技術者の女性はどのくらいいるの?専門性やスキルが身につくイメージだけど、実際はどうなの?そんな疑問を持っている女性も多いのではないでしょうか。
この記事では、技術職は女性が働きやすい仕事なのか、技術者の現状について解説します。
出産・子育てなどのライフイベントに伴って働き方も柔軟に変化できれば、長期的なキャリアプランが描けます。そんな視点を大切にしながら仕事を選び、理想のライフスタイルを実現させましょう。
この記事の目次
女性技術者の割合-IT業界の将来性も解説-
まず、技術職における女性の割合についてのデータを見ていきましょう。
世界的に女性技術者の割合は低い
技術職における男女比は、世界的に見ても男性が多数を占めています。
下のグラフは内閣府 男女共同参画局が作成した『男女共同参画白書 平成26年版』における『研究者に占める女性割合の国際比較』です。ほとんどの国で研究者(技術者、大学教授など)に占める女性の割合は50%に達していません。
ただ、EU加盟国には40%を超える割合に達している国も数多くあります。他の主要国の中ではロシアが41.2%、米国が33.6%、韓国が17.3%、日本は14.4%となっています。
企業に所属する女性研究者となると、さらに比率が下がります。
大学等(短期大学、高等専門学校を含む)に所属する女性研究者は25%いるのに対し、企業にはわずか8.1%しか所属していません。
引用:内閣府 男女共同参画局/研究者に占める女性割合の国際比較
少しずつではありますが、日本の研究者全体に占める女性の割合も増加しつつあります。2019年には16.6%となり、過去最高を更新しました。ただ、主要国と比較すると相変わらず科学技術分野で働く女性の数はとても少ないのが現状です。
理系分野における女性の割合も低い
OECDは加盟国を対象に、大学などの高等教育機関に2019年に入学した学生のうち、自然科学や工学など理系分野における女性の割合をまとめました。
※OECD(経済協力開発機構):ヨーロッパ諸国を中心に日・米を含め38ヶ国の先進国が加盟する国際機関
引用:SankeiBiz/大学入学者の理系女性割合、日本が最下位 OECD調査「男女で著しい差」
自然科学分野では女性の割合が加盟国の平均で52%だったのに対し、日本は27%と最も低くなりました。65%でトップだったスロバキアの半分以下の水準です。
また、工学分野では加盟国平均は26%ですが、日本は最低の16%で、トップのアイスランドより23ポイント少なくなりました。
OECDは「日本の女性の知識や能力は高い」と強調した上で、「日本では女性の進路に関するイメージの押しつけ(女性は理系に向いていない等の先入観や偏見)が強いことに加え、身近に理系分野で具体的な目標となる女性が少ないことが影響している」と指摘しています。
OECDによるPISA2018(生徒の学習到達度調査)では、日本の高校生の理科と数学の学習能力で男女間に有意の差は認められなかったといいます。小学生の頃は算数が得意だった女子も、中学・高校と進学していくうちに、周囲の友達・先生・親などの言動から「女子は文系」というイメージが刷り込まれる事が多いようです。そして、理系の学校や学部はますます男子の比率が高くなり、理系に進みたいと考えていた女子が進学で二の足を踏むのも無理はありません。
日本が人口減少の中で技術革新を進め持続的に成長していくためには、女性の理系人材(研究者や技術者)を増やすことが急務であり、政府などが進める女性の活躍推進の対策で具体的な成果が問われています。
たとえば、内閣府男女共同参画局では、「理工チャレンジ」略して「リコチャレ」という取り組みを実施。理工系分野が充実している大学や企業など『リコチャレ応援団体』の紹介や、団体が実施するイベント情報の提供、 理工系分野で活躍する女性からのメッセージ紹介などを行っています。
また、IT・STEM分野(科学・技術・工学・数学の教育分野)のジェンダーギャップを解消するため、女子中高生を支援している団体もあります。「Waffle(ワッフル)」は、世界100カ国が参加する女子中高生向けアプリコンテスト「Technovation Girls(テクノベーションガールズ)」の日本パートナーとして活動しています。同コンテストに出場したい女子中高生を募集し、レノボ・ジャパンなどの企業の協力を得て、アプリの設計、製作にチャレンジできるイベントです。
このように日本でも、理系分野における女性の割合を高めるための取り組みが行われているのです。
IT業界は今後より人手不足が加速する
