システムエンジニアとプログラマーは、実は似ているようで異なる仕事です。この記事では、システムエンジニアとプログラマーの仕事内容や年収、将来性などについてそれぞれ解説しつつ、違いを分かりやすくまとめます。エンジニア系の仕事に就きたいと思っている人は、それぞれ違いをしっかり理解しておくようにしましょう。
この記事の目次
システムエンジニアとプログラマーの違い【1.仕事内容】
システムエンジニアとプログラマーの違いについて、5つの項目に分けて解説していきます。それぞれの仕事の解説をした後に、二つの比較をしていきますので、興味のある部分は特に注目して読み進めてみてください。まずは仕事内容について解説します。
システムエンジニアの仕事内容
システムエンジニアは、システム開発において、クライアントからシステムへの要望をヒアリングする「要件定義」や、開発するシステムの仕様を決める「基本設計」、基本設計をさらに細かく定義付けしていく「詳細設計」というフェーズに携わります。
一つのシステムを開発するには、設計→プログラミング(開発作業)→納品→運用・保守という大まかに4つの工程を踏む必要があります。システムエンジニアは、その中でも設計部分に特化して仕事をすることになるため、より幅広い知見を持っている必要があります。
プログラマーの仕事内容
プログラマーは、システムエンジニアが設計した仕様書を元に、プログラミング言語の知識を用いて実際にプログラミング開発を行うのが仕事です。
どれだけプログラミングに関する知識があるかや、仕様書の内容を汲み取ってコードに落とし込む力、物理的な作業効率の速さといったスキルが求められます。また、開発するシステムの規模によっては、開発チームを複数に分け、システムの中の一部分だけのプログラミングを行うこともあります。
そのため、いい言い方をすれば「システム開発の全容を知らなくても、作業だけこなせば仕事はできる」と言えます。しかし、逆を言えばシステム開発にどうやっても部分的にしか携われないため、開発本来のおもしろさややりがいを感じにくい仕事とも言えます。
仕事内容の違い
システムエンジニアとプログラマーの仕事内容をまとめると、以下のようになります。
システムエンジニア | プログラマー | |
クライアントとの折衝 | ◯ | × |
要件定義 | ◯ | × |
基本設計 | ◯ | × |
詳細設計 | ◯ | × |
プログラミング | △(プロジェクトにより参加する場合もある) | ◯ |
テスト | ◯ | △(プロジェクトにより参加する場合もある) |
運用・保守 | × | ◯ |
上記の表は、システム開発のフェーズ順に上から作業をまとめています。
見てわかる通り、設計までの上流部分がシステムエンジニア、プログラミング以降の下流部分がプログラマーの仕事内容として分かれています。従って、「プログラミングスキルを付けて、バリバリコードを書いてシステム開発に貢献していきたい」と考えている場合は、システムエンジニアではなくプログラマーとして就職する必要があります。
反対に、「クライアントが求めているニーズをキャッチして、システム開発で社会貢献をしていきたい」と考えている場合はシステムエンジニアを目指すと良いでしょう。
ただ、これらの仕事内容の違いはあくまでも一般的なものであり、会社によってそれぞれの仕事内容が異なる場合があることを認識しておくのを忘れずに。
例えば、システムエンジニアであっても、開発プロジェクトによっては自分もプログラミング作業を担当する必要があります。「思っていた仕事内容と違う仕事しかできない」と入社後に悩んでしまうことを防ぐためにも、システムエンジニアやプログラマーを目指す場合は、特に求人票の仕事内容欄に注意するようにしてください。
システムエンジニアとプログラマーの違い【2.平均年収】
続いて、システムエンジニアとプログラマーの平均年収の違いについて解説していきます。
システムエンジニアの平均年収
正社員のシステムエンジニアの平均年収は501万円(求人ボックス給料ナビより)です。全職種の平均年収は403万円ですので、平均的な年収よりも100万円程度高いことが分かります。
システムエンジニアが携わるシステム開発は、たった一つのプロジェクトであっても、非常に多額のお金がかかっています。その分の価値発揮が求められることもあり、平均年収が高くなっていると考えられます。
また、求人によっては年収800万円や1,000万円での求人募集も見られることから、提示年収の幅が広いのもシステムエンジニア求人の特徴となっています。
もちろん未経験からのスタートでそれほどまで高額な年収をもらうことはできませんが、システムエンジニアとしてしっかりキャリアと経験を積んでいけば、いずれその年収を稼げるようになっているかもしれません。
プログラマーの平均年収
正社員のプログラマーの平均年収は437万円(求人ボックス給料ナビより)です。
プログラマーは「仕様書に基づいた開発業務のみを行う」という意味で単純作業が多く、プログラミングスキルは必要になるものの、ITエンジニア系職種の中ではやや低めな平均年収となっています。
IT業界に限らず、どれだけビジネスの上流部分に携わっているかで平均年収は変わる傾向にあります。
例えば、ゲームに関わる仕事であれば、ゲームの企画職が上流部分、ゲームを販売する店舗スタッフが下流部分となりますが、平均年収が大きく異なるイメージは多くの人が持てるのではないでしょうか?
