ハローワークでお金を受け取ることができると言われると意外に思われる方もいるかもしれません。
「仕事を辞めたので貯金がなくなってしまった」「手に職を付けたいけれど、スクールなどに通うお金がない」など、失業するとお金の悩みに直面してしまう人は少なくありません。
お金が足りないと生活に余裕がなくなるうえ、精神的にも負担がかかり就職活動に集中できなくなってしまいます。このようなときに検討したいのが、ハローワークでお金をもらう方法です。
ハローワークは仕事を探すところというイメージがありますが、実はさまざまな支援策を用意しているありがたい機関です。例えば、職業訓練手当をもらえたり、生活費を貸してくれたりします。
この記事では、ハローワークの公的給付金制度と公的融資制度を、制度ごとの受給条件や受給までの手順を含めて紹介しています。制度を利用するときの注意点や、スムーズにお金を受け取るポイントも解説しているので、お金に困ったときにハローワークを活用できるようになるでしょう。
- ハローワークでお金を受け取る方法は「給付金をもらう」「公的融資制度で借りる」
- ハローワークでもらえるお金は「失業手当」「職業訓練受講給付金」など9種類ある
- ハローワークでお金を借りる方法は「求職者支援資金融資」など3種類ある
- 「ハローワークでお金を調達する際の4つのポイント」も知っておこう
この記事の目次
ハローワークでお金を調達する2つの形式
ハローワークでお金を調達するには、給付金や手当という形でお金をもらう方法と、公的融資制度を利用してお金を借りる方法があります。2つの方法を簡単に紹介します。
形式1. お金をもらう
雇用保険に加入していれば、会社を辞めた際や病気で働けなくなったときなどに給付金を受けられます。また、再就職のための応援金などの形で手当を受け取れる制度もあります。
給付金や手当を受け取るメリットは、返済の義務がないことです。生活に余裕が生まれるので、就職活動に集中しやすくなるでしょう。
一方、多くの制度は生活状態に関係なく受給要件が決まっているので、受け取れない場合もあります。条件を一つでも満たさないと給付金が出ない制度もあるので、できれば離職前にチェックしておきたいところです。
形式2. お金を借りる
もう一つの方法は、ハローワークまたはハローワークと関連した社会福祉団体からお金を借りる方法です。給付金や手当と異なり、経済状態によって融資を受けやすくなる制度もあります。
お金を借りるメリットは、給付金よりも高額の融資を受けられる場合があることです。例えば、賃貸物件に契約するためのお金や、子どもを大学に進学させる教育資金をまとめて受け取りたいようなときに活用できます。
一方、デメリットは、信用があまりに低いと借りられないか、少額融資の制度しか利用できないことです。例えば、住所がないとお金を借りられない制度や、金融機関としての審査が設けられている制度もあります。
なお、生活困窮者に対する貸付は、上限額が少額の傾向があります。融資の条件が緩く、無利子または低金利で借りられる代わりに、銀行や消費者金融などより借りられる額が少なくなると考えておきましょう。
ハローワークでお金をもらう方法
ハローワークでは、失業した人や再就職のための活動をしている人に向けて、さまざまな給付金制度を設けています。正当な権利なので、上手に活用してお金を受け取りましょう。
たくさんの制度があるため、どれを選んだらよいのか迷った場合は、ハローワークの担当者に相談することをおすすめします。
方法1. 失業保険の基本手当
まずは失業保険の基本手当について紹介します。
失業保険の基本手当とは
失業保険または失業手当、失業給付金などと呼ばれているものは、正式には「雇用保険の基本手当」といいます。雇用保険の基本手当は、失業した人が安定した生活を送りながら、再就職のための活動を続けるためにもらえるお金です。
1日あたりの給付金は、賃金日額の平均(離職以前6ヶ月の賃金の合計÷180)の5~8割です。受給期間は、会社を辞めた理由や雇用保険の加入期間などの条件によって、90日から330日と幅があります。詳しくは、本見出し末の参考サイトを確認してください。
受給要件
雇用保険の基本手当の受給要件は以下のとおりです。
- 雇用保険の被保険者期間が12ヶ月以上ある(倒産や解雇の場合、6ヶ月)
- 再就職のための意欲を持っている(病気や負傷、出産、育児などですぐに働けない場合は、受給期間を先に延ばせます)
