「仕事を辞めたい」と思っていても、なかなか決断できない人も多いでしょう。この記事では、一般的に会社を辞めたいと思ってしまう理由とその対処法を紹介します。あなたがいまの会社を退職した方がいいのか、思いとどまったほうがいいのかについてを判断するポイントもご紹介します。
この記事の目次
仕事を辞めたいと思う理由
仕事を辞めたいと思ったことは、ほとんどの人にあるのではないでしょうか。いまの職場でうまくいっていなかったり仕事で失敗が続いたりすると、そう思ってしまうこともあります。
仕事を辞めたいと思うきっかけとなる理由は、どのようなものがあるのでしょうか。エン・ジャパンが2019年6月に発表した【1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査-『エン転職』ユーザーアンケート】の回答を参考に解説します。
こちらの調査では、働く人が退職を考え始める理由の上位5つは、以下の通りです。
- やりがい/達成感を感じない
- 給与が低かった
- 企業の将来性に疑問を感じた
- 人間関係が悪かった
- 評価/人事制度に不満があった
実際に退職した人は、どのような理由で会社を辞めることが多いのか、見ていきましょう。
理由1:やりがい/達成感を感じない
エン・ジャパンによる【9,000名に聞く「仕事のやりがいと楽しみ方」調査】によれば、「仕事にやりがいは必要」と回答した人は96%と、ほぼ全員です。
理由としては「仕事そのものが充実するから」がもっとも多く56%、次いで「自身の成長感を得たいから」が48%、「自分の存在価値を感じるから」が44%という結果です。
なお、男性よりも女性のほうが、上記のように回答した人の割合が高くなっています。
やりがいを感じられない仕事を続けるのは、想像以上につらいものです。「給料がもらえるから」「安定しているから」だけでは割り切れないものが、ほとんどの人にあるのでしょう。
理由2:給与が低かった
給料が低いことは、仕事を辞めたいと考える理由になり得ます。ほとんどの場合「生活できないほど給料が低い」ということはないかもしれませんが、以下のようなケースはあるでしょう。
- 基本給が低い/ボーナスがない
- ほとんど昇給しない/昇給額がわずか
- 家族が暮らしていくのに十分な給料ではない(既婚者の場合)
- 仕事量と給料が見合わない(激務薄給など)
- 残業代が少ない/そもそも残業代が出ない
- 手当が薄い/またはほとんどない
自分の給料が平均よりも低い、同年代とくらべて少ないなどの場合も、気になってしまうことがあるかもしれません。
また、仕事できちんと成果を出していたり、精神的・肉体的な負荷が大きかったりするにもかかわらず給料が低いと、「こんなに働いているのに」「これだけがんばっているのに」と努力を認められていないと感じ、不満が高まって退職したいと考えやすくなってしまうでしょう。
理由3:企業の将来性に疑問を感じた
2020年からのコロナ禍により、労働者だけでなく、企業も大きな変化を求められています。たとえば、感染拡大防止のためにリモートワークを導入した企業が増えましたが、素早く対応できた企業と未だに対応できていない企業が存在しています。
パーソル総合研究所の調査によれば「新型コロナ第3波におけるテレワーク実施率は全国平均で24.7%5月下旬の緊急事態宣言解除直後は25.7%で1ポイント減少」とあり、再び感染拡大が目立ち始めた2020年11月18~23日時点でリモートワークを実施している正社員の割合は24.7%と、全体の約4分の1程度です。
企業規模でいうと、従業員数1万人以上の企業の実施率は45%、1000人~1万人未満は34.2%、100人~1000人未満の企業は22.5%、100人未満の企業は13.1%と、大企業ほどリモートワークを導入していることがわかります。
業種別に見ると、リモートワークの実施率が高いのは、以下のような業界となっています。
- 情報通信業:55.7%
- 学術研究、専門・技術サービス業:43.2%
- 金融業、保険業:30.2%
コロナ禍がいずれ収まっても、今の時代に合わせた事業形態や柔軟な働き方を取り入れている企業の方が危機対応力に優れ、そこで働く人の満足度は高くなるでしょう。社員の満足度が向上すれば、優秀な人材の獲得においてもアドバンテージがあります。
逆に、以下の項目に当てはまる企業は、事業上も人材獲得でも劣後するおそれがあります。
- 新しい仕事のやり方を取り入れない会社(リモートワーク一切不可、ハンコの利用必須など)
- ずっと業績が悪いままなのに、何も変えようとしない会社
- 社員や取引先に無茶を強いることで収益を上げている会社