経済産業省の調査(2019年3月)によると、2030年にはIT人材の不足数が最大で約79万人になるという試算が出ています。
引用:経済産業省/IT人材需要に関する調査(みずほ情報総研株式会社)
IT業界で急成長している分野では、特にエンジニア(技術者)不足が見込まれています。
たとえば、ネットワークエンジニアやクラウドエンジニアといったインフラ関連、AI(人工知能)関連や、スマートフォン(iOSエンジニア、Androidエンジニア)関連などが挙げられます。また、セキュリティ関連のような高度な技術を必要とする分野のエンジニアも不足する可能性が高いでしょう。
また、ITエンジニアの求人倍率(求職者1人あたりの求人数)は高く、コロナ禍においても他の職種を大きく上回ります。
こちらのグラフをご覧ください。
IT・通信業界の求人倍率が、突出して高い水準にあります。
2021年7月は全体が2.31であるのに対し、IT・通信業界は6.82と約3倍。いわゆる売り手市場が長く続いており、就職・転職希望者にとって有利な職種です。今回のような社会的な危機に際しても需要が見込まれることから、ITエンジニアは安定性の高い職種とも言えるでしょう。
女性技術者の現実を紹介
次に、女性の技術者が現在どのような状況(働き方、ライフスタイル)にあるのかをご紹介します。
ライフイベントによる働き方の変化
これは技術者に限った話ではありませんが、女性は結婚や出産などのライフイベントにより、それまで通りの働き方ができなくなることがあります。
ただ最近は、ライフイベントを経ても働き続ける意志を持つ女性技術者が増加し、育休後に復職して活躍している人もたくさんいます。働き方改革により時短勤務やフレックス勤務などの制度が以前よりも整ってきています。さらにコロナ禍によってリモートワークの普及が、特にデジタル分野では急速に進んだことも大きく影響しています。
しかしながら、個々の企業によって働き方の柔軟性には差があります。ライフイベントを経ながら働き続ける女性をサポートする制度がある企業か、それが実際に職場で活用されているかどうかは、就職先を選ぶ際の重要なポイントです。
ブランク期間のスキルの遅れ
技術職は、常に新しい技術の知識やスキルの習得が求められます。
そのため、育休取得後に復職した際、他の職種に比べて、ブランクによる知識やスキルの遅れがキャリアに影響する可能性が大きいのです。
復職後にパフォーマンスを上げていくためには、会社が柔軟な働き方を可能にする支援制度や職場の雰囲気づくりを整える必要がありますが、本人も事前準備をしっかり行うことでスキルの遅れや停滞を防ぐことが可能です。
前述した通り、就職する際に時短勤務などの制度が整っている会社を優先して選ぶこと。そして入社後は実績を上げて一定の裁量権を得ることや、職場での人間関係も良好にしておくことで、いざその時が来たら制度を活用しやすい環境を整えることはできます。
また、ある女性技術者は、出産・育休のタイミングでやむなく退職したものの、取引先や同僚からの紹介でフリーランスとして仕事を続け、最新の技術に触れる状況を途切れさせなかったそうです。その後、またフルタイムでの勤務が可能になった時に、多少の苦労はしつつも再就職が叶ったのは、やはり「手に職がある」技術者だったこと、そして最新の技術に少しでもキャッチアップする姿勢が評価されての事でした。
管理職の女性比率の少なさ
2021年7月に帝国データバンクが行った「女性登用に対する企業の意識調査」によれば、女性管理職の割合は平均8.9%でした。政府が目標に掲げている「女性管理職30%以上」を超えている企業は8.6%に留まっています。
また、世界の女性管理職の割合が30~40%であるのに対し、日本は14.8%と非常に低い水準にあります。下のグラフを見ると、就業者の女性割合は世界的に見て遜色はありませんが、管理職に占める女性の割合が著しく低いことがわかります。
そして、技術職に絞ると、女性管理職の割合はさらに低下します。
総務省の調査によれば、建設業は3.2%、製造業は4.6%と、技術系業種における女性管理職の比率が特に低いという結果が出ています。
ただ、情報通信業では9.7%と、技術系の中では比較的高い比率となっています。
引用:総務省 行政評価局/女性活躍の推進に関する政策評価(2019年)
一方で、女性管理職の比率が高い業種としては、医療・福祉業の43.5%、金融・保険業の12.3%があげられます。女性の従業員が多い業種・職種では、おのずと女性管理職の割合も高くなりますが、業種・職種によって管理職における男女比のギャップが見られます。