したがって、以下のような人は失業保険を受け取れないので注意しましょう。
- 家事、学業、自営業の準備に専念する人
- 次の就職が決まっている人
- 就職している人
- アルバイト、パートで働いている人(週 20 時間以上働いている場合)
- 同じ職場で離職と就職を繰り返している人
アルバイトやパートは、意識せずに不正受給になってしまう場合があるので、特に注意しましょう。不正が見つかると支給停止や一括返還などの措置を取られることがあります。
受給プロセス
- 必要書類(離職票、マイナンバーなどの本人確認書)、預金通帳、写真2枚を準備
- 住んでいる地域を管轄しているハローワークに行く
- 求職申込して受給資格を得る
- 雇用保険説明会に出席
- 待機期間や給付制限期間の後に、失業認定完了
- 基本手当の給付開始(着金:会社都合退職の場合、受給資格を得てから7日後、自己都合の場合7日+2ヶ月後)
方法2. 職業訓練受講給付金
続いて職業訓練受講給付金について紹介します。
職業訓練受講給付金とは
職業訓練受講給付金は、雇用保険を受けられない人が対象です。職業訓練によって知識や技能を付けて再就職を目指したい人のための給付金です。
要件を満たした民間機関で職業訓練を受けると、月10万円と通所手当を受け取れ、国が実施している「求職者支援訓練」と「公共職業訓練」も無料で受けられます。受給対象期間は3ヶ月コースと6ヶ月コースのいずれかの訓練期間中です。
受給要件
職業訓練受講給付金の受給要件は以下のとおりです。
- 雇用保険被保険者や雇用保険受給資格者でない人
- ハローワークに求職申込をした人
- ハローワークが支援の必要性を認めた人
- 本人の収入が月8万円以下
- 世帯全体の収入が25万円以下、世帯全体の金融資産が300万円以下
- すべての訓練実施日に出席(やむをえない事情がある場合は8割以上出席)
受給プロセス
- 住んでいる地域を管轄しているハローワークに行く
- 求職申込み
- 求職者支援制度の説明を受けた後、受給を希望することを申し出る
- 職業相談を受けて訓練コースを選択
- 訓練の受講申込み
- 訓練の受講開始
- 指定された日にハローワークに行って支給申請
- 受給開始(着金:支給申請後7~10日後)
方法3. 住居確保給付金
続いて住居確保給付金について紹介します。
住居確保給付金とは
住居確保給付金とは、主たる生計維持者(世帯の生活費を主に負担している人)の収入が減って、家賃が払えない場合にもらえる給付金です。失業・廃業した人以外にも、就業中に収入が減って家賃を支払えなくなった場合に活用できます。
給付金の額は、原則として家賃の3ヶ月分です。ただし、延長が2回まで認められるので、合計すると家賃9ヶ月分(※)の給付を受けられます。なお、支給額の上限は市区町村によって違うので、特に家賃が高い場合は、ホームページなどで確認しておきましょう。
受給要件
住居確保給付金のの主な受給要件は以下のとおりです。
- 離職・廃業から2年以内
- ハローワークへ求職を申込みしており、働く意欲がある
- 市町村民税の均等割が、非課税となる額の12分の1(基準額)と家賃の合計額以内
- 世帯の預貯金額が基準額×6ヶ月または100万円を超えていない
住居確保給付金の要件は上記のようにやや複雑です。不明な点がある場合は、ハローワークに相談して、受給できるか確認することをおすすめします。
受給プロセス
- 住んでいる地域を管轄しているハローワークに行く
- 求職申込み
- 生活困窮者自立相談支援機関に相談して、書類を申請(最寄りの窓口は以下の厚生労働省のサイトにある「自立相談支援機関窓口情報」のファイルをご覧ください)
- 生活困窮者自立相談支援機関が承認して、市区町村に送付
- 市区町村が承認
- 市区町村から直接、大家や賃貸業者に家賃を支払い(着金:自立相談支援機関と市区町村の審査通過後)
方法4. 技能習得手当
続いて技能習得手当について紹介します。
技能習得手当とは
技能習得手当とは、失業保険(雇用保険)の受給者が公共職業訓練などを受けて、早期に再就職することを支援する給付金です。技能習得手当は失業保険の基本手当とは別に支給されます。
技能習得手当は、以下のように2つの手当に分けられます。
- 受講手当:公共職業安定所長の指示した公共職業訓練などを受けた場合に日額500円、上限2万円まで受け取れる手当
- 通所手当:公共職業訓練などに通う交通費の実費、上限4万2,500円
