するための面談や、検査を担当します。また、障害者が就職し、安定した生活を送れるように、職能判定員の業務を兼務することもあります。
心理学の知識に基づいて、さまざまなアドバイスをしたり、検査内容を改善したりします。個々人の人生に関わる仕事なので、責任の大きな仕事といえます。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 地方上級心理職の1次試験を合格する
- 地方上級心理職の2次試験を合格する(個別面接、集団面接、集団討論、適性検査)
心理判定員の平均年収は各自治体で異なります。東京都の場合、35歳課長代理のモデル年収が620万4000円です。
大学で心理学を専攻していた人は、特に向いています。また、他人の人生に関わる大きな仕事ですので、責任感がある人が向いているといえるでしょう。
児童心理司
かつては心理判定員が兼務していましたが、最近は児童心理司として独立しているケースが多くなりました。未成年者の家出や非行、不登校などの相談について、心理テストなどを用いて心理状態を判定します。そして、その判定を基に、問題解決の方策を考えます。
就業するための条件は、心理判定員と同じです。
- 地方上級心理職の1次試験を合格する
- 地方上級心理職の2次試験を合格する(個別面接、集団面接、集団討論、適性検査)
児童心理士の平均年収は各自治体で異なります。東京都の場合、35歳課長代理のモデル年収が620万4000円です。
こちらも、大学で心理学を専攻しているとアドバンテージになります。子どもや保護者と接する機会が多いので、人当たりが柔らかい人の方が向いているといえます。
専門系[公務員の職種 5/5]
看護師や薬剤師、保健師などの特定の免許や国家資格を保有している人が、各々の専門施設で働く公務員のことをいいます。公立学校の教員や、保育士なども専門系といえます。
資格免許職とも呼ばれ、各専門分野のスペシャリストとして働きます。受験資格に年齢だけでなく、指定された資格。免許を取得していることが条件になるので、専門系の公務員を目指す場合、まず資格の取得をしておきましょう。
薬剤師
公務員としての薬剤師は、一般の調剤薬局などで働く薬剤師とは、業務内容が違います。とくに違うのは、公務員薬剤師は販売業務を行いません。
主な業務は、医薬品の監査や企画といった薬事行政研究開発の振興業務、医薬品や食品の検査などを行います。主な勤務先は、地方厚生局、公立病院、保健所、衛生研究所などが多く、公立病院では患者への服薬指導も行います。
就業するための条件は、自治体ごとに異なります。
- 薬剤師国家試験に合格する
- 地方自治体が実施する採用試験に合格する
薬剤師の平均年収は595万3147円です(総務省HP)。
医学の進歩は日進月歩なので、薬剤師も常に新しい知識を学び、アンテナを張っていなければなりません。新しい知識を学んでいく柔軟さのある人が向いています。
教員
公立学校の教師です。幼稚園、小学校、中学校、高校、特別支援学校があり、それぞれ教員免許が必要になります。取得したい教員免許に対応する教育課程のある大学、短大で規定単位を取得し、卒業後に各都道府県教育委員会に教員免許状を申請します。
大学によって教育課程が異なるので、自分が取得したい教員免許が取れるかどうか確認しておきましょう。また、文部科学省から認可を受けた大学でなければだめなので、そちらもしっかり確認してください。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 教員免許を取得する
- 各自治体が実施する採用試験に合格する
教員の平均年収は667万5559円です(総務省HP)。
教員は、生徒を優先しなければならないシーンがたくさんあります。根本的に子どもが好きな人でなければ務まりません。また、自分の価値観を押しつける人では難しいので、価値観に柔軟な人の方が向いています。
警察官
警察官は、強盗殺人放火詐欺などの犯罪を取り締まり、社会の秩序を守ることを使命とします。
警察官は都道府県単位で、消防士は市町村単位で採用されます(東京都だけはと全体で1単位)。また、警察官は「警視正」以上は国家公務員となります。地方公務員として採用されても、警視正になれば国家公務員です。
警察署は、地域警察部門、刑事警察部門、交通部門、生活安全部門、警備部門、警務部門に分かれており、採用後にどこに配属されるかは選べません。
また、採用条件として、身体検査と体力検査があるのも特徴です。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 1次試験に合格する(教養択一、作文、国語試験、適性検査、身体検査)
- 2次試験に合格する(個別面接、体力検査)