会社が旧態依然としていたり、変化への対応が遅ければ、社員は「ここにいて大丈夫だろうか」と不安に感じ、転職を考えるケースも増加しそうです。
理由4:人間関係が悪かった
人間関係は、退職理由の定番のひとつといえます。
エン・ジャパンの【1万人が回答!「退職のきっかけ」実態調査-『エン転職』ユーザーアンケート】によれば、人間関係が理由で退社した人の割合は、男性が34%、女性が36%とほぼ同率ではありますが、女性の方が少し多い結果となっています。
女性は、男性よりもコミュニケーション能力に長けた人が多い傾向がある反面、人間関係に悩みやすかったり、調和を気にするがゆえにストレスを感じやすいことが想定されます。
たとえば、互いの能力や人柄を認め合い切磋琢磨できるメンバーに囲まれた環境と、常に愚痴や悪口ばかり言うやる気のないメンバーに囲まれた環境では、ほとんどの人が前者で働きたいと考えるでしょう。
人間関係の悪さが退社理由になっていることから、仕事において「何をするか(業務内容)」だけでなく、「誰と一緒に働くのか」も重要視する人が一定の割合でいるとわかります。
理由5:評価/人事制度に不満があった
アデコの「人事評価制度」に関する意識調査によれば、1532人を対象とした「自分の会社の人事制度に満足しているか」という質問で「不満を持っている」と回答している人は全体の63%と、約6割以上という結果が出ています。
「勤務先の人事制度を見直す必要があると思う」と回答したのも77.6%と、自社での自分の評価に納得がいっていない、自分はきちんと評価されていない、と感じている人は、想像以上に多く存在することがわかります。
人事評価は、昇進や昇給などに大きく影響するものです。自分の成果や仕事ぶりを見てもらえていないという想いが退職を決意する動機になることも、人によってはあるでしょう。
仕事を辞めたいと思った時の対処法
実際に会社を辞めた人の「退職の理由」を見てきました。
ここからは、それぞれの理由について、どのように対処すればいいかを解説します。
対処法1:やりがい/達成感を感じない時の対処法
仕事にやりがいがない場合の対処法には、以下のようなものがあります。
- 自分で工夫して楽しむ
- 部署異動を相談する
仕事にやりがいがあると感じている人は、会社まかせや受け身ではなく、自ら仕事を楽しむ工夫をしています。同アンケートでは「仕事を楽しむ工夫」として、男女それぞれで、以下の回答がもっとも多くなっています。
- 男性:いろいろな人と関わりを持つ…46%
- 女性:人間関係を良くする…56%
男性は他部署や外部との関係性を築いて有用な情報をキャッチすること、女性は仕事で関わる相手とのコミュニケーションが円滑になるような言葉がけや態度を意識することで、仕事を楽しむ工夫をしている人が多い傾向があるようです。
今の部署での仕事にどうしてもやる気が湧かないのであれば、退職を考える前に、部署異動の相談や申請をしてみるのもひとつの方法です。会社全体の人事の都合もあるため、異動が実現するかは未知数ですが、自分からアクションをおこさない限り現状は変わりません。「ダメでもともと」と考えて、トライしてみましょう。異動が実現できそうもなければ、いよいよ転職を考えればいいのです。
人生の約三分の一の時間を仕事に費やしていると考えれば、「仕事がつまらない・おもしろくない」状態は、非常にもったいないことです。まずは「いまの会社でやりがいを持って仕事ができる方法がないか」という点から、考えていきましょう。
対処法2:給与が低かった時の対処法
そもそも、業界によって給与や年収の基準は異なります。マイナビ転職の「2020年版 業種別 モデル年収平均ランキング」によると、業界ごとのモデル年収は、以下の通りです。
- 不動産 764万円
- 金融総合グループ 676万円
- 総合商社 617万円
- 総合電機 602万円
- 建設土木 593万円
- レジャーサービス・アミューズメント 565万円
- インターネット関連 561万円
- 教育 531万円
- 海運・鉄道・空輸・陸運 524万円
- サービスその他 483万円
- その他メーカー 480万円
- 新聞・出版・印刷 479万円
- 医療・介護・福祉サービス 437万円
- ホテル・旅館 433万円
これらは、ある程度キャリアを積んだ人を想定した年収モデルです。また、大手企業・中小企業・ベンチャーという企業規模や、役職の有無やインセンティブなどによっても年収は変わってくるため、ひとつの目安として考えましょう。
あなたの会社は業界内でどの程度の給与なのかを、まず把握する必要があります。自分では給料が低いと感じていたとしても、業界全体で見れば比較的高い給料額だったという可能性もあります。