受給要件
技能習得手当の受給要件は失業保険(雇用保険)を受けている人です。
技能習得手当は、先に紹介した職業訓練受講給付金と似ているので、混同しがちです。おおまかには、技能習得手当は雇用保険を受けられる人向け、職業訓練受講給付金は雇用保険を受けられない人向けと区別しておきましょう。
受給プロセス
- ハローワークで失業保険(雇用保険)の手続きをして、受給資格者証を入手する
- ハローワークの「公共職業訓練等受講届」と「公共職業訓練等通所届」に受給資格者証を添えて提出する
- 失業認定の日に、ハローワークで公共職業訓練等受講証明書に受給資格者証を添えて提出
- 受給(着金:雇用保険支給日に前月分の手当を支給)
参考:基本手当について|ハローワーク インターネットサービス(「技能習得手当について」を参照)
方法5. 寄宿手当
続いて寄宿手当について紹介します。
寄宿手当とは
寄宿手当とは、公共職業訓練などを受けるために、ホテルや下宿などを利用した場合にもらえる手当です。寄宿手当の月額は1万700円です。ただし、一時的に自宅に帰った日や支給対象とならない日がある場合は、日割りで減額されます。
受給要件
寄宿手当の受給要件は以下のとおりです。
- 失業保険(雇用保険)を受けている人
- 公共職業訓練などを受けた人
受給プロセス
- ハローワークで失業保険(雇用保険)の手続きをして、受給資格者証を入手する
- ハローワークにて、「公共職業訓練等受講届」と「公共職業訓練等通所届」に受給資格者証を添えて提出する
- 失業認定の日に、ハローワークで公共職業訓練等受講証明書に受給資格者証を添えて提出
- 受給(着金:雇用保険支給日に前月分の手当を支給)
なお、受給プロセスは技能習得手当を受けるときと同じなので、一緒に済ませられます。
参考:基本手当について|ハローワーク インターネットサービス(「寄宿手当について」を参照)
方法6. 傷病手当
続いて傷病手当について紹介します。
傷病手当とは
傷病手当とは、失業後にハローワークで求職申込をした後に、けがや病気で15日間以上就職活動ができなくなった際に受け取れる手当です。
傷病手当は基本手当と同額です。支給期間は特になく、治療に要した日数単位で、通算して1年6ヶ月まで受け取れます。
注意が必要なのは、失業保険の基本手当と傷病手当は同時に受け取れないことです。その理由は、傷病手当を受け取ることは働く意思や能力がないことを本人が認めていることになり、失業保険の基本手当の支給要件に合わなくなってしまうからです。
受給要件
傷病手当の受給要件は以下のとおりです。
- 失業保険(雇用保険)を受けている人
- ハローワークで求職申込済み
- けがや病気で15日間以上就職活動ができなくなった人
受給プロセス
- けがや病気になった後の最初の雇用保険支給日までに、ハローワークに「傷病手当支給申請書」を提出
- 傷病が認定される
- 受給(着金:雇用保険支給日に前月分の手当を支給)
「傷病手当支給申請書」の提出は郵送でも受け付けています。また、代理人がハローワークで手続きすることもできます。
参考:基本手当について|ハローワーク インターネットサービス(「傷病手当について」を参照)
方法7. 高年齢求職者給付金
続いて高年齢求職者給付金について紹介します。
高年齢求職者給付金とは
高年齢求職者給付金とは、高年齢被保険者の人(65歳以上の雇用保険の加入者)が失業しているときに受け取れる給付金です。高年齢求職者給付金の日額は、失業保険と同じく、賃金日額の平均(離職以前6ヶ月の賃金の合計÷180)の5~8割です。
ただし、給付期間は被保険者期間が1年未満の場合は最大30日、1年以上の場合は最大50日分となっており、通常の失業保険より短いことに注意しましょう。
高年齢求職者給付金は、2017年の雇用保険法の改正で、65歳以上の人も新規に雇用保険に加入できるようになったためにできた制度です。例えば、定年退職した後に働き続けていた人が失業した場合に、高年齢求職者給付金を受け取れます。
受給要件
高年齢求職者給付金の受給要件は、基本的には失業保険(雇用保険)と同じですが、細かな違いがあることに注意しておきましょう。
- 離職の日の1年以内に被保険者期間が通算して6ヶ月以上ある
- 再就職のための意欲を持っている
- 就職できる能力(健康状態や家庭環境など)がある
- 離職から1年以内の人
受給プロセス
