大学中退後に奨学金返済を長引かせる人の割合はどれくらいなのか、その理由は何か、という疑問をお持ちの方も多いのではないでしょうか?
大学中退後に奨学金の返済ができず長引いてしまう人は存在しますし、その理由もさまざまです。なぜなら、人それぞれに大学中退の理由も違うからです。
こちらの記事では、大学中退後の返済を長引かせる割合や理由、奨学金返済に関する制度などについて解説しています。最後までご覧いただくことで、大学中退後の奨学金返済について理解できる内容になっていますので、是非参考にしてみてください。
この記事の目次
大学を中退してから奨学金返済を長引かせる人の割合と理由
大学の奨学金返済が遅れてしまう人はどれくらいいるのでしょうか。また、その理由にはどんなものが多いのでしょうか。独立行政法人日本学生支援機構「令和元年度奨学金の返還者に関する属性調査結果」を参考に、それぞれについて解説します。
奨学金を延滞させる人の割合
大学の奨学金返済を3か月以上延滞している延滞者の数と、無延滞者(延滞せずに返済している人)の数は、それぞれ以下の通りです。※令和元年度末の調査
- 延滞者:15万2000人
- 無延滞者:411万1000人
概算すると、大学の奨学金を借りた人のうち、返済が遅れている人・通常通りの返済ができていない人の割合は全体の約2~3%程度ということになります。大半は返済しているものの、奨学金返済ができていない人も確実に存在することがうかがえます。
また、無延滞者のなかにも、過去に奨学金返済を延滞したことがあると回答した人は19.7%にのぼります。なんらかの理由で一度でも奨学金返済を延滞したことがある人は、一定数いそうです。
奨学金延滞の理由
奨学金を延滞している理由の上位3つは、以下の通りです。
- 本人の低所得:62.7%
- 奨学金の延滞額の増加:42.6%
- 本人の借入金の返済:29.3%
もっとも多いのが「収入が少ない」という理由です。就職したが給料が低い、フリーターなど非正規で働いているなどの理由で、生活費などの出費に加えて、毎月の奨学金返済が難しくなっていることが考えられます。
奨学金を延滞すると利子がついて返済額が増えるため、返さなければいけない金額が大きくなったことで、さらに返済のタイミングが遅れてしまっている人も比較的います。
また、本人のほかの借金(ローン、キャッシング、親から借りたお金など)の返済を優先していて、奨学金返済が遅れているといったケースも見られます。
大学中退をした際の奨学金受け取りを停止させる方法
奨学金は、学費などの支払いが難しい人を対象としたものです。当然ですが、学生ではない人のためのお金ではありません。
大学を中退した場合、その時点で奨学生としての資格を失います。大学中退が決まったら、速やかに奨学金辞退の手続きをしましょう。
独立行政法人日本学生支援機構「退学」によると、以下の流れで手続きをすることが必要です。
- 奨学金振込をやめてもらうよう、学校の担当者に連絡する
- 学校から受け取った「異動願(届)」を記入し、提出する
- 学校から受け取った「貸与奨学金返還確認票」を確認する
- 金融機関窓口で口座振替(リレー口座)の加入手続きをした後、「預・貯金者控」のコピーを学校に提出する
奨学生の資格がなくなったにも関わらず手続きをしないと、退学後も必要のない奨学金が振り込まれてしまい、返金の手間が生じてしまうため要注意です。
大学中退後の奨学金返済前に確認すべき制度
大学を中退すると奨学金返済が開始されますが、返済が難しい場合に使える制度も存在します。「大学中退後、すぐに奨学金を返済するのは厳しそう」という人は、使える制度がないかチェックしておくことをおすすめします。
独立行政法人日本学生支援機構「返還が難しくなった場合」を参考に、3つの制度についてそれぞれ解説します。
制度1:返還免除制度
奨学金の全額または一部の返還が免除となる制度です。以下いずれかに該当した場合で、審査を受けて決定となります。
- 本人が死亡した
- 精神または身体の障害により労働能力を失った、労働能力に高い制限が出た
死亡に関しては、本人による返済が明らかに不可能となることが確実です。一方で精神または身体の障害の場合には、返還できないことを証明する書類や、医師(または歯科医師)の診断書の提出が必要です。
たとえば「骨折して数か月働けない」「うつ病の疑いで一旦休職することになった」程度では、返還免除になる可能性は低いといえます。
大病をしたり大きな事故に遭ったりしたなど本人のせいではなことが原因で「収入を得ることができなくなった・または働くことに多大な制約が出た」ことが明らかな場合のみ、この制度が適用されると考えておいたほうがよいでしょう。
制度2:減額返還制度