若いときは給料が低くても、年齢が上がるごとに収入が上がっていく会社もあります。まずは業界平均や同業他社について調べ、比較してみましょう。調べた結果、やはり自分の給料が低い水準にある場合は、「どれくらいの給料額ならば満足できるか、モチベーション高く働けるのか」を考えてみましょう。その給与額が実現できる業界に転職をするのも、選択基準のひとつです。
ただ、給与水準が高いことと、それがあなたに適した仕事や会社なのかは、また別の基準になります。そのことを心に留めておき、各基準の優先順位やバランスについても確認するとさらに良いでしょう。
対処法3:企業の将来性に疑問を感じた時の対処法
これからは「VUCAの時代」と言われています。VUCAとは、下記の用語の頭文字からなる造語です。
- Volatility(不安定)
- Uncertainty(不確実)
- Complexity(複雑性)
- Ambiguity(曖昧性
VUCA時代とは「社会やビジネスにおいて将来の予測が困難になってきている時代」を意味します。
東京商工リサーチ「2020年業歴30年以上の“老舗”企業倒産調査」によれば、2020年に倒産した企業の平均寿命は23.3年とのデータがあります。各企業の経営状況や規模にもよりますが、たとえばあなたが新卒で入社した会社が、40代の頃には倒産している可能性もゼロではないのです。
「新卒から定年まで、ひとつの会社に勤めることがスタンダード」ではなく、転職することが「普通」になっていく可能性も高いといえます。
転職を考えるとき大切にしたいのが「自分自身のビジョン」です。あなたが働いている会社に依存するのではなく、「今後あなたがどうなりたいのか」がもっとも重要な視点です。
会社はあなたを雇用している限りは労働の対価として給料を支払いますし、キャリアアップの機会を与えてくれることもあるでしょう。しかし、会社はあなたの人生においてすべての責任を負ってくれるわけではありません。
これからの時代に有意義な働き方をするために、自分がどのようなスキルを身につけたいのかを考え、その基準で企業を探す必要があります。まず、あなたのキャリアビジョンを描き、そのビジョンと在籍している企業の方向が同じかどうかを確かめましょう。
対処法4:人間関係が悪かった時の対処法
人間関係の問題において、まず理解する必要があるのは「他人を変えることはできない」ということです。これは自分自身についても同様です。たとえば、あなたが明るい性格で人と話すことが好きなのに、「これからは暗い雰囲気で、ずっと静かにしていてほしい」と他人に言われても難しいでしょう。
職場で「あの人は、なぜああいう言い方をするんだろう」「あの人の仕事のやり方には納得できない」などと感じても、相手を変えられるわけではありません。まずは、自分の行動や対応を変えてみるのが現実的です。苦手な相手にも自分から笑顔であいさつするなど、できることから始めましょう。
あなたの行動が変わった結果、相手が変わるかどうかは相手次第です。しかし、自分の行動や態度を変えていくことで、以下のようなことが起こる可能性もあります。
- 自分の気分が晴れて、仕事に集中しやすくなる
- 「私は、やれることはやっている」と自信が持てるようになる
- いい意味で割り切れるようになる
- 相手の異動・転職などで、自然と関わりがなくなることもある
まだできることがあるのに「人間関係」を理由に退職しても、次の会社で同じような問題に出くわさないとは限りません。会社には様々な人がいますし、「世の中に無数にある会社のなかで、たまたま一緒に働いている」というだけの関係性に過ぎません。
職場の人間関係で深刻に思い悩むよりも、その時間を使ってあなたの将来のことや、日々を楽しく過ごしていくことに意識を向けた方が有意義です。
ただ、よくわからない理由でしょっちゅう怒鳴られる、ひどいことを言われる、仕事を一切教えてもらえないなど仕事に支障が出ている場合は、自分の心身の健康を守るためにも早めに転職を検討した方が良いかもしれません。職場で利害関係のない、信頼できる人に相談して力を借り、決して無理をせず適切に対応してください。
対処法5:評価/人事制度に不満があった時の対処法
「評価制度に不満がある」という人は、ほとんどの場合「自分は正当に評価されていない」と感じていることでしょう。まずは、なぜ自分が評価されていないのかを客観的に把握することが大切です。評価されない要因には、下記のような項目が想定されます。
- 上司が求めていることを把握できていない(レビューの意図を理解できない、など)
- ミスを繰り返し、それを改善する様子が見られない
- 上司との関係性がそもそも悪い(お互いに苦手だと感じている、など)
- 上司とのコミュニケーションがうまくとれていない
- 基本的なビジネスマナーができていない(お礼やあいさつ、返事、期限を守るなど)