警察官の平均年収は693万4,830円です(総務省HP)。
警察官は、公務員の中でも危険の多い仕事です。事件や事故はいつ起こるかわからないので勤務時間は不規則になります。また、階級社会で上下関係にも厳しく、ときには凶悪犯を相手に立ちまわることもあり、相当の緊張感とストレスになります。精神力と忍耐力がある人が向いています。
消防官
消防は、住宅街やビル群、山間部で発生する災害の消防活動、救助要請などに携わります。
消防官は「消火隊」「救急隊」「救助隊」の3つのセクションに分かれます。消火隊は、火災現場で消火活動を行います。消火だけでなく、周囲の状況を瞬時に確認、把握して二次災害を防ぐのも重要な仕事です。
救急隊は、急病人やけが人が出たときに、現場で応急処置を行い、病院へ搬送します。3つの隊の中で、もっとも出動頻度が高くなります。
救助隊は、自然災害や交通事故などで人命救助を行います。大規模災害の場合は、自分の自治体を離れて活動することもあります。
就業するための条件は、以下のとおりです。
- 1次試験に合格する(一般知識、一般知能、作文、適性試験)
- 2次試験に合格する(面接、集団討論、身体検査、体力検査)
消防官の平均年収は608万433円です(総務省HP)。
消防活動はチームプレーです。勝手な行動は慎無必要があります。人から信頼される誠実な人柄と、規律を守れる人が向いています。
国家公務員の人気ランキングTOP5
国家公務員の中では以下の5つが注目されています。
- 国家公務員総合職
- 国家公務員一般職
- 外務省専門職
- 国家公務員一般職(高卒程度)
- 海上保安官
ここでは、特に人気のある国家公務員職種TOP5の、人気の理由と難易度を紹介します。
1位:国家公務員総合職
①人気の理由
国家公務員総合職が非常に人気がある理由は、国を動かす重要なポジションに就くことができるからです。多岐にわたる政策の立案や実行に関わり、社会や国民の生活に直接的な影響を与られる点が大きな魅力です。
また、国際交流や国費留学など、自己成長のための機会も豊富に用意されており、幅広いスキルと視野を身につけることが可能です。このような経験は、将来のキャリアにおいても大きなアドバンテージになります。
②受かる難易度
国家公務員総合職の選考は非常に競争率が高く、2022年度の倍率は8.6となっています。約18,000人の応募者の中から2,000人余りが合格するという厳しい選考を通過する必要があります。
試験内容も多岐にわたり、高度な専門知識と思考力が求められる筆記試験のほか、人物を見極める面接試験が設けられています。
2位:国家公務員一般職
①人気の理由
国家公務員一般職に対する高い人気は、安定した雇用と充実した福利厚生によるものです。定年まで安心して働ける環境が整っており、ワークライフバランスを重視する方にとって魅力的です。
また、地元での勤務が可能な点も、家族を持つ方々にとっては大きなメリットでしょう。職場では多様な業務に携わることができ、公共の福祉に貢献するやりがいも感じられます。
②受かる難易度
国家公務員一般職の選考は、総合職に比べるとやや難易度が低いものの、それでも倍率3.4と競争率は高いです。2022年度には約28,000人の応募者中、約8,000人が合格しています。
試験は教養と専門知識を問うものであり、人事院での面接を含む厳しい選考プロセスを経る必要があります。
3位:外務省専門職
①人気の理由
外務省専門職が注目される理由は、国際的な舞台で活躍する機会があることにあります。高度な語学力と専門知識を活かし、国際交渉や外交政策に関わることができます。この職種は、グローバルな視野を持ち、世界各地で多様な文化や価値観と接することができるため、国際関係に興味がある人にとっては非常に魅力的です。
②受かる難易度
外務省専門職の選考は非常に高い競争率を誇り、2022年度の倍率は6.1です。335人の応募者中、わずか55人が合格しており、その選考プロセスは非常に厳しいです。1次試験から2次試験にかけて、専門知識だけでなく、語学力や国際感覚も試されます。高いレベルの総合的な能力が求められるため、十分な準備と対策が必要です。
4位:国家公務員一般職(高卒程度)
①人気の理由
国家公務員一般職(高卒程度)が注目を集める理由は、安定した職業であることや、比較的低い難易度で公務員としてのキャリアをスタートできる点にあります。特に、高卒の若年層にとっては、早期に安定した仕事に就けるというメリットが大きく、将来の経済的な安定への早道とも言えるでしょう。
また、公務員としての福利厚生や社会的な地位も魅力の一つです。公務員として働くことで、国や地域社会に貢献できるという意義も、多くの若者にとって大きな動機付けになっています。