このギャップを埋めるために、厚生労働省は「ポジティブ・アクション(女性社員の活躍推進)」を企業に呼びかけています。
技術者以外で手に職がつく仕事とは
技術職以外で、専門的なスキルが身に付く仕事にはどんなものがあるでしょうか。特に女性におすすめできる職種を、いくつかご紹介します。
営業職
営業職は、どんな職種にも欠かせないコミュニケーション能力や、観察力・交渉力など、汎用性が高いスキルを磨ける仕事です。業務を通じてこれらの力を向上させられれば、営業職として他の業界へ移行できるだけでなく、他の職種に転職できる可能性も広がります。直接、お客様(法人、個人)に対応する仕事はもちろん、たいていの職種は人に関わりながら進めるものですから、対人折衝スキルはどんな仕事にも有効な能力といえます。
さて、営業職には新規開拓やルート営業などいくつかの種類がありますが、いずれも製品・サービスの提案・受注、顧客へのフォローやサポート、社内外との調整などが主な仕事内容です。
女性におすすめする理由は以下の点からです。
- 求人募集が多く、他の職種に比べて採用されやすい
- 未経験でも応募が可能であることが多い
どんな仕事を選べばいいか分からなかったり、特に目指したい職種が無いという人は、将来的に仕事の選択肢を増やす目的で、営業職からスタートしてみると良いかも知れません。
介護職
医療機関や介護施設、訪問介護などで介護職として働くことも、「手に職をつける」ことに繋がります。
介護福祉士、ケアマネージャー、ホームヘルパーなどの資格を取得すれば、より専門性が高められます。未経験でも就職できる求人が多いので、実際に仕事を始めてみて自分に適しているかを確認してから国家資格の取得を目指すのも良いでしょう。
女性におすすめする理由は以下の点からです。
- 求人募集が多く、他の職種に比べて特に採用されやすい
- 未経験でも応募が可能であることが多い
- 女性が多い職場であり、他職種に比べ管理職になる女性の比率も高い
前出の統計でもご紹介した通り、医療・福祉業は女性の管理職比率が突出して高い業種です。管理職としての責任も生じますが、一方で裁量権も得られるので「女性が働きやすい職場環境」にみずから変えていくことも可能になります。さらに管理職になれば給与も上がります。他業種ではまだまだ男性優位の職場が多い中、女性活躍がいち早く実現している業界で介護職を目指すのは、そういった観点からも良策と言えるでしょう。
システムエンジニア
システムエンジニアは技術職の一種ですが、特に人手が不足し未経験でも募集している企業が多いので、あえてご紹介します。
仕事内容は、情報システムやWebサイト、ソフトウェアなどにおいて、システム設計・開発、テスト、運用などの工程を担当します。
そして、以下が女性におすすめする主な理由です。
- 文系出身者でも採用する企業がある
- 慢性的に人材不足のため、スキルがあれば男女差なく登用される
「ITスキルを習得すること」が、女性のキャリアに与えるメリットは大きいです。
コロナ禍において、給付金やワクチン接種などの手続きで日本のデジタル化の遅れが誰の目にも明らかになりました。遅れが大きい分、今後の社会経済活動のデジタル化はさらに加速されるでしょう。
しかし、前述した経済産業省の調査の通り、2030年IT人材は最大で79万人不足すると試算されており、人材の需要が大きい分野です。今後どの業種でも必要なITスキルを身につけることが、キャリア上のメリットにつながります。
女性が働きやすい会社の見極め方
最後に「女性が働きやすい会社の見極め方」について、いくつかの視点やヒントをご紹介します。
女性が働きやすい会社とは
「女性技術者の現実を紹介」の章でもご紹介しましたが、以下の項目が働きやすさの指標になります。
- 1.産休・育休制度が整っているか
- 2.ブランク後の職場のサポート体制は充実しているか
- 3.スキルアップ講座や助成制度などのしくみがあるか、活用されているか
上記の1と3については、制度やしくみをどのくらいの社員が実際に活用しているか、人数や比率などのデータも確認しましょう。「制度はあるけれど、活用している人はほとんどいない」などの実態がないか、現場の人にヒアリングできればベストです。