- 業績は上げているが、人間性に問題がある(周囲に仕事を押しつけている、など)
- 求められている業務以外のことを勝手に優先し、結果として仕事が遅い
多くの場合、評価されない理由は何かしらあるものです。まずはそこを認識して、自ら直していけるポイントは改善していきましょう。
けれど、あなたなりに改善したとしても、期待しているようには評価されないこともあります。適正な評価制度ではないケースや、上司が独断で評価しているケースなどが考えられます。そのような場合は適切に評価されにくい環境であるため、部署異動や転職を検討してみるのもいいでしょう。
あなたができる改善をした上で仕事に注力し、自分なりに納得してから転職するという選択肢はありです。「ここで踏ん張れた自分は、他社でも活躍できる」「もっと評価されてもよい人材に成長した」と、根拠のある自信をもって転職できるよう、今の職場で自分にできることはすべてやってみることが大切です。
仕事を辞めたいと思ったときに取るべき行動
仕事を辞めたいと思ったときに取るべき行動についてご紹介します。突発的に退職を考えるのではなく、冷静に考えて行動しましょう。
行動1.なぜ辞めたいと思っているのかを書き出す
まず、仕事を辞めたい理由をすべて紙に書き出してみます。あとから整理すればよいので、思いつくまま箇条書きで書き出してみましょう。文字にしてアウトプットすることで、自分でもはっきりと認識していなかった理由が出てくる場合もあります。
書き出した内容を眺めてみることで、自分の気持ちを客観視できます。誰かに見せるためのものではありませんから、人の目を気にせず自由に書いてみましょう。
行動2.書き出した項目へ嫌な順に番号をつける
ひととおり書き終えたら、自分が「嫌だ」と感じている度合が強い順に番号を付けていきます。たとえば、営業の仕事をしている人は、以下のような内容になるかも知れません。
- 自社の商品に興味が持てない→3
- 仕事が楽しくないし、営業成績もいまいち→1
- 会社の方針と自分の考え方が合わないと感じる→4
- 給料がなかなか増えない→6
- 部長が怖くて、やりとりに気を遣う→5
- 仕事にやりがいを感じられない→2
上記のケースでは、営業の仕事そのものや扱っている商品に興味が持てないことが、仕事を辞めたい理由の上位にあるといえます。それらに比べれば、人間関係や給料などは、不満の度合がそれほど強いわけではないともいえます。より興味が持てる製品・サービスを扱う業界や企業、そして営業職よりも自分に適した職種を検討してみるのが良さそうです。
行動3.「自分で改善できるもの」と「できないもの」でわける
辞めたい理由に順位をつけたら、それが自分で改善できるものなのか、できないものなのかを分けていきます。たとえば、以下のように分けられるでしょう。
- 仕事への姿勢や取り組み方、仕事へのやりがい→自分で改善できる
- 給料、社風、仕事内容そのもの→自分では改善できない
- 評価、人間関係→自分の努力次第で改善できる場合もある
会社の方針、共に働くメンバー、配属部署の業務内容、受け取る給料額などは、自分が変えられるものではありません。一方で、仕事への取り組み方、やりがいの有無などは、自分がどう仕事に取り組むかで変えられる場合もあります。また、周囲の人との関係性や会社からの評価も、あなたの行動次第では変えられるケースもあります。
これらをひとつずつ見極め、仕分けをしてください。
行動4.自分で改善できるものは行動して変えていく
「自分で改善できる事柄」が明確になったら、まずはそれらの改善策を考えてみましょう。改善案をもとに自ら行動することで、状況が変化するかどうか様子を見ます。
一例を上げますと、職場に苦手な人がいる場合、毎日笑顔で挨拶をして少しずつコミュニケーションを図る、その人と円満にやり取りしている先輩や上司にそれとなくコツを聞いてみる、などです。小さなことからでよいので、あなたからアクションを起こしていきましょう。
行動5.社内の人に話して解決できる可能性があるものは相談する
たとえば「いまは総務部にいるが、事業開発部での仕事がしたい」というような場合、すぐ実現できるかは別にして、タイミングを見計らって上司に相談してみるのもよいでしょう。
職場の人間関係に悩んでいる場合、信頼できる同僚や先輩に話を聞いてもらい、一緒に解決策を考えてもらうのもひとつの方法です。周囲に相談しにくい内容であれば、社内に相談窓口が設けられている場合は利用してみるのもいいでしょう。
自分の力だけでは変えられないけれど、社内の人に相談することで改善できる可能性があるものに関しては、相手をよく見極めた上で話を聞いてもらうことをおすすめします。
行動6.職場の人以外にも相談をしてみる