参考:離職されたみなさまへ <高年齢求職者給付金のご案内>|厚生労働省
方法8. 特例一時金
続いて特例一時金について紹介します。
特例一時金とは
特例一時金とは、短期特例被保険者の人が失業しているときに受け取れる給付金です。短期特例被保険者とは、失業手当の条件を満たせない短期労働者のことで、例えば特定の季節や繁忙期だけ雇用された人などが対象になります。
特例一時金の日額は、失業手当と同じく賃金日額の平均(離職以前6ヶ月の賃金の合計÷180)の5~8割です。受給期間は最大40日間です。
受給要件
特例一時金の受給要件は以下のとおりです。
- 離職日前の1年間で、11日以上働いた月が6ヶ月以上ある
- 再就職の意欲がある
受給プロセス
- 必要書類(離職票、マイナンバーなどの本人確認書)、預金通帳またはキャッシュカード、写真1枚を準備
- 住んでいる地域を管轄しているハローワークに行く
- 求職申込して受給資格を得る
- 待機期間や給付制限期間の後に、失業認定完了
- 基本手当の給付開始(着金:会社都合退職の場合、受給資格を得てから7日後、自己都合の場合7日+2ヶ月後)
参考:離職されたみなさまへ <特例一時金のご案内>|厚生労働省
方法9. 日雇労働求職者給付金
続いて日雇労働求職者給付金について紹介します。
日雇労働求職者給付金とは
日雇労働求職者給付金とは、日雇派遣で働く人が失業した場合に受け取れる給付金です。ここでの失業とは、「派遣が予定されていたものの、何らかの理由で派遣されなかった」場合です。
受給要件
日雇労働求職者給付金の受給要件は以下のとおりです。
- 30日以内の短期派遣労働をしている人
- 雇用期間に定めのない仕事(常用勤務)に就きたいと思っている人
受給プロセス
- 住んでいる地域を管轄するハローワーク行く
- 「雇用保険日雇労働被保険者資格取得届」をもらい必要事項を記入
- 住民票の写しなどの住所を確認できる書類と、派遣会社から発行してもらっている「日雇労働被保険者派遣登録証明書」をハローワークに提出
- ハローワークから日雇手帳が交付される
- 派遣会社に日雇手帳を提出
- 賃金を受け取るときに、雇用保険印紙を貼り付けてもらう
- 失業した日の月と前月、前々月で合わせて雇用保険印紙が26枚以上(=26日以上働いている)になると給付金の受給資格を得られる
- ハローワークに行く(手続きの期限はハローワークによって異なります)
- 日雇手帳、労働者派遣契約不成立証明書、失業の認定(及び不就労日)に関する届書を提出
- 受給
参考:日雇派遣労働者の方へ~日雇労働求職者給付金について~|厚生労働省
ハローワークでお金を借りる方法
ハローワークや社会福祉からお金を借りる方法もあります。給付金だけでは足りない場合や、給付が始まるまでのお金がないなどのときに活用しましょう。
方法1. 求職者支援資金融資
まずは求職者支援資金融資について紹介します。
求職者支援資金融資とは
求職者支援資金融資とは、先に解説した職業訓練受講給付金を受けても生活費が不足しそうな場合に利用できる制度です。貸付利率は年3.0% (信用保証料0.5%を含む)で、貸付額の上限は以下のとおりです。
- 配偶者なし:5万円×受講予定訓練月数
- 配偶者あり:10万円×受講予定訓練月数
なお、職業訓練中にお金が足りなくなってしまった場合も、求職者支援資金融資を活用できます。
利用要件
求職者支援資金融資を利用できるのは職業訓練受講給付金の支給が決定した人です。
受給プロセス
- ハローワークで貸付要件の確認などの手続きを行う
- 求職者支援資金融資要件確認書の交付を受ける
- ハローワークが指定する金融機関(労働金庫:ろうきん)で貸付を申し込む
- 振込口座の労働金庫の口座を開設する(口座を持っていない場合のみ)
- 融資を受ける(着金:労働金庫に申し込んでから最短で1週間ほど)
労働金庫に申し込むと、労働金庫は金融機関として審査を行います。そのため、返済が難しいと判断された場合は、貸付を受けられない可能性があることも想定しておきましょう。
方法2. 生活福祉資金貸付制度
続いて生活福祉資金貸付制度について紹介します。
生活福祉資金貸付制度とは
生活福祉資金貸付制度は収入が少なく生活が苦しい人や、高齢者、障害者などの生活をサポートする目的でつくられた、都道府県の社会福祉協議会の制度です。失業して一時的に生活資金に困っている人も融資を受けられます。