つまり、システム開発における下流部分を担当するプログラマーは、どれだけ頑張っても年収に上限があるとも考えられます。
平均年収の違い
システムエンジニアとプログラマーの平均年収をまとめると以下の通りです。
システムエンジニア | プログラマー | 全職種 | |
平均年収 | 501万円 | 437万円 | 403万円 |
システムエンジニアもプログラマーも、全職種のものよりも高い平均年収になっています。
平均年収は属する業界によって左右される傾向にありますので、近年市場規模が伸びているIT業界の平均年収は、どの職種も総じて高めになっていると考えられます。
しかし、システムエンジニアとプログラマーで平均年収を比較してみると、およそ80万円もの差があることが分かります。システム開発における上流部分を担当するシステムエンジニアの方が年収が高いこともあり、プログラマー経験者のキャリアアップ先として、システムエンジニアを希望している人も少なくありません。
システムエンジニアとプログラマーの違い【3.将来性】
ここからは、システムエンジニアとプログラマーの将来性の違いについて解説します。
システムエンジニアの将来性
近年全世界的なIT化が進んでいることもあり、システム開発そのものの需要は伸び続けています。システム開発をする上で、その設計を担う存在は不可欠であることから、システムエンジニアの将来性も非常に高いことが考えられます。
また、従来IT業界を中心にシステム開発が行われていましたが、IoT化の波を受け、あらゆる業界でシステム開発のニーズも増え続けています。現在のシステムエンジニアの数だけでは人材不足を嘆く声も少なくなく、システムエンジニアになれれば中長期的に活躍していくことができるでしょう。
プログラマーの将来性
システム開発の需要は伸び続けていますが、プログラマーの将来性にはやや陰りが見えます。プログラミング開発は、大人数で作業を分担して進めていくため、プログラマー経験者が既に多いという現状があります。
また、プログラミング言語はどんなシステムを作ろうと共通のため、システム開発ニーズのある業界が増えたところで、作業が増えるだけということになります。加えて、ノーコード(プログラミング言語によるコーディングがいらない)で簡単なプログラミングが行えるシステムがリリースされたり、AI技術の発達による自動プログラミングの研究が進んでいたりなど、プログラマーの将来性はやや危うい立場となっています。
もちろん、プログラマーの仕事がなくなるわけではありません。市場価値を高め、希少なIT人材として成長していきたいなら、プログラミングスキル「のみ」ではやや心もとないかもしれません。長い目で考えるならば、プログラミング以外のスキルも掛け合わせて習得していく必要があります。
将来性の違い
システムエンジニアもプログラマーも、同じく成長しているIT業界に身を置くことになりますので、「すぐに仕事が無くなってしまう」ようなことはありません。その点で見れば、どちらも将来性のある仕事と言えるでしょう。
しかし、これからの更なる技術発展を考えると、仕様書通りにプログラミングをしていくプログラマーの将来性には若干の危険性があります。
両者ともに技術力が重視される仕事になりますので、中長期的に活躍できる人材に成長したいのであれば、日頃から高いモチベーションを持って仕事に励んでいく姿勢が重要です。
システムエンジニアとプログラマーの違い【4.未経験からの就職難易度】
続いて、システムエンジニアとプログラマーの未経験からの就職難易度の違いについて解説します。
システムエンジニアの就職難易度
未経験からのシステムエンジニアの就職難易度はやや高くなっています。システムエンジニアの仕事内容は、要件定義や設計といったシステム開発の根幹となる部分を担うことになりますので、必然的にシステム開発のなんたるかが分かっていないといけません。そのため、未経験からいきなりシステムエンジニアになっても、仕事についていくのが難しいと判断され、見送りになるケースも見られます。
一方、未経験でもシステムエンジニアとして採用する企業も少なくありません。
企業によっては、社内で研修制度を設けているケースもあり、そのような企業であれば、入社してから数ヶ月でシステム開発に関する基礎知識を学べるので、未経験の人でも安心して仕事に取り組めるでしょう。
プログラマーの就職難易度