毎月の返還額を減額して返還できる制度です。主に、以下の理由が認められることがあります。
- 災害
- 傷病
- 経済的理由など
この制度を使用できるようになると、一回の申請で12か月間、最大で180か月間(15年)、月々の返済額が2分の1・または3分の1に減額されます。トータルの返済額が減る制度ではありませんが、一定期間の返済額が減額されるため、無理のないペースで返済を続けられるようになるというものです。
減額返還制度の審査にあたっては、以下のような収入・所得の目安があります。
- 所得証明書等の年間収入金額:325万円以下(給与所得のみの場合)
- 所得証明書等の年間所得金額(必要経費等控除後):225万円以下(給与以外の所得がある場合)
自分では「うちの会社は給料が低いから、奨学金返済は難しい」と考えていたとしても、ある程度の収入があり、返済能力があると見なされればこの制度は使えないという点は把握しておきましょう。
制度3:返還期限猶予制度
奨学金返済の期限を延ばす制度です。こちらも減額返還制度と同様に、返済額が減る制度ではありません。しかし3つの制度のなかでは、もっとも利用できる可能性が高い制度といえるでしょう。
たとえば以下のような事情があるときに、猶予が認められる可能性が高くなります。
- 災害
- 傷病
- 経済困難
- 失業
- 生活保護受給中など
所定の願出用紙(場合によっては証明書の添付が必要)に必要事項を記入して提出します。返済猶予の延長期間は最大10年間です。
返還期限猶予制度の審査にあたっては、以下のような収入・所得の目安があります。
- 年間収入金額:300万円以下(給与所得のみの場合)
- 年間所得金額:200万円以下(給与以外の所得がある場合)
「会社が倒産した・リストラに遭った」などはもちろん「大学を中退したが就職先が決まっていない」など、大学中退者の事情を考慮してもらえる可能性が高い制度といえます。大学中退後、返済が難しそうな時期はそのまま放置せず、返還期限猶予制度の手続きをしておいたほうがよいでしょう。
大学中退後に大学進学を考えている人は奨学金継続ができないことも
大学中退後に別の大学に再入学する場合、同じ奨学金をそのまま継続できない可能性があります。なぜならば、基本的には大学中退の時点で、奨学金を停止する必要があるためです。
ただし、中退後に別の大学に編入する場合は、奨学金を継続できる可能性があります。また、編入ではなく再入学をしても、再度申請して審査に通れば、奨学金を借りられるようになる可能性もあります。
中退後に別の大学へ行くことを考えている人、中退してから再び大学で学びたいと考えはじめた人は、奨学金の扱いがどうなるのかについて、事前に必ず確認しておきましょう。
新たに奨学金を借りる方法
独立行政法人日本学生支援機構「転学・編入学」を見てみると、中退後の編入は「編入学の1」という扱いになり、中退前の大学と編入先の大学のそれぞれの学校両方の学校長が認めれば、奨学金の継続が可能になるという記載があります。
具体的には、以下の流れで手続きをする必要があります。
- 在学していた学校の担当者に連絡し「転学奨学金継続願」または「編入学奨学金継続願(編入学の1)」を受け取る
- 必要事項を記入し、今まで在学していた学校へ提出する。※編入後3か月以内に提出
- 「転学奨学金継続願」または「編入学奨学金継続願」が承認された後、編入先の学校から「承認書」を受け取る
中退前の大学で借りていた奨学金の種類によって、以下のように扱いが異なります。
- 第一種奨学金を借りていた場合…同一年次を重複履修した場合、転学・編入学後の標準修業年限のうち、すでに貸与された期間を除いた期間が継続貸与期間となる。継続年次へ進級した場合は、転学・編入学後の標準修業年限まで貸与が継続される
- 第二種奨学金を借りていた場合…転学・編入学後の卒業予定期まで貸与の継続が可能となる
また、中退後に別の大学に再入学する場合、返済が必要な「貸与型の奨学金」ではなく、原則的に入学金・授業料の返済が不要の給付型奨学金の対象になれる可能性もあります。
実際に、独立行政法人日本学生支援機構「よくあるご質問・給付奨学金(返済不要)」の「一度大学に入学して退学し、別の大学に再入学を予定している場合、給付奨学金に申し込めるのか」という質問に対し「申込時点で高校卒業2年以内で、退学した大学で機構の給付奨学金を受給していない場合、卒業した高校に申し込みができる」という回答があります。
大学中退後に奨学金返済ができなかった人の末路
大学中退後に奨学金の返済ができず、その状態がずっと続いてしまった場合、以下のような末路が待っていることもあり得ます。問題が大きくなってしまう前に、早めに対処することをおすすめします。