貸付利子は連帯保証人がいる場合は無利子、いない場合は年1.5%です。融資してもらえるお金は、下の例のように資金の種類によって異なります。
- 生活支援費:原則3ヶ月、月20万円まで
- 住宅入居費:40万円まで
- 一時生活再建費(技能習得や債務整理など):60万円まで
生活福祉資金貸付制度では相談支援も実施しているので活用しましょう。経済状況や就業状況などを伝えて、適切な種類で融資を受けることをおすすめします。
利用要件
以下のいずれかの条件を満たせば、生活福祉資金貸付制度で融資を受けられる可能性があります。
- 金融機関からお金を借りるのが難しい人(低所得者世帯)
- 障害者手帳を持っている人(障害者世帯)
- 65歳以上(高齢者)
なお、2021年12月現在、コロナ禍の影響への対策から、低所得者世帯以外にも貸付が受けられるように条件を特別に緩和しています。最新情報は厚生労働省のホームページなどで確認してください。
受給プロセス
- ハローワークに求職登録する
- 市区町村の社会福祉協議会の総合支援資金の相談・手続きの窓口に行く
- 貸付けの申請をする
- 住宅入居費の場合は家主、不動産業者に振り込まれ、その他の貸付金は口座に振り込まれる(着金:貸付けの申請から最短でも1ヶ月後程度)
方法3. 臨時特例つなぎ資金貸付制度
続いて臨時特例つなぎ資金貸付制度について紹介します。
臨時特例つなぎ資金貸付制度とは
臨時特例つなぎ資金貸付制度とは、失業して住居がない人に対して、給付金や貸付が出るまでのつなぎとして、当面の生活資金を融資する制度です。貸付上限の10万円以内で無利子で借りられます。
返済も給付金や貸付が出るまで待ってもらえるので安心です。また、返済が始まった後も、1年間の月賦払いができるため、月々8,333円で返済していけます。
受給要件
臨時特例つなぎ資金貸付制度の利用要件は以下のとおりです。
- 離職者を支援する公的給付制度(失業手当や住居確保給付金など)、または公的融資制度(求職者支援資金融資や求職者支援資金融資など)申請を受理されている人
- 給付金や貸付が出るまで生活が困窮すると予想される人
- 本人名義の金融機関の口座を持っている
受給プロセス
- 地域の市町村社会福祉協議会の窓口に行く
- 窓口で相談した後、借入申込書を受け取る
- 公的給付制度または公的融資制度の申請を受理されたことを証明する書類、預金通帳の写し、借用書を用意して手続きする
- 融資を受ける(着金:手続きから1週間程度)
ハローワークでお金を借りる際の注意点
ここでは、ハローワークでお金を借りる前にチェックしておきたい注意点を3つ解説します。
注意点1. 借りたお金は返す必要がある
当然のことですが、借りたお金は返済する必要があります。ハローワークや社会福祉団体の融資は審査が比較的緩い面がありますが、だからといって、返済計画を立てずにお金を借りるのはやめましょう。
例えば、求職者支援資金融資制度では返済の免除はありません。さらに遅延した元金に対しては、年14.5%の遅延利息の支払い義務が発生します。また、臨時特例つなぎ資金のように、公的給付や公的融資が却下された時点で、一括返済を求められるものもあるので注意が必要です。
逆に返済計画をしっかり立てておけば、銀行や消費者金融からお金を借りるよりも、よい条件で貸付を受けられます。例えば、無利子の貸付があったり、一定期間返済が猶予されたりするものもあるので、生活や就職活動を軌道に乗せやすくなるでしょう。
注意点2. お金を借りる際は信用力が必要
公的融資制度は金融機関よりも条件が厳しくないのは確かですが、それでも最低限の信用力が必要です。例えば、早期離職を繰り返している場合は、本当に働く気があるのか疑われて審査に落ちる場合もあります。
ほとんどの公的融資制度は、ハローワークで再就職の意欲と能力があると認められていることが前提になっています。そのため、単にお金を借りたいだけだと判断されると融資を受けられません。
離職後に公的融資制度を利用する可能性がある場合は、後で困らないように、ハローワークや貸付機関から疑われる履歴がないか、改めて振り返っておきましょう。
注意点3. 多重債務になる前に相談を
公的融資制度の返済を、別の金融機関からの借金で返す状態になる前に、ハローワークに相談しましょう。実は、このような多重債務になってしまう人はめずらしくないため、ハローワークでは相談を受け付けているからです。