職場でできることをすべてやってみても状況が好転しない、あるいは社内で相談することに不安がある(相談した相手から社内に広まってしまう等)場合は、下記のような人や窓口に相談してみる方法もあります。
- 家族、友人、恋人など、あなたをよく知る身近な人
- 労働に関わる各種相談窓口
- 転職エージェント
- 心理カウンセリングなど有料の相談サービス
職場での利害関係がない人に相談することで、客観的な意見がきける可能性があります。それでも問題が解決しない、心が晴れないということであれば、いよいよ退職も選択肢ととして検討する段階といえるでしょう。
今の仕事を辞めてもいいときの判断ポイント
仕事を辞めてもいいときの判断基準としては、以下があります。
ポイント1.人間関係が改善しない
たとえば、以下のようなケースです。
- ハラスメントを受けていて、会社に訴えたが状況が変わらない
- 仕事に支障が出るレベルの嫌がらせを受けている
- 職場の人間関係を理由に、自分の心身に不調が出つつある
これらのケースは、これ以上無理に自分で対応しようとしても変わらないことが多いでしょう。職場の人間関係に多少悩んだ経験はほとんどの人にあると思いますが、本格的に精神を病むほど苦しむ必要のあることではありません。
退職前にまずは休職するなどして、その間に次のことを考えてもよいでしょう。
ポイント2.労働時間が長く変わりそうにない
厚生労働省「時間外労働の上限規制」によれば、大企業では2019年4月から、中小企業では2020年4月から、残業時間の規制が施行されています。残業時間は、特別の事情がない限り、以下の時間を超えてはいけないことになりました。
- 月の残業時間:45時間
- 年間の残業時間:360時間
たとえばフルタイム勤務の会社員の場合、1か月が31日間ある月で、そのうち土日の8日間が休みで残りの23日間働いたとして、1日2時間以上毎日残業すれば、月あたりの時間外労働の上限を超える計算になります。
時間外労働の上限を超えている場合、そのままにしていると会社側が罰則を受けることになっています。定められた残業時間を超えそうな場合、上司などに報告して業務改善を行う必要があります。
それでも改善できないほど仕事量が膨大にある、または「長時間の残業は当たり前、法律は関係ない」というような組織風土の場合、その環境を変えるのは残念ながらむずかしいといえます。
また、あらかじめ「みなし残業代」として、数十時間分の残業代が給料に含まれている会社もあります。その場合はある程度残業が発生することが想定されているため、残業が大きく減ることはないでしょう。
常識的な範囲の残業や、繁忙期などの一定期間のみ残業が多いなどであればよいですが、過剰な残業は体調を崩す原因になりかねません。大切な身体を壊してしまう前に、転職を検討しましょう。
ポイント3.会社の社風・経営が不安定
会社に勤めていれば、その会社がずっと順風満帆ということは少ないはずです。一時的な業績悪化や、売上が下がったり伸び悩んでしまう時期などはありますし、起こってもしょうがないことです。
問題は、そのことに対して会社の上司や役員がどのように捉えているか。たとえばいまだったら「コロナで景気が悪くなったのだから、業績悪化はしょうがない」「コロナが収まらないから、もううちの会社は終わりだ」などという雰囲気に、会社全体がなってしまっているなら危険です。
たとえば不況と言われる飲食店でもデリバリーやテイクアウトを充実させたり、非接触型の店舗にしたりするなど、いまの状況に合ったサービスへ転換して業績を伸ばしている企業もあります。
そのときどきの変化に対応できずあきらめムードだったり、不安定なまま社内の雰囲気が殺伐としたりしているのであれば、その環境を離れることを検討してもよいかもしれません。
ポイント4.体調不良やうつのような状態になった
働き続けた結果体調を崩したり、うつなどの精神疾患になった・またはなりかけている場合は、まずはすみやかに仕事を休みましょう。具体的には、以下のようなケースです。
- 夜寝れない
- 全身がだるい・疲れやすい
- 動悸やめまいがする
- 胃が痛い
- 出勤前日や当日の朝に不安になる
- 仕事以外でも仕事のことが頭から離れない
- 頭が働かない・集中できない
- 食欲がない
- 「死にたい」「消えたい」などと考えてしまう
これらは、身体からのSOSのサインです。無理に出勤を続ければ、治すのに長い時間を伴うことにもなります。気分転換をしても気持ちが変わらなければ自分でセルフチェックをしてみて、まずはメンタルクリニックを受診してみるなど、重症化する前に早めに行動しましょう。
すぐに退職しなくても、病状によっては傷病手当金を受け取り療養することも可能です。まずは欠勤扱いにしてもらう形でもよいので、心と身体を休ませたうえで、落ち着いてきたら次のことを考えるとよいでしょう。