末路1:大学中退後の奨学金の返済ができず自己破産
奨学金返済がどうしてもできない場合、一旦、保証機関が代わりに支払う(機関保証)か、連帯保証人・保証人が代わりに返済義務を負う(人的保証)のいずれかになることが一般的です。奨学金の連帯保証人・保証人は、親や親族などがなるケースが比較的多くなっています。
しかし、奨学金を借りていた本人が自己破産した場合、または本人と連帯保証人・保証人が自己破産した場合には、奨学金の返済義務がなくなることがあります。
独立行政法人日本学生支援機構「奨学金返還者の自己破産に関する報道について」によると、平成24年度から平成28年度において、自己破産したため奨学金の債務・保証債務が免責(支払い義務がなくなった)となった件数は下記の通りです。
- 返還者本人:8,108件(うち保証機関分が475件)
- 連帯保証人:5,499件
- 保証人:1,731件
自己破産をすると奨学金の返済義務は基本的になくなるため、一見、メリットだらけのように見えるかもしれません。しかし、自己破産は裁判によって認められることが必要で、お金がないからといって誰もが簡単に自己破産できるわけではありません。
自己破産をすると、後述する「ブラックリスト」に事故情報として登録されるほか、99万円を超える現金および20万円を超える価値のあるものが処分されるため、貯金や、生活の必需品以外の所有物などを失うリスクがあります。
自己破産は最後の手段です。「いざとなれば自己破産があるから、奨学金は払わなくていい」という考え方は非常にリスクを伴います。
末路2:大学中退後に返済ができず個人信用機関のブラックリストに載る
「独立行政法人日本学生支援機構「個人信用情報機関への個人情報・個人信用情報の登録」によると、以下のような記載があります。
- 延滞3か月以上で、個人信用情報機関に個人情報が登録される
- 新たに返還を開始する場合、返還開始後6か月経過時点で延滞3か月以上の場合に登録される
- 登録の判定は、返還開始から6か月が経過してから毎月行われる
個人信用情報機関に登録される個人情報は、氏名、住所、生年月日、電話番号、勤務先奨学金の貸与額、最終返還期日、返還状況(延滞、完済など)です。
個人信用情報機関に個人信用情報機関に延滞者として登録されると「経済的信用が低い」と判断されてしまうことがあるため要注意です。延滞が長期に渡ればもちろんその情報も記載されるため、いわゆる「ブラックリスト」に載るリスクもあり、そうなると以下のような事態になる可能性があります。
- クレジットカードの審査に落ちる、または利用を止められる
- 家や車のローンを組めない
一度情報が登録されると、たとえ延滞を解消したとしても、奨学金返還完了の5年後までその情報は残ります。
「うっかり返済を忘れてしまった」「延滞してしまったことはあるが、返済の意思はある」程度ではほぼ影響がありませんが、一度も返済していない、必要な手続きをせず何年も延滞しているなどの場合は、ブラックリストに載ってしまう可能性が高まります。
まとめ
大学中退後には奨学金の返済が始まりますが、中退後に就職が決まっていない場合は十分な収入がなく、しばらく返済できないこともあり得ます。奨学金を返済できないからといって放置していても免除されるわけではないため、結局、利子などがついてさらに返済が大変になってしまいます。大学中退後、すぐに奨学金を返済できないことがわかっている人は、今回ご紹介したような減額や猶予などの制度を活用しましょう。
大学中退後にスムーズに奨学金を返済するためには、正社員就職をして安定した収入を得られるようにするのがおすすめです。弊社ジェイックでは、大学中退者の方を対象とした就職支援サービスを実施しています。専任のキャリアアドバイザーがアドバイスいたしますので、お気軽にご連絡ください。
「大学中退 奨学金」によくある質問
「大学を中退してから奨学金返済を長引かせる人の割合と理由」で触れていますが、大学中退後の奨学金返済が遅れてしまう理由としてもっとも多いのが、収入が少ないという理由です。また、返済が遅れて利子がつき、さらに返済が難しくなるという悪循環に陥ってしまうケースも見られます。
大学中退後は、所定の手続きをすることで奨学金の受け取りを停止できます。手続きをしないままでいると、返金などの手間がかかりややこしくなってしまうため、要注意です。詳しくは「大学中退をした際の奨学金受け取りを停止させる方法」をご覧ください。
こんな方におすすめ!
- 学歴に自信がないから就職できるか不安
- 就職について、誰に相談したら良いか分からない
- 中退しようかどうかを迷っている
- 学歴に自信がないから就職できるか不安
- 就職について、誰に相談したら良いか分からない
- 中退しようかどうかを迷っている