また、2については、たとえば「男性社員の育休取得率」がひとつの指標になります。性別による役割の固定意識や、ライフイベントによるブランクに対する企業の姿勢が、より如実にあらわれるポイントだからです。育休を取得する男性社員が多いほど「ブランク当事者の立場」を経験する人が多い職場になり、制度だけではない日々のコミュニケーションやサポートの環境が醸成されている可能性が高いでしょう。
優良企業の見極め方
見極める方法のひとつとして、国の認定資格も参考になります。
- 女性活躍推進企業認定(えるぼし)
- 子育てサポート企業認定(くるみん)
女性活躍推進企業認定(えるぼし):厚生労働省
「えるぼし認定」とは、女性活躍推進法に基づき、一定基準を満たし、女性の活躍促進に関する状況などが優良な企業を認定する制度です。
入社後に仕事をしていく上で、女性が能力を発揮しやすい職場環境であるかという観点から、5つの評価項目が定められていて、その実績を「女性の活躍推進企業データベース」に毎年公表することが必要です。2020年9月末時点で、えるぼし認定は1,134社、より上位のプラチナえるぼし認定は3社が認定を受けています。
こちらのページで、該当する企業の検索ができます。
子育てサポート企業認定(くるみん):厚生労働省
「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定を受けた証です。
次世代育成支援対策推進法に基づき、一般事業主行動計画を策定した企業のうち、計画に定めた目標を達成し、一定の基準を満たした企業は、申請を行うことによって「子育てサポート企業」として、厚生労働大臣の認定(くるみん認定)を受けることができます。
最新の「くるみん認定・プラチナくるみん認定企業」一覧はこちらで確認できます。
引用:くるみん認定及びプラチナくるみん認定企業名都道府県別一覧
エージェントの利用で、優良企業へ就職
「女性が働きやすい会社の見極め方」について、いくつか参考になる指標や認定資格をご紹介しましたが、基準を満たしている企業で募集がないタイミングであったり、応募はしたけれど内定に至らない可能性もあることでしょう。
そこで、見極める方法のひとつとして、女性の就職活動に強いエージェントの利用をおすすめします。
私たちジェイックも女性の就活に強みを持つ就職エージェントです。
弊社には、女性の採用に意欲的な企業からの求人案件が集まっています。そうした採用意欲の高い企業は、入社後の教育体制も充実していることが多いです。また、就活全般の準備(自己分析・企業分析・履歴書や職務経歴書の作成レクチャー・面接対策など)を幅広くサポートしていますし、女性の長期的なキャリアプランづくりに役立つ研修も実施しています。
自分ひとりで、転職サイトなどから求人情報を収集・自己分析・書類や面接の対策・応募までを数か月かけて行うよりも、就活のプロの力をうまく活用すれば、活動に要する期間が格段に短縮されます。たとえばジェイックは、最短の場合2週間で内定獲得に至る方もいます。
あなたの就活に、ジェイックの就職支援サービスをぜひお役立てください。ご相談をお待ちしています。
まとめ
女性の技術職を取り巻く現状や、実際の働き方についてご紹介しました。また、技術職以外で「手に職がつく仕事」や、「女性が働きやすい会社の見極め方」も解説してきました。
以前に比べれば、職業上の性別による役割の固定や、男性ばかりが管理職になる傾向が少しづつではありますが日本でも改善されてきています。ただ、残念ながら日本の歩みは国際レベルで見ればかなりの遅れをとっています。
女性は男性に比べ、出産・子育てなどのライフイベントがキャリアに及ぼす影響が大きくなりがちです。だからこそ、技術職をはじめとする「専門性の高い職種」に就き、ライフイベントを経ても長期的にキャリア形成が可能な状況を、個人のレベルで実現させる戦略をとることをおすすめしたいと考えます。
あなたの理想のキャリアプラン、そしてライフスタイルを実現させていきましょう。
「技術者の女性」に関するよくある質問
男性が多数を占めている技術職ですが、EU加盟国には女性の割合が40%を超える国も数多くあります。日本は16.6%と先進国の中では低水準ですが、少しづつ増加しています。特にIT業界の人手不足は今後も続くため将来性があり、給与水準が高いことも魅力です。
「産休・育休制度が整っているか」「ブランク後の職場のサポート体制は充実しているか」など、いくつかのポイントで女性が働きやすい会社を見極められます。また、国の認定資格もあります。詳しくは本記事をお読みください。
こんな人におすすめ!
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