ポイント5.1年間仕事を続けてもやりがいを感じない
自分なりに工夫して、周囲に相談するなどして仕事にやりがいを感じられるように努力しても、それでもやりがいを感じないのであれば、あなたにはいまの仕事や会社が向いていないのかもしれません。
向いている・向いていないは甘えではなく、その人が持つ性格や特性にもよります。また、いまいる会社の環境ではどうしても自分の力を発揮できそうにない、ということも起こり得ます。自分自身でできることを最大限やったうえで、退職を検討するのは問題ないでしょう。
今の仕事を辞めてはダメな時の判断ポイント
安易に仕事を辞めると、あとから「こんなはずではなかった」と後悔する可能性もあります。いまの仕事を辞めるべきではないケースを見ていきましょう。
ポイント1.寿退社でキャリアを途絶えさせてしまう
一般的な割合でいうと、結婚をきっかけに女性が仕事を辞めるいわゆる「寿退社」は少なくなっています。「人生100年時代」と言われているなかで、いまの時代は女性にとって「結婚=一生家庭に入る」という位置づけではなくなっています。
現在は結婚後、共働きを続ける夫婦もスタンダードになりました。男女共同参画局の「「家事・育児・介護」と「仕事」のバランス~個人は、家庭は、社会はどう向き合っていくか-令和2年版男女共同参画白書から-内閣府男女共同参画局調査課」によれば、妻が週35時間以下働いている世帯の割合は68,2%、週35時間以上働いている世帯は49.5%と、約5~7割程度の世帯が共働きです。
男性側の意識も、いまの世代は「自分が働いて妻子を養う」から「仕事も家事・育児も一緒にやる」に比較的シフトしてきています。「子どもが産まれたらもう働くことはできない」ということではなく、産休や育休を挟んで働いたり、働き方を調整したりするなどして仕事を続けることは可能です。
もちろん、自分も結婚相手も寿退社をして家庭に入ることを希望しているのであれば、その選択もありです。結婚相手の家業をサポートするなどの事情で、一旦仕事を辞める必要があるケースもあるかもしれません。
「結婚するからもう仕事は辞める」という女性は昔よりは減ってきているかもしれませんが、働く女性が結婚をすることになり仕事をどうしていくか迷った場合、自分がどうしていきたいのか、もしくは、将来や今後のキャリアについて十分に考えて決めたうえで検討しましょう。
ポイント2.介護のために退職を決断する
親や子などの介護のために仕事を辞めるいわゆる「介護離職」は、総務省「就業構造基本調査」によると、2017年に介護・看護を理由に離職した人数は9万9000人で、全体の1.8%にあたることがわかっています。100人中2人程度は、介護のために退職しているということがわかります。
介護は終わりが見えないもので、何年かかるかわかりません。介護離職をすること自体が悪いわけでは決してありませんが、離職後のブランクが空けば空くほど、復職のハードルは高くなってしまいます。また、介護だけに専念することで、気が滅入ってしまうこともあるかもしれません。
いまは、仕事をしながら介護をするための厚生労働省「介護休暇とは」によれば、介護が必要な家族などのために休暇を取得できる、介護休暇という法律が制定されています。たとえば病院の付き添いなど短時間の取得も可能なため、仕事をしながら取得することが可能です。
もちろんそのときの状況にもよるものの、こういった制度を利用して「介護が必要になったから退職する」ではなく、できるだけ、働きながら介護ができる状態を目指すのがおすすめです。
家族の介護が必要になったら、まずは自分だけで抱え込んで退職を考えるよりも、上司などへ相談もしてみるとよいでしょう。職場からの理解や協力を得られる可能性も十分にあります。
ポイント3.短期離職を繰り返してしまっている
短い期間で会社を辞めてしまういわゆる「短期離職者」は一定数います。UZUZ「【調査リリース】短期離職の原因は「合わない」と「忙しい」|「Z世代」の第二新卒向け転職活動意識調査」によると、調査に回答したうち、第二新卒として転職活動をしている55.83%が、入社から1年未満で転職したことがわかっています。
何度も短期離職を繰り返すのは、よほどのことがない限りNGです。たとえば勤めた会社が軒並み倒産したり、どの会社も長時間労働など劣悪な労働環境にあったり、体調や持病の都合で長期間勤めることがむずかしかったりした場合など、やむを得ない事情があった場合は別です。
短期離職は履歴書に残るため「A社を半年で辞め、B社を1年半で辞め、C社を2年で辞め、D社を1年で辞めた」などの経歴は、辞めても次々に転職先が見つかったこと自体は評価できるかもしれませんが、よほど優秀だったり高度なスキルがない人材の場合は不利になりがちです。