場所よって違うので一概には言えませんが、例えば、「ハローワークやまがた」では多重債務専門の担当者がいて、対応してくれます。他にも、借金返済や住宅ローンなど法律絡みの問題について、弁護士から無料でアドバイスを受けられるハローワークもあります。
相談するための条件は、借金が原因で就職活動が上手くいっていないことだけです。一人で悩まず、まずはハローワークに相談してみましょう。
ハローワークでお金を調達する際のポイント
ハローワークでの手続きは、できるだけスムーズに進めたいものです。ここでは、相談のコツや準備しておく物などを解説します。
ポイント1. 窓口で公的制度を紹介してもらうことも可能
ハローワークでは貸付を受け付けている特別な窓口はなく、通常の方法で職員に相談すれば、公的制度を紹介してもらえます。公的給付金や公的融資制度の一般的な知識はどの職員も持っているので相談に乗ってもらえますし、必要に応じて専門のスタッフに引き継いでもらえます。
病気やケガで長期間、就職活動ができず、生活も苦しくなってしまうことが予想される場合は、他の役所への連絡もしてくれます。例えば、生活保護の受給をしたほうがいい場合は、福祉事務所に取り次いでもらえます。
行政のセーフティネットは重複利用できないことが多いので、自分一人で判断して選んでしまうと、条件が悪くなってしまいかねません。そのため、頼れる人が近くにいないなら、まずはハローワーク経由で相談に乗ってもらうことをおすすめします。
ポイント2. マイナンバーカードがあるとスムーズ
公的給付金や公的融資制度の手続きでは、必ず本人確認があるので、マイナンバーカードを持っているとスムーズに進みます。マイナンバーカードがなくても手続きはできますが、何かと面倒です。
例えば、雇用保険でマイナンバーカードがないと、代わりに以下の2点が必要です。
- マイナンバー通知カードまたはマイナンバーが記載されている住民票
- 運転免許証や健康保険証、年金手帳などの本人確認書類
マイナンバーカードがあれば、1枚で番号確認と本人確認が済みます。まだ持っていない人は時間があるときに作っておいてはいかがでしょうか。
ポイント3. 申込から着金までは時間がかかる
公的給付金や公的貸付は、着金まで早くても1週間で、1ヶ月から3ヶ月かかってしまうことも一般的です。申込したからといって、すぐにお金が手に入るわけではないので、期間に余裕を持って早めに行動を起こす必要があります。
また、意外に多いのが、印鑑や本人確認書を持っておらず出直しになり、無駄な時間を使ってしまうケースです。その場で書類の訂正や新たな書類の提出が必要になることもあるので、ハローワークに行く際は、常に持っていくことをおすすめします。
ポイント4. 経済状況や就活状況は正直に申告
ハローワークにうその経済状況や就活状況を伝えると、後でペナルティが発生する恐れがあります。例えば、就職先が決まっているのに、失業保険を受け取っているのがバレれば、給付が止まるだけでなく、これまでの給付を一括返還することが必要です。
もし不正受給して刑事告発されれば、3倍の額を返還しなければならなくなるので、これによって生活基盤を失いかねません。例えば、100万円を不正受給した場合は、300万円と延滞金を支払うことになります。
経済状況や就活状況は正直に申告すれば、ハローワークの職員はベストの方法を探してくれます。自分のためにも、ありのままを伝えましょう。
まとめ
以上、ハローワークの公的給付金制度と公的融資制度、制度ごとの受給条件や受給までの手順などをご紹介しました。
ハローワークでは失業保険をはじめとして、職業訓練受講給付金や住居確保給付金など、さまざまな給付金や手当を支給しています。また、求職者支援資金融資のように再就職を支援するための融資制度もあります。
自分に合った制度を利用すれば、生活を安定させながら、就職先を探しやすくなるでしょう。ただし、制度自体が多いうえに受給要件が複雑なものもあります。そのため、まずはハローワークの職員に相談してみるのがおすすめです。
自身の経済状況や就活状況を正直に伝えれば、ベストな方法を教えてくれるでしょう。
こんな方におすすめ!
- 自分に合った仕事が見つかるか不安
- ハローワークのサービスに物足りなさを感じている
- ハローワークしか利用したことがない
- 自分に合った仕事が見つかるか不安
- ハローワークのサービスに物足りなさを感じている
- ハローワークしか利用したことがない