②受かる難易度
国家公務員一般職(高卒程度)の選考は、他の職種に比べてやや低い難易度とされていますが、それでも倍率は3.4と高く、競争は激しいです。2022年度の申込者数は11,191人に対して、合格者数は3,333人でした。
試験内容は基礎能力試験や適性試験、さらには作文試験と専門試験が含まれており、幅広い知識と能力が求められます。特に、最低限必要な下限得点に達しなければ不合格となるため、各試験において均等な力を発揮する必要があります。
5位:海上保安大学校
①人気の理由
海上保安官は海上の安全と秩序を守る仕事で、志望する多くの理由の一つは、海難救助や不審船の取り締まりなど、直接的に人命を救助し、社会の安全に貢献できる点です。
また、海上保安官になることで、海洋に関する高度な知識と技術を習得し、国際的な舞台で活躍する機会もあり、海や船舶に関する情熱を持つ人々にとって、非常に魅力的です。
②受かる難易度
海上保安官の選考プロセスは、筆記試験、体力試験、面接など、複数の段階を含んでおり、特に体力試験は合格のために重要です。
2022年度の倍率は5.5であり、合格者は、3,573人の申込者中647人で、競争率は低くありません。候補者は、専門的な知識と体力の両方を高いレベルで備えている必要があります。
参照:2022年度海上保安学校学生採用試験の区分試験別申込者数・合格者数|人事院
地方公務員の人気ランキングTOP5
地方公務員の中では、以下の5つの職種が注目されています。
- 地方上級公務員(大都市地方都市)
- 教員
- 地方中級公務員
- 地方初級公務員
- 警察官、消防士
ここでは、人気のある地方公務員のTOP5の人気の理由と難易度を紹介します。
1位:地方上級公務員(大都市地方都市)
①人気の理由
地方上級公務員は、自治体での要職に就くことができ、地域社会の発展に直接貢献することができるため、人気です。
特に大都市や地方都市では、都市計画、環境政策、福祉、教育など多岐にわたる分野での政策立案や実行が求められるため、その仕事の幅広さと影響力の大きさが魅力となっています。
地方都市では、地域特有の課題に対するオーダーメイドの政策を考えることができるため、自治体ごとに特色ある仕事に取り組むことができます。
また、転勤の範囲が限定されている点も、家族を持つ人々にとって大きなメリットです。
②受かる難易度
地方上級公務員試験は、高度な専門知識と応用力が求められるため、一般的に難易度が高いとされています。
2023年度のデータを見ると、東京都では申込者数815人、最終合格数:111人、倍率:3.5、京都府では申込者数:487人、最終合格者数:141人、倍率:2.2倍、千葉県では申込者数:1,448人、最終合格者数:412人、倍率:2.5となっており、それぞれ競争率は高いものの、地域によって異なります。
試験内容は、教養試験、専門試験、面接など多岐にわたり、特に専門試験では深い知識が要求されるため、準備には十分な時間が必要です。
参考:令和5年度東京都職員1類A採用試験及び1類B採用試験(新方式)の実施状況について|東京都
2位:教員
①人気の理由
教員は、子どもたちの成長を支え、教育を通じて社会に貢献できる職業であるため、多くの人にとって魅力的な職種です。尊敬する教員や憧れの教員に影響を受けたことが、教員を目指すきっかけになることが多いようです。
子どもたちの「できた!」の瞬間に立ち会えることは、教員にしか味わえない大きな喜びとやりがいにつながります。
また、安定した収入と福利厚生、夏休みや春休みなどの長期休暇も、教員としての魅力の一つです。
②受かる難易度
教員採用試験は、筆記試験、面接、実技試験など多岐にわたるため、非常に競争率が高いです。特に小学校教員の場合、2022年度では受験者数30,974人に対して採用者数は13,641人となっており、中学校や高等学校も同様に高い競争率を示しています。
教員を目指すには、教育に対する情熱はもちろん、専門的な知識やスキル、面接での人物評価など、幅広い準備が必要です。
参考:令和4年度(令和3年度実施)公立学校教員採用選考試験の実施状況について|文部科学省
3位:地方中級公務員
①人気の理由
地方中級公務員の人気は、地方自治体で安定したキャリアを築きたいと考える人々にとって魅力的です。特に、地域社会に密着した仕事を通じて直接的な社会貢献ができる点が評価されています。
地方中級公務員は、地方自治体内でのさまざまな業務に携わることができ、地域の発展に貢献できる機会が多いことが大きな魅力です。
また、比較的若い年齢層でも挑戦しやすい試験内容となっており、キャリアの早期から地方自治体での経験を積むことが可能です。
②受かる難易度