未経験者からのプログラマーの就職難易度はそこまで高くありません。プログラマーはプログラミングスキルがあれば仕事をすることができますが、一般的にプログラミング言語の基本的な内容は3ヶ月程度で習得できると言われています。
そのため、数ヶ月の研修期間を用意できる企業であれば、プログラミング言語を習得させ、仕事をしてもらうことができるのです。
もちろん人によってプログラミングスキルの習得速度は異なりますので一概には言えませんが、未経験歓迎のプログラマー求人も多く募集されている現状から、十分チャレンジが狙える仕事だと言えるでしょう。
就職難易度の違い
仕事内容の違いから鑑みても、未経験から就職するのであれば、システムエンジニアよりもプログラマーの方が難易度はやや低いと考えられます。
どうしても未経験からシステムエンジニアになりたいという場合は、未経験歓迎のシステムエンジニア求人を見つけ出して応募するか、プログラマーとして経験を積んだ後にシステムエンジニアへ転職する方法が考えられます。
ITエンジニアは他の職種に比べて転職が頻繁に行われているという特徴がありますので、中長期的なキャリアビジョンを描いた上で、どちらの仕事に応募するのかを決めていくのがおすすめです。
システムエンジニアとプログラマーの違い【5.きついポイント】
システムエンジニアとプログラマーの違いとして、きついポイントについても見ておきましょう。
システムエンジニアのきついポイント
システムエンジニアのきついポイントとしてよく挙げられる内容には、以下のようなものがあります。
- 納期に追われるプレッシャー
- 案件が立て込んで激務になりやすい
- 求められる知識の幅が広い
- 勤務先によっては就業時間に見合っていない給料の場合がある
- クライアントとプログラマーの板挟みになることがある
- 意外とコミュニケーションが発生する
システムエンジニアはシステム開発における重要な役回りとなっているからこそ、仕事上でのストレスや高いスキルを求められることに、きつさを感じることが少なくありません。
また、クライアントやチームメンバーとのミーティングが多いことから、思ったよりもコミュニケーションを取らなければならない点にきつさを感じる人もいるようです。
プログラマーのきついポイント
プログラマーのきついポイントとしては、以下のようなものが挙げられます。
- 人手不足で労働時間が長くなりやすい
- 作業が中心の仕事でマンネリ化しやすい
- プログラミング言語を覚えるのがそもそもきつい
- 黙々と作業しなければならずコミュニケーションが希薄になる
- バグやトラブルなど突発的な出来事に対応しなければならない
- 意外と体力仕事で身体がきついと感じることも
プログラマーの場合は、「プログラミング作業を長時間、延々とし続ける」という、仕事内容そのものへのきつさを感じることが多いです。
また、パソコンの前でずっと作業をしなければなりませんので、体力仕事ではないものの体力を使うことになり、若くして腰や肩、眼精疲労など不健康な身体になってしまうこともあります。
きついポイントの違い
システムエンジニア・プログラマーに限らず、それぞれ同じくらいきついポイントがあります。どちらかと言えば、システムエンジニアはより精神に、プログラマーはより身体に負担がかかりやすい傾向にあります。
ただ、どちらも少なからずきつい仕事ではあるものの、社会への貢献性やこれから更に求められる仕事であることには変わりません。
ITエンジニア系の仕事を目指すのであれば、「楽な仕事ではない」と認識した上で求人を見てみるようにしましょう。
システムエンジニアとプログラマーに共通して求められる資質
システムエンジニアとプログラマーは、どちらもシステム開発に携わるということもあり、共通して求められる資質があります。どちらの職種を目指す場合も、以下のようなスキル・資質を持っていることが大切です。
論理的思考力
システムは全てプログラムで動きます。プログラムは非常に多くの条件分岐を経て、意図していた挙動をするように組んでいきますが、そこには論理的思考力が欠かせません。
「◯◯の時には△△の結果を出力する」「◯◯していないのに△△をしている時は◇◇と動く」のように、論理性を持っていないとシステムが意図しない挙動をしてしまい、バグの発生要因となります。
設計においても、プログラミングにおいても、論理的思考力は非常に重要な資質の一つです。
高い集中力