このコロナ禍でも求人はありますし、転職者の採用も行われています。ですが状況もあり、企業が転職者を見る目は、より厳しくなっていくことが考えられます。これまで短期離職を繰り返してきた人は、安易な退職は一旦考え直したほうがよいでしょう。
ポイント4.「働きたくない」という理由で退職を考えている
「しばらく働きたくない」と考えたとき、働きたくないから退職ではなく、まずはなぜ辞めたくなったのかを考えるのが先です。その原因が分かったうえで、それはその会社で改善できそうなのか、それとも改善できないのかを判断すべきです。
「新しいことにチャレンジするための準備がしたい」「勉強に専念したい」から働きたくない、という動機であればポジティブですが、それ以外の「働きたくない」は、いまの環境に何かしらの問題が隠れていることがほとんどです。それを明確にしたうえで、退職すべきかを考えましょう。
ポイント5.転職先がまだ決まっていない
厚生労働省「転職者実態調査の概況」によれば、前の職場を辞めてから次の転職先を見つけるまでの期間は、以下のようになっています。
- 離職期間なし:24.6%
- 1か月以上2か月未満:12.5%
- 10 か月以上:7.6%
約2割以上は、退職前に次の転職先を決めていることがわかります。
「退職したら失業保険をもらえるから、失業保険をもらいながら次の仕事を探す」と考えている人もいるかもしれません。しかし失業保険は、前職の勤務先の平均給与の全額が支給されるわけではないほか、コロナによる影響などの特別な事情以外の自己都合退職の場合は、失業保険がもらえるまでに時間がかかります。
何より、仕事を辞めてから新たな仕事を探そうとすると、もし決まらなかったときに、精神的にも経済的にも追いつめられるリスクがあります。その点も考慮して、退職を決めるようにしましょう。
「仕事を辞める!」と決めた人へ-退職までの8つのステップ
自分なりに考えたり行動したりした上で仕事を辞めると決めた方へ、退職のために行う8つのステップについて説明します。
- ステップ1:退職プランを考える
- ステップ2:求人を探し始める
- ステップ3:転職先の入社日を調整する
- ステップ4:職場へのあいさつをしていく
- ステップ5:引き継ぎを行っていく
- ステップ6:私物の整理をする
- ステップ7:有給を消化していく
- ステップ8:各所手続きを行う
それでは、ひとつずつ解説していきます。
ステップ1:退職プランを考える
現在の会社を辞める上で、次に勤務する会社が決まっている方が経済的・精神的にも安心です。
退職時期を自分の中で仮決めし、早めに転職活動を開始しましょう。退職の目標日程を決めずにいると、退職時期や転職活動自体も曖昧になり、退職の意思を伝えることが先延ばしになってしまうこともあります。
そして、転職活動のスケジュールを組み立てるだけでなく、現職での引継ぎ資料の作成・引継ぎ作業なども、前もってイメージしておくことが大切です。
有給休暇を消化する人も多いでしょう。最終出社日から転職先への入社日までの期間を最大限活用できるよう、あらかじめ退職までのプランを考えておきましょう。
ステップ2:求人を探し始める
転職サイトなどを活用して、求人情報を探しましょう。複数のサイトに登録して、できるだけたくさんの情報を見比べてみることをおすすめします。場合によっては、あなたの経歴を見た企業から、スカウトメールが届くかもしれません。
さらに、転職エージェントもぜひ活用してください。キャリア・コンサルタントや就職アドバイザーに直接相談できるため、あなたがやりたいことや適性、転職先で実現させたいキャリアプランなども明確になっていくでしょう。
最初はいくつかの方法を併用して、あなたに合う転職サイトやエージェントを絞り込んでいくと良いでしょう。
ステップ3:転職先の入社日を調整する
転職活動が成功して内定を獲得できたら、入社日の調整をしましょう。ほとんどのケースでは事前に確認があるため問題ありませんが、現職の退職日よりも前に入社日を設定されてしまうと、トラブルになりますので要注意です。転職先の入社日を調整する際は、あえて日付を確定させずに目安を伝えておくという方法がよいでしょう。
転職先への入社1~2ヶ月前には、現職の上司に退職する旨を伝えましょう。退職願を提出し、転職先へ改めて入社日を伝えます。
転職エージェントを利用している場合は、キャリア・アドバイザーに退社交渉の進め方も相談できます。交渉の難航が想定される方は、ぜひ活用してください。
ステップ4:職場へのあいさつをしていく
現職でお世話になった関係者への退職報告は、計画的に進めていきましょう。たとえ嫌な経験をした会社でも、あなたを雇い働かせてくれた場所ですから、最後は感謝の気持ちを伝えることが大切です。