地方中級公務員の試験は、教養試験や専門試験、面接などから構成されており、試験の内容や難易度は自治体によって異なります。
東京都では申込者数:203人、最終合格者数:30人、倍率:4.5、千葉県では申込者数:553人、最終合格者数:83人、倍率:3.8となっており、地方上級公務員に比べるとやや低い競争率であるものの、それでも高い競争率を勝ち抜く必要があります。
受験者は、基礎的な知識の習得はもちろん、自治体が求める人材像に合った能力を面接でアピールすることが求められます。
参考:令和5年度東京都職員2類、3類採用試験及び障害者を対象とする東京都職員3類採用選考の実施状況について|東京都
4位:地方初級公務員
①人気の理由
地方初級公務員の人気が高い理由は、安定した雇用条件と仕事の多様性にあります。高卒程度で応募可能なため、早期に社会人としてのキャリアをスタートさせたい若者にとって魅力的です。
また、地方自治体で働くことで、地域社会に直接貢献できるやりがいも大きいです。具体的には、市民の生活に関わるサービスの提供や地域イベントの企画・運営など、地域密着型の業務を担うことができます。
②受かる難易度
地方初級公務員の試験は、比較的難易度が低めに設定されていることが多いですが、応募者数が多いため競争率は高くなりがちです。
2023年度の東京都では、申込者数1084人に対して最終合格者数は190人、倍率は4.1となっています。千葉県でも、申込者数1053人に対して最終合格者数は324人、倍率は2.8となっており、多くの応募者の中から選ばれるためには、しっかりとした準備が必要です。
参考:令和5年度東京都職員2類、3類採用試験及び障害者を対象とする東京都職員3類採用選考の実施状況について|東京都
5位:警察官、消防士
①人気の理由
警察官と消防士の職は、社会貢献度が非常に高い仕事であるため、多くの人に人気です。警察官は治安の維持や犯罪の防止、捜査などを通じて社会の安全を守り、消防士は火災や災害時の救助活動を行い、人々の生命や財産を守る重要な役割を担います。
これらの職業は、強い使命感と責任感を持ち、日々の仕事の中で直接的に人の命を救うやりがいを感じることができるため、多くの志望者がいます。
また、公的な職業であることから雇用の安定性や福利厚生の充実も魅力の一つです。
②受かる難易度
警察官と消防士の試験は、非常に競争率が高いことで知られています。特に、警察官I類の倍率は6.1倍、消防官の倍率は5.0倍となっており、競争率は高いです。
2022年度:男性警察官
I類:受験者数:5,379人、合格者数:886人、倍率:6.1
III類:受験者数:2,492人、合格者数:243人、倍率:10.3
2022年度:女性警察官
I類:受験者数:1,942人、合格者数:261人、倍率:7.4
III類:受験者数:933人、合格者数:148人、倍率:6.3
2023年度:消防官
応募者数:7,945人、最終合格者数:1,276人、倍率5.0
試験は、基本的な学力を問う筆記試験の他、体力試験、面接試験があり、特に体力試験では厳しい基準をクリアする必要があります。
これらの試験を通じて、知識だけでなく、身体的な適性や精神的な強さも求められるため、合格するには総合的な準備が必要です。
女性に人気な公務員の職種3選
ここでは女性に特に人気のある職種3選を紹介します。
1. 地方公務員(一般行政職)
地方公務員(一般行政)は女性に人気がある職種です。
女性に人気の理由
女性の場合、家庭をもったときに転勤になったり、育児の時間が取れなかったりすると大変です。そのため、自治体の採用で、転勤範囲が限られる地方公務員の一般行政が人気です。
また、地方公務員の一般行政職の女性採用比率が政令都市なら40%を超えており、育児休暇の取得率も99%以上となっているのも、人気の要因といえるでしょう(総務省HP)。
この仕事向いている人
地域活性化に貢献できる仕事なので、地元愛の強い人に向いています。基本的には、PCを使った業務になるので、PC作業に慣れている人だと比較的スムーズに業務に入っていくことができるでしょう。
2. 国立大学法人等職員
学生支援や研究支援、国際交流などを行う、国立大学法人等職員も人気の職種です。
女性に人気の理由
国立大学法人等職員は、女性比率が高い職種です。2021年度の採用実績では、関東甲信越地方の平均で約47%でした。(国立大学法人等職員採用試験HP)司書になると、じつに72%にもなります。女性が働きやすい職場環境にあるのが、人気の秘訣なのでしょう。
この仕事向いている人
国立大学法人等職員は、紙の書類を扱うことが非常に多いです。アナログな管理体制が残っている環境でも苦にならない人が向いています。学生をサポートする事務サポートも多いので、人をサポートするのが好きな人も向いているでしょう。