システムエンジニアであれば、設計書を作成する時、プログラマーであればプログラミングをしている時、それぞれで高い集中力が求められます。システム開発では、一文字違うだけで正常に開発が進められなくなってしまうこともあります。
ミスを一つしてしまえば、最悪の場合取り返しがつかないということもありますので、一つの物事に集中するのが苦手という人にはきつい仕事に感じるでしょう。
コミュニケーション能力
パソコンに向かって作業だけをすればいいというイメージの強いエンジニア職ですが、システムエンジニアもプログラマーも一定のコミュニケーション能力が求められます。
システムエンジニアであれば、システムの要件を決めていく際にクライアントと打ち合わせをしたり、決定している設計をプログラマーに正しく共有するミーティングをします。また、プログラマーであればシステムエンジニアから伝えられる共有事項を正しく理解するという「聞いて理解する力」が大切です。
「人と話す仕事をしたくないから」という理由でこれらの仕事に就いてしまうと、思わぬギャップを感じるでしょう。
学習意欲
システム開発の手法は、日に日に技術的な進歩をしていますので、従来やっていた方法が通用しないということは多々あります。仕事を進める上で常に学習することが求められることから、学習意欲を持ち続けることが大切になります。
時には終業後に勉強会に参加したり、自主的な勉強を促されることもあるので、しっかり認識しておくようにしましょう。
プログラミング能力
プログラマーは言わずもがなプログラミング能力が必要ですが、システムエンジニアも最低限のプログラミング知識は持っておきたいところです。
確かにシステムエンジニアの中には、プログラミングスキルを全く持たない人もいますが、プログラミングがどういうもので、どのように動くのかを知っていないと、正しくシステム設計をすることはできません。
業務を正しく、円滑に進めるためには、システムエンジニアも同じく一定のプログラミング能力が大切になります。
システムエンジニアやプログラマーを目指す時の注意点
システムエンジニアやプログラマーを目指す時は、以下のようなポイントに注意してください。
イメージだけで就職しない
「仕事内容は分からないけどカッコ良さそう」などと、イメージだけで就職してしまうと、入社後の業務についていけずに早期退職に繋がる恐れがあります。システムエンジニアやプログラマーといったエンジニア職を目指すのであれば、具体的にどのような仕事に携わるのか、必ずチェックしておくようにしてください。
また、それぞれの仕事内容が分かっていたとしても、求人票の仕事内容の欄は応募前に一読しましょう。企業によっては、システムエンジニアとプログラマーがごっちゃになって募集されていることもあり、「入社前に思っていた以上の業務範囲がある」とギャップを感じる原因になってしまいます。
企業によってはそれぞれの意味が異なる場合がある
「システムエンジニア」と書かれていても、プログラマー的な仕事しかしなかったり、逆に「プログラマー」と書かれていてもシステムエンジニアのような仕事をすることもありますので、求人票の内容は必ず確認しましょう。
また、特に「社内SE」の場合は仕事内容のチェックを入念に行いましょう。SE(システムエンジニア)という単語はついているものの、実際にはヘルプデスクのような仕事がメインという場合もあります。特にメーカー系の企業での社内SE募集の求人で見られる現象ですので、認識しておくと良いでしょう。
残業時間や労働環境を必ず確認する
システムエンジニアやプログラマーは、企業によって就労環境が大きく異なるという特徴があります。自分の望む職場環境で、できるだけストレス少なく働き続けるためにも、企業研究などを積極的に行いましょう。
「システムエンジニア(プログラマー)になれればどんな企業でもいい」と考えて就職すると、想像以上の激務に耐えられずすぐ退職してしまうかもしれません。
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まとめ
システムエンジニアとプログラマーは、似ているようで違う領域の仕事をすることを解説しました。ただ、どちらもシステム開発に携わる仕事ですので、将来性が高く、自分の市場価値を上げていくことができるでしょう。
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