所属している部署だけでなく、ほかの部署の人たちや、取引先・協力会社の人たちなど、仕事で関わりのあった方々にも退職のあいさつをしましょう。現職から離れても、どこかでまた一緒に仕事をする可能性もあります。直接会う機会が作れそうにない人には、メールや電話などを駆使して伝えてもよいでしょう。
ステップ5:引き継ぎを行っていく
あなたの後任者のために、業務の引き継ぎはしっかりと行いましょう。仕事の進め方、取引先リストや個別状況、トラブルが起きた場合の対処方法など、できるだけ詳細に残しておくことが大切です。
伝え漏れや誤解が生じないよう、できる限り文章(書類、データなど)で残すことをおすすめします。しっかりとした引き継ぎを行うことであなたの責任感が伝わり、退社後も業務が滞らなければ遺恨を残さずに済むでしょう。あなた自身も思い残すことなく、新たな職場へ気持ちよく移ることができます。
ステップ6:私物の整理をする
社内のデスクやロッカーなどに置いていた私物は、忘れずに持ち帰りましょう。文房具やマグカップ、未開封のガムや飲み物、フィギュア、写真など、意外と私物が残っていることに気付くでしょう。使わないものは処分したり、仕事に役立ちそうなグッズは後輩に譲ったりしてもよいでしょう。私物を忘れて退職し、あとから送ってもらうことなどのないようにしましょう。退職することを自分の中で決めた時から、こっそり分散して持ち帰ったり処分しておくとスムーズです。
ステップ7:有給を消化していく
有給休暇が残っている場合は、最終出勤日から正式な退職日までの期間に消化できます。辞める前にまとめて有給消化をする人もいます。
有給休暇の消化期間は、次の仕事の準備や勉強をしてもいいですし、しばらく静養したり、旅行へ行ったり、部屋を片づけて心機一転したりと、自分なりに有意義な時間の使い方をするとよいでしょう。
また、転職活動中にも有給休暇を少しずつ消化して、活動をスピーディに進めるのもひとつの方法です。毎日仕事をしていると転職活動に割く時間がなかなか取れないこともありますので、転職を成功させるためにも計画的な有給消化をおすすめします。
ステップ8:各所手続きを行う
退職前に、「会社に返却するもの」と「会社から受け取るもの」の確認や手続きが必要です。会社に返却するものとしては、主に以下があります。
- 健康保険被保険者証(保険証)
- 社員証やカードキー
- 名刺
- 仕事関連の書類やデータ
- その他の備品(PCや携帯電話、文具、防災用品、法人カード等)
基本的には、会社での仕事を通じて得たものは全て返却しましょう。ここに紹介しているもの以外にも、会社ごとに返却すべきものがあるかも知れませんので、総務部など関連部署に必ず確認してください。
そして、会社側から受け取るものとしては、以下があります。
- 雇用保険被保険者証
- 年金手帳
- 源泉徴収票
場合によっては、在籍中でなく退職後に会社が郵送してくれるというケースもあるでしょう。
また、転職先を決めずに退職する場合は、失業給付を受けるための「離職票」を受け取る必要があります。あなたの状況によって受け取るものが変わりますので、しっかり確認しておきましょう。
まとめ
「仕事を辞めたい」と考えたとき、退職をするかどうかの判断基準はあくまで目安です。また、たとえ周囲から「退職しないほうがいい」と言われても、自分が強く退職を希望するのであれば、最終的には自分の意思を尊重すべきです。安易な退職はおすすめしませんが「自分はどうしたいのか」という気持ちと向き合いながら、今後について考えていきましょう。
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「仕事辞めたい」によくある質問
仕事を辞めたいと思ったことはありますか。一度も仕事を辞めたいと思ったことがない人のほうが珍しい存在かもしれません。仕事を辞めたいと思うきっかけとなる理由にはどのようなものがあるのでしょうか「仕事を辞めたいと思う理由ランキングと対処法」にまとめました。
仕事を辞めたいと思っても突発的に退職してしまうのはおすすめしません。「仕事を辞めたいと思ったらした方がいい行動」をとってからでも辞めるのは遅くありません。冷静になって計画的に行動するようにしましょう。
自分がどう頑張っても状況が変わらないと確信がもてるときが仕事の辞め時かもしれません。退職を心に決めたら転職に向けてすぐ動きましょう。ジェイックは就職支援のサービスを行っており、無料で「就職相談」ができます。在職中からぜひご利用ください。
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