3. 地方公務員(学校事務)
公立の小中学校に配属される事務職員です。
女性に人気の理由
人事、経理などの定型業務が多く、予定が立てやすいのが魅力です。自治体によっては、教育委員会への異動などもありますが、基本的には学校で勤め上げることが多く、転勤も少なくなります。
また、業務量がそれほど多いわけではないので、有志で部活動の補助にあたったり、学校行事を担当したりもできるので、子どもが好きな人にも人気です。
この仕事向いている人
子どもが好きな人、人にものを教えるのが好きな人はもちろん向いています。中学校の職員になると、部活動の顧問で土日も引率などでプライベートの時間がなくなってしまうことがあるので、プライベートの時間を確保したい方はご注意ください。
公務員になるまでの流れ
公務員になるには、国家公務員にせよ地方公務員にせよ、公務員試験に合格しなければなりません。また、ほとんどの公務員には年齢制限があるので、自分が就職したい公務員職について、年齢制限も確認しておきましょう。
新卒
新卒で公務員を目指す場合、公務員試験を受けて合格することで公務員になることができます。
国家公務員総合職の場合、4年生の4月に1次試験があり、5月に2次試験があります。国家公務員一般職なら、6月半ばに1次試験、7月半ばに2次試験があるのが一般的です。
地方公務員では、上級中級の1次試験が4月からスタートし、6月から2次試験が始まります。初級の場合は、6月から1次試験が始まります。
公務員一本に絞るなら、あとは試験勉強と、面接対策などを行えばいいのですが、民間企業との併願を考えている場合は、スケジュール管理をしっかり行っていないと、気がついたら試験日が過ぎていたということにもなりかねません。
新卒の場合、誰もが就職活動は初めてのことです。何よりスケジュール管理を癖にしてください。
既卒
既卒の場合も新卒と同じ形式で公務員試験を受けて、合格すると公務員として働く資格が得られます。
公務員試験を受ける人の中には、大学4年から試験勉強を始めて、大学卒業後に試験を受ける人もたくさんいます。公務員試験の受験資格は、ほとんどが年齢制限だけなので、既卒だからといって不利になることはありません。何より、勉強時間を確保しやすいというメリットがあります。
また、既卒にデメリットがないということは、新卒で公務員試験に落ちても、再びチャンスが巡ってくるということでもあります。
ただし、新卒より年齢を重ねているのは事実なので、面接対策は新卒と同じではいけません。年齢のギャップを埋める受け答えが必要になります。
募集内容は新卒と変わらないので、自分が受けたい公務員の募集要項を確認し、しっかりスケジュール管理をしていきましょう。
中途
中途の場合、新卒や既卒とは別に中途採用枠が設けられていることがあります。ただし、公務員へ中途で転職する場合も、基本的には公務員試験に合格する必要があります。独自のフローが設けられているケースもあるので、就職する機関の出している募集要項を確認してください。
また、最近では年齢制限の上限を引き上げるケースもありますが、おおむね30歳前後が年齢制限になります。
転職を希望する公務員の募集要項を確認し、年齢制限にあてはまらないかどうか把握しておきましょう。注意点として、上限年齢は採用日の時点での年齢です。たとえば、30歳が上限の場合、受験したときが30歳でも、来年の4月1日に31歳になってしまうなら受験できません。
国家公務員では、就職氷河期世代を限定に、35歳~55歳まで中途採用を行っています。中途採用の場合、筆記試験を人事院が行い、採用面接等を各府庁が行います(人事院HP)。ちなみに、2021年の中途採用予定数は167人でした(国家公務員中途採用情報HP)。
まとめ
公務員の職種について紹介しました。公務員にも様々な仕事があり、仕事内容はもちろん年収や難易度も大きく異なります。向いている人はそれぞれ異なります。自分に向いている職種に絞ってチャレンジしてみてください。
また、公務員になるには年齢制限があります。試験があるので一筋縄にはいきませんが、自分に合った職種環境で働けるよう、なるべく若いうちからチャレンジしていただければと思います。希望の職種に就職できることを願っています。
「公務員 職種」によくある質問
公務員の種類は、2つあります。国家公務員と地方公務員です。詳しくは、「公務員の種類と平均年収」で解説を行っております。詳しく知りたい方は、是非読んでみてください。
公務員になるまでの流れは、新卒、既卒、中途で変わります。詳しくは、「公務員になるまでの流れ」で解説を行っております。気になった方は是非読んでみてください。
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